Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

山野草

2020年10月13日 06時00分00秒 | エッセイ
    いささか恥ずかしいことながら、草花の名前をあまり知らない。
    バラ、チューリップ、コスモス……これらはまだしも、
    ちょっと見慣れないものになると、もう分からなくなってしまう。
    山野草ともなると、まったくと言ってよい。
             
               秋の阿蘇(ネットから借用)
父は職場の登山同好会といったものの長を務めるほど山好きだった。
小学生の頃、山にキャンプに何度か連れられて行った記憶がある。
「何から何まで父にそっくり」姉は僕のことをそう言う。
とは言え一つだけ、この山好きの血は受け継がなかったらしい。
山や野の記憶といえば中学校の遠足くらいなもので、
とんと縁がなかったように思う。
山か、海かと言われれば、圧倒的に海派だった。

    今も妻の写真撮影に同行して、自然に触れる機会はあるにはある。
    だが、それも車が行ける範囲内でのことだ。
    そこから先、山に登ったり、野を歩き回るということはまったくない。
    それほど山や野に疎遠とあれば、
    四季折々、山野に咲く草花たちを見ることもなく、
    したがって名前を覚えようもないことになる。

友人に山好きな女性がいる。
毎週のようにあちこちの山野を夫婦連れだって歩いている。
時には沢登りにも挑戦しているから、
「あんなきつそうな登山などご免こうむる」と思っている僕には、
年齢からすると(失礼)とんでもない女性だと思えてくる。
「よくもまあ、元気なこと。毎週行くほど本当に山が好きなんだね」
冷やかし半分にそう言うと、
「一週間分の心身の穢れを洗い流すためです」などとさらりと答える。
もちろんニッコリしながら……。
            
                        ムラオノスズカケ
    彼女のブログには毎回、山野草の写真が満載だ。
    最近のには「ムラノオスズカケ」「ムカゴホトトギス」
    「シンミズヒキ」「ミゾソバ」などが登場していた。
    もちろん初めて見、聞く花々だ。
    なんとも面倒くさい名前の花々。こんなの覚えられるわけがない。

ごめんな。山に、野に咲く花たちよ。
「無粋な奴」と笑ってくれても構わない。
友が精いっぱい君たちを愛でてくれている。「それで良し」としてくれないか。

    そんなことを思いながら、夕暮れの川沿いを歩いている。