【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

死後の相談

2021-02-23 09:33:29 | Weblog

 父親が死ぬ前に私は“その後”のことについてざっくりとではありましたが話ができていたので、死亡後にも特にトラブルなく遺産相続などができました。そこまでもめるほどの財産の大きさではありませんでしたが、それでもきょうだいの間で露骨な不公平があったらいけませんから、父親の遺志をベースにしてから不動産や動産を客観的に評価してもらってあとは「大体こんなものだろう」でざっくり分けました。
 ただ、個人の場合に、相続人の間で争いがなければ「ざっくり」でも大丈夫でしょうが、法的な立場にある「法人」の場合にはこれは大変でしょうね。社長に対して「あなたが死んだ後、会社はどうしましょうか」なんて言うのは「会社乗っ取り」でも画策しているようだし「社長のあなたはもうすぐ死ぬんだよね」と言っているようでもあるし、これは言われる方は気分が良くありません。
 ということで、こんな本があります。

【ただいま読書中】『社長に事業継承の話を切り出すための本』半田道 著、 中央経済社、2019年、2300円(税別)

 そもそも「事業継承」とは何か、から話が始まります。社長から後継者に「社長の椅子」と「自社株」を渡すことですが、前者は「経営理念・会社の状況・社内外からの信用を引き継ぎ経営を任せる」、後者は「会社の財産を引き継ぎ、株主総会で会社の経営方針を決定できるようにすること」です。そこで必要なのが「事業継承対策」。バトンタッチをしたらおしまい、ではなくて、話はそこから始まるのです。ここで多くの人は「株価対策」「税務対策」のことを思うのだそうですが、それは話の一部に過ぎません。社長が死亡によっての事業継承では相続の問題が発生し、相続税の資金繰りで会社の経営が苦しくなることもあり得ます。だからこそあらかじめ資金計画を作っておく必要があり、だからどのように継承するかのプランを確定しておく必要があります。
 ここで著者は「具体的な方法」だけではなくて「社長の心情」にも目配りをしています。「継承」の話を切り出された社長がどのように思うか、の問題です。また、「後継者」に指名された人だけではなくて「指名されなかった人(社長の子供で事業に直接タッチしていない人など)」についての配慮も必要、と細やかです。
 昭和の時代の「会社」は主に「株式会社」と「有限会社」でしたが、最近は「株式会社」でも資本金1円でも制度上は可能になり、「有限会社」のかわりに「合同会社」「合名会社」「合資会社」が登場しています。株式会社の場合には株主対策も必要ですが、それ以外だと出資社員と後継者に範囲を限定できるので、少しは楽でしょうね。それでもいろいろなトラブルが発生しそうですが。
 個人の相続でも大変なのに、法人の相続はそこに個人の相続も含まれるのでもっと話が大変になる、ということはわかりました。もしも私が起業をするなら、最初から事業継承についても念頭に置いてから仕事を始めた方が良さそうだ、ということは理解できました。具体的には信頼できる税理士などと相談しながら、かな。