20日に閉会式が行われた北京五輪で特に印象に残ったのは出場する選手の国代表としての国籍の分かり難さだ。国籍とは個人と特定の国家を法的に結びつける証であり、誰でもどこかの国の国籍を有している。
オリンピック選手もどこかの国の国籍を有し、その国の代表として出場している筈だ。その国の国籍を有するためには、両親がその国の国籍を有しておりその国で生まれることが一般的であるが、例外はいくらでもある。例えば両親が自身の国籍とは異なる地で子供を産んだ場合の生まれた子供の国籍や、国籍の異なる人同士が結婚した場合の国籍等、であるが国際的に決定されている訳では無く国によっても規定が異なる。
また、一度決定した国籍を変更することも可能である。帰化と言う制度であるが、基本的には本人の希望に基づき国家が国籍を付与する場合である。しかし、国際的に統一された法律では無く、定められた条件を満たせば帰化できる場合、定められた条件を満たす場合でもなお帰化の決定について行政機関に一定の裁量が認められる場合もある。
さて、北京五輪であるが、アイスホッケーの中国の今回のメンバーで帰化選手が男子代表25人のうち15人、女子代表では23人のうち13人であったそうだ。このような構成のチームで男女ともに成績が振るわなかった上、無観客試合であったため、中国国内でも盛り上がりに欠けていたようだが、もし有観客でメダル獲得でもした場合、国民の熱狂的な歓喜があり、国威発揚の場となっていただろうか。
オリンピックが”参加することに意義がある”の本来の趣旨を離れ、国威発揚の場と化したことが選手の職業化等の様々な問題を起こしており、今回のロシアの15歳少女のドーピング問題もその一つである。
法律的には同じ国籍を有する国の代表チームであるが、実質多国籍チームの場合、国威発揚の場とはなり得ないと思われ、行き過ぎた国威発揚が抑えられると思うと、これもありかなと思う。
中国ではアイスホッケーは歴史が浅く、選手がいなかったためこのような構成を取らざるを得なかったのであろうが、オリンピックは国代表の競争であることを考えると、複雑な思いとなる。
フィギュアスケートの男子シングルで優勝したネイサン・チェン選手は中国系アメリカ人であり、フリースタイルスキーのビッグエアで優勝した谷愛凌選手は米国出身であるが中国代表となっていた。元々はロシア代表としてジュニアの試合に出場していたが、国籍を変更し、アゼルバイジャン代表になっていた選手もいた。
このような傾向は益々大きくなると思うが、オリンピックが世界一を競う大会であるならば、国代表と言う規制を外し、何か別の出場条件を設けても良いのではないだろうか。2022.02.23(犬賀 大好ー792)
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