日銀の黒田東彦総裁は、2013年4月、物価上昇率2%を2年程度で実現すると約束し、大規模金融緩和を開始した。しかし、現時点では約束は果たされていない。7月の物価上昇率は0.5%で、日銀が目指す2%にはなお遠い。
日銀が公表した9月末の金融政策決定会合の主な意見は、2%の実現にはまだ距離があることから、これまで通り、金融緩和を粘り強く推進するとの意見が相次いだそうだ。政策委員に新たに就任した片岡委員は、一層の金融緩和を主張しているとのことだ。
経済学にど素人の筆者は、これほどの異次元緩和の結果、インフレの歯止めが利かなくなることを恐れていたが、未だ物価上昇率は2%以下だとは、驚きである。経済学の専門家ですら予想が外れるのだから、素人が外れるのは当然かもしれないが、経済学とはこれほどいい加減な学問かと驚きである。
しかし、一部の生活必需品は値上がりしているようだ。世界的なかつおの不漁などの影響で、鰹節は9月出荷分から、5~25%値上げされる。また、10月からオリーブ油を10%以上値上げする企業もある、と経済ジャーナリストの荻原博子さんは報告している。かつおの不漁は一時的な現象かも知れないし、油の値上げも円高の影響であろう。
また、大手電力10社は9月の家庭向け電気料金を発表したが、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)などの価格上昇が続いているため、6社が8月よりも値上げするそうだ。都市ガス全4社も11カ月連続で値上げするそうだ。関西電力は高浜原発3号機・4号機の運転再開によって8月に値下げをしたが、9月には26円値上げするそうだ。LNGは輸入に頼る為、円高の影響であろう。
一方、技術の進歩、経済の効率化や競争の激化、が進み、KDDIは7月に従来に比べ2~3割安くなるスマートフォンの新料金プランを発表し、8月に入るとイオンがプライベートブランドの114品目を平均で1割値下げすることを表明した。また、イケア・ジャパンも家具など886品目を来年8月までに平均で約22%値下げすることを決めたそうだ。
どうも、値上がりするものと、値下がりするものが共存しているようであり、物価上昇率のみで評価すること自体を金融緩和の判断基準にして良いものかおかしさを感ずる。
そもそも物価上昇率を示す代表的な消費者物価指数とは,日常生活で私たち消費者が購入する商品の価格の動きを総合してみようとするものであり、私たちが日常購入する食料品などの価格の他に、理髪料などのサービスの価格の動きも含まれているので、スーパで購入する日用品は極一部に過ぎないのだ。
これまで消費者物価指数は経済政策を的確に推進する上で重要な指標となってきたが、様々な欠点も指摘されている。
消費者物価指数は、家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によって、どう変化するかを指数値で示したものである。従って、同一店舗における価格が変化しなければ物価は変わらない仕組みになっている。しかし、より価格の安い店で購入するようになるといった家計の行動の変化、すなわち消費構造の変化がある場合、価格の変動を捕らえることはできないのだそうだ。
最近ネットで購入することが盛んになっている。一般的にネット価格が実店舗より平均13%安いとのことで、総務省の調査によると、ネットショッピングを利用した世帯は全体の34.9%にもなったとのことだ。正に消費構造の変化が進行中であるのだ。
日本の消費者物価指数は、消費構造の変化を捉え切れておらず、実体より1ポイント程高めであることが知られているのだそうだ。そうなると7月の物価上昇率は0.5%であったとの話であるが、実体は、0.5%の物価下落だったと言うことになり、目標は更に遠ざかることになる。
金融緩和の判断基準は、消費者物価指数の算出根拠の見直し、更に輸入品の価格を左右する替レートの変化も加味して決められるべきであろう。
そもそも、金融緩和は景気好循環を目的とする着想から生まれたものである。現在、企業はアベノミクス景気で潤っているが、消費者にまで恩恵が回っていないとのことだ。企業の儲けが消費者に回らない原因追及とその対策こそ、日銀政策決定委員の役目かも知れない。金融緩和の弊害が大きくなっているのに、更に緩和を大きくしろなどとは、責任ある者の言い分とは信じられない。2017.10.07(犬賀 大好-379)
日銀が公表した9月末の金融政策決定会合の主な意見は、2%の実現にはまだ距離があることから、これまで通り、金融緩和を粘り強く推進するとの意見が相次いだそうだ。政策委員に新たに就任した片岡委員は、一層の金融緩和を主張しているとのことだ。
経済学にど素人の筆者は、これほどの異次元緩和の結果、インフレの歯止めが利かなくなることを恐れていたが、未だ物価上昇率は2%以下だとは、驚きである。経済学の専門家ですら予想が外れるのだから、素人が外れるのは当然かもしれないが、経済学とはこれほどいい加減な学問かと驚きである。
しかし、一部の生活必需品は値上がりしているようだ。世界的なかつおの不漁などの影響で、鰹節は9月出荷分から、5~25%値上げされる。また、10月からオリーブ油を10%以上値上げする企業もある、と経済ジャーナリストの荻原博子さんは報告している。かつおの不漁は一時的な現象かも知れないし、油の値上げも円高の影響であろう。
また、大手電力10社は9月の家庭向け電気料金を発表したが、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)などの価格上昇が続いているため、6社が8月よりも値上げするそうだ。都市ガス全4社も11カ月連続で値上げするそうだ。関西電力は高浜原発3号機・4号機の運転再開によって8月に値下げをしたが、9月には26円値上げするそうだ。LNGは輸入に頼る為、円高の影響であろう。
一方、技術の進歩、経済の効率化や競争の激化、が進み、KDDIは7月に従来に比べ2~3割安くなるスマートフォンの新料金プランを発表し、8月に入るとイオンがプライベートブランドの114品目を平均で1割値下げすることを表明した。また、イケア・ジャパンも家具など886品目を来年8月までに平均で約22%値下げすることを決めたそうだ。
どうも、値上がりするものと、値下がりするものが共存しているようであり、物価上昇率のみで評価すること自体を金融緩和の判断基準にして良いものかおかしさを感ずる。
そもそも物価上昇率を示す代表的な消費者物価指数とは,日常生活で私たち消費者が購入する商品の価格の動きを総合してみようとするものであり、私たちが日常購入する食料品などの価格の他に、理髪料などのサービスの価格の動きも含まれているので、スーパで購入する日用品は極一部に過ぎないのだ。
これまで消費者物価指数は経済政策を的確に推進する上で重要な指標となってきたが、様々な欠点も指摘されている。
消費者物価指数は、家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によって、どう変化するかを指数値で示したものである。従って、同一店舗における価格が変化しなければ物価は変わらない仕組みになっている。しかし、より価格の安い店で購入するようになるといった家計の行動の変化、すなわち消費構造の変化がある場合、価格の変動を捕らえることはできないのだそうだ。
最近ネットで購入することが盛んになっている。一般的にネット価格が実店舗より平均13%安いとのことで、総務省の調査によると、ネットショッピングを利用した世帯は全体の34.9%にもなったとのことだ。正に消費構造の変化が進行中であるのだ。
日本の消費者物価指数は、消費構造の変化を捉え切れておらず、実体より1ポイント程高めであることが知られているのだそうだ。そうなると7月の物価上昇率は0.5%であったとの話であるが、実体は、0.5%の物価下落だったと言うことになり、目標は更に遠ざかることになる。
金融緩和の判断基準は、消費者物価指数の算出根拠の見直し、更に輸入品の価格を左右する替レートの変化も加味して決められるべきであろう。
そもそも、金融緩和は景気好循環を目的とする着想から生まれたものである。現在、企業はアベノミクス景気で潤っているが、消費者にまで恩恵が回っていないとのことだ。企業の儲けが消費者に回らない原因追及とその対策こそ、日銀政策決定委員の役目かも知れない。金融緩和の弊害が大きくなっているのに、更に緩和を大きくしろなどとは、責任ある者の言い分とは信じられない。2017.10.07(犬賀 大好-379)