韓国で「植民地時代に日本がひどいことをしたから、今の日本人にもひどいことをしてやる」という運動があるのを見て私はいやな気分になります。そしてそれと同じくらいいやな気分になるのが「朝鮮人、出ていけ」のヘイトスピーチ。どちらも差別感情や正義感が根底にあって相手をひどい目に遭わせたい、という欲望丸出しな点がそっくりなので。
【ただいま読書中】『ヘイトデモをとめた街 ──川崎・桜本の人びと ──差別は人を殺す』神奈川新聞「時代の正体」取材班 編、現代思潮新社、2016年、1600円(税別)
ヘイトスピーチは、ヘイトクライムへの第一歩です。多数派が差別を前提に面罵すること、それによって差別意識を持っていなかった多数派の他の人も影響を受けます。それを「表現の自由」と言って擁護しようとするのは、多様性のある社会の未来を破壊する行為となります。そもそも「表現の自由」と「名誉毀損」とは無理なく両立しているでしょ?
川崎市桜本には、「少数派」として、「在日」の人だけではなくて、流れ者(主力は日本人)やニューカマー(フィリピン人、タイ人、日系ブラジル人など)も生きています。そして、少数派を全否定する行為は、そういった「少数派の人たち全員」の心を傷つける行為でした。
ところで現在の日本、「日本人だけで構成されている社会」って、どの程度あります? 私が知っている範囲ではどこも「日本人以外」がけっこう混じっているのですが。さらに「日本人」にしてもその中は「少数派だらけ」です(たとえば、性的マイノリティー、障害などがわかりやすい例でしょう)。すると「少数派だったら安心して差別できる」とせっせとヘイトスピーチをやっている人は、最終的には日本全体を敵に回すことになるかもしれません。しかし、全国紙の記者でもそのことがわかっていない(ヘイトスピーチの隠れた擁護者になっている)人がいるのには、あきれてしまいました。どの新聞なんだろ?