その書類はこんな文面で始まっていた。「日本マクドナルド株式会社は、貴殿の今日までの功労を考慮し、貴殿の退職条件等を以下のとおり提示致します」――。
昨年11月に東洋経済オンラインで報じた「マクドナルド、労使でかみ合わない言い分」という記事。その中で触れた、日本マクドナルド本社からある男性社員に渡された「退職条件通知書兼退職同意書」がこれだ。
話は昨年の5月初旬にさかのぼる。店舗に勤務する男性社員のもとに、マクドナルドのOC(オペレーション・コンサルタント)という地域ごとの店舗オペレーションを統括する社員が訪ねてきた。そこから複数回にわたる面談が始まった。
昨年5月といえば、中国の仕入先が期限切れ鶏肉を使用していた問題が発覚する2カ月前。だが、すでに同月時点で既存店の客数は13カ月連続で前年同月を下回るなど、客離れが深刻化し始めていた時期でもある。
「最初は店舗で面談をした。雑談に近い感じで、今までの評価や目標設定などについて話し合った」(男性社員)。ところが、5月末に男性社員は東京・新宿にある日本マクドナルド本社に急きょ呼び出された。そこで渡されたA4サイズの書類こそ、冒頭の「退職条件通知書兼退職同意書」だった。
書面には退職予定日、最終出社日のほか、退職金の額まで詳細に記載されていた。「突然のことで目の前が真っ暗になった。仕事の成績は悪くないのに、なぜ自分が(リストラの)対象となったのか理由はよくわからない」(同)。
実は同じ時期、同社の従業員やアルバイトの労働組合である日本マクドナルドユニオンの岡田篤・中央執行委員長のもとには、同様の相談が複数寄せられていた。昨年6月、ユニオンは会社に対し「退職勧奨を即刻中止せよ」と改善提案を行った。この抗議の後、前出の男性社員は退職に至らなかったものの、ユニオンに対する相談件数は昨年7月にピークを迎えた。
この一件について日本マクドナルドに尋ねると、退職同意書の存在に関してはノーコメントを貫いた。その一方、「社員の成長を促す人事制度として2009年に『キャリア支援制度』を設けた。この制度は退職勧奨ではなく、個々の社員の成長を促すものだ」(コーポレートリレーション本部)と説明した。
ユニオンに対する退職勧奨の相談は一旦落ち着いたものの、今年4月16日に日本マクドナルドが再建計画「ビジネスリカバリープラン」を発表して以降、再びユニオンへの相談が増えている。同プラン発表からわずか1週間で5件の退職勧奨に関する
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