この10月は値上げラッシュの秋だ。世界的な天候不順や供給不足などが原因で、特に日々の食卓で使う食品の数々が値上がりしている。小麦粉、そば、コーヒー、マーガリン、食用油等であるが、この他ガソリンも大幅に値上がりしている。値上げの原因は天候不順や人手不足等が挙げられている。
天候不順は地球温暖化の影響と思われる異常気象の頻発が原因である。一方人手不足に関しては、コロナ後の景気回復期にある日本では余り聞かれないが米国や英国では深刻なようである。テレビでロスアンジェルス港の沖合に多数のコンテナー船が列を作って荷下ろしのために待機しているとの報道があった。荷揚げに関わる港湾労働者不足の影響との話だ。
さて、この値上げラッシュは消費者物価指数CPI(Consumer Price Index)に反映されているのであろうか。2013年3月、日銀が異次元の金融緩和策を実施する際、2年以内に消費者物価指数を2%まで引き上げると宣言した。しかし、2021年秋になっても、この目標が達成されたとの話はなく、日銀は相変わらず金融緩和政策を続行しているとのことだ。
消費者物価指数とは、消費者が購入するモノやサービスなどの物価の動きを把握するための統計指標であり、総務省が合計582品目を調べ、それらの値動きを毎月発表している。
総務省が10月22日発表した9月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年同月比0.1%上昇となった。この秋の食料品の値上げラッシュは9月の時点では時期的に早くて、反映されていないものと思われる。
さて、日本では原油価格の上昇が続く中、エネルギー価格は前年同月比7.4%上昇となり、このうち影響が最も大きい電気代は同4.1%上昇となったが、消費者物価指数(CPI)としては0.1%の上昇に過ぎないのだ。スマートフォン等の通信費が大幅に値下がりしており、平均的にはほとんど影響していないと言うことであろうか。
しかし、欧米でのCPIは既に3%を超えているとのことである。CPIの算出の元になる物品の種類が大幅に違っているとは思えないが、この差はどこから来るのであろうか。
インフレが続く米欧に比べれば、ようやくデフレ圏を脱したと思われる日本の物価上昇は鈍い。年金生活者の高齢者にとって有難いことであるが、経済全体から見れば思わしくない状況のようだ。
現在、日本銀行は目標の2%が展望できる状況にはないが、日本の経済全体が異次元金融政策にどっぷりつかって抜き差し出来ない状況に陥っているのでは無いかと懸念する。CPIが2%を越え、低金利政策を止めるとなると、日本が蓄積した1100兆円を超える借金への影響が計り知れないものとなるであろう。
今月末の衆議院総選挙で与野党とも国民に媚を打って金をばらまき、財源の有無はそっちのけである。財源はお札を印刷すれば問題無しとする政治家を信頼してよいだろうか。2021.10.27(犬賀大好ー758)