昨年2021年も北米や地中海沿岸等では大規模な山火事が起き、ドイツやベルギーでは豪雨で洪水が起き200人以上が死亡したそうだ。これも地球温暖化がもたらした異常気象の結果と思われる。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書では、2020年までの10年間の世界の平均気温はすでに1.09度上昇したとしており、地球温暖化は着実に進行している。
気温の上昇を産業革命以前より1.5度以下に抑えるには、2050年ごろまでに世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にしなくてはいけないとされており、日本をはじめ、ヨーロッパの国やアメリカなど多くの国がこの目標を掲げている。日本は、2020年10月に2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言したが、実現できる目途があっての話ではなく、先進国の勢いに押され仕方なく宣言したとの感が強い。
これに先立つ、2020年9月に、世界最大の二酸化炭素排出国である中国の習近平国家主席が、国連総会で ”中国は2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルを実現することを目指す”と宣言していた。中国が先進各国より10年遅れと言いながらも脱炭素化への決意を示したからには、国際協調上日本も従わざるを得ないのだ。
2050年カーボンニュートラルの実現は、産業部門の構造転換、イノベーションの創出といった幅広い取組が必要だ。経産省が作成したグリーン成長戦略には、再生エネルギー、水素発電や二酸化炭素を回収する火力発電の項目と並んで原子力の利用もある。原子力発電は温室効果ガスを排出せず、温暖化対策にはもってこいだが、放射能に関わる大問題がある。
東日本大震災時の東電福島第1原発事故は10年経っても溶け出した核燃料の所在もわからず、廃炉処理の目途が立っていない。また高放射性廃棄物を回収できたとしてもその処分法は決まっていないし、汚染ごみ等の低放射性物質ですらその最終処分場も決まっていない。更に、高速増殖炉 ”もんじゅ”の挫折で核燃料サイクルは破綻しており、核燃料の再処理工場の完成が間近と言うのに、そこで出来るプルトニウムの使い道も決まっていない。
原発には負の遺産が山済みであるのに、成長戦略には高速炉開発を着実に推進するとしており、2030年までに小型モジュール炉技術を実証するのだそうだ。2050年までにカーボンニュートラル達成は極めてハードルが高い目標だ。原子力の利用はその達成だけから見れば魅力的かもしれないが、負の遺産をそのままにして更なるリスクの上乗せは納得できない。これらの負の遺産にケジメをつけた上で次のステップに進むのが道理であろう。2022.01.12(犬賀 大好ー780)
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