長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

ロッソ鍋

2010年04月12日 01時13分00秒 | フリーク隠居
 先日、友人の激励会で小林旭の「自動車ショー歌」を久しぶりに歌っていて想い出した。
 「ミラン憎けりゃオペルまで憎い」といった心情に陥らせた、あの怒涛のカルチョ三昧の日々を。当時、ミランのユニフォームには、スポンサーの、丸に二引き崩し、いや、ての字とでもいおうか、たなびく一本霞のようなマークがもれなくついていた。和の文様にたとえるとエ霞に似ている。
 サッカーの試合は二時間もあれば決着がつくのが有難い。…とか言いながら、あぁ、二時間あったら道成寺が二回さらえる…とか自責の念に駆られながら、深夜とも明け方ともつかぬ午前三時に起きだして、チャンピオンズ・リーグのライヴ中継を観ていた。
 人間とは、執着するものができると、思いもかけない変な行動に出てしまうものだ。
 『南国太平記』を現代に。
 エル・ブランコ鍋で調伏の醍醐味を覚えてしまった私は、次なる相手、同じイタリアはセリエAのミランを叩きのめすべく、新たなメニューを編みだした。
 ミランのチームカラーは赤と黒。
 そこで今度は、食材のありとあらゆる赤いものを入れて、ロッソ鍋をつくった。
 人参、トマト、赤玉ねぎ、赤ピメント、赤身の牛肉、赤ワイン…ボルシチと似たようなもんだから、ベースはビーツ。しかし、これがちょっとまずかった。缶詰のビーツが土臭い。
 こりゃー、完食は無理だなー、と思った私は、よっしゃ、ボルシチにはサワークリームでしょう、と白いクリームを赤いところへ落としてみた。日の丸のネガのようになってしまった。なんだかいやな予感がした。
 結局、私は調伏に失敗した。
 敵に塩を贈るどころか、紅白まんじゅうをはなむけに贈ったような塩梅になってしまった。ユヴェントスのチームカラーは白と黒。
 鯨幕と紅白幕じゃ、不祝儀のほうが分が悪いよね…とか、妙な落とし噺にして、お茶を濁しながら、私は肩を落とした。
コメント
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