日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

東京五輪は進むも退くも地獄が待ちかまえる

2021年05月15日 10時13分35秒 | 日々雑感
 2016年東京五輪招致の際の大会ビジョンは、「平和に貢献する大会」や「世界一コンパクトな五輪」であった。しかし、それらに代わる世界平和も東日本大震災からの復興もどこかへ消え、現在の「コロナに打ち勝った証しの五輪」も風前の灯である。コロナウイルスに翻弄され、外国からの観客を受け入れないことだけでも人類はコロナに負けた証であるが、今掲げるとしたら「コロナと共存する五輪」であろうか。

 政府は、コロナ対策では長期戦略を欠いたまま、その場しのぎの対応を繰り返し、菅首相はコロナが蔓延して中にあっても安心安全なオリンピックが開催できると、根拠の無い強気な姿勢を崩していない。恐らく太平洋戦争に突入したのもこんな竹やり精神状態ではなかったのではと思いめぐらす。

 橋本組織委員会会長は、元スケート選手であり”諦めなければ夢はかなう”とばかりスポーツ根性で頑張ってはいるがどこか冷静さもあり、無観客開催も覚悟しているようだが、中止の覚悟までは無いだろう。

 五輪開催までに2ヶ月と少しになり、コロナ感染の収束は見通せず、海外からの事前合宿の知らせも増えてきた。千葉県は12日、東京五輪でメダルが有力な米国陸上チームが県内で実施予定だった事前合宿を中止すると連絡があったと発表した。新型コロナウイルスの世界的流行が続き、今後も収束の見通しが立たない中で、選手の安全面に懸念が生じているためと説明しているという。

 無観客開催でも、選手や関係者を含めると10万人程度の人々が来日するとの話であり、その人々に対し毎日PCR検査等を行う等の計画らしいが、万が一関係者から感染者が出た場合、日本の現在の医療体制で対応出来るのであろうかと、多くの識者が懸念している。

 世界中から集まる選手は、自国でPCR検査を受けた後、来日してからも毎日PCR検査する等、何重にも関門を設けるようであるが、新たに設けられるこのシステムが始めから十分機能するとは言い切れない。人間の作るシステムは必ずどこかに欠陥があり、使いこなして完成するものだ。

 4月12日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、日本で新型コロナウイルス感染が収まらずワクチン接種も滞る中で東京五輪を開催するのは最悪のタイミングであり、日本と世界にとって”一大感染イベント”になる可能性があると伝えた、ようだが、あながち的外れでは無い。

 片や中止した場合、選手の失望が大きいことは想像に難くないが、政府は経済的な損失を考えるだろう。経済的損失は入場料の収入が無くなる等の直接的な損失の他に、観光客のお土産代等の波及効果もあるので、損額は4兆円~30兆円と幅広い。一般国民の生活に多大な影響を及ぼすだろう。

 新型コロナウイルスの感染拡大に関する対応と同時進行で東京五輪が開催された場合、日本の医療機関への経済的・人材的負担が増加することなどが考えらるが、上記の見積もりにはこうした内容は反映されていないようだ。東京五輪は強行開催でも、また中止するにしても、進むも地獄退くも地獄が待ちかまえるようだ。2021.05.15(犬賀 大好)