突然、部厚いトンカツを食べたくなった。
200グラムのサーロインステーキも食べたくなった。
トロとイワシのにぎりを5貫ずつ。
鶏の唐揚げを山と盛ってほしい。
それから、ボール一杯のポテトサラダも忘れずに。
目の前のテーブルを埋め尽くしてみたい。
腹がはち切れるほどに……。

病に悩んだ1年だった。
年末まで鬱々とした日が続いた。
3度目の膀胱がん手術、尿管結石の手術、それらの術後の不調……
加えて、がんの尿細胞診の結果は「境界域ぎりぎり」の擬陽性。
膀胱鏡検査にCT撮影がプレッシャーをかけ続けた。
それらが重石のように年末まで心身にのしかかった。

医師から渡された1枚の所見/診断書。
「前立腺癌・膀胱癌治療後 明らかな再発・転移を認めず」
「明らかな骨転移を認めず」
「両腎、尿管、膀胱に明らかな異常を認めず」
「胆嚢、膵臓、脾臓に明らかな異常は指摘できず」

年末の28日。無事だった。
重石は静かに去っていった。
突然、部厚いトンカツを食べたくなった。
200グラムのサーロインステーキも食べたくなった。
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正月を迎えるためデパートへ出かけた妻の手には、
北海道物産展で求めた「かに弁当」が2つあった。
夫婦2人の、ちょっと奮発したお昼──。