日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

トランプ人気は日本へも影響を与える

2016年08月13日 09時25分26秒 | 日々雑感
 次期米国大統領候補として、民主党がヒラリー・クリントン氏に、共和党がドナルド・トランプ氏に決めた。CNNの最新調査(8月1日報道)では、トランプ氏は白人の56%から支持されており、クリントン氏の34%を引き離しているとのことだ。

 トランプ氏はその過激で一方的な主張から共和党の主要な幹部からも見放されているが、相変わらず強気の姿勢を保ち人気が高いようだ。氏の主張は、失われた職業を取り戻し、米国を世界1にすると、単純明快である。かって製造業が栄えた米国中西部のペンシルベニア州、オハイオ州等は今や見る影も無いとのことであり、そこでの人気が特に高いとのことである。

 そこで働いていた白人達には、不公平な貿易のため中国等に製造業を奪われたり、またメコシコ人等の不法移民に数少ない職業を奪われていると思われているようである。客観的に考えば、そんな単純な話ではないと理解出来そうであるが、米国人の半数近くが今もってダーウィンの進化論を信じていないらしいと聞くと、さもありなんとも思える。

 クリントン氏は、指名受諾演説で次のような内容を語った。「大統領としての私の主要な任務は、ここアメリカで賃金の上昇を伴うよい仕事や機会をもっと生み出すことです。このために第二次世界大戦以来最大の投資法案を通します。それは製造業、クリーンエネルギー、テクノロジー、イノベーション、中小企業、インフラなどの仕事です。今、インフラに投資をすれば、今日の雇用を生み出せるだけでなく、将来の雇用の下地を作ることが出来ます。不公平な貿易協定にはノーと言うべきで、私たちは中国に立ち向かうべきで、鉄鋼業界や自動車業界の労動者や国内で育った製造業者を支援すべきと考えている人は私たちに加わってください。」

 これらの主張にはサンダース氏の主張が色濃く取り入れられている。サンダース氏は民主党内で大統領候補を争った人であり、製造業の復活等の主張はトランプ氏と重なるところがある。サンダース氏は現在クリントン氏の応援に回っているが、その裏にはクリントン氏との政治的な妥協が成立したのであろう。しかし、サンダース氏を支持していた若者の一部は、トランプ氏の応援に流れるのではないかとの憶測もある。

 一方、トランプ氏は、製造業の衰退が著しいオハイオ州で開かれた党全国大会で指名受諾演説を行った。相変わらずの米国第一主義を訴え、白人労働者から熱烈歓迎され、支持率は6ポイント上昇したとのことである。

 しかし、肝心の共和党内部からの造反が相次ぎ、歴代の共和党政権を支えてきた元幹部50人も ”米国史上最も無謀な大統領になる” と警告し、共同署名で不支持の書簡を公表したとのことである。この状況に拘わらずトランプ氏が白人ブルーカラー層に人気があることは、米国政治の根底に潜むやりばの無い不満や不安の蓄積、そして一般国民と政治家の深い遊離を示している。

 また、クリントン氏は公立大学の授業料無償化、医療保険の拡充等を公約に掲げているが、その財源は、ウォール街、企業、富裕層への増税を示唆している。それにも関わらず、投資家バフェット氏を始めとする米国の超富裕層もクリントン氏支持とのことだ。彼らもトランプ氏の無謀さを嫌ってのことであろうが、白人ブルーカラー層からすれば、既得権者の驕りと一層の反発を受けるかも知れない。

 恐らく11月には、クリントン氏が新大統領に選出されるであろうが、クリントン氏は、サンダース氏の主張は当然、トランプ氏の主張も反映させる必要に迫られるであろう。日本に直接関係することは、直近ではTPPの批准である。日本で批准されても、米国で批准されない限りTPPは発効されない。オバマ大統領は任期の内に批准したいと考えているようであるが、クリントン氏は再交渉の必要性を唱えている。安倍首相は再交渉しないと強気であるが、米国の核の傘の下で強気の姿勢をいつまで保つことが出来るであろうか。

 トランプ氏が大統領になれば核の傘を畳むかも知れないし、クリントン氏がなっても日本へ要求は強まるとの観測であるが、野放図なグローバリゼーションや、経済格差社会を見直す動きの始まりとなれば幸いである。
2016.08.13(犬賀 大好-259)

金融のグローバル化と経済格差の拡大

2016年08月10日 09時47分22秒 | 日々雑感
 約10年前の2007年、当時の日銀福井総裁は講演で”金融グローバル化は、長い目でみて世界の経済成長にプラスの貢献を果たすものと考えらる”と発言した。金融グローバル化とは、大雑把に言えば、資金が国境を越えて瞬時に動くようになった事であろう。同講演で、総裁はグローバル化の特徴は、第一に国境を超えた莫大な資金の流れであり、第二はそこに参加する者の多様化、資金流れの多様化、と指摘した。

 従来からの多国籍企業や金融機関の活動に加え、90年代にはヘッジ・ファンドが登場し、その後、素人には簡単には理解できない数々のファンドも登場した。資金の流れの多様化は、債券や株といった従来の金融商品に加えて、先物、オプションなどの金融派生商品、あるいはCDO、CLOといった証券化商品がある、との説明であるが、何のことかよく理解できない。兎も角、資金は色々な形で変幻自在に瞬時に世界を駆け巡るといったことであろう。

 このような金融のグローバルが急激に進んだのは、それを理解する者にはそのメリットを最大限に利用できるからであろう。しかし、その仕組みを理解し、利用することは容易でない。また、動く資金も膨大で、素人は簡単には参加できない。その結果、富の集中、すなわち経済格差が大きく進行したことは感覚的にも理解できる。

 日銀元総裁は、金融グローバル化の長所のみを述べたが、ここに来て、その欠点が顕著に現れてきた。その一つが、各国でのナショナリズムの風潮が高まってきたことである。ナショナリズムの台頭は、イスラム諸国の政情不安定等の影響もあるだろうが、金融のグローバル化により経済のグローバル化が急激に進み、経済格差の拡大したことが最大の原因であろう。

 共和党の次期大統領候補トランプ氏の主張、民主党候補であったサンダース議員の主張、英国のEU離脱の主張には、共通して自国産業の衰退がある。鉄鋼業等の製造業は、中国を始めとする新興国に移り、多くの労働者が職を失った。自国産業の衰退は、金融のグローバル化が強力に推し進めたのは間違いないだろう。ナショナリズムの台頭は、保護貿易主義を招き、各国間の利害の衝突となり、強いては武力の衝突、すなわち戦争へと進みかねない。これは歴史の教えるところである。

 金融のグローバル化は日銀前総裁の言うように世界の経済の発展には役立ったかも知れないが、その発展を余りにも急激に推し進めてしまったのではなかろうか。経済の自由化、グローバル化に伴う世界の産業構造の変化は止められないが、その変化の急激さに一般大衆はついていけない、いや政治家もついていけないのだ。そこで、その負の影響が顕著になってきたのだ。

 しかも、金融のグローバル化は経済格差の拡大化を連れてくる。現在の金融システムの複雑さ、金の流れの複雑さ、が余りのも大きいため、それをうまく利用しているのは一部の経済通であり、全体を理解できる政治家が居ないため野放図になっているのではないだろうか。

 野放図の一端が今年始めのパナマ文書であろう。その公開の結果、4月始めにはアイスランドの首相が辞任に追い込まれた。世界のあちこちにはタックスヘイブン(租税回避地)と呼ばれる、税金がかから無かったり、極めて安い国がある。そこに名目だけの会社を作り、自国で払うべき税金を逃れる手法があるらしい。

 今回、流出したパナマ文書というのは、そのペーパーカンパニーを設立したり管理している法律事務所の顧客情報なので、これを見れば、誰がタックス・ヘイブンに偽りの会社を作り、税金逃れをしていたかが一目瞭然なのだそうだ。

 しかし、現在の法体系では必ずしも違法では無いとのことで ”大した情報ではない”との見方も金融関係者の間では根強い。パナマ文書に記載された名前は、報道した国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)も認める通り、大半は合法な用途で使ったとみられている。金融業界のプロは ”悪事を隠す方法はいくらでもある"として、パナマ文書以上に深い闇の存在を指摘している。

 金融のグローバル化の弊害は経済格差とナショナリズムを伴って、世界に蔓延している。政治は金融のグローバル化についていけなかったといって、経済をシンプルな国家単位の時代に戻せるであろうか。
2016.08.10(犬賀 大好-258)

国民投票の是非を考える

2016年08月06日 09時49分03秒 | 日々雑感
 英国のキャメロン前首相は、欧州連合(EU)離脱という大きな課題に対して、国民投票という直接民主主義的な手法に政治的運命を賭けた。その結果、前首相の意に反する離脱派が過半数を占め、自身は首相退任に、世界の経済は一時期大混乱に陥った。本来は、総選挙といった間接民主主義が培ってきた合意形成策や、挙国一致内閣で対処すべきであったとのマスコミの論調が強い。その主張の根拠は、一時の興奮に流されない慎重な対応がなされるべきとの考えであろうが、国民は無知であり、指導者は自分のことしか考えていないとの認識もある。

 EU離脱の要求は、英国に押し寄せる移民が職を奪う等の反発と共に、英国の運命を英国ではなくEUのエリートが決定しているとの反発から生じたようだ。

 キャメロン首相が率いた残留派は、離脱すれば経済に大きな打撃を受けるとして国民の支持を求めたが、ボリス・ジョンソン元ロンドン市長や、英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首は” 離脱によって、国の主権を取り戻そう” とアピールした。国の主権を取り戻そうとの主張は、次期米国大統領候補のトランプ氏にも当てはまり、その単純明快さから国民受けはすこぶる良いようだ。

 EUは、第2次世界大戦以前、ヨーロッパ各国に戦争が絶えなかったことの反省から、一つの共同体としてまとまるべきとの理念から結成された。EUの本部はベルギーのブリュッセルに、欧州議会はフランスのストラスブールに、といったように分散して設置されている。欧州議会の代議員は直接普通選挙によって選出されるが、EUの政策執行機関である欧州委員会は多数の国を管理するために官僚組織が肥大化し、各国の独自の意見が反映されない官僚主義が主流となり、EU懐疑感情が強くなってきたとの背景があるようだ。

 EU離脱という大問題に直接国民の声を聴くことは、さすが民主主義の国英国ならではと思っていたが、どうもそうではないらしい。マスコミの論調は、選挙で選ばれた代議員が熟慮を重ね、決定すべきであったとの論調である。確かに、国民投票は一部指導者の過剰な宣伝に踊らされ、感情に流される欠点も現れる。特に最近発展が目覚ましいSNSの影響は、いろいろな意見をあまたに広げる役目より、一部の過激な意見で興奮状態を引き起こす役目の方に強く出ていたようだ。

 また投票結果はEUへの拒絶と同時に、支配階級層に対する拒絶も意味しているとの指摘もある。EU統合による各国の利害の直接衝突回避の理想は実現されているかも知れないが、特に経済面で利益を受けているのは支配階級層で一般国民には職の喪失との欠点しか実感されないようだ。残留派が離脱すれば経済に大きな打撃を受けるとして離脱反対を声高に叫んでも、損失を被るのは支配階級であり、自分達には関係ないと感じたのであろう。

 前述のように英国では、一時の興奮状態で離脱が決まったとの論調が強い。しかし、EU離脱の議論は、前からある。EU残留か離脱かを問う国民投票の実施を、キャメロンと与党保守党が2015年総選挙の公約として掲げたのは、その2年前の2013年だった。その間、政治家は何をやっていたのだろう。今回の国民投票で国論を2分することになったとの主張もあるが、3年以上前から既に2分されていたのだ。キャメロン前首相は、国会でまとめ切れないので国民投票との手段に訴えただけだ。

 さて、日本においては今回の参議院総選挙で改憲勢力が国会で2/3以上となり、憲法改正発議が可能になった。近い将来国民投票が実施されるかもしれない。国民投票の結果、英国と同様な事態に陥らないであろうか。

 日本の小選挙区で選出された代議士は、その地区でわずかな差でも一位になれば選挙民全体を代表することになる。議員は自分の信念あるいは自分の利益になるように主張し、皆の意見を公平に扱わない。従って、国会で議論を重ねるとしても、選挙民全体の意見の反映とはならないであろう。従て、国民投票が国の一大事を決める最善の方法となろう。問題は、戦争勃発等の国際情勢の変化や巧みな演説に踊らされ興奮状態に陥った時である。国会議員は国民が興奮状態で判断しないよう、客観的な情報を提供しなくてはならないが、期待してよいであろうか。
2016.08.06(犬賀 大好-257)

孫社長のIoT戦略を考える

2016年08月03日 09時17分59秒 | 日々雑感
 ソフトバンクの孫社長は、世界的な半導体設計会社の英アーム(ARM)・ホールディングスを約3.3兆円で買収すると今月18日発表した。”今はInternet of Things(IoT)という大きな変化の入り口。アームは爆発的に伸びる”と言い、5~10年後には安い買い物だったと理解してもらえると自信の程を示した。

 IoTとは、あらゆる"モノ"に各種センサーを付けてその状態をインターネットを介しモニターしたり、インターネットを介し"モノ"をコントロールしたりすることにより安全で快適な生活を実現しようとすることである。従来主にパソコンやサーバー、プリンタ等のIT関連機器が接続されていたインターネットに対し、それ以外の様々な"モノ"も接続するようにした、未来社会の形態である。

 例えば、自動車の自動運転を考える。自動運転される車は、インターネットを介し、近くを走る車の存在、速度、方向などを知り、安全な速度、車間距離を保って走行する等である。家庭内での適用は、自己の体調を計測し、食事内容を冷蔵庫に保管される食材と照合し決定する。食材が不足する場合は、インターネットを介し、近くの食材店に発注し、ドローンで配達してもらう。

 少々漠然とはしているが、IoTにより便利な世界が実現されそうな気がしてくる。しかし、現在の社会は様々な問題を抱えている。国内面でもエネルギー問題、食料問題、少子高齢化問題、財政問題など、考え始めたらきりが無い。IoTはこれらの問題を解決するのに、役立つであろうか。IoTによる車の自動運転は高齢化社会に役立つ反面、社会の安全性が一番の懸念材料である。すべての”モノ”が情報で繋がる社会においては、どこか一か所の不具合が全体に影響を与える懸念がある訳である。極端な場合、社会全体がテロリスト等の独裁者に支配される心配も出てくるわけである。

 さて”モノ”の状態を検知したり、”モノ”を制御したりするためにはすべてマイクロプロセッサ(MPU)が使用されるだろう。最近の電気機器にはMPUが数多く使用される。MPUを作るためには、基本設計、製造設計、製造、検査等、多くの工程を経る。ARM社は半導体メーカーではあるが、この会社自体は「MPUの規格」を作るだけで、製造、販売はしていない。ARM社はMPUコアの基本設計(アーキテクチャー)だけを担当し、それを管理して利益を上げるというビジネスを展開しているのだ。

 MPUはメモリ、レジスター、入出力インターフェース回路等の要素から構成されるが、どのような要素をどのくらいの規模でどのように配置するがアーキテクチャーであり、ARMのMPUは低コスト、低消費電力などのユニークな特徴から大当たりし、スマートフォンの95%、デジタル カメラの80%、すべての電子デバイスの35%で使用されているとのことだ。今、爆発的に人気があるポケモンGoのゲームを動かしているMPUも恐らくARMのアーキテクチャが使用されていることだろう。

 孫社長はここに目を付けたのであろう。日本人による買収を、英国のメイ首相もEU離脱に拘わず、これまで通り国際的な投資先として魅力がある明確な証拠です、と買収を歓迎したようだ。日本であれば、日本の大企業が外国企業に買収されたと大騒ぎになるであろうが、さすがに金融大国の長との感もする。

 しかし、一方ではARMの限界を見据えた判断とも思える。あらゆる”モノ”を接続するとの時代の流れは間違いないであろう。しかし、新しいアイデアがどんどん生み出され、新しい概念が創造される世界である。すでに大企業になった組織は成功体験にとらわれ、新しいアイデアが生み出され難い特性を有することはよく指摘される。ここにARMの一片の危惧がある。

 世界は自由主義経済によるグローバライゼイションの欠点が顕著になり、ナショナリズム、保護貿易主義の台頭などが目立ってきた。5~10年後に社会がどのように変化しているだろうか。孫社長の思惑があたり、世界一の企業になっているかも知れないが、忘れ去られているかも知れない。
2016.08.03(犬賀 大好-256)