Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

鳩時計

2022年06月18日 10時14分28秒 | エッセイ


壁の鳩時計は1時15分になっている。
もう何年、いや何十年か、このまま動かない。
長女が高校生の時、「欲しい」というので買ってやったものだ。
小、中学生ならいざ知らず、高校生にもなって鳩時計とは……
おかしさをこらえながらも、娘かわいさのことであった。
以来、娘の部屋の壁から主の日常を見守り続け、
生活を律する大切な役割を果たしてきた。



やがて結婚。鳩時計は邪険にも置き去りにされた。
さすがに、新婚家庭には鳩時計は
気恥ずかしいものだと思ったに違いない。

それから私の書斎の壁に電池を外され掛けられている。
だから、この鳩時計に時間を尋ねることはない。
我が家には他に置時計が2つ、壁掛けの電子時計1つがある。
置時計の1つはこれまた電池切れのまま放置されている。
もう1つは、10分進んでいる。
娘や孫が遊びに来て、これら置時計を見て
大慌てすることしばしばだ。
頼りは電子時計、もっと信頼できるのは
テレビ画面に表示される時間だ。
このように、極めてあいまいな時間の中で日々を送っている。

それでも時を追う日々は生きている証しである。
鳩時計は、今では時を刻んではくれないが、
かわいい壁の飾り物として少しばかりの和みをくれる。

それとは真逆にとんでもなく怖い時を刻む時計がある。
世界終末時計である。
核戦争などによる人類の終末まで、あと何分(秒)かを示すもので、
米国の原子力科学者会報が定期的に発表している。
それによると、2022年は「残り100秒」しかないとした。
ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮の相次ぐミサイル発射などは
核兵器使用の脅威を高めている。
あるいは新型コロナウイルスの世界的蔓延、
さらに、ますます深刻化する地球温暖化などが
残り時間を少なくしていっている。
 
           
     あと100秒(1分40秒)と終末時計は知らせる

娘に他愛ない日々を送らせてくれた鳩時計、
その他愛ない日々が終わる時を知らせる終末時計。
願わくば、壁で愛想を見せながら時は刻まれてほしい。