日本では死者を批判すると「死者にむち打つな」と非難されます。だから汚職などの犯罪捜査などで追い詰められた人は自殺して批判をかわそうとします。これって、人命を惜しむ点からも、犯罪捜査・真相解明の点からも、望ましいことではありません。
だったら、あえて「死者にむち打つぞ」という姿勢が世間に浸透したら、「死んでも無駄だ。むしろ自殺して逃げたら残されたものがかえって不幸になる」と自殺抑止力になりませんかね
そうそう、「ナントカ還元水」と言い訳していた農水相の問題は結局うやむやになりましたが、なんででしょう? 再発防止策をきちんととらないと、不明朗な事務所費の問題が何回でも再燃するだけじゃないです? この場合死者にむち打つ必要はありません。帳簿をむち打てばいいのですが。
【ただいま読書中】
『ガイア ──母なる地球(下)』デイヴィッド・ブリン 著、 酒井昭伸 訳、 早川書房(海外SFノベルズ)、1992年、2330円(税別)
下巻ではまず「生態学的な視点」を人間の体内に導入したらどのようなものが見えるか、が示されます。「競争」と「共生」が同じものだというのですが、いや、これは面白い。
コヒーレント重力波を放射することで「ベータ」をつつく作業は、同時に複雑な構造をする「地球」をのぞき込みそのものについての思索をする作業でもありました。そしてそれは同時に、犠牲者を作り出す作業でもあります。重力波のビームが地表に飛び出す地点では、何らかの「事故」が起きるのです。飛行船の墜落、小規模な津波、破壊されたダム、オビ川から宇宙空間に放り出された巨大な水の塊、日韓トンネルの事故……被害は繰り返され少しずつ大きくなっていきます。しかし、ベータを地球外に放り出す確率は高まります。25%に。
アレックスはベータがいつどこから来たのかをついに突き止めます。場所はシベリア。時は1908年。その意味を知った人びとは、恐怖に震え、そして残された希望にしがみつきます。
ついに国家権力が介入し、ベータを兵器として用いることを考えます。ベータが地球内で増大しない軌道をたどらせ、そこから重力波ビームを宇宙から襲来する外敵に浴びせよう、という計画です。アレックスはそれに抵抗しようと企みます。
「競争」と「共生」のモチーフが繰り返されます。野生動物、人の肉体、人の心、地球、そして利害の異なる人びとの間での「競争」もまた「共生」と同質であることが示唆されます。さらに、あちこちに散りばめられている、野生動物(ヒヒ、チンパンジー、イルカなど)と人間の不思議な関係が物語に彩りを添えます。
そしてついに「戦争」です。地球の中を巡る特異点「ベータ」を兵器として使って、地上を浄化(環境破壊をする人類の“大量間引き”を)しようとする動きと、それを妨害しようとする物理的な戦いに合わせて、ネットの中では巨大プログラムの「龍」と「虎」が戦っています。これはもちろん「青竜」と「白虎」でしょう。そして最後には、「世界精神」が誕生し、さらにベータの意外な「平和利用」が登場します。おかげで、地上でスクラップになっていたスペースシャトル「アトランティス」が史上もっとも高性能の宇宙船になってしまうのですが。そして最後の最後にまたドンデンがあるのですが、それは読んでのお楽しみ。
環境破壊で人類は滅亡の危機にあったはずなのに、なんだかずいぶん都合の良い解決法(まるでデウス・エクス・マキナのようなもの)が明るく提示されていて、まあこれはこれで良いのですが、あっけらかんとしている人たちに向かって「ちゃんと考えろよ」とじじいの説教をしたくなるのは、私が年をとったということなんでしょうか。
だったら、あえて「死者にむち打つぞ」という姿勢が世間に浸透したら、「死んでも無駄だ。むしろ自殺して逃げたら残されたものがかえって不幸になる」と自殺抑止力になりませんかね
そうそう、「ナントカ還元水」と言い訳していた農水相の問題は結局うやむやになりましたが、なんででしょう? 再発防止策をきちんととらないと、不明朗な事務所費の問題が何回でも再燃するだけじゃないです? この場合死者にむち打つ必要はありません。帳簿をむち打てばいいのですが。
【ただいま読書中】
『ガイア ──母なる地球(下)』デイヴィッド・ブリン 著、 酒井昭伸 訳、 早川書房(海外SFノベルズ)、1992年、2330円(税別)
下巻ではまず「生態学的な視点」を人間の体内に導入したらどのようなものが見えるか、が示されます。「競争」と「共生」が同じものだというのですが、いや、これは面白い。
コヒーレント重力波を放射することで「ベータ」をつつく作業は、同時に複雑な構造をする「地球」をのぞき込みそのものについての思索をする作業でもありました。そしてそれは同時に、犠牲者を作り出す作業でもあります。重力波のビームが地表に飛び出す地点では、何らかの「事故」が起きるのです。飛行船の墜落、小規模な津波、破壊されたダム、オビ川から宇宙空間に放り出された巨大な水の塊、日韓トンネルの事故……被害は繰り返され少しずつ大きくなっていきます。しかし、ベータを地球外に放り出す確率は高まります。25%に。
アレックスはベータがいつどこから来たのかをついに突き止めます。場所はシベリア。時は1908年。その意味を知った人びとは、恐怖に震え、そして残された希望にしがみつきます。
ついに国家権力が介入し、ベータを兵器として用いることを考えます。ベータが地球内で増大しない軌道をたどらせ、そこから重力波ビームを宇宙から襲来する外敵に浴びせよう、という計画です。アレックスはそれに抵抗しようと企みます。
「競争」と「共生」のモチーフが繰り返されます。野生動物、人の肉体、人の心、地球、そして利害の異なる人びとの間での「競争」もまた「共生」と同質であることが示唆されます。さらに、あちこちに散りばめられている、野生動物(ヒヒ、チンパンジー、イルカなど)と人間の不思議な関係が物語に彩りを添えます。
そしてついに「戦争」です。地球の中を巡る特異点「ベータ」を兵器として使って、地上を浄化(環境破壊をする人類の“大量間引き”を)しようとする動きと、それを妨害しようとする物理的な戦いに合わせて、ネットの中では巨大プログラムの「龍」と「虎」が戦っています。これはもちろん「青竜」と「白虎」でしょう。そして最後には、「世界精神」が誕生し、さらにベータの意外な「平和利用」が登場します。おかげで、地上でスクラップになっていたスペースシャトル「アトランティス」が史上もっとも高性能の宇宙船になってしまうのですが。そして最後の最後にまたドンデンがあるのですが、それは読んでのお楽しみ。
環境破壊で人類は滅亡の危機にあったはずなのに、なんだかずいぶん都合の良い解決法(まるでデウス・エクス・マキナのようなもの)が明るく提示されていて、まあこれはこれで良いのですが、あっけらかんとしている人たちに向かって「ちゃんと考えろよ」とじじいの説教をしたくなるのは、私が年をとったということなんでしょうか。