出 勤 前
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「友人」と呼ぶのは、おこがましい。
78歳の僕よりちょうど20歳年長、100歳を目の前にされた方だ。
あるいは親子と言っても通るような年齢差であり、
そんな人を「友人」とは恐れ多くて、とても呼べやしない。
でも率直なところ、それほどの年齢差を感じない。
気さくな人柄のせいなのか、不思議な人である。
そして、厚かましくも僕の心の中では、
間違いなく気楽に話せる「友人」、その思いなのだ。
れっきとした現役の画家。つい先日も作品展を開かれた。
作品を初めて拝見したが、主に手掛けられている銅版画の精密なこと。
不器用な僕なぞ、「どうすれば、こんなことができるのだ」とあきれるばかりで、
しかも、その作品の中には〝文明批判〟が込められているというから恐れ入る。
絵画だけではない。
ちょっとした短文も400字詰め原稿用紙に、それも万年筆で書かれる。
なかなかの達筆であり、字体から風格もにじんでくる。
今は、エッセイ風に初恋物語を執筆中だ。
まだ最初の編だけなのだが、これがまた面白い。
当然、続編を催促しており、近々ご披露いただくことになっている。
80年ほど前の初恋をうれしそうに書かれる、
その年齢を感じさせぬ瑞々しさ。
身体の方も杖をつかれる程度で、特に心配なところはない。
むしろ、こちらの不調を気遣ってもらうなど、恐縮することしばしばだ。
そして、こんなことをおっしゃる。
「皆さんたちと、こうやってコーヒーを飲みながら過ごせるなんて
夢のようです。幸せです。楽しくてしようがありません」
そう言われると、またまた恐縮する。
「いやいや、20歳も年長の大先輩とこんなに和やかに語り合えるとは、
こちらこそありがたいことです。幸せをお返しします」
肩肘張らず、人生を学んでいる。