いつものように会社指定の駐車場に入り、車を降りようとしたら、
今風のやんちゃな格好をした男の子が、片隅にしゃがみ込んで
苦しそうにしているのが見えた。
おそらく夜通し飲み明かした挙句のことなのであろう。
「しようがない子たちだ」放っておいて素通りしようとしたが、どうにも気になる。
「大丈夫か」と声をかけると、半ばベソをかいたような顔が見上げる。
ふと、同じ年頃だった自分の姿が重なった。

学生の頃は、家庭教師で稼いだわずかばかりのアルバイト代で、
同級生たちと何をするでもなく、半ば好奇心まじりに夜の街を徘徊、
挙句、オールナイトの映画館をホテル代わりにし、
白々と明けた朝をまぶしく迎えたこともあった。
社会人になると、先輩たちから「これも勉強のうち」と
毎晩のように夜の歓楽街をひっぱり回された。
さほど飲めない質だから二日酔い状態で出勤することもしばしばで、
何とかその日をしのぐと、夕方にはまた「行くぞ」と半ば命令口調で言われ、
やがてそれが習慣みたいになってしまった。
「よく体がもてたものだ」と思うほど無茶苦茶な生活を送った。
今、ここで苦しそうにしている子は、あの頃の僕より少し年下のようだが、
「同じようなことをしているのだ」と思えば、少しばかりのいとおしさが湧いてくる。
「大丈夫です」と答えた彼はまた、「うえっ」となる。
「ほれ、水」持ち歩いているペットボトルをバッグから取り出した。
「飲んだらボトルは捨てといてくれ」
年寄りから、そんな施しを受けるのはバツが悪いのか、
最初はためらっていたが、ぼそっと「ありがとうございます」と言って、
おもむろに受け取ったのだった。

駐車場から勤め先までの道筋で中年の男性が、
いつものようにビニール袋を手に道端のゴミを拾い集めている。
個人的なボランティアのようで、毎朝吸い殻や紙くず、ペットボトルに空き缶
……文句一つ言わず黙々とゴミを拾っている。
夜通し飲み明かし、少しばかりの罰を受けた若者。
彼らが汚した道なのかもしれない。
それらゴミを黙々と拾い集める中年男性。
あり様はまったく違っているが、この二人の姿に心がじんわりとなる。