名古屋北部青年ユニオン  2012/8/13~

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安倍政権の本音は裁量労働制の拡大だ――残業代カットが合法化!?

2015-05-18 | 労働ニュース
「われわれにとっての目玉は残業代ゼロじゃないですよ」

 1年前、東京・大手町に本社を構えるある商社系の人事担当者の意外な言葉を聞いた。当時、厚生労働省の労働政策審議会で検討されていたホワイトカラー・エグゼンプション(WE・残業代ゼロ制)に対する、企業の本音を取材しようと訪れた。小一時間話を聞いたが、今ひとつピンとした答えが返ってこない。残業代ゼロ制度のこともよく知っている感じではない。大手の人事がこの程度ではまだ、取材が早かったかなと思い引き上げようとした時に、人事担当者は冒頭の言葉を発した。「え、じゃ何ですか」と問うと「裁量労働制ですよ」と答え、こうつけ加えた。「いつ使えるようになるか分からないエグゼンプションより、すぐに使える裁量制拡大ですよ」

 安倍晋三政権が閣議決定した労働基準法改正案。メディアの関心はもっぱらWEに向いている。労基法の根本規制である労働時間規制(1日8時間、週40時間など)に“穴”を開けるWE制度の創設は大問題であり、決して許してはいけない。だが、その陰に隠れるように盛り込まれた企画型裁量労働制の対象拡大が、実は経営側が目玉として切望する“改正”なのだ。

 裁量労働制には、専門業務型と企画業務型の2種類あり、改正のターゲットは企画型。裁量労働制は予め決めた時間を働いたと「みなす」制度。決められた時間は実際、働いたかどうかは関係なく働いたとみなす。たとえばみなした時間を9時間とする。その場合、6時間だけ働いても9時間働いたことになる。逆に18時間働いても、働いた時間は9時間である。

 働く側に労働時間を決める裁量があれば、短時間勤務も可能になるだろう。だが、実質的に裁量を持たない労働者がこの制度に取り込まれれば、残業代を合法的にカットできる制度となってしまう。そのため、裁量を持つ者の要件は厳しく設定される。適用されている労働者は企画型で0・3%程度だ。経営側はここが不満だ。「使い勝手が悪い」「(要件が)厳しすぎる」と適用拡大を求めてきた。

【首相の無責任な答弁】

 今回の改正案でどのように対象が広がるのか。法案要綱は非常に分かりづらいが、煎じ詰めれば(1)法人向けに提案型の営業をする者(2)現場で営業の業務管理を行なう者――の2類型だ。対面販売などの営業やルートセールスなど単純な営業でない場合、すべての営業職が適用対象になる可能性がある書き方だ。厚労省は「単純な営業はダメだし、高度な営業でなければ適用できない」と言うが、分かりづらい文言でいかようにも解釈できる書きぶりである。ブラック企業が社会問題のご時世、企業の倫理感などに期待はできない。

 しかも、裁量制には、WEと違い年収要件はない。300万円だろうが200万円だろうが、一定の経験があれば20代半ばの営業職も対象にされてしまう。

 3月30日の予算委員会。民主党山井和則衆議院議員が安倍首相に「若者や低所得の営業マンにも裁量労働制を拡大することは過労死を増やすのではないか?」と質問すると、首相は「考えにくい」と答え、山井議員から「無責任な答弁」と断じられた。みなしの平均は約8時間20分だが、

安倍政権の本音は裁量労働制の拡大だ――残業代カットが合法化!?
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地獄の派遣社員、ますます搾取 法改正で低賃金&使い捨て加速、雇用不安定に

2015-05-18 | 労働ニュース
「まさか私が雇い止め(更新拒絶)に遭うとは……」と嘆くのは、派遣社員のBさん(40代男性)。Bさんは某大手メーカーのエンジニアとして働き始めて3年目になるが、今後、派遣契約が更新されないことが通知されたのだ。

「最近、私が担当している業務をサポートするという名目で、若い派遣社員が一緒に仕事をするようになっていましたが、これは私に代わる若い派遣社員への、事実上の引き継ぎだったのでしょう」(Bさん)

 Bさんの業務は専門性が高く、他社に移るというわけにもいかない。何より、現在の会社でいずれは正社員に採用されるつもりだっただけに、衝撃は大きいのだ。会社側にしてみれば、専門性が高い業種でも、できるだけ安い人件費で採用したい。常に若い派遣社員で仕事を補いたい、ということだろう。

 いつまでも若い派遣社員で回し続ける――そのように、企業にとって都合のいい制度が採用されようとしている。それが労働者派遣法の改正だ。派遣労働は現在、派遣先企業が派遣労働者を受け入れる期間について、通訳や秘書、事務機器操作など26の「専門業務」は無期限、それ以外の「一般業務」は同じ職場で最長3年が期限となっている。

 今回の改正案は専門業務と一般業務の区分を撤廃し、派遣労働者は3年後に「別の職場に移ることが認められれば」同じ派遣先企業で「無期限に」派遣社員として働くことができる。

 労働者派遣法の改正案は、2014年の通常国会と臨時国会に提出されたものの、いずれも廃案となっており、厚生労働省の担当課長は今年1月末、派遣業界団体の新年会で派遣労働者を「これまで使い捨てというモノ扱いだった。ようやく人間扱いする法律になってきた」と発言したことが問題視された。塩崎恭久厚生労働大臣は「派遣で働く人たちの立場を守りながらステップアップしていく改正案だ。今国会で通してほしい」と語っている。

 しかし、「派遣で働く人たちの立場を守りながらステップアップしていく」とはいうものの、現実的には派遣社員は3年を契機に雇い止めになり、新しい派遣社員へ入れ替えられるのだ。つまり、これまでの26の専門業務も含めたすべての業務で、3年ごとに新しい派遣社員に替えることが可能になるのだ。

 5月7日付当サイト記事『嘘だらけの「正社員への登用試験」が不幸な人を量産!合格しても正社員になれず、低い合格率…』において、高いスキルのある契約社員でさえも、勤続年数の上限である「5年」を前に雇い止めに遭ってしまう現実を紹介したが、より企業に軽く見られがちな派遣社員では、

地獄の派遣社員、ますます搾取 法改正で低賃金&使い捨て加速、雇用不安定に

●特定労働者派遣事業廃止でパソナが儲かる?

 さらに今回の改正案で深刻なのは、「特定労働者派遣事業」が廃止され、「一般労働者派遣事業」に一本化されることだ。これまでは、IT業界や製造業の技術者派遣では特定労働者派遣事業制度が採用されてきた。この制度は、派遣社員は派遣元会社(所属会社)に常時雇用(社保完)されている関係になり、安定した雇用関係のうえで、高いスキルを培うことができる。

 なお、一般労働者派遣事業では、派遣社員は派遣会社にスタッフ登録し、派遣先が見つかった場合にだけ雇用契約を結んで就労する関係にすぎないため、派遣会社のコスト負担は極めて低い。逆に労働者は不安定な雇用関係のリスクにさらされているのだ。

 特定労働者派遣事業制度では、就労関係の違いや高いスキルもあるために、派遣先会社が負担する単価が高くなる。26の専門業務を一般業務と同等の扱いにすることで、派遣先会社が高いスキルのある派遣社員も安いコストで使えるようにする狙いだ。

 特定労働者派遣事業制度の廃止は、一般労働者派遣事業の派遣会社にとってもメリットが大きい。特定労働者派遣事業は届け出制だが一般労働者派遣事業は許可制で、資本要件などハードルが高い。現在の特定労働者派遣事業を営む中小派遣会社の多くは、一般労働者派遣事業に移行できず、倒産の危機に直面するだろう。こうした中小派遣会社が抱えるスキルの高い派遣社員は数万人いるといわれているが、彼らが市場に放出され、一般労働者派遣事業の派遣会社は囲い込むことができるようになる。

 なお、一般労働者派遣事業の派遣会社の代表的な会社がパソナだ。パソナといえば、カリスマ経営者・南部靖之社長が創業した人材派遣業界の大手だ。南部社長は政界にも太いパイプを持ち、竹中平蔵元総務相を取締役会長に据えている。昨年5月に男性デュオ・CHAGE and ASKAのASKA(本名:宮崎重明)が覚せい剤取締法違反で逮捕・起訴された事件でも、南部社長の名前が報じられた。ASKAと一緒に逮捕された愛人の栩内香澄美被告(第1審で懲役2年執行猶予3年の有罪判決、現在控訴中)が南部社長の秘書で、ASKA容疑者と知り合ったのが同社の“VIP接待の館”と呼ばれる「仁風林」であり、そこでのパーティには政治家や大物官僚などが出席していたことも報道された。

 そのように羽振りのよい派遣会社だが、労働者派遣法の改正で、今後ますます派遣社員からお金をかすめ取ることができるようになるのだろうか。
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法的にサービス残業を肯定する余地は1ミリもない

2015-05-18 | 労働ニュース
サービス残業が慣例化している企業は少なくありませんが、部下にサービス残業を命じる上司にも言い分があるようです。それらは法的に見てどのように判断されるのでしょうか? 以下、法律に関する身近な話題を弁護士などの専門家が解説するニュースメディア「弁護士ドットコムニュース」のこちらの記事より転載します。



「サービス残業をやらせるのが下手な俺」こんなタイトルで、はてな匿名ダイアリーに投稿された文章が話題となった。サービス残業について抗議してきた部下に対して、上司である投稿者が「3つの理論」で説得を試みたが、うまくいかなかったという話だ。

そこでは「サービス残業」を肯定するため、次のような理論が語られた。


(1)お客の喜ぶ顔を思えば金のことも気にならなくなるという「仕事はやりがい理論」
(2)定時に仕事を終えることができない部下が悪いという「残業が発生するのは仕事が遅いからだ理論」
(3)まずは金のことは考えずにがむしゃらに働いて能力をアピールしろという「金は後からついてくる理論」


だが、部下はこれらの「理論」に納得せず、仕事を辞めてしまったのだという。投稿者は「部下にサービス残業やらせる方法を考えるのではなく、部下と一緒になって上司に『サービス残業は嫌です』と言うべきだった」と後悔の念をつづっている。

投稿者が書いた「3つの理論」は、労働問題にくわしい専門家の眼にどう映るのか? 光永享央弁護士に聞いた。


「身も蓋もない言い方ですが、どんな理屈をもってしても、サービス残業(賃金不払残業)を法的に正当化する余地は、1ミリたりともありません」

光永弁護士はキッパリと述べる。




労働基準法は、1日8時間または週40時間を超えて労働者を働かせた場合、残業代(割増賃金)を支払わなければならないと定めています(労基法37条)。


このルールは「強行法規」と言われ、当事者の合意にかかわらず、適用されます。もし労働者と会社側が、これに反する合意をしていたとしても、無効となります(労基法13条)


労働者が「サービス残業」に同意していた場合でも、同様なのだろうか?




はい。たとえば今回のケースで、上司が部下の「説得」に成功して、部下がサービス残業を受け入れたとしても、法的には何の意味もありません。さらに言うと、残業代の不払いは、刑事罰(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)まである「犯罪行為」です。


したがって、サービス残業を強いられていて、会社に改善を要求しても改まりそうにない場合は、労働基準監督署に申告して調査してもらいましょう。


ただ、正当な要求だとしても、「会社で波風を立てたくない」という労働者もいるはずだ。そうした人は、どうすればよいだろう?




在職中は黙々とサービス残業に耐えながら、パソコンのログやファイル更新時刻等、日々の始業・終業時刻に関する客観的証拠を確保しておき、退職後に残業代を会社に請求するやり方があります。


サービス残業の時間を立証するための客観的証拠が十分にあれば、裁判になっても負ける可能性は低く、年14.6%の高率の遅延損害金もつきます。残業代と同額の付加金(ペナルティ)まで認められる余地がありますので、まさに「倍返し」が期待できます。


3つの理論は「説得力がない」


結局、この「3つの理論」をどう見ればよいだろう?




このように、サービス残業はれっきとした法律問題ですから、(1)「仕事はやりがい」理論のように、精神論にすりかえることはできません。


また、労働者の業務量や業務内容をコントロールする義務


法的にサービス残業を肯定する余地は1ミリもない
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