Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

片想い

2023年04月15日 06時00分00秒 | エッセイ


滋賀県の『膳所』という地名を、
あるいは高英男の『雪の降る街を』との曲名を聞けば、
この人が思い浮かぶ。
高校生の時の片思い相手である。
80歳にもなって、こんな話を語るのは多少気恥ずかしいことであるが、
思い出というのは何かのキーワードによって
ふいっと呼び覚まされることがあり、
時に切なく、時に心を温めてくれるものである。

      

昨秋、京都から滋賀県の近江八幡市へと足を延ばし、
水郷めぐりを楽しんだ際のことである。
滋賀県は初めて訪ねる地だったから、
近江八幡市というのはどのあたりになるのか、
地図で確かめていたら『膳所』という地名に気が行った。
あの片思いの人へとつながるキーワードだった。
その地名は大津市にあった。

小学校から大学まで通して最も空疎と言える学校生活だったのは、
高校生の時だったろう。
そのせいか、今でも名前まで思い出せる友人はたった一人しかいなく、
喜怒哀楽を乗せた思い出はさっぱり思い浮かばない。
そんな中で、まさにポツンと彩った一輪の花とも言うべき人だった。
ただ、一言たりと交わしたことはなく、
通学のバスで、また校内で見かけては
「いいなあ」と勝手に思い込んでいたにすぎない。 

彼女は高校生ながら地元のラジオ局でパーソナリティーを務めていた。
リスナーからのリクエスト曲を流し、
合間にいろんな話題を思いつくままに語る、よくある番組だった。
そのことを校内で耳にしてからというもの、
その時間はラジオの前を動かなかった。
そして、リクエスト曲をハガキに書いて送る、
それも僕にとって当然のことだった。
あるはずもないことだと分かってはいた。
でも、名前を目に止め、心に留めてほしかった。

            

当時の僕にとり最も身近にいた歌手はエルビス・プレスリーであり、
リクエスト曲もそうすべきだったのだろうが、
プレスリーなんて書くと「品のない不良少年かもしれない」
なんて彼女に蔑まれるのではないかと恐れた。
では何にするか。考えあぐねた末が高英男の『雪の降る街を』だったのだ。
とても、17、8歳の子が聞くような歌ではなかったが、
少しでも大人っぽく見てほしいとの思いから、
自分では聞いてもいないのに兄たちが聞き、口ずさんでいたものの中から、
この歌を選んだのだった

詮無いことと分かってはいた。
やはり『雪の降る街を』が流れることはなく、
そして彼女自身も学校から、ラジオ局から去っていった。
一輪の花さえ失くした僕の空疎な学校生活はさらに続いた。
そんな時、教室の片隅で彼女の消息を語る声を聞いた。
「滋賀県の膳所高に転校したってさ」

               

以来、『膳所』という地名が僕の中から消えることなく、
潜み続けていたのである。
とは言っても、もう彼女のことは名前は思い出せても、
顔さえ定かではなくなっている。
ほの苦いような青春時代の思い出というのは、
その断片が案外と長く生き続け、余生を楽しませてくれるからいとおしい。



サヨナラ勝ち

2023年04月12日 09時45分57秒 | 出歩記


6階の病室から見下ろせば、妻と一緒に見舞いに来た孫娘が、
こちらを見上げ手を振りながら帰っていく。
すぐ側にあるPay Payドームには多くの人が集まっている。
ソフトバンクホークスのオープン戦らしい。
ドームに隣接して建つ高層ホテル越しに博多湾が見える。
青空が穏やかな海面に映えている。

今夜は逆にドームの方から病院を眺めている。
あそこには、これまで9度も入院した。
近いところでは3月11日から21日まで入っていた。
その病院をこうやって眺めるのは不思議な気がする。

                         

さて、今夜は日本ハム相手の試合を観戦だ。
久しぶりのドームである。
バックネット裏の、前から2列目の絶好の席である。
ここからだと選手の様子がよく見える。
ごひいきは柳田選手だが、まだ調子が上がっていない。
豪快な本塁打を期待したいところだ。

隣の若い女性は鳴り物を手ににぎやかだ。
ネット裏は、外野席の応援団のようにはけたたましくはないが、
この女性は外野席の応援団と調子を合わせ声援するから、
すごく賑やかだ。おかげで、こちらのテンションも上がる。
試合はホークスが常にリードする展開だったが、
日ハムもしぶとく食らいつき、ついに延長戦へ。
そして、10回無死満塁のチャンスをつかみ、
栗原の犠牲フライでサヨナラ勝ちした。

実はサヨナラ勝ちした時は、帰りのバスの中だった。
バスの時間が気になり、同点だった8回終了時にドームを出ていたのだ。
サヨナラ勝ちのシーンを見損なったのは残念だったが、
久しぶりの野球観戦に元気をもらい、
隣の病院がもう御用済みであればと願った。



和やかに

2023年04月07日 19時41分38秒 | 出歩記



日本経済大学・福岡キャンパスの白鳥さん。
4羽の雛は、日ごとに大きくなっています。
4日に訪れた時は、まだヨチヨチ歩きみたいな感じで、
池をスイスイ泳ぐというまでにはなっていませんでしたが、
7日には随分泳ぎが上手になっていました。
前後をパパ、ママに守られるように池の中央部まで泳いでいきました。
何とも微笑ましい光景です。
この日は、小雨模様で少し寒かったのですが、
だいたい1時間おきにママが自分の羽根の中に雛を抱え込み、
温めてあげるそうです。
そして、温まったら今度は泳ぎの練習なんです。
こうやって訓練していくのですね。

ちなみに卵は6個ありましたが、孵化したのは4羽でした。
残り2個はどうやら無精卵だったらしく
孵化しなかった、ということでした。
孵化した直後に他の鳥獣に襲われたのではなかったわけで、
なんだかホッとしましたね。



4羽でした

2023年04月05日 06時00分00秒 | 出歩記


日本経済大学・福岡キャンパスのイングリッシュガーデン池を
4日に尋ねると白鳥の雛が4羽誕生していました。
いつだったか定かではありませんが、
モフモフの羽毛を見れば、この数日間のことだったに違いありません。
まだヨチヨチ歩きなのでしょう。岸の近くで母親にまとわりつくだけで、
池の中央部までスイスイというわけにはいかないようです。
いずれにしても、可愛いこと。



ただ、ちょっと気になるのは先月末訪れた時は、
卵は6個ありました。
それなのに雛は4羽。2羽は孵化しなかったのか、
あるいは孵化した直後に何者かに襲われてしまったのか。
この4羽が、無事成長してくれることを願うばかりです。