2016年9月19日
二晩目の添い寝。ソラの小さな静かな呼吸に安心して、アルコールの力も借りて、眠りにつく。
目覚めたのは、日付が変わったばかりのころ。ソラに変わりはない。二本の前足は揃えて、体の少し前に。後ろ足もそろえて、揃えて、少し後ろに伸ばしている。尻尾は少し垂れ気味に後ろに伸びている。顔はタオルを低い枕に、眼を半分開いた状態で、きれいで優しい表情のまま静かに寝入っている。何か考え事をしているように。
常夜灯のほの明かりの下で、そんなソラの表情を見続ける。ソラが、我が家に来てからのいろいろのことを思い出し、その時々の空の面影が、今のソラにダブる。わかっているのに、元気になってと小さな声をかける。まれに、前足と後ろ足を小さく前後に動かすような動作を見せることもあった。テラスを歩いているのだろうか、庭を跳ね回っているのだろうか。
時々、うつらうつらとしながらも、朝まで、ソラと一緒にいた。連れ合いが起きてきて、連れ合いと変わり、朝の家事を始める。連れ合いが、声をかけるとちゃんと答えるよ、と声をかけてきた。夜の間も何となくそんな感じはあったが、はっきりしなかった。ソラのところに行く。
二人で声をかけると、確かに小さく声も出し、心持目も大きく開き、足も前後に動かす。しばらくして、ネコが背中を地面にこすりながら右左にごろごろする動きをするように、前足と後ろ足を上げるが、今のソラには、数センチぐらい上げるだけの力しか残っていなかった。そして、また静かな呼吸をするだけに戻ってしまった。
連れ合いは、朝の動物たちの世話に、私は、朝の家事に戻り、時々様子を見続ける。
朝食が終わり、連れ合いは、少しの時間だが、ソラをテラスに出してやった。なんとなく、少し元気になったみたい、と連れ合いも、希望的な言葉を発する。
8時過ぎ、約束の籾摺りの準備のため、作業場に出る。
ソラの容態は変わらない。相変わらず、静かな呼吸をし、横たわっている。ずっとそばにいてみてやりたいが、そうもゆかない。作業場での作業や、育苗の種まきをしながら、出たり入ったり。
早めに引き上げようと、4時過ぎには片づけを始め、家に入る。コーヒーを入れて、ソラのそばに座り込む。相変わらず、静かだし、顔も穏やかだ。時々、手のひらを当てたり、さすったり。表情は変わらず、本当に気持ちよさそうに眠っているかのようだ。
しばらくして、ソラは、二度ほど、大きく深呼吸をするかのように、大きくおなかを上下させた。そして、前足と、後ろ足を、小さく前後に動かした。
こうして、ソラは、掛けていってしまった。
2016年9月19日 16時50分。ソラとの時は、止まった。
今思う、唯一の慰めは、ソラの寝姿に、ほとんど苦痛の様子がなく、静かに、穏やかに、きれいなままでいてくれたことだ。最後の最後まで。
火葬炉の前の最後の別れの時も。