日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

内部留保の増大に対する政府の取り組み

2023年10月11日 14時04分26秒 | 日々雑感
  今年の春闘では、賃上げ率は3.6%、中小企業においても3.2%と、30年ぶりの高水準となり、大企業における労働者1人あたりの賃金は611.3万円で前年度に比べ3.5%の増加だったそうだ。また、国の一般会計税収も大幅に増加しているそうだ。財務省が発表した2022年度の一般会計決算概要によると、国の税収は前年度比6.1%増の71.1兆円だったそうで、3年連続で過去最高を更新したようだ。企業業績が回復して法人税収が膨らんだほか、異常な物価高で消費税収が増えた結果だと言うことだ。一見、個人や企業の収入が増大し、万事目出度し目出度しとなる筈だ。

 しかし、総務省によると、先月8月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が2020年の平均を100として去年8月の102.5から105.7に上昇し、上昇率は3.1%となり、3%以上となったのは12か月連続だそうだ。このうち、生鮮食品を除く食料は9.2%上がり、生活に必須な食料品の大幅な上昇が続いているとのことで、実質賃金は減少し、庶民の暮らしは厳しくなっている。

 一方、財務省の発表した法人企業統計によると、2022年度の大企業の内部留保は511.4兆円と年度調査としては過去最高を更新した。前年度の484.3兆円から27.1兆円の増加であり、2023年度は恐らく過去最高を更新するだろう。

 このように企業で内部留保が積み上がった主因は企業の利益が大きく増加したためである。利益が増加したとしても、法人税や利益処分における配当金や従業員の給与の支払いに当てれば、内部留保の積み増しは抑制されることになる筈だ。そこで、近年の法人税等の支払い額を確認すると、2016 年度で18 兆円と、2012 年度から 2 兆円の増加に留まっており、税引き前当期純利益に占める法人税等の割合は大きく低下している。復興増税の終了や法人税率の段階的な引き下げが実施されたことで、企業の税負担が軽減された為と考えられる。

 一方、この間の企業の従業員に対する人件費の増加幅は限定的に留まっている。これは、最近の労働組合の弱体化により、組合員一人一人の要求が経営者側に伝わり難くなっているためであろう。欧米等でよく耳にする給与引き上げの為のストライキは日本では死語になりつつある。

 さて、現在、国は1千兆円を越える借金で財政難に喘いでいる。そこでこの膨れ上がった内部留保を政府は何とか利用できないかと考えているようだ。そこでこれに課税しようとしたが、企業は日本での利益計上を減らすため、海外へ本社や事業所・工場などを移してしまう懸念があるとのことだ。そうなると、日本の雇用や産業集積が損なわれるとして、企業は猛反対しており、政府も腰砕けの感である。

 企業は万一に備えて内部留保を増やしているのだろうが、企業が日本の将来の成長に 自信を持てるような財政健全化、少子化対策、人手不足への対応策、等の政策をしっかり立案、実行することが、政府の取り得る最善策であろう。2023.10.11(犬賀 大好ー953)

世の中景気が良い筈だが

2023年10月07日 10時43分10秒 | 日々雑感
 先日の連合の大会で岸田首相の挨拶で、今年の春闘では、賃上げ率は3.58%、中小企業においても3.23%と、30年ぶりの高水準となり、また、最低賃金も過去最高の引上げ幅で、全国平均1004円となり、1000円超を達成したと誇った。しかし同時に国民は、物価高に苦しんでいると、賃上げがあってもそれ以上に物価が上がっていることを認めた。

 総務省によると、先月8月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が2020年の平均を100として去年8月の102.5から105.7に上昇し、上昇率は3.1%となり、3%以上となったのは12か月連続となったそうだ。このうち、生鮮食品を除く食料は9.2%上がり、生活に必須な食料品の大幅な上昇が続いているとのことだ。

 日銀は7月28日、経済・物価情勢の展望リポートを公表した。生鮮食品を除く消費者物価指数の前年度比上昇率の見通しを2023年度は2.5%に上方修正した。しかし、海外経済の下振れリスクや資源価格の動向等で不確実性が高いため、2024年度は1.9%、25年度が1.6%で、数値上は政府・日銀が物価安定の目標とする2%付近が続くと見込んだ。

 また、日銀は物価上昇と共に賃上げを重視するが、展望リポートでは、物価や賃金が上がり難いことを前提とした慣行や考え方が根強く残り続ける限り、来年以降は賃上げの動きが想定ほど強まらず、従って物価も下振れる可能性がある、と指摘した。賃上げがされない為、物価上昇が持続しないと考えたのであろうが、先述の資源価格の動向等で不確実性が高いためとした言い訳はどこに行ったのか。

 実質賃金が低下しているのに、世の中景気は良いようだ。景気循環を知るために利用されている指数の代表的なものは、日銀短観だ。日銀が10月2日発表した9月の短観は、企業の景況感を示す業況判断指数が、大企業・製造業で前回6月調査から4ポイント改善のプラス9と、2四半期連続で改善した。エネルギー価格の下落や半導体不足の緩和が追い風となったそうだ。大企業・非製造業は4ポイント改善のプラス27.6四半期連続の改善で、1991年11月以来、約32年ぶりの高水準となったそうだ。これを見る限り世の中現在景気が良いようだ。

 それを裏付ける証拠に国の一般会計税収が大幅に増加しているそうだ。財務省が発表した2022年度の一般会計決算概要によると、国の税収は前年度比6.1%増の71.1兆円だった。3年連続で過去最高を更新したそうだ。企業業績が回復して法人税収が膨らんだほか、歴史的な物価高で消費税収が増えた。賃上げの動きが広がったことにより、所得税収も伸びているようだ。

 自民党の世耕参院幹事長は先日の記者会見で、物価高を踏まえた経済対策の裏付けとなる令和5年度補正予算案の規模について「少なくとも15兆円、できれば20兆円の対策が必要だ」と述べたそうだ。現在景気が良い筈だが、更に経済対策として最大20兆円の補正予算が必要と主張するとは、選挙対策としか思われない。国の借金が1200兆円を越えると言うのに、日本の将来を考えていない。2023.10.07(犬賀 大好ー952)

老朽化インフラも日本の負の遺産であるが

2023年10月04日 15時14分00秒 | 日々雑感
  国の借金である国債の発行残高は2023年度末には約1,068兆円に上ると見込まれ、地方政府の借金である地方債の発行残高の約200兆円を合わせるとその総額は約1300兆円となるそうだ。

 2,3年前までは、プライマリーバランスを黒字化する、すなわち歳出を歳入より低く抑えると言う財政健全化の掛け声はあった。その目標年度は度々先送りされたが、曲りなりにもその意識はあったが、近年その声すら聞こえてこない。達成不能な目標は立てない方がよいとの諦めであろうか。

 岸田首相の経済対策の5本の柱の中にも財政健全化の話は出て来ないどころか、景気浮揚と称するばらまき経済対策の話ばかりである。国の借金の増大は、負の遺産として子供達に残すことになり、子供達に明るい将来を示すことが出来ない。何が異次元少子化対策かと言いたい。

 さて、先日の内閣改造は政権の支持率向上につながらなかったことから、この経済対策を政権浮揚につなげ、それを機に、岸田首相は秋にも解散・総選挙を検討する可能性があるとのことだ。残念ながら選挙で国民受けするのはばらまきだ。9月末に期限を迎えたガソリン補助金、電気・ガス代補助金の年末までの期間延長を既に決めている。補正予算で赤字国債の発行で財源を確保したうえで、さらなる延長を検討しているとのことだ。今更膨大な赤字を更に増やしたところで問題無しとしているのだろう。

 さて、負の遺産は借金ばかりでない。全国の多くのインフラを高度経済成長期に一斉に整備した日本ではその老朽化問題が発生しているが、これも隠れた大きな負の遺産である。国土交通省は今後インフラの老朽化による悪影響が出はじめ、これらの保全には膨大なコストがかかるとしている。インフラに不具合が生じてから修繕を行う事後保全の方法で保全を行う場合、2048年までに10.9兆円~12.3兆円の維持管理・更新費がかかり、インフラに不具合が生じる前に修繕やメンテナンスを行う予防保全を実施した場合、2048年までにかかる維持管理・更新費は5.9兆円~6.5兆円と約47%も抑えることができると見積もられるそうだ。

 予防保全の方が半額で済み、こちらの方がよいと誰にも分るが、問題は資金だ。インフラの点検・メンテナンスは、限られた財源の中で少しでも多くのインフラを維持していくことが必要だが、インフラの種類、数は驚くほど多い。上下水道から公立病院まで、無数にある。限られた財源の中で少しずつやるしかないが、予防費用約10兆円も国の借金1000兆円からすれば僅か1%に過ぎず、逆に国の借金が如何に大きいかが分かる。

 この大きな借金も日銀がお札を刷れば問題が無いとほざく人もいる。確かに安倍政権下で異次元金融緩和と称してお金を刷り増ししたが、これまで大した問題が生じなかった。現在、超円安とか異常な物価上昇で世間が騒がしいが、これも異次元金融緩和の影響だと思われてならない。悪影響はこれから本番だろう。2023.10.04(犬賀 大好ー951)

人手不足対策は簡単ではない

2023年10月01日 10時04分01秒 | 日々雑感
 日本商工会議所は、今年7月18日から24日間、全国の中小企業を対象にアンケートを行い、3120社から回答を得た。それによると人手が ”不足している”と回答した企業が68%と前回の2月より3.7ポイント増え、2015年の調査開始以来過去最悪となったそうだ。この調査によるまでもなく、介護・看護、宿泊・飲食、運輸、建設の各業種で人手不足が深刻になっているとの話はよく耳にする。

 現在の日本は「人口減少」と「超高齢化社会」という2つの深刻な問題を抱えている。中でも、物流業界では2024年問題として深刻になっていることは以前から指摘されている。これは、働き方改革関連法によって来年2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されるからだ。労働人口の減少に伴う人材不足で長時間労働が常態化している現状を改善しよう言う訳だ。これにより労働環境は改善されるかも知れないが人材不足は相変わらずだし、物流コストが大幅に上昇するだけでなく、一部で貨物が運べなくなる事態が発生すると懸念されている。近年ネット通販が益々盛んになっているが、頼めば翌日配達等の便利さも無くなる恐れが出てくる。

 トラックドライバーだけではなく、バスの運転手やタクシーの運転手不足の話題もしばしばマスコミに取り上げられる。タクシー会社にドライバーがいない為遊んでいる車が沢山あるとか、外国人の運転手が働き始めたとか。また、バス路線の廃止や運転間隔を長くして運転手を減らしている等の話題である。

 先述の日本商工会議所の調査でも、人材確保への取り組みの為全体の72.5%の中小企業が賃金引き上げを、2割未満と少数ながらフレックスタイム制やテレワークといった多様で柔軟な働き方を推進しているが、人手不足は日本全体の問題であり、これらの工夫だけでは問題の解決とはならない。自動車の自動運転も話題にはなるが、当面解決策にはならない。

 日本の人口減少は今に始まったことではないが、岸田首相も人口を増やす必要性を待った無しの問題として認識しているようだが、日本の抱える課題は少子化対策だけではない。借金大国日本の財政問題、脱炭素等の気候変動対策、核廃棄物の処理法等の原子力政策、生成AI等のIT対策、ジェンダーフリー等枚挙に暇がない上、これらの問題は複雑に絡み合っているため、解決は容易でない。

 岸田首相は、先日の総合経済対策で、1)物価高から国民生活を守る、2)持続的賃上げ、所得向上と地方の成長、3)成長力につながる国内投資促進、4)人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革、5)国土強靭化など国民の安心・安全、を5本柱にする説明をした。しかし、これらの項目は抽象的で具体策は全く分からない。この内一つでも解決されれば内閣支持率は上がり、この秋にでもあると言われる総選挙に勝てるかも知れないが期待薄だ。2023.10.01(犬賀 大好ー950)