「ふらんすへ行きたしと思へども/ふらんすはあまりに遠し」とうたったのは萩原朔太郎だったが、わたしの年代にとっても、事情は同じで、フランスはあまりに遠かったし、なによりも憧れだった。
ところが、最近は、フランスの若い世代が日本に憧れているらしい。アニメだとか、アイドルだとか、サブカル方面のことで。フランスを含む全地球的に、日本の文化が、懐古趣味やエキゾチズムを超えて、時代の先端のものとして受容されているということは喜ばしいことだ。これはこれで良いことに違いないが、隔世の感はある。
さて、この小さな大人向けの絵本のカバーには、次のようなことが記されている。
「ボルドー第二大学の富永敬俊博士はワインの香りの研究において世界に先駆け、今後の活躍を期待される日本人だった。しかし08年、博士は53歳の若さで急死してしまう。」この物語は、富永博士が石津ちひろ氏に託した「『きいろ』という名のことりをめぐる悲しくも美しいエピソード」である。
大学のキャンパスの小径のかたわらで拾った小さなきいろい小鳥が、氏の研究する白ワイン用のブドウ品種かつそれから醸造したワイン「ソーヴィニヨン・ブラン」の香りの解明に役立ったこと、もちろん、役立ったというよりもその前に、氏とその妻マリィの生活にあたかも天から授けられた子どものように幸福を与えたことが、ささめやゆきさんの、独特の、子どもの絵の様な無邪気な太い線で描かれた、そして、どこかフランスに似つかわしいと思わされる絵とともに物語られる。
博士と妻マリィの手で生命を救われた小鳥「きいろ」は、元気になってみるみる生長し、夏が近づくと、きいろの羽がどんどん落ちて、「青い鳥へと変身をとげる。/きいろは、メーテルリンクの『青い鳥』のモデル、メザンジュ・ブルーという小鳥だったのである。」
あの幸福の青い鳥。
もちろん、この青い鳥「きいろ」は、博士に幸福をもたらし、そして、死んでしまう。博士もまた、「きいろ」のおかげもあって、大きな業績を残し、そして、若く世を去る。美しくも悲しい物語である。
石津氏は、早稲田の仏文を出た後、フランスに留学されている。富永博士はその折からの友人であろうか。55年生まれということは、わたしとほぼ同年代(ひとつ年上)ということになる。フランスの思想やら文学やらを含めて広く浅く聞きかじったというレベルの、学識もなく経済事情にも恵まれなかったわたしの、フランスへの憧れを思い出させてくれるような、小さくて黄色い、美しい絵本である。
ところが、最近は、フランスの若い世代が日本に憧れているらしい。アニメだとか、アイドルだとか、サブカル方面のことで。フランスを含む全地球的に、日本の文化が、懐古趣味やエキゾチズムを超えて、時代の先端のものとして受容されているということは喜ばしいことだ。これはこれで良いことに違いないが、隔世の感はある。
さて、この小さな大人向けの絵本のカバーには、次のようなことが記されている。
「ボルドー第二大学の富永敬俊博士はワインの香りの研究において世界に先駆け、今後の活躍を期待される日本人だった。しかし08年、博士は53歳の若さで急死してしまう。」この物語は、富永博士が石津ちひろ氏に託した「『きいろ』という名のことりをめぐる悲しくも美しいエピソード」である。
大学のキャンパスの小径のかたわらで拾った小さなきいろい小鳥が、氏の研究する白ワイン用のブドウ品種かつそれから醸造したワイン「ソーヴィニヨン・ブラン」の香りの解明に役立ったこと、もちろん、役立ったというよりもその前に、氏とその妻マリィの生活にあたかも天から授けられた子どものように幸福を与えたことが、ささめやゆきさんの、独特の、子どもの絵の様な無邪気な太い線で描かれた、そして、どこかフランスに似つかわしいと思わされる絵とともに物語られる。
博士と妻マリィの手で生命を救われた小鳥「きいろ」は、元気になってみるみる生長し、夏が近づくと、きいろの羽がどんどん落ちて、「青い鳥へと変身をとげる。/きいろは、メーテルリンクの『青い鳥』のモデル、メザンジュ・ブルーという小鳥だったのである。」
あの幸福の青い鳥。
もちろん、この青い鳥「きいろ」は、博士に幸福をもたらし、そして、死んでしまう。博士もまた、「きいろ」のおかげもあって、大きな業績を残し、そして、若く世を去る。美しくも悲しい物語である。
石津氏は、早稲田の仏文を出た後、フランスに留学されている。富永博士はその折からの友人であろうか。55年生まれということは、わたしとほぼ同年代(ひとつ年上)ということになる。フランスの思想やら文学やらを含めて広く浅く聞きかじったというレベルの、学識もなく経済事情にも恵まれなかったわたしの、フランスへの憧れを思い出させてくれるような、小さくて黄色い、美しい絵本である。
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