妻の郷里は、長崎県の佐世保市だ。
両親の墓もここにあるし、姉3人も健在である。
妻は姉たちとしばしば長電話しているから、
おおよその消息は分かっている。
ただ、コロナ禍もあり3年ほど顔を見ていない。
こちらの体調もまずまずとあって、久しぶりに里帰りすることにした。
朝の7時半に福岡の自宅を出る。
主に一般道路と無料の西九州道を乗り継ぎ伊万里方面に向けて走った。
そこから先は佐賀・長崎県境の国見峠を越えれば佐世保市に入る。
国見峠の一部は「あじさいロード」となっているが、
まだほとんど見かけない。開花はもうしばらく先になりそうだ。
途中の駐車スペースに止め、見下ろすと「岳の棚田」が広がっている。
その先の眼下は佐賀県の西有田町が霞んでいる。
この日は曇天。晴天だったら棚田も眼下の街並みも
素晴らしい景観だっただろう。残念!
岳の棚田。眼下には西有田町の街並みが広がっている
国見峠を越え佐世保市に入り、そのまま墓参りへ。
11時ちょっと過ぎに着いたから途中の休憩、
棚田観賞を含め4時間弱の行程となった。
墓は案外ときれいだった。わずかばかりの雑草をむしり、
墓石をきれいに拭き、花を取り換え、缶ビールを供え、
それから線香を立てる。
「お久しぶり。義父、義母様」手を合わせ、祈りを捧げた。
姉たちとの待ち合わせ場所となっている弓張の丘ホテルへ向かう。
佐世保市街、九十九島を一望する弓張岳の頂上にある。
国立公園内にあるから絶景の場所なのだが、
あいにくの曇天。これまた残念なことであった。
佐世保市街も九十九島も残念ながら霞んでいた
姉3人は皆80歳を過ぎている。妻だけが後期高齢者前である。
それぞれの連れ合いを含め7人がテーブルを囲んだ。
話はどうしてもそれぞれの体調のことになる。
この年齢になれば、ほとんどが何らかの不具合を抱えているから、
やむを得ぬことだが、いささか寂しいことではある。
場所を長姉の家に変え、しばしの団らんとなったが、
ここでも「あのお墓どうしよう」という、
これまた切実な話になった。
それぞれ高齢になり、また嫁ぎ先との関係などもあり、
これから先も墓を守っていけるかどうか不安は増すばかりである。
子や孫にそれを託すにも、何やかやと難しい事情が多くある。
下手をすると、守っていく者が誰もいない無縁墓になりかねないのだ。
「それでは両親がかわいそう。それより墓じまいした方がよくないか」
こんな話も出てくる。
「時間をかけ、よくよく考えよう」ということで、この日は終えたが
こうした話は当家に限ったことではなく、
多くの家庭が抱えている切実な問題であるに違いない。
実際、全国で無縁墓が増えているとのニュースを
新聞やテレビでよく見聞きするようになった。
久しぶりに墓参りをし、姉たちと歓談し、そして帰路についた。
車の中から妻は姉たちに電話をかけ、
この日の歓待に礼を言いながら、亡き両親の先々を案じている。
何か良案はないものだろうか。