玉を見せ より来るものは おほけれど 月はすずしく すぎてかへらず
*自分の好みの美女を見ると、とにかく馬鹿な男は欲望を抑えきれないようだ。欲しくてたまらない。だがだれも正面から声をかけることができない。だから裏でいろいろな方策を練る。
あなたがたが美女を手に入れるためにやったことは、実にあさはかなことだが、いい男をちらつかせてひっかけようとするくらいのことでした。
女ならば、それなりのいい男を見せればよってきて、夫をないがしろにして浮気でもするものだろうと、軽く考えていた。
だからたびたび、色男をかのじょの周りにちらつかせて誘おうとしてみたのだが。はっきり言いましょう。かのじょは全然気づいていませんでした。
女性ならば、いい男を見ればはっと気づくものでしょうが。男はそういうのに、興味はありません。事実、あなたがたも、男だったら、美男になど興味ないでしょう。美女には激しく興味を持つが。
かのじょもそんな感じでした。興味のないものには気付かない。視界に入っても小石のように認識しない。わからないからです。
男が発するある種の性的サインは、女性でないと気づかないのですよ。かのじょはあれで魂は男ですし、それも性欲のないという種族の男ですから、そういう方面は、はっきり言って全然だめなのです。
だからあなたがたのしかけた罠にことごとくかからなかったのです。
あさはかな失敗ばかり繰り返しましたね。三度くらい失敗すればわかりそうなものだが。ほかの女性だってかからなかったでしょう。なんで自分の方が間違っていると気づけないのか。
要するに、女性がそんな軽いものでなければ困るからなのです。美女を手に入れられる方法が何もなくなる。そんな見方に固まって、真実に心を開こうとしない。
思い通りにならない恋に怒り狂って、とうとう女性を滅ぼしてしまった。
馬鹿な男の伝説は、永遠に伝えられていくでしょう。