日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

技能実習制度に名を借りた移民政策

2018年07月18日 09時25分57秒 | 日々雑感
深刻な人手不足に対応して、政府が外国人受け入れ政策を大転換することを明らかにした。これまで単純労働とされる分野での外国人就労は原則禁止されてきたが、新たな在留資格を創設して、そうした分野でも労働者として正式に受け入れる方針とのことである。

現在、日本は空前の人手不足状態である。厚生労働省が4月に発表した3月の有効求人倍率1.59倍だったそうで、相変わらず高い水準を維持し、売り手市場となっている。

安倍首相は少し前までは折に触れて、アベノミックス政策のお蔭で有効求人倍率が高くなっていると誇っていたが、人手不足の弊害が目立ってきたからであろうか、最近では余り聞かれなくなった。

日本は、少子高齢化で当面生産人口が低下する一方であり、片や日本人の働き過ぎが問題となっている。「働き方改革」関連法案が今国会で成立すれば、長時間労働の是正に向け、来年4月から大企業に残業時間の上限規制が適用され、人手不足状態が加速される。

これを補うために労働生産性の向上が叫ばれているが、これまでのしきたりもあり簡単には解決できない。そこで、手っ取り早い解決法が外国人労働者の受け入れとなる訳だ。

これまで、外国人労働者の受け入れは、主として技能実習制度によっており、日本で習得した技術を本国に持ち帰り、自国の発展に役立ててもらうとの高尚な目的の下になされていたが、労働力不足に追い付かず、単純労働まで広げようとの転換である。

新制度は、日本人の就労希望者が少なく、慢性的な人手不足に陥っている・建設・農業・宿泊・介護・造船の5分野を対象に、新設する「特定技能評価試験」に合格すれば就労資格を得られるようにするとの内容である。

こうした分野ではこれまで便法として技能実習制度を使った事実上の就労が広がっていたが、現実との齟齬が目立ち、真正面から労働者として受け入れることにしたのだ。今年秋の臨時国会で法律を改正し、2019年4月から実施したい考えだという。

また、就労期間に関しても変更があった。技能実習生として最長5年滞在した後、新たな就労資格を得れば、10年にわたって滞在できるようになるとのことだ。ただし、移民政策とは全く異なる。移民政策とは、外国人に日本国籍を与え日本人と同様に処することであろうが、技能実習生には永住権は無く、家族の帯同も認められない。

しかし、移民政策でなくても、企業からすれば長期雇用が実質的に可能になり、技術やノウハウの教育に力を入れられる。また、大学を卒業した高度人材の日本での就職も後押ししていく方針で、日本の職場に本格的に外国人が流入してくることになりそうだ。

制度の内容を現実に合わせ、どんどん変えていくのが日本のやり方だ。世界の経済はグローバル化がなされる一方、それとは反対のトランプ大統領を始めとする保護主義政策で、世界の経済は今後どのように変わるか予想できない。しかし、今の経済状態が続けば、技能実習制度は実質的な移民政策に変貌していかざるを得ないであろう。

今年1月1日時点での住民基本台帳に基づく総務省の人口調査で、外国人は249万7656人となり、前年より17万4228人増加したとの話 だ。都道府県別では熊本が17%と増加率が最も高いが、大規模農家による技能実習制度のためだそうだ。東京近郊の農家は既に技能実習制度により維持されているとのことであるが、いよいよ地方にまで広がっている。

新制度によって政府は2025年までに先述の5分野で50万人超の受け入れを目指すとしている。経済発展が著しい台湾やシンガポールでは外国人労働者の受け入れが盛んだという。日本もこれらの国と争って人材を確保するためには、現在の技能実習制度だけでは不十分で、移民政策に近づかざるを得ないであろう。2018.07.18(犬賀 大好-460)