終業時刻の間際になって、上司が職場にいる人たちに声をかけてきました。「これから所持品検査をするので、手荷物を机の上に置いてください」というのです。
これまで手荷物検査など受けたことがなかったので、職場でざわめきの声が上がりました。いったい、何が起こったのでしょうか。
男性社員が検査の理由を聞いても、上司は「社長命令だ」としか言いません。皆、納得できない様子で、渋々手荷物を机の上に置きました。
手荷物検査といっても、簡単にバッグの中身を確認するだけのもので、形式的なものでした。ところが、麻紀子さんの番になって、「ずいぶんと荷物が多いじゃないか」といって、中身を出して見せるように命じてきたのです。
バッグには化粧ポーチや財布のほかに、着替えの洋服なども入っていたので、麻紀子さんは恥ずかしさのあまり、見せるのを躊躇ってしまいました。
「ちょっと、プライベートなものなので…」と小さな声で言うと、「見せられないものでもあるのか?」と逆に上司に不信感を持たれてしまいました。
そもそも、こうした所持品検査は、職場で認められるものなのでしょうか?
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プライバシー侵害のおそれも…
会社は、従業員が労務を提供する場であり、合理的な範囲で私物の持ち込みを禁止することは可能と言えます。また、会社は企業秩序を維持するために、会社施設に対する施設管理権を持ち合わせています。
私物の持ち込み禁止とはいっても、職場内で過ごす時間は休憩時間も含めて長時間に及びますから、一定範囲内で私物の持ち込みは認められるでしょう。
たとえば、従業員が所有しているスマートフォンや財布、手帳、お弁当やマイ箸、また女性であれば身だしなみを整えるための化粧品など。
しかし、所持品検査となると、従業員のプライバシーや名誉、信用等の人権侵害のおそれを伴うものであるため、会社にとって必要な措置であったとしても、当然には認められません。
所持品検査に関しては、最高裁判決においても次の基準を挙げています(西日本鉄道事件 最高裁二小 昭和43.8.2判決)。
こうした要件に該当する場合、従業員にとって所持品検査は受忍すべき義務があると言えます。
今後に備えて
突然の手荷物検査は、どうやら会社の備品が相次いで紛失したことから行われたようでした。
麻紀子さんの会社には、就業規則に所持品検査に関する規定がありませんでした。就業規則に根拠となる条文がないばかりか、所持品検査の目的も明らかにせず、従業員に画一的に実施されているとは言い難いことなどから、こうしたやり方は適正とは言えません。。
不適切な方法で実施される所持品検査について、それを拒むことは必ずしも業務命令違反とは言えないでしょう。
所持品検査が認められるケース・認められないケース
職場で所持品検査!? プライバシーはどうなる?
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会社は個人の机や机の引き出しを、勝手に検査します。
K上弁護士には要注意。
恥を知れ。