ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

ばかもの

2018-05-29 05:16:58 | 短歌





月を見て あれとおのれを とりかへて あれにならむと おもふばかもの





*この時代の、美女のいじめにはむごい実相がありました。万人を数える人間が、美女ひとりをみんなでいじめると言う壮絶に陰湿な事件なのですが。ことが終わって、やっと落ち着いて風景を見られる今となって、わたしたちは、いろいろといじめに加わった人間に尋ねてみるのです。

なぜそんなことをしたのかと。

みんなでひとりをいじめるなどということが、悪いことだとわからないはずはあるまい。なぜブレーキをかけることができなかったのか。なぜ、大勢の群れに飛び込んで、嫉妬に溺れてあらゆる愚かな所業をなしてしまったのか。

答えは何種類かありますね。男性はとにかく、美女といいことになりたいが、何もできなかったからだという。女性は、自分よりきれいだから、という意見が大方ですが、中にはこういうのがあります。

あの美人が、自分があれだったらいいのにという、理想の自分だったからだと。

まるごと、自分をあれと取り換えてしまいたいほど、憎らしかったのだと。

そういう女性は、あまり美しくないが、みなりをさっぱりと整えている女性が多い。気にしないふりをして、自分がそれほど美しくないことを激しく気にしているらしい。

ほんとうは、目もさめるような美女になりたいのに、なれないのです。

なぜなれないのかというと、暗いところであまりにも愚かなことをしているからです。自分に嘘はつけない。みなりをきれいすぎるほどきれいに整えるのは、陰で自分がやっていることが、あまりにも汚いからだ。

全員で美女ひとりをいじめている、そのやりかたが、恐ろしいほど汚いからだ。

なんて自分はいやなやつなのだろう。こんなものはきれいさっぱりと捨てて、まだ何も悪いことをしていない、清らかなあの美人と、自分を取り換えてしまいたい。

そういう人は多いようです。

だが自分を誰かと取り換えることなどできはしない。本気でそれをやれば、人の存在をまるごと盗んでしまうことになり、恐ろしいほど愚かなことになる。

天使をいじめ殺した汚い女が、清らかな愛で人類を救った天使の顔をかぶれば、これ以上汚いものはないのではないかというほど、醜いものになりはてるのです。

醜いを通り越して化け物になる。とんでもない嘘だからです。

逃げることのできない自分から逃げようとするからそんなことになる。

ほんとうに美しくなりたいのなら、自分の愚かさをすべて認めて、罪を償い、最初から自分をやり直すしかないのです。






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