次期米国大統領候補として、民主党がヒラリー・クリントン氏に、共和党がドナルド・トランプ氏に決めた。CNNの最新調査(8月1日報道)では、トランプ氏は白人の56%から支持されており、クリントン氏の34%を引き離しているとのことだ。
トランプ氏はその過激で一方的な主張から共和党の主要な幹部からも見放されているが、相変わらず強気の姿勢を保ち人気が高いようだ。氏の主張は、失われた職業を取り戻し、米国を世界1にすると、単純明快である。かって製造業が栄えた米国中西部のペンシルベニア州、オハイオ州等は今や見る影も無いとのことであり、そこでの人気が特に高いとのことである。
そこで働いていた白人達には、不公平な貿易のため中国等に製造業を奪われたり、またメコシコ人等の不法移民に数少ない職業を奪われていると思われているようである。客観的に考えば、そんな単純な話ではないと理解出来そうであるが、米国人の半数近くが今もってダーウィンの進化論を信じていないらしいと聞くと、さもありなんとも思える。
クリントン氏は、指名受諾演説で次のような内容を語った。「大統領としての私の主要な任務は、ここアメリカで賃金の上昇を伴うよい仕事や機会をもっと生み出すことです。このために第二次世界大戦以来最大の投資法案を通します。それは製造業、クリーンエネルギー、テクノロジー、イノベーション、中小企業、インフラなどの仕事です。今、インフラに投資をすれば、今日の雇用を生み出せるだけでなく、将来の雇用の下地を作ることが出来ます。不公平な貿易協定にはノーと言うべきで、私たちは中国に立ち向かうべきで、鉄鋼業界や自動車業界の労動者や国内で育った製造業者を支援すべきと考えている人は私たちに加わってください。」
これらの主張にはサンダース氏の主張が色濃く取り入れられている。サンダース氏は民主党内で大統領候補を争った人であり、製造業の復活等の主張はトランプ氏と重なるところがある。サンダース氏は現在クリントン氏の応援に回っているが、その裏にはクリントン氏との政治的な妥協が成立したのであろう。しかし、サンダース氏を支持していた若者の一部は、トランプ氏の応援に流れるのではないかとの憶測もある。
一方、トランプ氏は、製造業の衰退が著しいオハイオ州で開かれた党全国大会で指名受諾演説を行った。相変わらずの米国第一主義を訴え、白人労働者から熱烈歓迎され、支持率は6ポイント上昇したとのことである。
しかし、肝心の共和党内部からの造反が相次ぎ、歴代の共和党政権を支えてきた元幹部50人も ”米国史上最も無謀な大統領になる” と警告し、共同署名で不支持の書簡を公表したとのことである。この状況に拘わらずトランプ氏が白人ブルーカラー層に人気があることは、米国政治の根底に潜むやりばの無い不満や不安の蓄積、そして一般国民と政治家の深い遊離を示している。
また、クリントン氏は公立大学の授業料無償化、医療保険の拡充等を公約に掲げているが、その財源は、ウォール街、企業、富裕層への増税を示唆している。それにも関わらず、投資家バフェット氏を始めとする米国の超富裕層もクリントン氏支持とのことだ。彼らもトランプ氏の無謀さを嫌ってのことであろうが、白人ブルーカラー層からすれば、既得権者の驕りと一層の反発を受けるかも知れない。
恐らく11月には、クリントン氏が新大統領に選出されるであろうが、クリントン氏は、サンダース氏の主張は当然、トランプ氏の主張も反映させる必要に迫られるであろう。日本に直接関係することは、直近ではTPPの批准である。日本で批准されても、米国で批准されない限りTPPは発効されない。オバマ大統領は任期の内に批准したいと考えているようであるが、クリントン氏は再交渉の必要性を唱えている。安倍首相は再交渉しないと強気であるが、米国の核の傘の下で強気の姿勢をいつまで保つことが出来るであろうか。
トランプ氏が大統領になれば核の傘を畳むかも知れないし、クリントン氏がなっても日本へ要求は強まるとの観測であるが、野放図なグローバリゼーションや、経済格差社会を見直す動きの始まりとなれば幸いである。
2016.08.13(犬賀 大好-259)
トランプ氏はその過激で一方的な主張から共和党の主要な幹部からも見放されているが、相変わらず強気の姿勢を保ち人気が高いようだ。氏の主張は、失われた職業を取り戻し、米国を世界1にすると、単純明快である。かって製造業が栄えた米国中西部のペンシルベニア州、オハイオ州等は今や見る影も無いとのことであり、そこでの人気が特に高いとのことである。
そこで働いていた白人達には、不公平な貿易のため中国等に製造業を奪われたり、またメコシコ人等の不法移民に数少ない職業を奪われていると思われているようである。客観的に考えば、そんな単純な話ではないと理解出来そうであるが、米国人の半数近くが今もってダーウィンの進化論を信じていないらしいと聞くと、さもありなんとも思える。
クリントン氏は、指名受諾演説で次のような内容を語った。「大統領としての私の主要な任務は、ここアメリカで賃金の上昇を伴うよい仕事や機会をもっと生み出すことです。このために第二次世界大戦以来最大の投資法案を通します。それは製造業、クリーンエネルギー、テクノロジー、イノベーション、中小企業、インフラなどの仕事です。今、インフラに投資をすれば、今日の雇用を生み出せるだけでなく、将来の雇用の下地を作ることが出来ます。不公平な貿易協定にはノーと言うべきで、私たちは中国に立ち向かうべきで、鉄鋼業界や自動車業界の労動者や国内で育った製造業者を支援すべきと考えている人は私たちに加わってください。」
これらの主張にはサンダース氏の主張が色濃く取り入れられている。サンダース氏は民主党内で大統領候補を争った人であり、製造業の復活等の主張はトランプ氏と重なるところがある。サンダース氏は現在クリントン氏の応援に回っているが、その裏にはクリントン氏との政治的な妥協が成立したのであろう。しかし、サンダース氏を支持していた若者の一部は、トランプ氏の応援に流れるのではないかとの憶測もある。
一方、トランプ氏は、製造業の衰退が著しいオハイオ州で開かれた党全国大会で指名受諾演説を行った。相変わらずの米国第一主義を訴え、白人労働者から熱烈歓迎され、支持率は6ポイント上昇したとのことである。
しかし、肝心の共和党内部からの造反が相次ぎ、歴代の共和党政権を支えてきた元幹部50人も ”米国史上最も無謀な大統領になる” と警告し、共同署名で不支持の書簡を公表したとのことである。この状況に拘わらずトランプ氏が白人ブルーカラー層に人気があることは、米国政治の根底に潜むやりばの無い不満や不安の蓄積、そして一般国民と政治家の深い遊離を示している。
また、クリントン氏は公立大学の授業料無償化、医療保険の拡充等を公約に掲げているが、その財源は、ウォール街、企業、富裕層への増税を示唆している。それにも関わらず、投資家バフェット氏を始めとする米国の超富裕層もクリントン氏支持とのことだ。彼らもトランプ氏の無謀さを嫌ってのことであろうが、白人ブルーカラー層からすれば、既得権者の驕りと一層の反発を受けるかも知れない。
恐らく11月には、クリントン氏が新大統領に選出されるであろうが、クリントン氏は、サンダース氏の主張は当然、トランプ氏の主張も反映させる必要に迫られるであろう。日本に直接関係することは、直近ではTPPの批准である。日本で批准されても、米国で批准されない限りTPPは発効されない。オバマ大統領は任期の内に批准したいと考えているようであるが、クリントン氏は再交渉の必要性を唱えている。安倍首相は再交渉しないと強気であるが、米国の核の傘の下で強気の姿勢をいつまで保つことが出来るであろうか。
トランプ氏が大統領になれば核の傘を畳むかも知れないし、クリントン氏がなっても日本へ要求は強まるとの観測であるが、野放図なグローバリゼーションや、経済格差社会を見直す動きの始まりとなれば幸いである。
2016.08.13(犬賀 大好-259)