日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

原発事故の汚染水処理問題は信頼問題

2021年04月10日 09時27分23秒 | 日々雑感
 10年前、東日本大震災時に起こった東電福島第1原発事故の後始末が一向に捗らない。廃炉計画では今年2月28日、ようやく3号機の使用済み核燃料566体を取り出す作業を完了したとの発表があったが、1号機や2号機にはまだ多数の燃料棒が残る。事故から10年目でこの有様である。

 燃料棒の取り出しより遥かに困難な作業はデブリの撤去であるが、未だデブリのある場所すらはっきり分かっておらず、当初の事故から40年で廃炉完了とは夢の夢であろう。ところで廃炉作業より技術的には簡単と思われる、汚染水や汚染土の処分法、核ゴミの処分法に関しては政治的な問題が絡み、先送りが目立つ。

 第1原発の敷地内に設けられたタンクにたまり続けている汚染処理水の処分を巡り、菅首相は今月7日、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸会長と首相官邸で会談した。岸氏によると、菅首相からは、処理水の処分は海洋放出がより現実的という有識者による政府小委員会の報告書を踏まえ、海洋放出処分に理解を求めたそうだ。

 東日本大震災で破損した原子炉の冷却水等の汚染水は各種放射性物資を取り除く処理が施されるが、トリチウムだけは残りそのためタンクに一時保管されているが、タンク増設も来年には限界が来るとのことで、タンクの水の処分を急いで決めなくてはならない状況なのだ。

 3月6日、菅首相は福島を訪れ、汚染水の処理法いつまでも決定せずに先送りすべきではなく、適切な時期に政府が責任をもって処分方針を決定する、と宣言したが、全漁連会長との会談もその一環であろう。これまで地元漁業組合との話し合いは何度かなされているようだが、埒が明かない為、組合の上部組織に話を持ち込み、政治的圧力を強めたのであろう。

 岸氏は放出反対の姿勢を崩さなかったものの、海洋放出を前提にする場合は国民への丁寧な説明や風評被害の対策をすることなどの要望をしたそうだ。汚染水の安全性に関しては、専門家も問題ないと判断しているようだが、それ以上の問題は風評被害であり、現時点ではいくら安全と政府が言ったところで、政府の信用がないため、効き目がない。

 増え続ける処理水の扱いを巡る議論が始まって7年以上になるが、地元には漁業などへの風評被害を懸念する声が絶えず政府は問題先送りに明け暮れていた。処理水を海水で薄め、トリチウムを基準の40分の1以下にするが、それでも風評被害は無くならない。風評被害は心の問題であり、東電や政府が信頼出来ないことが根本にある。

 東電が再稼働を目指す新潟県の柏崎刈羽原発では、去年3月以降、テロリストなどの侵入を検知する複数の設備が壊れ、その後の対策も十分機能していなかったこと等が明らかになった。東電は原発の安全神話にまだどっぷり浸かっているのか、あるいはやる気をすっかり無くしているのか、この無責任さである。

 菅首相の抱えている問題は、原発事故の後始末だけではなく、コロナウイルス対策もあるが、ここでも厚労省職員の深夜まで飲食店で送別会の体たらくに足を引っ張られる。首相は官僚の人事権掌握で辣腕を振ってきたそうだが、直接の人事権が及ばないところでは全く信頼されていないようだ。2021.04.10(犬賀 大好ー693)

コロナウイルス感染のリバウンドは前から分かっていた筈だが

2021年04月07日 10時24分12秒 | 日々雑感
 大坂府は昨日6日、過去最多となる719人が新型コロナウイルスに感染していたと発表した。吉村府知事はコロナ感染では国に先駆けて諸々の対策を行い、東京都と周辺3県の3月21日の緊急事態宣言解除に先立ち、大阪府等では2月28日に解除できたのもその成果と思っていたが、既にその頃から感染者数が増大し始め、現在第4波の感染拡大が起こっているのだ。原因は緊急事態宣言の解除による気の緩みにお花見気分が、更に大阪人特有のおおらかさが重なった為であろうか。

 菅首相は1都3県の緊急事態宣言解除後の対策として5本の柱を宣言した。その中で、”感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査を行い、無症状者に繁華街などで幅広く行う検査を4月には1日5千件規模に拡大し、高齢者施設などへの集中的な検査も今月末までに3万カ所で行う、と宣言したが、首相の真意をどうも周辺は余り忖度していないようだ。

 これまで官僚の政治家に対する忖度が度を越し、諸々の不祥事を起こしてきた。森・加計学園問題に始まり、最近では総務省の菅首相の息子が関係する接待問題など、枚挙に暇がない。

 この件でも首相の考えが即官僚に広がり戦略的な検査が本格的に始まると期待していたが、忖度するのは高級官僚だけで下へ行く程首相の考えなどどこ吹く風のようである。前述の首相の戦略的な検査とは中身が具体的で無かったが、具体化するのは官僚や事務方の役目と思っており余り気にも留めなかったが、どうも厚労省の実務者はコロナウイルスそのものを余り気に留めていないようだ。

 厚労省老健局老人保健課の職員23人が先月24日に東京・銀座の居酒屋で深夜まで送別会を開いていたことを明らかなったのだ。新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が21日で解除された後も、都内の飲食店には午後9時までの営業時間短縮要請が続いていた。その最中、職員は午後11時まで営業していることを確認した上で会場を予約していたそうだ。政府が新型コロナウイルス対策として大人数の会食自粛を呼び掛ける中、お膝元の厚労省職員23人が深夜まで宴会を開いていたと言うから、その無神経さに呆れる。

 このような無自覚さが、コロナ感染問題自体にまで広がっていると思うと、戦略的検査など頭の片隅にも無いと心配になる。国会で野党は田村厚労相の監督責任を含め、国会で追及する方針だそうだが、政治家の中でも無自覚な行動が広がており、官僚だけに責任を負わせるのも酷な気がする。

 コロナウイルスのリバウンドは大阪のみならず全国各地で見られる。感染者が増えたり減ったりする傾向は、コロナワクチンが全国民の過半数に行き渡るまで続くと思うが、そこでの一番の懸念材料は、感染者の急増による医療崩壊である。

 大阪府内では5日時点で、重症患者用病床運用率が84.1%に達し、医療崩壊の可能性がある状況になりつつあると、吉村知事が嘆いているが、この予想は随分前から多くの識者が指摘していたことである。吉村知事でも何らかの対策が打てなかったのであろうか。2021.04.07(犬賀 大好ー692)

一年前のブログ記事を振り返って

2021年04月05日 14時52分08秒 | 日々雑感
 昨年4月始め”東京五輪の1年延期より中止の方が適切”と題するプログを公開した。例え1年後であってもコロナウイルスは終息していないと予想されるので、東京五輪は中止した方が良いとの内容であった。

 五輪の開催日を8月23日と間違えていた点以外大方悲観的な予想は合っていたが、更に言えばもっと悪い方向に外れている。例えば、希望通りワクチンや特効薬が開発されて先進国における蔓延が終焉したとしても、開発途上国にまで行き届いているか懸念される、と記した。1年後の現在特効薬は開発されず、ワクチンはファイザー社等のワクチンがようやく広く接種され始めているが供給不足が目立っており、先進国における蔓延は一向に収まっていない。

 厚労省によると、3月31日時点で日本では、まだ1回目の接種人数は人口の1%にもならないそうだ。世界的には、1回目の接種を受けた人口はイスラエルが全体人口の60%、英国が40%、米国が30%、欧州連合(EU)が10%程度で、日本は大きく遅れを取っている。接種率が一番高いイスラエルでも完全に経済が再開された訳ではなく、要注意状態が続いているようだ。

 東京五輪の外国人観客の参加を認めず、また関係者の参加もかなり制限するとのIOCの方針が打ちされているが、一方では国内の聖火リレーが始まり、中には無観客の聖火リレーも行なわれたようであり、何が何でも開催するようだ。

 先進国でのコロナ蔓延のニュースはよく聞くが、アフリカでの状況は余り報道されない。紛争などの影響で、アフリカには1800万人以上の難民や国内避難民がいるようだが、難民キャンプのように人が密集しているところで感染者が出れば、爆発的に広がることは容易に想像できる、と1年前に記したがこの状況は一向に改善されていないようだ。

 東京五輪開始までに4ヶ月を切り、今更中止には出来ないであろうが、世界での惨状を横目にお祭り騒ぎも出来ない。会場での日本人観客の人数制限はまだ決まっていないようだが、例え収容人数の半数に制限したとしても、マスク着用と大声声援は禁止されるであろう。

 今回の五輪は商売ファースト、選手ファーストの大会として歴史に残るであろう。2021.04.05(犬賀 大好-1年前を振り返って)

中国と日本はどこまで石炭火力発電を減らせるか

2021年04月03日 10時13分39秒 | 日々雑感
 今年の春は例年になく暖かく、高齢者には過ごし易い日が続くが、同時にこの夏の灼熱地獄が思いやられる。これも人類の経済活動による地球温暖化の影響と思うと情けなくなる。

 地球温暖化を招く温室効果ガスの代表は二酸化炭素(CO2)であるが、日本の排出量は11億3240万トンとのことであるが、どの程度のことか分からない。

 2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロ宣言をしているが、ゼロの状態とは人為的な排出量と森林等の吸収による回収量との間の均衡状態を指すが、環境庁の資料によれば現在の回収量は5590万トンとのことで、人為的排出の5%程度に過ぎず、実質の言葉を省略した方がよさそうである。

 さて、日本の排出量の世界ランキングは5位だそうで、1位は中国で日本の8.2倍、2位はアメリカの4.2倍、3位はインドの1.9倍、ロシアは1.4倍だそうだ。地球全体から見れば排出量の規制を中国に一番頑張ってもらいたいが、中国の人口は日本の10倍程度であるので、一人当たりでは日本の方が多く、中国ばかりを非難せず日本人も頑張らなくてはならない。

 それでも中国は2060年までに温室効果ガスの排出実質ゼロを宣言した。日本は2050年までのゼロ宣言であるが、10年遅れと言えどもゼロ宣言をしたからには今から本気で取り組んでもらいたいが、本気度を示すためか先日の全人代で2030年までに排出量を減少に転じさせるとの中間目標を設定した。

 しかし、現在中国では石炭火力の発電所の新設が相次いでいるそうだ。経済成長に伴う電力需要の増加、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ景気を回復させるため、安価で自給可能な石炭に頼っているとの話だ。どうも中国のゼロ宣言は外国向けの単なる宣伝の様な気もする。

 日本の現在の化石燃料発電への依存度が85.5%となっているそうで、この内石炭は、2018年度は30%程度であり、中国の化石燃料は69.7%と日本より低いが、この内石炭の割合はよく分からないが資源が豊富で安価な中国ではかなりのウェートを占めているだろう。

 中国では、2040年までに火力への依存を60%にして、太陽光発電や風力発電の再生可能エネルギー27%、原子力発電を7%程度にする計画のようだが、火力の大部分を占めると思われる石炭利用を2050年までにどこまで減らせるかは、国内経済事情によると思われ、国の内外に経済的な諸問題を抱える中国では実質ゼロは到底無理なような気がする。

 また、2019年末の段階で中国は風力、太陽光の設備容量は世界最多で、それぞれ日本の50倍と3倍の規模であり、この値を聞く限りでは日本の随分先を走っているような気になる。しかし、どうも国策による無理をした結果であるようで、今後は設備容量の拡大は企業に任せるとの話だ。同時に従来からの固定価格買い取り制度を縮小するそうで、頭打ちになることこと必須だ。

 今後は政府の役目は、送電線等のインフラ投資やスマートグリッドと呼ばれるIT技術や新しい発電方法を組み合わせた電力網の構築にあるとのことであるが、このあたりの事情は日本も全く同じである。

 日本も中国も石炭火力への依存度は高いが、石炭資源が豊かな中国の方が脱却がはるかに困難なような気がする。2021.04.03(犬賀 大好ー691)