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七曜工房みかん島

18年間の大三島暮らしに区切りをつけ、
滋賀大津湖西で、新たに木のクラフトと笛の工房
七曜工房を楽しみます

『一人で建てる木組みの家』~21 内壁その1 仕上げ

2008年09月11日 | 『一人で建てる木組みの家』
場所に応じた壁仕上げを

外壁は、下見板張りで厚さ15㎜ 幅180㎜の杉板を
ひたすら釘で打ち続けるだけであったが、
木作りの家ゆえに、内壁も杉板を張ることにしていた。

しかし、どの壁も杉板というわけにはいかない。
室内空間では、火や水や油をつかうところがあり、
それらに耐えられる壁でなければならない。
また常時は見えない壁もあり、
そこは杉板よりもコストの安い壁材で充分だ。

最近の家作りでは、壁のほとんどが乾式工法だ。
水で練り上げて、コテで塗る壁土のような湿式工法は採用されない。
コストと工期がかかる上に、職人の不足もあるようだ。

『一人で建てる木組の家』では、
古家のはく落する壁土や天井裏に降り積もった瓦の葺き土で、
家の中の土ぼこりに悩まされているので、壁土は不採用だが、
表面仕上げの練り物には、経験や実験をしたかったので、
いくつか挑戦した。

各種壁仕上げ

1) タイル仕上げ

台所は、水も火も使い、油汚れがはなはだしい場所だ。
特に壁に取り付いた油汚れは、なかなかとれないやっかいなものだ。
年末の大掃除で、
油汚れの換気扇と壁の担当は夫が任されることが多かったので、
壁材を何にするかは、大きな課題だった。

この油汚れは、壁にとどまらず、調理台にも及ぶので、
調理台を木で作ることは全く考えてなかった。
オイル仕上げくらいでは、木にとりついた油汚れはとれない。
ペイントを塗るなら、木のよさは失われる。

この油汚れや水や火に対抗できる物として、ホーローを選んだ。
だから、壁もホーローにしようと思った。
しかし、素人ではホーロー鉄板の加工はとても難しいと言われた。
特殊なカット刃が必要で、これはとても高価な物なので、
1回きりしか使わぬのは、割りに合わぬと。
ホーローというのは、鉄の表面にガラスを溶着させた物だから、
鉄とガラスを切って、折ったり曲げたりの加工は、確かに難しいと思われた。

次にステンレス板を考えたが、これも金属加工や仕上りに自信がなかった。

結局は、タイルにした。
タイルは目地の汚れが落ちにくいようだが、
汚れを防ぐ特殊目地材があるようだし、近頃ではボンドで貼るので
素人でも充分にキレイに仕上げることができると思った。



台所タイル張り 2007年8月完成

風呂場も壁と床をタイルで仕上げることにした。
ただし、激しく湯水のふりかかる風呂場の壁は、
キッチンの壁とは下地が異なる。



風呂場タイル完成 2007年9月

2) 白セメントモルタル仕上げ

土間の洗い場のうしろの壁は、白セメントモルタルとした。
タイルを貼る程のところでもないので、安価に仕上がる素材とした。
ただのセメントモルタルでは味気ないので、
しっくいの壁に合わせて、白セメントを使うことにした。



土間 白セメント壁(腰壁)としっくい壁 2007年9月

3) しっくい仕上げ
 
しっくいや珪藻土は呼吸する壁として、
最近では、とてももてはやされている。
木作りの家では、吸排湿は木材がやってくれるから、
呼吸作用を期待するものではなく、耐火性を期待して、
薪ストーブの裏壁へ塗ることにした。
薪ストーブには、レンガで炉壁を積むので、
壁素材は何でも良いのだが、
安全を期してしっくい壁とした。



薪ストーブ設置予定の後のしっくい壁 (この前にレンガを張る)

また妻壁の最上部の三角形部分も
木壁の中の白いアクセントとして、しっくい壁とした。



妻壁最上部のしっくい壁

4) 石灰モルタル仕上げ

しっくいの勉強をするために、
左官の本を何冊か読んでいる時に、
この石灰モルタルというのを見つけた。

 しっくいも石灰モルタルもどちらも硬化主材料は、石灰だが、
  日本ではしっくいがあまりに有名すぎるのか、
  石灰モルタルの施工例は少なそうである。
  ヨーロッパ等では、
  セメントが出現するまでは石灰モルタルがごく普通らしく、
  イタリアのフレスコ壁画が、この石灰モルタル壁へ描かれていると言う。
  
  日本で使われないのは、真っ白なしっくいが、日本人好みなのに比べて、
  石灰モルタルは砂の色の影響を受けて、クリーム色になるからだと。
  
  この記述を見て、むしろ使ってみたくなった。
  真っ白でつるつるしたしっくい壁よりも、
  落ち着いた淡い色の少しざらつくようなテクスチュアの壁も欲しかった。{/kirakira/
  しっくいよりも強度もありそうなので、土間の腰壁へ塗ることにした。



土間の腰壁 石灰モルタル壁におはじきを埋め込んだ



土間の腰壁 石灰モルタル壁 上部はしっくい壁

5)壁紙仕上げ

内壁は、杉板張りが中心だったので、
押入れも当初の計画では、杉板だった。

壁作業の下地作りを進めているうちに、
下地材の石こうボードやラスボードがとても安価なのに驚いていた。
下地材だから、その表面はあとで、塗り物などがのるのだが、
それにしても安い。
あの畳1枚分の大きさの重い石こうボードが数百円なのだ。
杉の壁板に比べたら10分の1にも満たない値段だ。

それならば、押入れの中の壁は、いつもは見えないところだから、
この石こうボードを使って安くあげない法はない。

また、施工も楽なように、仕上げは塗りものではなく、
壁紙を貼ることにした。
壁紙はのり付きのビニールではなく、のり別のコットンにした。
この方が健康には良い。



押入れ、 コットン壁紙張り

階段下収納は、木模様柄のものを使った。
見えないところに、オシャレをしておいた。
壁紙というのは、色彩や模様が豊かで、
部屋の雰囲気を様々に変えることができるすばらしい素材だ。
おまけにベニヤ板や石こうボードの下地に貼るので、
施工はスピーディーでコストダウンも図れるスグレモノだ。
それゆえ、今や大はやりの壁仕上げなのだが、
木組みの家では押入れと階段下収納の中に使っただけである。



階段下の収納 木模様のコットン壁紙

6)杉板仕上げ
 
木作りの家にふさわしく壁材の中心は、杉板である。
厚さ15㎜幅120㎜の相欠き仕上げで、しんちゅう釘で留めていく。
断熱材は使わないので、
外壁も内壁も板壁を少し厚くして、合わせて1寸とした。
羽目板という名称で既成の壁板もあったが、
厚みが薄いのと人口乾燥材らしく、木のツヤが無くなっているので、
1等杉を挽いてもらうことにした。
入荷した材はピカピカとつやが良く、節は多いものの、
とてもキレイな杉板だった。
モルダー仕上げは、悔しながら、小生の手がんなでは及ばない程キレイだ。

幅120㎜の板を原寸合わせしながら、コツコツと張っていくのだから、
根気のいる作業には違いない。
しかしこの他の壁仕上げが、総て下地材が必要なので、
施工のトータルで考えれば、
桟木に板を打ちつけてそれで完了という板壁仕上げは、
結局はスピーディーなのかもしれない。



トイレ 板壁仕上げ



 2007年3月 ~ 2007年9月
        

 これまでの『一人で建てる木組みの家の 家作り の様子は、こちらをどうぞ




 付記 妻・ひろより

夫が建てているのは、『木組みの家』であるので、
なんでも木でするのかと思っていたら
そうではなかった。

ひとつひとつ、丁寧に説明し相談してくれるが、
ややこしい建築資材のことなど、サッパリ分からない。

屋根下地に、
接着剤を使ったベニヤ板を使うことを拒否して
トタン屋根を強行してしまった程、
化学物質排除にこだわる夫である。

それならば、
「石灰、ケイカル、ラスボード、石こうボードってなに?」
と不思議に思い、尋ねると

「安定した自然素材だから、大丈夫」
と、自信満々に答えた。

「ふ~ん。自然素材で、化学物質ではないのか・・・・」


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一人で建てる木組の家~20 木製建具 その1

2008年08月03日 | 『一人で建てる木組みの家』
 
1 アルミサッシか木製建具か
 
 建具は最近ではアルミサッシが全盛だ。
 
 木製建具は、枠が反ったりあばれたりして開け閉めが重たくなり、
 すき間ができて冷たい風が入り込んだり
 黒ずんで汚くなったりと、今では古い家でも見かけなくなった。
 
 木製建具に比べて、アルミサッシは気密性も高く、
 単価も安く施工性も楽でスピーディーだ。
 
 しかし、家具作りを目指す木工屋としては、
 木製建具を作らないわけにはいかない。

 水廻りの風呂場だけはアルミサッシを使うことにして、
 その他はすべて木製建具を作ることにした。
 戸の形式は、スペースの有効利用から、
 許す限り、開き戸ではなく引戸にした。
 
 外壁や床張りが済んだので、
 今回は入口を除く外回りの建具を先に作ることにした。
 設計は夜にした。昼間は、戸外で肉体労働に慣れてしまったためか、
 明るい時に机の前に座って、図面を描くことに気が引けた。
 
 外回りは、ガラス引戸とした。
 引戸は、鴨居と敷居に容易にはめることができて、
 はめればガタつきなくはずれずにスムーズに動かねばならない。
 そのためには、寸法が非常に微妙で、かなりの精度が必要だ。
 また、材が細いため、強度を必要とする部分の組手が難しくなってくる。
 小さい引戸や軽い障子等には、戸車がついてないものだが、
 開け閉めをスムーズにするためにすべての引戸に戸車をつけることにした。
 
 錠は、いろいろ調べたが、昔ながらのねじ締り錠が良いようだ。
 というより、
 木製建具の錠と言えば、ねじ締り錠ぐらいしかなく、これが最上なのだろう。
 高さは90㎝以上の戸は、重くなるのでステンレスレールを取り付けて、 
 戸車もステンレス製とした。


南側窓はめ込み完成  2007年3月


東側妻窓はめ込み完成 2007年3月


真ちゅう製ねじ締り錠  北側窓 押え縁は黒で玄冬

2 引戸の加工

 a:木取り
 
 建具材と言えば、反りや狂いのない無節の柾目や糸柾を使う。 
 国産の針葉樹で揃えようとすれば、とても高価なものになる。
 
 今回使用する材木は、ヒノキの1等材。
 節はあるし、柾目の部分は少ない。
 ぜいたくな木取りをしていては、使える部分がなくなってしまう。
 いくらかの反りは覚悟して、一枚一枚考えながら、木取っていく。
 目の通った柾目がでてきたら、長尺の縦框へ利用するようにする。
 背の低い戸なら反りは少ないので、板目材も使うが、
 背の高い戸は、反りが大きくて、
 戸が開かなくなることもあるので、目の通ったものを使う。
 柾目の面を見付け(見え掛かり側)に持ってくれば、
 左右の反りは横框で止められる。


木取り 30㎜厚のヒノキ板


ルーターでの溝彫り


ノミの溝さらえ


 b:取手 
 取手は最初から縦框への切り欠きを考えていた。
 機械彫りをした穴へプラスティックや金物でできた取手材をはめ込むのが
 近頃の方法のようだが、
 切り欠く方が、触感がいい。
 
 ただ切り欠きの方法が分からなかった。
 丸ノコ盤、溝切りカンナ、ルーター、角ノミ等の機械を考えていたが、
 どれもうまくいきそうにないので、手加工で試してみた。
 畦引きノコとノミでやってみたら、案ずるより産むが易し。
 とてもうまくいった。
 時間もかからない。
 機械よりも手作業が早くて、キレイに仕上ることもある。


組立て中 取手の切り欠きが見えている


東側腰高窓の取っ手の切り欠き 押え縁は、緑で青春

 c:2枚枘の威力
 
 縦框と横框は枘組とするのだが、
 一枚枘でするのか2枚枘とするのか大いに迷った。
 建具は材の幅が狭いため、
 堅固な組み方として2枚枘とするのが本来の方法だが、
 建具の枘や枘穴作り専用の工具なしでは、とてもうまく作る自信がない。
 そこで、強度が少し落ちるものの、
 慣れた一枚枘でスピーディにつくることにして、
 1組を試作。まあまあの出来で、心配した一枚枘の組み手強度は充分だった。
 
 しかし、2枚枘に未練があった。
 やはり一度は挑戦しておきたかった。
 2組目は、2枚枘で作ることに。
 枘穴は小型角ノミ盤で少しずつ開ければ、時間はかかるがなんとかなる。
 枘の方は、丸ノコ盤に手製のフェンスを立てて、
 微調整を繰り返しながら作ってみた。
 それなりのものは出来たが、
 果たして2つの枘穴に2枚枘がうまく入ってくれるのか。
 
 おそるおそる仮組みをしてみる。
 この時の緊張感がたまらない。
 少し堅めだが、ピッタリと入った。
 1枚枘に比べて、断然しっかりと組めている。
 手間はかかるが、慎重に丁寧に作ればうまく作れることが分かったので、
 3枚目以降はすべて2枚枘で作ることにした。


カンナの仕上げ削り 2枚枘が見えている


 d:仕上カンナでツルツル

 建具も塗料を塗らないので、材の表面仕上げを手ガンナですることにした。
 ヒノキ材は、仕上げカンナをかけるととてもいいツヤが出る。
 今持っているカンナ盤ではここまでは無理だ。
 久々のカンナ削りなので、カンナをチェックすると、刃が不合格。
 丸刃を直し、裏押しをする。裏刃も耳を直して砥ぎ直す。
 台の方は、OK。カンナはいつでも取り扱いが難しい。
 カンナが思うように扱えたら、木工屋も一人前だろう。


カンナの仕上げ削り

 e:組み立て

 木組み方法は、縦框と横框を枘組してクランプで締めつけるだけなので、
 わずかだがどうしても直角に狂いが出る。
 本来なら建具組立て用の大きな直角決めの出来る締め具があるだろう。
 この狂いは、建具を敷鴨居に収めた時に柱とのすき間として現れる。
 柱そのものも完全に垂直には立っていないので、
 大きい時には7~8㎜ものすき間ができることもある。
 小さなすき間ならば、縦框をカンナで削る。
 大きなすき間は、戸車の片一方の高さを少しだけ低くする。
 こうして微調整を加えた戸も、框材が乾燥してくれば、
 またすき間ができてくる。
 1年程経ってから最後の調整をすれば、もうほぼ安定している。


組立て


 f:押え縁に色を付ける

 ガラスを取り付けるには、いくつかの方法があるようだが、
 素人向きでありながら、しっかりと固定できるのが
 押え縁を木ネジで止める方法だ。
 近所の元船乗りのAさんが、この戸を見て、
 「この押え縁の戸は、船のガラス戸と同じで、この方法だと、水が入らないのだ」
 と誉めてくれた。 
 ただ、ネジ止めの押え縁は、
 他の方法に比べて押え縁が目立ってあまりスッキリとはしないのが、欠点だ。
 
 そこで思い付いた。
 どうせ目立つなら、色を付けて、もっと目立たせてアクセントにすれば良い。
 また、色は方角ごとに変えればおもしろい。
 
  陰陽五行や風水では、方角に色や季節を当てはめている。
   東は、青と春、南は朱と夏、西は白と秋、北は玄(黒)と冬。
   青春、朱夏、白秋、玄冬は馴染みのある言葉。
 
 そこで、東側の引戸の押え縁は、緑(青)色に、
 南側は、赤(朱)色に、西側は白に、北側は黒に。
 出来上がった引戸は、押え縁に色が着くと、とても豪華で引き締まって見える。
 自分でも、惚れ惚れする出来だ。
 
 だが、木製建具を自作したことに感心する人はあっても、
 この押え縁に気付いてくれる人は、まだ誰も居ない。
 主は、「東は青春、南は朱夏、、、」と、
 得意気に説明したくてウズウズしているのだが。


押え縁の胡粉塗料を溶いている


押え縁の塗装乾燥中 食物性油脂塗料

 
 g:ガラスは薄い方が良い?

 ガラスはインターネットで購入することにした。
 種類もあり、指定した寸法に切ってもらえるし、値段も手頃だった。
 トイレと洗面所は型板ガラスにして、その他は透明ガラスにした。
 厚みは強度を考えて、5㎜とした。
 3㎜と値段はそれ程違わないので、より丈夫な5㎜だと判断した。
 送られてきた5㎜ガラスは、ずっしりと重く、とても丈夫そうで、
 割れ易いガラスという印象はなかった。
 実際、厚みが5㎜あれば、
 普通の透明ガラスでも、陳列棚ぐらいにも使える程丈夫らしい。
 
 しかし、ガラスをはめ込んだ引戸は、とても重かった。
 計算すると15㎏ほどはある。
 これを持ち運んで、敷鴨居に収めるには、相当の力がいる。
 しっかり腰を据えて持たないと、倒れてしまう。
 一旦レールに収まると、重厚にスムーズに戸車が回ってくれるのだが、
 調整のために何度も出し入れをすると、重さが こたえる。
 必要な強度を考えれば、3㎜厚のガラスでも良かったのかどうか?


ガラスのはめ込み 押え縁ネジ止め


 h:完全なる戸

 30枚程の外廻りの大小のガラス引戸をはめ込むと、ずい分と家らしくなった。
 これで、やっと風雨や埃からしっかりとガードできる。
 
 が、
 1か月程掛って作り、ようやくはめ終わった木製建具を見ての
 妻からの感想は、相変わらず手厳しい。
 「この戸で、大丈夫やろかねぇ~?」
 
 ガク然とする夫ではあるが、
 アルミサッシを見慣れた妻の目には、
 木製建具は、いくばくかの不安を与えるようだ。
 「木製建具って、反ったり、汚れたりするよね。
  やっぱり、アルミサッシがいいよね」
 虫やすき間風の入らない完全なる戸を求める妻には
 不完全な木製戸は、やはり不満が残るようだ。
 
 この外廻りの建具は、1年半経った今でも、大きな狂いは生じていない。
 居間の東窓の引戸の1枚だけが、反って動きにくくなったので、
 カンナで削ったら、 スムーズに動くようになった。
 木製戸というのは使っていく中で、色々ちょっとした不具合が生じるが、
 その対処方法さえわかってくれば、そんなに毛嫌いするほどの物でも
 ないのだが。。。



妻窓のはめ込み


 2007年1月末~3月初旬 作業延べ日数 27日間



付記:妻:ひろより

 夫が、外回りのガラス戸などの建具を、総て木で作ると言い出した時、
「ひぃゃあ~! そんなんしてたら、何時まで経っても家はできひん」
 と、何とか、木製建具案を阻止しようと努力した。

 築50年近い古家の縁側にはまっている木製ガラス戸は、
 テレビのCM撮影現場に使用の申し出があった程
 珍しく、古くても、とても趣のあるものであるが、

 
 撮影中 
 
 現実には、すき間だらけで、
 冬は、寒風が吹きぬけて、カーテンがはためき
 夏は、カニ、フナムシ、ムカデなど出入り自由
 強風が吹くと、ぎぃーぎぃーと、
 不気味な音を立てて不安このうえなかった。

 特に、台風時には、高波や強風が当る、海辺の我家である。
 なんとしても、家を守ってくれる、ガラス戸はサッシにして欲しかった。

 アルミサッシは、
 気密性など機能性も優れていて、工期も早く、その上安価である。

 しかし、夫は、
 さっさと、手際よく、次々とガラス戸を作り始めていた。
 気密性は、アルミサッシよりも劣るが、
 家本体に比べれば、建具などお手のもの、すぐ出来るし、
 手間賃がない分、材料費だけなら、安い 
 と言うのである。

 確かに、お抱え大工の夫は、
 製作途中にも関わらず、3㎜から5㎜厚へのガラス変更にも対応し、
 押え縁にも、色を付けて、お洒落にデザインし、
 妻に、夢と期待を与えてくれた。
 「北欧の輸入住宅のような、豪華なガラス戸になるかもしれない」と。

 今、「一人で建てる木組みの家」に、転居して1か月。
 
 ムカデは3匹来訪したが、カニ、フナムシは、現れていない。
 蟻1匹通さない防犯体制は、不可能なようで、
 アリ、羽虫の類は、多く出没するが、
 夫が、コマメに、戸枠などをカンナ掛けしたり、手直していて、
 防虫対策は、かなり良さそうである。

 台風と冬の寒風から、どれ位守ってくれるかは、これからである。
 

 それにしても
 近くのホームセンターで購入した真ちゅうの、ねじ締り錠は、
 「なんか ちゃっちぃーの」
 クルクル回しての開け閉めが、昭和時代初期である。
 北欧の輸入住宅の窓には、程遠い。

 
南側窓  ねじ締り錠を締めた所 押え縁は赤で朱夏



 せっかくの木製建具なんだから、錠も
 お洒落なデザインの、“洋風アンティーク風”にしてほしかったなぁ~。
 
 

「一人で建てる木組みの家」の 家作りの様子の これまでは、こちらをごらんください。
 

 


 


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「一人で建てる木組みの家」~⑲階段他

2008年06月08日 | 『一人で建てる木組みの家』
1  階段は難しい!

 部屋のスペースを広く使うためと動線の関係上、
ロフトへ上る階段は直角に折れ曲がったカネ折れ階段とした。
また構造は、階段下のスペースを有効に収納として使えるように、
裏板や側板のついた箱階段とした。

最近よく住宅雑誌等で紹介されている裏板や
側版のないはしごのような階段(力桁階段)は、
軽快でオシャレなのだが採用しなかった。

 箱階段は直線ならそれ程難しくなかったと思うが、
直角曲がりはとても難しい。
図面を描こうとして、頭の中で立体をイメージするのだが、
なかなかイメージできない。
側板を柱に固定して踏板をとり付けたら、
裏板をうちつけて完了というぐらいのものなのに、
側板の図が描けない。
やはり、手と頭で考える方が早いと現場であれこれ考えるのだが、
どうしても詳細がつかめない。

結局、ベニヤ板で型板を作って、現場の柱へ墨付けしていくと、
ようやく立体がつかめてきた。
立体が頭の中で描ければあとは早いもの。
側板の墨付けから加工へと一気に進む。
木組みの仕口や家具の設計をする時、
平面図、正面図、側面図以外に姿図を描くようにしている。
姿図なら立体感そのものだ。

階段寸法は、踏幅245㎜、蹴上げ187.5㎜、13段である。
13段とは13階段を思わせて、あまり気持ちの良い段数ではないが、
住宅の階段はどうしてもこの段数になってしまうものだと、
知人の建築士が言っていた。


側板の加工


側板の取り合い部分


踏板の取り付け


踏板の取り付け


2 階段の加工、取付け

 側板を取付けるには、柱が不足するので,1間の中間に半柱を入れた。
側板は厚さ40㎜、幅315㎜のベイマツ、踊場の上下各2枚ずつ、計4枚。
 側板の加工は、柱への取付け部分の切り欠きがとても大きい。
丸ノコで何本も切れ目を入れて、ノミで切り欠いていく。
済めば裏返して次は踏板を入れ込む切り欠きを同じ様に作る。
丸1日近くかかって、側板1枚の加工が終わる。

 踏板は厚さ30㎜のヒノキ。
後ろ側の木端面は階段勾配に合せて、鋭角に削る。
削るのは大変だから、丸ノコ盤で切ろうとするが、
45°以下の鋭角には切れないので、
45°に切っておいてあとで残る部分を手ガンナで削る。
 加工が済めば、4枚の側板を柱へ釘留めする。
側板と側板の取り合い部分の相欠きが,
すき間なくうまく収まるかどうか心配したが、
まあまあの出来栄えだ。
踏板をうしろから差し込んで釘留めする。
最後の裏板は、
内壁用の幅120㎜、厚さ15㎜の相欠きしたスギ板を釘止めして、完了。
 苦労した階段が出来上ると、嬉しくて何度も上ったり下りたりした。

踏板を入れ込む切り欠きが少し大きかったようで、
何枚かの踏板がパタンパタンと音がする。
小さなクサビを作って、切り欠きと板のすき間へ打ち込むと
パタンパタンという音は消えて、
あの階段特有のギシギシという音に変わった。


側板と踏板


側板と踏板


側板と踏板


踊り場


階段出来上り


3 階段を上ると貫だった。

 出来上った階段を上ると、ロフトへの進入を妨げるように、
小屋貫が横一文字に通っているので、ロフトへ入るには、
これをくぐらなければならない。

 妻からは、大不評である。
 
  茶室のにじり口だと思えば良いのだとか、
  めったにロフトへ上ることはないのだから、とか,
  慣れれば気にならなくなるものだ、とか、
  妻を説得する。

 しかし、「できるものなら、切り取ってしまいたい」と、
  一番気にしている本人が言っても、
   説得力は全くないのだが。
 
 小屋束を組む時に、途中で気が変わって取り付けることにした貫だが、
小屋組がほどけて崩れてしまいそうで、
  今もって取ってしまうことができない。 
 「今後どのように対処するのか」 解決を迫る妻へは、
 はっきりした返事はしないことにしている。



階段を上ると貫だった。


4 柵はなかなかなものだ

 転落防止のための柵を設ける。
子供の転落やすり抜けを防ぐことも考えて、
高さ770㎜、立子のあき寸法150㎜とした。
 組み方は、地覆を切り欠いて、床板の端に釘止めし、
笠木は蟻枘で親柱へ固定。
その後、立子は、地覆側へは枘で、
笠木側へは枘穴をあけた板を笠木へ釘止めして固定。
 
柵が出来上ると、室内空間に立体感や動きが出て、
木組みの家が一層強調される。
なかなかのものだ。


ロフト手摺

5 キャットウォーク

 東妻面の2階部分にある3つの小窓は、どうして開け閉めするのか。
当初からの悩みの種だった。
はしごをかける。下からヒモを引っぱれば開閉できる仕掛けを作る。

どちらも却下して、結局は歩み板を渡すことにした。
そうすれば、小窓の開閉以外に小屋空間の保守管理用にも使えるから。
気軽に渡れるように、幅60㎝程の広い物を考えたが、
幅が広いと下から見上げた時に不細工なので、狭くして30㎝とした。
これなら足場板と同じだ。
ロフトから窓に向かって1本、窓の下に1本、計2本をT字形に置いた。
床板を加工して、取り付けた板はまさにキャットウォーク。
猫のようにソロソロと渡る。少し緊張するが、子供の気分になれる。
 
 しかし、やはり妻には不評だった。
「なぜ、窓の開閉器を作らなかったのか。こんな板は下から見て不細工だし、ジャマだ」
「キャットウォークなんか年をとれば渡れなくなる」と。

妻は、今もって一度もキャットウォークウォークを歩いたことがない。
窓の開閉作業は、私が一人占めさせてもらえるようだ。


キャットウォーク

 工事期間2006年12月~2007年1月

 付記 妻:ひろより
 
 骨組みではなく、家らしくなってくると、
 妻;ひろは、ひんぱんに様子を見に行った。

 そして、「妻の家作り実況版」を、アップするようになった。
 夫が、「あっ~、とっておきの秘蔵写真を、先に使うなんて」と 
 落胆するのもかまわず、
 家作りの見せ場を写し、ドンドン先取り&横取りした。
 
  「妻の家作り実況版」2007年1月23日も、あわせてをごらんください。
 
 そして、現在は
 ロフトに上るたびに、夫を問い詰める。
 1間の貫が、ロフトを区切るように、4,5本もあるのである。
 「この貫、1本だけでも切ったらアカンの」と。
 
 が、今、冬物の洗濯をしています。
 大きな炬燵布団や敷物、そして毛布を、
 カラカラになるまで、乾かすのに、
 この4,5本もの貫が、
 意外にも、”立派な物干し竿”として 
 すご~く便利で、フル活躍している。

 ”災い転じて福と成す”
 

 
  一人で建てる木組みの家の 
家作り の様子のこれまでは、こちらをごらんください。
 


 『一人で建てる木組みの家』の記事が、
読売新聞愛媛版 6月6日付朝刊に掲載されてます。







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一人で建てる木組みの家 ~⑱床板張り

2008年05月15日 | 『一人で建てる木組みの家』
1 厚板を張る

床板は厚い材を張ることにしていた。
断熱性、木の触感、施工性等から優れていると思う。
1階はヒノキ1等の厚さ38㎜ 
2階はスギ1等の厚さ38㎜ 
板が厚いと単価も高くなるのだろうと見積りをとって、
他の床材と比較してみたら、15㎜厚の合板の床材と比べて、
ヒノキの厚板が少し高く、スギの厚板なら少し安いぐらいだった。
また、ムク材や集成材の特選物、無節物なら、
ヒノキの厚板の2~3倍もするのには驚いた。
厚板は経済性にも優れていると言える。

施工性に優れているというのは、
板が厚いため根太を省略して大引に直接張れるからだ。
2階に張った床板は、1階から見ると
天井材にもなる。
板材は、本実加工をして、四面ともモルダーがけしてあるので、
ツルツルでとてもきれいだ。

ただ、スギの方は柔らかいため、材を動かしていると、
注意していてもどうしてもキズがつき易い。
幅は165㎜、長さは4m。
見た目のきれいな方を表面にした。
だいたいが、木表の方がキレイなので、表面とするが、
中には木裏の方が、キレイなので、表面としたものもある。
木裏は心材側なので、材が丈夫だが、ササクレ立ち易く、
肌が触れるところへは、使わない方が良いようだが、
原木が大きければ、ササクレもそれ程心配はいらないと思う。

1等材なので、
節がたくさんあるのは仕方ないとして、死節があると困る。
床下から風が抜けてしまう。
死節のある材は切って、他の場所に使ったり、
目だたないところでは、穴埋めをして使った。

床板として、製材所でほぼ加工が済んだ材なので、
あとは所定の長さに切って、張るだけだ。
が、もうひとつ忘れてはならない最後の加工がある。
それは、糸面取りだ。
張った当初は、板と板がピッタリすき間なく並んでいるので、
面取りの必要性はわからない。
しかし、材が乾燥して収縮し、すき間があいた時に、
この糸面取りが、足裏にとても優しいのだ。
ホンの少し仕上げカンナでなでる程度で良い。

釘は、65N を使い、
ドリルで予備穴をあけてから、釘絞めで打ち込む。



3回目の材木購入 2007年10月


床板とその他の板材の前で


2 最初の失敗

板の本実加工というのは、
木端面を凹と凸の形に成形することで、
この凹と凸の大きさの加減で、
収めた時にキツかったり、ユルかったりする。

4mの長尺では、ユルめじゃないと入らないと言われたので、
そうしてもらった。
だが、ユルめであっても、当て木をして、ゲンノウで叩くぐらいでは、
簡単には入らない。

そこで、本で見た床板寄せの治具を作ることにした。
釘で固定した板と床板の間に2本のクサビを打ち込むだけの簡単なものだが、
これが相当なスグレ者だ。
気持ち良く板が入って、全くスキ間がなくなる程寄ってくれる。

これでようやく2枚目が張れたと思った時、失敗に気付いた。
凹に凸を入れ込んで、凹の方に釘を打っていた。
これは、逆だった。
1枚目は面倒な加工をして収めたのに、また一からやり直し。
手戻りほど、気が抜けることはない。



最初の失敗 この板は使えません。



床板を寄せるスグレ者のクサビの治具



3 半端の収め方

各部屋ごとに張っていくと、その部屋の一番最後には必ず半端が出る。
板幅の全幅165㎜に近い半端なら気にすることはない。
しかし、20㎜や30㎜の狭い幅の半端なら、見た目がよくないので、
この半端になる方は部屋の目立たない側にくるようにするのが良い。

洗面所の床板を張り終えようとした時、なんと最後の半端が3㎜だった。
板を3㎜幅に切って、床板に接着することで、3㎜のすき間を埋めることができたが、
この半端部分が洗面所の入口側なのだ。
奥の洗面台の下なら全く見えなかったのに。
入口にあるものだから、洗面所に行こうとする度に目につく。

床板を張る前には、必ず部屋のどちら側から張った方が良いのか、
考えてみること。

一番最後の板を収めるには、寸法を測って加工した最後の板と
一つ手前の板を同時に上から押し込めば、キレイに収まる
と本に書いてあったので、
その通りにしたが、押し込めなかった。
この方法は、板厚が15㎜程度の薄いものなら可能だが、
今回のような厚板では不可能だ。
最後の板は、凹の部分の下側の出っぱりを切り取って、
上から落し込み釘止めするしかないようだ。



リビングの床張りは、ヒノキ材



床下点検口の調整をする

4 ロフトの床板張り

2階のロフトの床板は、利用頻度が少なく目立たない場所だということと、
コストダウンのためにスギ板にした。
最近では、柔らかいスギ板の床材が足ざわりがソフトで暖かいと、
大変人気があるそうだ。

床材は耐久性の上から、ヒノキよりもマツ、
マツよりもナラというように、より硬い材が使われてきたが、
ヒノキより柔らかいスギで、
どの程度耐久性があるのか経過をみようと思う。

2階は1階よりも柱間隔(小屋束間隔)が狭いので、
4mの材を持ち上げて張ることができないかもしれぬと思っていたが
事前に試してみるとなんとかうまくできたので、長尺で張ることにする。
2階の床板は1階の天井板でもあるので、
板の上面と下面の両面がキレイでなければならない。
1階のヒノキ材では結構死節のものがあったが、
スギ材ではほとんど死節のものはなく、また両面ともキレイな出来だった。
木表側を2階の床面とした。

床材の収め方で、2階と1階とでちがうところは、柱まわりだ。
1階では柱にあたる部分は、
床板を柱の寸法に合わせて切るだけで良かったが、
2階では小屋束の方も欠き込んで床板が入り込むようにしないと、
天井を見上げた時に小屋束廻りにすき間がみえてしまうのだ。
この小屋束の欠き込み加工(首切りと呼んでいた)が
めんどうでキレイに収めるのも難しかった。
このころは、1月初めの寒い時だったが、
2階はポカポカ陽気で気持ち良く作業が進んだ。



ロフトの小屋束の首切り加工



ロフトの床材はスギ板


 2006年11月、2007年1月 延べ18日間



付記;:妻・ひろより

 みかん農家である我家の最も忙しい頃、
 夫は、みかん収穫・発送の合間合間に、
 さらに夜にも、電気スタンドを点けて
 床張りをしていた。
 
 最も奮発した、ヒノキの床材が、
 長く外に置いておくと、 雨に打たれて、
 柱や梁材のように、濡れて汚れてしまうからである。


 夫が夜遅くまでかかって張った床を
 朝、「さて、どれだけ進んだかな」と楽しみに見に行く。
 
  お日様でほんのり暖まった、ヒノキの床材の上に寝転ぶと、
 ツルツルで、ぽかぽかで、ヒノキのいい香りがして
 ホントに気持ち良かった。

  「もう、ここで住もうか」
 
  あっ~  
 でも 
 壁もできてないし、
 窓もできてないし、
 まだまだでした。
 



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一人で建てる木組みの家~⑰床板を張る前に

2008年05月01日 | 『一人で建てる木組みの家』

1 内部敷鴨居の取り付け

内部には、敷鴨居が5箇所あるが、外廻りでたくさん取り付けたので、
簡単に取り付くかと思ったが、ちょっと難しい部分が出てきた。
柱1本に3方向から敷鴨居が取り付いてくる。
2方向までは、今まで通りにやれば良いが、3本目が入らない。

分からないので放っておくと、半日して思いついた。
雇い枘でやれば良いのだ。
問題は、少し寝かせれば、答えが出てくるものだ。

2 木の反りは難しいゾ

片引戸が4箇所ある。
戸が引きこまれる壁は厚さが薄く、その柱も半柱と言って、
普通の柱の半分程の厚さになる。杉材の120㎜×70㎜。
注文した時から、どうしても反ると聞かされていたので、
覚悟はしていたが、加工する時には、それ程の反りはなかった。
わずかに分かる程度だけだった。
だから見え掛かりだけを気にして取り付けたが、その後で、気になってきた。
気になってくるともう止まらない。
材は4月に入荷してから、半年程経っているが、乾燥は充分とは言えない。
これからも、乾燥を続けるからまだ反る。
半柱が反れば、引戸を押さえつけて、引戸が動かなくなる。
こりゃマズイ

取り付けた4本の半柱をチェックしてみると、
キッチリ(・・・・)4本とも反対向けに取りついている。
全部取りはずして、少し加工し直して付け直す。
木の反りは、事前に充分に読まなくてはならない。

しかししかし、その後建具がとりついてから、
4枚の引戸のうち、1枚の開け閉めがキツクなってきた。
半柱を見ると、ナント内側に向かって反っているではないか
取り付けた時と逆向きだ。材の木取りが、素直ではなかったようだ。
こんなに、あばれるとは。
反りは難しい。

3 通風口に網を張る

ネコ土台とネコ土台の間のすき間が、床下通風口になる。
この部分は、このまま置いておこうかと思っていたが、
この土地は、無断で家へ上がりこむ虫や小動物達がとても多いので、
床下なんぞは、ミツバチ、ムカデ、ノネズミの格好の棲み家になる。
無断永住は遠慮してもらうことにした。

3mm目のステンレス金網を細長く切って、
内側から2cmの角棒で土台に釘止めし、下端は曲げこんでおく。


通風口の金網

4 大引と床束の設置

床板は38㎜の厚板なので、根太を省略して大引の上に直接張っていくことになる。
そのため、大引は、しっかりと水平に取り付けなければならない。
105㎜角のスギ材は、ほとんど反りがなく、あってもせいぜい2㎜程。
長い材を運び入れる時に、柱などにぶつけないように注意するくらいで、
大引は簡単に取り付けられた。
この大引の下に、床束を取り付ける。
束石の高さがマチマチなので、床束の長さも変わる。
水糸から寸法を測って、床束の長さを出していたが、うまく寸法がとれない。
大引は、ほぼ水平なので、大引の下端からの寸法を直接測ることに変更し、
同時に1箇所4点の高さを測ることにしたら、うまく収めることができた。
 
それでもどうしても束石と床束との間にわずかの隙間ができるところが出てくる。
ホンのわずかな隙間に何を差し込むのか。
思いついたのは、細かい砂だ。すき間の横に砂を置いて、
大引きに支え木をしてホンの少しだけ持ち上げておいてから、
地面にかがみ込んで、フッと吹き込んでやる。
支え木をとると、ピタリと収まる。
その後振れ防止の根からみ貫15×W90 を大引と直交方向に床束に釘止めする。

大引と床束に、延べ5日間を要した。


リビングの床下地








大引き、床束、束石、根がらみ貫

 2006年10月,11月

 付記;妻・ひろより

 夫曰く  木組みの家は、夏涼しく、冬暖かく住み心地がよい
  
 妻は思う 人間同様、虫やネズミやクモも、居心地が良さそう。
      ベタ基礎のコンクリート打ちでない床下なんぞ、冬眠に最適

 島の人の木造建ての家の天井にミツバチが巣作りをして、
 ある日、天井から、蜂蜜がポトリポトリという、話を聞いた。
 
 「舐めたら甘いかな♪」と、一瞬羨ましかったけれど、
  かなり掃除が大変な、やっぱり迷惑なことである。

 ましてや、ネズミやヘビが住んでくれて、
 なにか、楽しいいことや、いいことあるだろうか

 考案のステンレス金網    
 
  乞う、ご期待です。




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「一人で建てる木組みの家」~⑯下水管の埋設

2008年04月25日 | 『一人で建てる木組みの家』
1.台風対策

みかん畑の草刈りの合間に、少しずつ下水の設計を進めて、
一週間程で大略が仕上がった。
合わせて、風呂場や便所、洗面所等の設備関係の品を、
インターネットで調べる。
その後、クラフト作りや秋作の菜園準備をしていたら、
家作りに手がまわらない。

その内に、大きな台風が接近して来た!
屋根と外壁ができていても、開口部は、何もないオープン状態!
これでは、家が台風にさらわれてしまう。
大慌てで、園芸用のビニールシートやブルーシートを開口部にあてて、
桟木で留めたり、
ガラスのない古いガラス戸にビニールシートを留めつけて、はめこんだり、
古い雨戸を補修してはめこんだりと、
台風を横目ににらみながら丸一日かけて、開口部をふさいだ。
台風13号は、最悪のコースをとりそうであったが、
少しそれて潮まわりや時間帯もよかったので、
何事もなく無事通過してくれた。



下水管の掘り始め 台風対策のブルーシートが見えている



2.ツルハシが擦り減った!

設計ができてから1ヶ月が経ってようやく作業に入る。
流末まで50mほどある。
ツルハシとスコップで、上流から掘り始める。
大三島のこの辺りは、花崗岩の風化土の真砂土地帯だから、掘るのは楽な方だ。
みかん畑や菜園でも、楽に掘れる。
ただし砂利や転石が混ざってしまうと、どこも固く締まるから掘りづらい。
この敷地も新屋の方は、
工事残土をいれているので砂利も多く、よく締まったところは大変固い。
1m掘り進むのに一時間かかった部分もある。
掘り幅をギリギリ狭くして掘削量を減らそうとしたら、
スコップの作業がしづらくなり、効率悪く,かえって遅くなった。
一番深いところで、胸あたりまで。
本管のある古家の方へ来ると、こちらは砂状でとても掘り易い。
しかし柔らかすぎて掘り穴が崩れるのが、やっかいだ。
掘り上がったと思って、先へ行っていると、
ドサリと音がして掘ったところが崩れてしまっていたりする。
ひたすらの穴掘りに4日間を要した。
ツルハシのとがった方の先っぽが、磨り減って不細工に短くなっていた。


一番固い所を掘る



枡と本管をつなぐ


北側の配管



3.パイプをつなぐ">

下水パイプの塩ビ管は、
VU管を使う。本管にVU100 、枝管にVU75とVU50、枡用にVU150.。
これらの管を接続するのに、
90°や45°のエルボ、偏心ソケット、チーズ等の継手が必要だ。
また、枡も様々なタイプのものがある。
カタログを見ながら、詳細に図面を作り、
間違わないように材料を注文するのに、
かなり頭を使わなければならなかった。
それでも、最後の方には、変更や追加が出てきた。
管の取り付けは、枝管を先にして、それを本管につないでいく方法をとる。
この建物内の枝管がやっかいだ。
管勾配を気にしながら、継手を使って、
建物の基礎の下をくぐらせて、枡へつなぐ。
台所、トイレ、洗面所、風呂場と進めていく。
丁張りの水糸で、管底高を取りながら、枡と本管を設置する。
次第に深くなると作業が難しくなる。

接着剤は遅乾性のものを使用。
接着剤の量は、あまり多すぎても良くないだろうと、
最初にソケットだけに塗ったら、とても入りにくい。
「コリャ、ソケットと管の両方に塗るものなんだ。
管が入る時は、接着剤が潤滑剤の役目をするんだ。」と気付き、
次からは、スムーズに入ってくれた。
管の切断には、木材用の替刃式ノコギリを使い、
切断線はボール紙を巻き付けて、エンピツで印をつけた。


枡と本管枝管の接続


接続枡と点検枡

4.水が、、、

古家の横を掘っていて、2度も水道管を破ってしまった。
どこを通っているのか、はっきり分からなかったので、
注意して掘っていたのだが、やはりやってしまった。
1度目は、水が吹いたからすぐに修理をした。
2度目は、翌日になって土が濡れていたので、気がついた。
継手の横からもれていた。これも修理した。
塩ビ管をつなぐのは、旨くなったみたいだ。

 
この地域では、みかん作りがもっと盛んだった頃、
害虫や病気を防ぐために、薬剤を共同で散布していたそうだ。
共同防除と言って、
それぞれのみかん畑に配水パイプがはりめぐらされて、一斉に防除を行っていた。
このパイプを設置するのに、自分達でやったという。
パイプの接続ぐらいは、皆お手のものである。
借りているみかん畑で、草を刈っていると、古くなった塩ビ管がよく出てくる。

塩ビ管の接続が旨くなっても、村では、当たり前のことらしい。



古家部分の配管


埋め戻し



2006年9月.10月


 付記; 妻・ひろより

 下水管工事をしていた頃は、台風の一番よく発生する頃であった。
 「台風シーズンが終わるまで、下水管工事は、待ったら」
 という妻の忠告には、耳も貸さず、
 
 「そんなことしていたら、いつまで経っても家が建たない」と
 夫は、家の廻りに、深くて長い溝をドンドン掘りすすめていた。

 おまけに、の神社の役をしていた夫は、
 溝を掘ったまま、途中で、
 秋祭りの準備や相談の為 始終出かけていた。
 この深くて長い溝は、台風の高潮を、家に呼び込むようなものである。
 妻は、この溝を眺めては、やきもきし続けていた。

 台風も逸れてくれ、下水工事も無事終わったのは、
 氏神様のご利益かもしれない。



 
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一人で建てる木組みの家~⑮外壁

2008年04月20日 | 『一人で建てる木組みの家』
1 外壁には、板を張る

壁の構造は、外壁と内壁に厚さ15㎜の杉板を張ることにしている。
板と板の間の空間には、断熱材は入れない。空気だけである。
高気密住宅は、目指さないので、断熱材の効果は期待しないことにした。

現在住んでいる古家は、昔からのこの辺りの家の造り方で、開口部がとても多い。
東西に細長い形で、南側に縁側があり、南側と北側に掃き出しのガラス戸。
幅の狭い側の東と西に壁と窓がある。
外周部分は壁が大変少なく、開放型のまさに夏向きの家だ。
このことからも、外壁は、この板壁で充分対応できると思っている。

市街地では、消防法上、この板壁は施工できない。
下見板張りは、施工が簡単で見た目もとても美しい。
街中では、やりたくてもできないが、田舎ならできる。
「一人で建てる木作りの家」には、ピッタリの外壁である。


下見板の源平模様


2 やってみてわかる 釘の打ち方

1ヶ月程前に息子が遊びに来た時に、
一日半かけて一緒にカンナ盤で、削っておいた杉板を張っていく。
幅180㎜ 厚さ15㎜ 長さ4mが、170枚。

板を張る前に防水紙を張っておく。
屋根のものより、薄くて軽いので張り易いと思っていたら、どうしてどうして。
平に張るのとちがって、縦に張るのは大変だ。
風にあおられると、どうしょうもない。
またはしごで上へ上れば、作業がもっと難しくなる。
やってみなければわからないものだ。
板を張る前に少しずつ先行して防水紙を張っておく。

板は下から張って行き、下端を3cm程先に張った板の上端に重ねて張る
ヨロイ張りだ。
釘は錆びないステンレスのスクリュー釘を使う。
この時、釘の打ち方に2種類ある。
横方向には、縦胴縁ごと(455㎜ピッチ)に打つが、
縦方向には、板の重ね部分に打つ方法と
重ね部分の少し上に打つ方法とがある。
強度優先の考え方の小生にとっては、
重ね部分に打つ方が断然強いと判断した。
重ね部分に打つということは、
板1枚に釘が2本打たれることになり、とても強いはずだ。
この方法で、東西南の3面を張っていったが、
ところどころで、釘を打つと板が割れた。
この方法だと、板の木端から15㎜程のところに、釘がくる。
見えてはいないが、下の板も割れているのだろう。

残る1面の北側は、もう1つの方法をとることにした。
重ね部分の少し上へ釘を打つ。
上の板で下の板を押さえつけるような打ち方になる。
これだと、木端から離れているので、割れを心配することもなく、
安心して釘打ちができ、釘の効きも良さそうだ。
感覚的には、こちらの方が合理的なような気がした。
これもやってみてわかること。




息子と下見板のカンナ削りをする。


外壁 東側から張り始める


外壁 2階部分の防水紙を張る

3 暑さに 負けずに
 
4mの板を張っている分には進捗が早いが、
窓や庇のような出張りがあると、加工に手間取る。
妻側の三角部分になると極端に進捗が遅くなる。
屋根勾配も少しずつちがうので、曲尺で寸法を測って、キッチリと写す。
はしごを上り下りする回数も増える。
そうしてうまく張れた下見板はとてもキレイだ。
ステンレス釘も銀色に光って良いアクセントだ。

妻面の最上段は足場を組まないと板が張れない。
足場丸太を組まずに、一番簡便な方法を頭の中で考えていたが、
どうしてもわからない。
とりあえず、板とロープを持ってきて、
少しずつ組みながらやっていくとうまくできた。
やりながら考える。これが一番だ。

この作業は、2006年8月の一番暑い時期だった。
終日直射日光のもと。板の上へ、顔の汗がポトポト落ちた。
水分補給はひんぱんにおこなう。
お茶、紫蘇ジュース、梅ジュース、桃、スイカ、。。
1日に2リットル以上は飲んだが、お腹をこわすことはなかった。
一番最後の北側に移った時は、強い日射しから免れてホットしたものだ。


外壁 足場を組んで最上段を張る


外壁 南側


外壁 北側


外壁 西側


4 見切り縁 この格好の良さがわからぬか

ヨロイ張りを側面から見るとギザギザしている。
このギザギザを隠すのに見切り縁をとりつける。
手の込んだ仕舞いでは、このギザギザの形に見切り縁を加工するようだが、
とてもそこまではやれない。
溝切りカンナで切り欠きをつけることにする。

この見切り縁は、
下見板の端部が出てくる4隅の柱や開口部のまわりにとりつける。
下見板のギザギザを隠して、見切り縁の縦線がスッキリと通ると
建物外観がとてもひきしまる。
柱と見切り縁の凸凹により、建物のコーナーに、荘重感が生まれる。

妻を建物のコーナーへ連れて行って、
「とてもいいだろう」と自慢するのだが、
その良さが分からないと。

見切り縁をとり付けている時に、
通りかかった近所の人が興味深げに近寄ってきたので、
これは感心してくれるのかと思いきや、
「なぜこんなものを取り付けるのか?」
と言われてしまった。

こんなにカッコウがいいのが、分からないの
 
  下見板と見切り縁で、22日かかった。
  これで、外装はほぼ完了した。


外壁 下見板のギザギザ


外壁 角柱の見切り縁



外壁 開口部の見切り縁


2006年7月、8月

付記 妻・ひろより

 キレイにカンナがけされた杉板が、どんどん張られ、
 スケスケの骨組みが、小さいながらも家の形になっていくと、  
 今にも出来上がりそうで、ワクワクした。
 
 しかししかし、やっぱり、なかなか、簡単ではない。
 几帳面な夫は、またなにやら、凝り始めた。
 
 そういえば、大三島転居当時
 築40年以上の古家をリフォームして、壁紙を貼った時も
 壁紙の端の仕舞いが気になると、細い縁取り木を何十本も作り、
 「仕舞いをきちっりすると、仕上がりが締まる
 と一人、悦に入っていた。
 
 あの時も、「いったい何が締まるのか」サッパリ分からなかったし、
 そんなことに時間をかける値打ちがあるのか、とかなり不審だった。

 どうも、四角四面、キッチリやの夫の美的センスの原点は、
 真直ぐクッキリ、境目ハッキリ、仕上がりスッキリにつきるようである。

 時間をかけて凝ったにもかかわらず、出来上がってしまうと、
 目だたたぬ、地味な、仕業やセンスには、誰も気付かず、
 その良さを、認めてもらえない夫なのです。



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一人で建てる木組みの家~⑭外壁を張る前に

2008年04月12日 | 『一人で建てる木組みの家』
1 縦胴縁

木組みが出来上がっていてもその上からすぐに外壁の杉板を張ることはできない。
板の安定をはかるため、縦に胴縁をとりつける。
455㎜ピッチで60×45㎜の角材を浅い枘で釘固定する。
梁や軒桁に枘穴をあけるには、脚立にのっての上を向いての作業になる。
これが連続すると、首がだるくなり後頭部までもが痛くなってくる。
ほどほどに他のことをやりながら進める。
妻側になると、2階部分ははしごを使っての作業。
上で寸法を当っては、下へ降りて材を加工する。上り下りが激しい。
はしごの上り下りが多い時は、その日は何ともないが、
翌日にモモが筋肉痛でダルくなる。


縦胴縁 2階妻側


縦胴縁 開口部廻り


縦胴縁 枘穴彫りを手伝う息子


2 この時 地震が!!!

2006年6月12日午前5時過ぎ、寝ていると大きな揺れで目が覚めた。 
家がギシギシと鳴り、棚の上の飾り物が落ちた。
新築中の家を慌てて見に行った。
何ともなかった。
大分県が震源地だった。当地では震度4,5だった。
新築中のこの家は、軸組計算の上では、外壁と内壁の板を張って、
地震に耐えることになっている。
今は貫までの骨組が完成していて、震度4.5に耐えたということは、
これ以上の地震がきた時には、内外壁を取り付ければ貫構造で耐震性は充分と考えられる。
と言うのも、貫構造だけでは不安なので、
一部の壁に筋違いを入れて補強しようかと考え続けていた。
そういう構造の設計を見たことがあったから。
ただ貫の柔構造と筋違いの剛構造をチャンポンして問題はないかという疑問はあった。
しかし、この地震で筋違いは、入れないことに決めた。
貫だけで、耐えてくれ。


縦胴縁 西妻側完成
 
3.敷居と鴨居
 
外壁を張る前に、開口部の敷居と鴨居を取り付けておかねばならない。
敷鴨居の材は、杉よりも硬めのヒノキとした。一等材なので、材質はマチマチ。
目の通った節のできるだけ少ないものを選んで使っていく。
この頃は、丁度息子が来ていて、家作りや畑作業を数日手伝ってもらっていた。
敷鴨居の溝を切るカンナをインターネットで購入するつもりの旨を言うと、
ネットオークションで買うと得だと教えてくれた。
それではと、息子に頼む。
1回目はダメだったが、2回目でうまくゲットできた。
中古だが切り刃がついていて 定価の数分の1で購入できた。
送られてきた溝切りカンナの切れ味も上々だった。
息子はよくインターネットオークションで買い物をするという。
パソコンの普及は、ショッピングの形態を大きく変えてしまった
とつくづく感じる。

敷鴨居の溝幅は関西と関東では違うようだ。
関西では6分(18㎜)、関東では7分(21㎜)。
では四国ではどうかと、今の家の鴨居を測ってみると21㎜だった。
購入した溝切りの刃も21㎜だったので、
これで溝を切り、建具もこの寸法で作ることに。
柱と柱の間に収まる敷鴨居は、一本一本寸法が違う。
その位置に応じた寸法をとって加工する。
その寸法を測ることを、光り付けという。
材を柱の前に置いて、柱の形態をさし金で、写し取る。
柱は真直ぐに見えても、必ず少しはねじれている。
この少しのネジれをうまく写して加工すれば、
鴨居はすき間なく、柱にピタリと収まってくれるはずだ。 
光り付けの時、鴨居材を柱の鴨居位置に留めておく治具(市販品では鴨居ストッパーと呼ぶらしい)を
自作し、光り付けた線の通りに丸ノコで切るための自在定規も作った。
内部造作となると見え掛かりを大変気にするので、
すき間があかないように切り線にとても注意を払う必要がある。
それでもやはりすき間が出来てしまうことがある。
後は、修練のようだ。


敷鴨居加工中


敷鴨居加工完成



4.出窓
 
妻が台所に出窓を作って欲しいと言った時には、気易く引き受けたのだが、
こうしてやってみると、なんと厄介なものだ。
出窓サッシなら、ポンと取り付けるだけでできるのだが。
窓が、ホンの30㎝程外に出っ張るだけなのに、とても複雑な構造になってしまう。
柱と同寸法の出枠を組み、窓台と天井をつけ、内壁を張る。
同様に外側には、屋根庇をつけ、外壁を張る。
小部屋を一部屋作るようなものだ。 
部材が小さいので、加工は簡単に出来ると思っていたら、
なんのなんの。部材は小さくとも、組手は多いし、
部材が小さい方が加工がやりにくい分、手間どった。
枠を組み立ててから、敷鴨居を入れる。
窓台は水濡れに強いネコ土台の残材のベイヒバを使い、
天井側壁は、杉板を打ちつけられるように、胴縁や桟木をとりつけておく。
屋根は庇と同時に作っていく。


出窓 出枠


出窓 出枠の込栓止め



5 庇
 
屋根のガリバリウム波板を張り終えた時には、
これでやっと雨をしのぐことが出来たと、大いに安心した。
しかし、屋根完成後、数日して雨交じりの強い風が吹いたら、
妻側の裾の方がビショビショに濡れてしまった。
これでは、窓から雨が入ってしまうではないか。雨を防ぐための庇が必要だ。
小屋裏空間を広くとって棟が高いから、雨が吹き込むのかと思ったが、
妻側というのはこういうものらしい。
よく見ればどこの家にも、妻側の開口部には、庇がついている。
当初の設計では考えていなかった庇を作ることに。
腕木の取り付け方法をどうするかで困った。
当初の計画から庇を考えていれば、柱に枘穴加工をしているのだが、
変更追加の庇だから、あとから穴を開けるのは難しい。
腕木を切り欠いて、柱へ釘止めをすることで妥協する。
それでもどうしても柱に枘穴を開けなければならないところがあって、
ノミと玄能で枘穴をあけたが、うまく穴が開かず、
腕木を納める時にエラク苦労した。
庇は当初の設計から考えておくこと。
庇の屋根は、野地板の上にたいていが金属板を載せている。
これも同様にカラーのガルバリウム鋼板でも張ろうかと思ったが、
板葺きの方が、野趣があっておもしろそうなので金属は貼らないことに。
15㎜の杉板は雨ざらしにすれば、どれ程の耐久性があるのだろうか。


庇 腕木釘止め


庇 腕木込栓止め


庇 垂木


庇 野地板
 

庇 西妻側


6.一筋敷鴨居と雨戸かけ 
 
一筋敷鴨居というのは、普通の敷鴨居の外側に1本だけある
雨戸専用の敷鴨居のことである。
外壁は杉板を下見張りするので、柱と同一面にならないため、
一筋敷鴨居は開口部だけに取りつけることにした。
また雨戸は敷居の上をすべって戸袋に収まるという構造ではなく、
一筋敷鴨居から取りはずして、引っ掛け棒に引っ掛けておくという構造にした。
使わない時には、雨戸を守るために、戸袋があるようだか、
雨戸そのものがしっかりしていれば、戸袋などは不必要と思われるので、
使わない時は、外壁に立て掛けておくだけということにした。
そのためには、外壁を張る前に、引っ掛けを作っておく。
この引っ掛けは、L字型の棒なのだが、人が見たら、
何なのかが分からないようだ。
外壁面からニュと突き出た棒が4本、雨戸を引っ掛ければ、
その用途がよく分かるだろう。


一筋鴨居


一筋敷居


雨戸掛け 上


雨戸掛け 下


 外壁を張るまでの作業は、ほぼこれで終了。
 2006年6月11日から胴縁を取り付け始めて、
 2006年7月29日に雨戸かけが終了
 49日間のうち、大工仕事に専念できたのが、延べ30日。
 タマネギやジャガイモの収穫や、サツマイモの植付けや
 みかん畑の草刈りと摘果作業が忙しかったけれど

 60%程が、家作りに専念できている。
 この時期は梅雨なのだが、屋根が完成しているので、
 雨降りでも作業が出来たからだろう。



 2006年6月と7月


 付記 妻・ひろより
 
夫は、今頃、何を講釈しているのでしょうね。
 妻・ひろは、2年も前のことなので、何も思い出せない。
 しかも、随分地味な、おもしろくない作業だったようで、
 写真も撮る気にならなかったらしい。
 「なんで、撮ってくれなかった」と 
 夫が文句を言っているが、後の祭りである。

 家の骨組ができ、屋根が乗ったので、
 壁はすぐ張れると楽しみにしていたのに、
 えらく、下準備ばかりにかかっていた。
 
 息子が手元として、勤勉に手伝ってくれたけれど、
 自動カンナ機で、外壁材を、何十枚もカンナがけしてくれたけれど、
 
 ホンマに、「一人で建てる木組みの家」は辛気臭いわあ~~~



これまでの「一人で建てる木組みの家」はこちらです。

 
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一人で建てる木組みの家~⑬屋根

2007年10月16日 | 『一人で建てる木組みの家』
1.何故、トタン屋根?

屋根材を何にするかは大いに迷った。

美しさや重厚さ,また耐久性の上では 何と言っても瓦が一番だが、
コスト、耐震性、施工性の点で、選択肢からはずした。
また海岸沿いということで金属も避けた。

残ったのが、コロニアルとアスファルトシングル。
コロニアルは、セメント,ケイ砂、天然パルプ(以前は石綿を使っていた)を固めたもの。
アスファルトシングルは、アスファルトと砂を練り固めたもの。
施工性を比べると、アスファルトシングルは、可塑性があって、断然扱い易い。シロウト向きだ。これにしよう
 
しかし、何か気になる。この島でアスファルトシングルを使っている家があるか。
車で走る度に、気をつけて屋根を見たが、どこにも使われていない。
どうも気候に合わぬようなので、とりやめることにして、コロニアルに変更した。
 
カタログや見本を取り寄せて詳細な検討をしている時に、
知り合いの屋根やさんが言った。

「以前コロニアルを施工した時、野地板がスギ板だったので、
日が経って板が乾燥してくると、収縮がはげしく、
釘止めしたコロニアルがガタガタに動いてしまって、
エラい失敗だった」と。

 コリャ、イカン
 
我が家も野地板は15㎜のスギ板。
合板を張る気はないので、コロニアルもダメだ。
 
では、何にするのか。
錆びの点が気になって避けた金属を再考することに。
寺や神社に使われている銅版なら良さそうだが。
だがコストが非常にかかるし、金属加工がどうも難しそうだ。

色んな本を探して浮かび上がったのが、トタン波板だった。
それも今はやりの、ガリバリウム波板だ。

 トタンは,鋼板に亜鉛をメッキしたものだが、
 ガリバリウムは、鋼板にアルミと亜鉛をメッキしたもので、
 耐久性はトタン板の3~6倍あるそうだ。
 トタン板の耐久性を5年(海岸地域で)とすれば、
 ガリバリウム鋼板は15~30年ということになり、結構な耐久性だ。
 またコストが安く、波板なら、平板と違って、
 そのまま釘止めするだけで良く、施工性はとても簡単だ。
 
ただし、波板は雨の音や太陽の熱がまともだ。
そのため、野地板を2重にして、空気層を設け遮音と遮熱をはかることにした。

「これで、屋根は完璧だ」と思った時、妻が言った。

 「トタン板なんて、みすぼらしいわあー。
 ニワトリ小屋や豚小屋の屋根と一緒やん。
 前は、コロニアルにすると言うたやん。
 トタンなんて、絶対にイヤ!」
 
確かに、トタン屋根は仮小屋や動物小屋に使われていて、
台風や大風で吹き飛んだり、めくれ上ったりして、
とてもみすぼらしく、見苦しいものだという印象が強い。

ある知人は、
 「京都の景観作りに関わった者なら、
仮説イメージの強いトタン屋根は止めて、ぜひ瓦にするべきだ」
 と言った。

 近所の人は、
 「瓦は載せんのかねぇ。菊間の瓦は焼きしまっていて最高よ」と言う。
 また、「柱や梁は太くて立派じゃが、なんでトタン屋根なんじゃろうね」 とも。

 妻に限らず、多くの人が、今もってトタン屋根に反対である。
 それでも、トタン屋根は出来上がった。張り上がった。

 ガリバリウム波板は、白銀に輝きとてもキレイだと思った。
 
 ある人が
 「隣の島へ渡る橋の上から、白く光る屋根が、よく見えた」 
 と言ってくれた時はとても嬉しかった。


非難ゴウゴウのトタン屋根を張り終えたのは、
コモンマローが満開の6月1日

2.アスファルトルーフィングを敷く
 
屋根の片面の野地板を張り終えてから、アスファルトルーフィングを先に張った。
早く雨よけをしたかった。
残りの片面の野地板を張り終えてから、
同じくアスファルトルーフィングを張った時には、本当にホットした。
これで、雨の心配がなくなる。


2006年5月23日 アスファルトルーフィング張り、南面がもうすぐ完了

ルーフィングは、少し厚めのものを購入。
ロール状のルーフィングはズシリと重く、屋根へ持ち上げて敷くのが思ったより難しい。
じゅうたんを敷くように、真っ平に、敷けるかと思ったが、
敷くうちに辺が伸びてヒダが出来てしまい、
タッカーで止めても凸凹が残ってしまった。


アスファルトルーフィングを、真直ぐに敷くのは難しい

アスファルトに砂を入れて固めたルーフィング材は、
カッターナイフで切ることが出来るが、
一度切ると刃がボロボロになる。
表面はまだにサンドペーパーだ。

この上を歩くのは、野地板の上を歩くより、ずっと楽だ。
滑り止めが効いて歩き易い。
しかし作業手袋は半日で指先に穴があいてしまう。
また膝をついたり、座り込んでの作業なので、
ズボンの膝や尻はすり切れて穴があいてしまった。


2006年5月21日 アスファルトルーフィングの上は、歩き易い

3.ガリバリウム波板を張る。  

波板を張る前に、しっかり基準線を出しておかないと,
真直ぐには張れないようなので、
ルーフィングに墨ツボとチョークで縦横の基準線を書き入れる。
波板は6尺物と7尺もの合わせて114枚。
上から6尺、7尺、7尺と3段張りになる。
縦の重なりは、20㎝、横の重なりは波山が2山半である。
釘は、28㎜のステンレススクリュー傘釘を、多めに打つことにして、
縦は50㎝ピッチで。

 さて問題は、張る順番だ。
屋根の下から張るのか、上から張るのか。
一般的には、重ね合わせのことを考えて、当然下から張っていくものだ。
しかし、屋根勾配がきついので、最下段には足留め材をとりつけておきたいし、
下から張れば2段目3段目は張った波板の上に載って作業をすることになり、
滑り易くて危険だ。
作業の安全性を優先して上から張ることにした。


トタン屋根を上から張り始める

これはやはり張りづらかった。
2段目を1段目の下へ差し込むのが、とても難しい。
波板があまり持ち上がらなかったり、ルーフィングの継ぎ目に当たったりする。
それでも、次の時には差し込み易くするために、釘をあとで打つようにしたりて、なんとか進めることができた。

波板は、横方向には伸び縮みが効くと書いてあったが、
実際には厚みがあったからか、ほとんど融通が効かなかったので、
基準線が大変重要な役目を果たした。

基準線なしでやれば、一度傾けば、どんどん斜めになってしまっただろう。

3段目の最下段を張るときは、
足留め材をはずして、安全ロープをはるこことにした。


トタン屋根張り全景

トタン屋根と言えば、
台風が来れば、必ず吹き飛ばされるものだというイメージがあるので、
釘打ちにはとても気を使う。

釘は、ステンレススクリュー傘釘で抜けにくくなっているが、
野地板に打ちつけるので効き長は板厚の15㎜だけだ。
釘を打っていてスコッと抜ける感じがする時は、
板の継目の節穴にあたった時なので、倍量をずらしてもう一本打つ。
失敗をして何度か釘を抜かなければならない時があったが、大変な力が必要だった。
これなら大丈夫そうだ。
それでも心配なので、重ね部分や端部には、多めに釘を打った。


トタン波板の釘うちの様子

4,棟包み

当初棟包みの意味合いや役割が良く理解できなかった。
またその構造もよく解からなかった。
棟の両側に波板を実際に張ってみてよくわかった。
波板と波板の突きつけ位置にすき間ができる。
それをふさぐものが、棟包みなのだ。目の当たりにして,すべてが理解できた。
とても重要な役割を持つものだ。
構造は至って簡単で、波板の上から下地材を打ち付けて、その上から棟包みをかぶせて、釘止めするだけだ。


棟包み施工途中

棟包みは、ガリバリウム鋼板に塗装した市販品を購入。
屋根の上で見るとボリュームあった棟包みだが、下から見ると細い帯に見えるだけだ。
瓦屋根では、棟瓦を高く積んで、一層屋根を立派に見せる。

銀桟の屋根には、この棟包みがシンプルでよく似合う。


棟包み完成


2006年5月30日 トタン屋根完成


 棟上から屋根のダイジェスト版も、覗いてみてください。
 「堀内さんちの七曜工房」の
 「大三島だより6」と「番外編 銀色の屋根」です

付記 妻・ひろより
 
私は、夫に出来る限りの希望を述べた。

 「ちょっとぐらい合板使ってもいいやん。スレート瓦にしよう」

  しかし、合板を使いたくない。“家の作りは、すべて、ムク材を使う”
という、夫の主張は、揺るぎなかった。

  ガリバリウム鋼板なら、海辺の家でも、錆び難いらしい・・・

  夫が、質実剛健で 合理主義 なのは、充分、知っている。

  夫の屋根材の選択は、
  ガリバリウム鋼板でも、一人で施工できる
  安価な、“波板”しかないようだった。

 しかし、いくら質実剛健主義であっても、
 
トタン屋根を、「心から、銀色に輝いて、美しい」
 と感じているらしい夫は、今もって理解しがたい。

「シンプルで、きれいな、銀色の屋根やなあ~」
「樋を付けたら、見違えるように、よく見えるから」 

 と、妻にも、トタン屋根を美しいと感じるように、強要する。

 そして、建築中の家の中で作業し、古家に戻ってくると

「あっちの家は、全然、雨の音聞こえへんで」 とか

「あれつ、こっちの家のほうが暑いなあ~、
トタン屋根は、涼しいで」
 
と、ことさら、トタン屋根の優位性を、強調する。

  夫に感化され、
 「もしかしたら、シンプルでキレイかな」
 
と トタン屋根を見直すこともある。

 しかし、
 「なんで、トタン屋根にしたんです?」
 「まあ~、そのうち、タンポポハウスのように、草でも生やしたらきれいですよ」
「ペンキでも、塗ればいいですよね」

  と、本気で、慰めてくれる人に出会うと
 
 「う~、やっぱりな」


「一人で建てる木組みの家」のこれまでは、こちらからご覧いただけます。
カテゴリー「一人で建てる木組みの家」からでも、見れます。


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一人で建てる木組みの家~⑫ 屋根下地

2007年10月06日 | 『一人で建てる木組みの家』
1.垂木
棟上げが済んで、早く屋根をかけて雨から守りたいところだったが、
ゴールデンウィークに入り、何人かの訪問者があったり、
みかん畑の草刈りをしなければならなかったり、
思わぬ葬式があって、その手伝いがあったりと、
1週間が過ぎてしまった。

垂木は、軒の出を90㎝と長くしたので、45㎜×105㎜と背の高い材を使っている。
棟から軒まで1本で通すと長くて重く、扱いにくくなるのだろうと、
2本に分けることにした。
一の母屋のところで、斜め相欠きで継ぐことに。
背の低い垂木ならそぎ継ぎのようだが、高い垂木はどうするのか 
よく分からないので、こうすることにした。


2006年5月8日 垂木掛け

棟上げまでは釘や金物を使わずに組んできたが、これからは釘を多用していくことになる。
釘打ち作業は、進捗が早い。
棟木、母屋、桁に垂木を125㎜の釘で斜め2本打ちする。
これまでに、125㎜と言うような長い大きな釘は、打ったことがなかった。
大きな玄能で大きく振りかぶって、思いっ切り強く打ち込む。
打ち応え充分。 
これだけの効きがなければ、屋根が風で飛んでしまうだろう。
節に当たれば、釘が曲がってしまう。
真直ぐに起こして注意深く少しづつ少しづつ打ち込めば、また入っていってくれる。


2006年5月8日 垂木掛け

少し長めに取り付けた垂木の長さを揃えて切る。
30cmほど長めにしていたので、この時には、軒の出は約120㎝あった。
見た目は、軒が深くて家自体のバランスも良く、とても気に入った。
切らずに、このままにしておこうかと思った。

しかし、この長さでは風に耐えられる自信は全くないので、
やはり、計画通りに切ることに。
水糸を張って、一本一本に印をつける。
この大きな断面積の垂木を手のこで切るのは大変だから、電動丸ノコで切ることにしたが、
足場の悪いところで、丸ノコを扱えるのだろうかという不安があった。
ヘタをすれば大ケガだ。
脚立にのって注意深く、注意深く、丸ノコを扱う。
思ったより、うまく切れた。
刻みで修練ができてたのだろうか。


2006年5月9日 垂木の鼻切り 脚立に乗って電動丸ノコを扱う

次々と気持ちよく切り落として、短時間で完了。
合計ちょうど100本の垂木掛けに要した日数は3日。


2006年5月9日 垂木掛け完成 南側より


2006年5月9日 垂木掛け完成 妻側西側より

2.面戸板、広小舞、淀、

 今日は朝から雨。

建ち上った骨組みが雨に打たれるのを気にしながら、
屋根下で、面戸板(メンドイタ)広小舞(ヒロコマイ)、淀(ヨド)、の加工。カンナがけや穴あけをする。


面戸板は、軒桁と垂木と野地板との間にできるすき間を埋める板。
1枚1枚寸法を測ってキッチリと収めた結構メンドーな板だっが、
野地板が済んで屋内から見るとキッチリと収まらずにすき間だらけだった。
このすき間埋めにはあとで苦労させられた。

後で知ったが、垂木に小穴をあけておいて 
(小穴というのは、プロが使う言葉で穴ではなく切り欠き程度の溝のことをいう) 
面戸板を差し込めば、両サイドのすき間はなくなる。

垂木の加工は、メンドーだが、垂木の背がもっと低くて、
小屋組が天井板で隠れるのなら、このすき間は全く気にならないのだが、
ここでは小屋組部分が現しとなるため、もう少しの工夫が必要だった。

翌日から面戸板のとりつけを始める。
昨日の雨で垂木がふくれており、
晴れの時に寸法取りをして加工した面戸板が入りにくい。
固定は、5寸釘を脳天打ちした。1スパンずつ、脚立を移動させての上り下り作業。
垂木の風による吹き上がりが、気になっていたので、面戸板と垂木を90㎜の釘で連結した。
また妻側の軒は面戸板の替わりに背の低い横木を打ちつけて、垂木と115㎜の釘で連結し、
やはり吹きあがりの防止策とした。
これがどれ程、有効なのかはわからないが。


2006年5月12日 面戸板

広小舞と淀は、垂木の外周にとりつける、縁取り木である。 
広小舞を垂木の先へ釘留めする。
垂木の背が高いので苦労なく釘が打てると思っていたが、バウンドしてだめだった。
カケヤで垂木の裏を押さえれば良いと書いてあるので、一人でやろうとしたが、とうてい無理だ。

めんどうだが、仮支柱を立てることに。


2006年5月12日 広小舞の取り付け 仮支柱を立てて

胴縁用材を垂木の先にあてがい、地面と接する方に板切れを敷いて高さを調整する。
これは大正解だった。
とても釘が打ち易い。移動手間はかかるが、慣れれば早い。
妻側へ移り、広小舞を取り付けたら、クネクネと曲がりくねって、とても不細工だ。
垂木に合わせて、取り付けたのが失敗だった。
打ち付けた釘を抜いてやり直すことに。
水糸を張って直線をだすことにした。
妻側は棟の一番高い所まで上っての作業になるので、
水糸を1本張るだけで、上り下りに時間がかかり、作業はなかなか捗らない。


2006年5月12日 妻側の広小舞の取り付け

手間をかけた分だけ、広小舞はキレイに収まった。

続いて淀も取り付ける。


2006年5月14日 広小舞と淀のコーナー部


2006年5月15日 広小舞と淀のコーナー部



面戸板・広小舞・淀完成

3.野地板 
野地板は45㎜のすき間をあけて、15㎜のスギ板を上下2枚張る。
小屋裏は現しとするために天井板は張らない。
そのため、この下の野地板が、見上げると見えるので,相欠きとカンナ仕上げをしている。
化粧野地板と呼ぶ。
上の野地板は45㎜×36㎜の垂木を挟み込んで15㎜のスギの荒板を突き付けでとめる。
断熱材は設けない。
雨が気になる。棟上でまでに1回。その後3回。計4回も雨打たせの状態だ。
早く野地板をかけて雨を防ぎたい。木が黒ずんで来る。
下の野地板を貼った時に、ビニールシートをかけたものの、
その後完全に屋根が仕上がるまでに、走り梅雨が来て,7回も雨に降られた。

野地板の長さは、現場合わせとなるため、屋根の上でののこぎり作業となる。
そのことを考えて、野地板は左から右へ張ることに。
板の左端は下で丸のこで切っておいて、上に持ち上げてから垂木に合わせてのこぎりで切り、釘を打つ。

大工が右利きか左利きかによって、この作業位置や順序は大きく違う。
作業能率を上げ、安全でキレイな仕事をするには、このことがとても重要だ。

軒先2枚分は下からはしごで作業し、
3枚目から上は仕上った野地板の上にのって作業をする。


2006年5月15日 化粧野地板張り始め

化粧野地板は、片面のみをカンナ仕上げの指定をしていたが、
相欠きをするとなるとモールダー(切削機械)仕上げでは 
両面ともがカンナ仕上げとなるようだ。

入荷した板をみると両面ともキレイに仕上げられ、とても得をしたように思っていたが、
イザ屋根の上へ上げてその上へのると、すべり良いのが難点だった。
6.5寸の勾配はキツイようだ。
ゴム底靴なら滑らずに立っていられるが、
尻をつけて足裏を離すとユルユルと滑り出す。
軒の淀がストッパーの役目をしてくれる。

しかし、上に行くに従い、滑り出せば、滑台のようで止まらない感じがするので、
真中より少し上で、足留めの角材(45×60㎜)を打ち、
安全ロープを張ることにした。
安全ロープは作業時には、邪魔だし、誤ってロープを踏むと滑ってひっくり返りそうになり、
本当に安全かなとも思うが、気持ちの上ではとても安心感がある。


2006年5月15日 化粧野地板張り 安全ロープをつけ、滑り止め材を打ち付けて


化粧野地板張り 安全ロープをつけて 

しかし、屋根の上の作業は、気が抜けない。
注意を集中していないと、いつ転落するかわからないので、緊張しっぱなしだ。
 それでも、妻は、そんなことには無頓着に、
大した用事もないのに、下から声をかけてくる。

「高い所で作業する時は声をかけてくれるな」
と 言ってあるのに、忘れてしまうのだ。
エライ、迷惑だ。

片面が仕上がったところで、ビニールシートをかけることに。

明日は雨のようだ。
2間×3間のブルーシート6枚をビニールひもと釘で固定。
夜8時頃まで、懐中電灯をつけて作業。
風が吹いて、シートが飛ばされなければ良いが。

残りの片面は、問題なく2日程で完了。

この後は、スペーサーがわりの垂木(45㎜×36㎜)を打って、
上にもう1枚の二段目の野地板を取り付ける。


2006年5月19日 一段目化粧野地板張りを完了後、垂木も打ち終わる


一段目の化粧野地板は、乾燥したものを加工してあったので、扱い易かったが、
二段目の野地板は生木状態のものが多く、乾燥したものに比べると,倍程も重く、
釘を打つと水が飛ぶこともある。
反りも大きく、すき間があいた。それでも問題はなさそうだ。
野地板を下から運び上げては、切って釘で打ちつける。
作業に慣れると、最初よりもずっと早く出来てくる。


2006年5月20日 二段目野地板張り 野地板を担いで運び上げる。


2006年5月21日 二段め野地板張り 

それでも、雨にたたられて野地板張り(上下2枚)は8日間を要した


5月22日 2段目野地板張り中の新居と古家の全景
満開のカモミールも枯れてきた頃。

付記 妻・ひろよろ
 
  5月中、夫はほぼ、屋根の上で過ごしていたかもしれない。
  高所恐怖症の夫だったが、この頃になると
  「慣れとは、エライもんや! 高い所にいても、お尻がムズムズしなくなった」
  と、ちょっと得意気だった。

  畑にいると、屋根の上の夫は、どこからでも、よく見える。
 だから、いつでも、すぐ声がかけやすい。

 骨組だけのスケスケの屋根ではなく、野地板を張った屋根の上の夫は、
 高い所で、ちょっと、気持ち良さそうに見えたけれど・・・

 そうか やっぱり、まだ、怖がっていたんだ

 妻でさえ、なかなか理解しにくい “夫” である。

 この屋根作業に使用する、
 “何種類かの釘の使用本数リスト”を手渡されて、
  金物店へ買い物を、頼まれたことがあった。

  プロは、5k箱単位で買うので
  店員さんは、本数で買う人には、かなり手間取っていた様子。

  家を建てるのに、釘を○百本使うと、
  夫は、計算したのだろか 


 「一人で建てる木組みの家」①~⑫は こちらから、ご覧ください。
 カテゴリー「一人で建てる木組み家」からも、見ていただけます。
 

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