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七曜工房みかん島

18年間の大三島暮らしに区切りをつけ、
滋賀大津湖西で、新たに木のクラフトと笛の工房
七曜工房を楽しみます

一人で建てる木組みの家~⑪建前その③:小屋組

2007年09月27日 | 『一人で建てる木組みの家』

小屋組中の敷地全景 2006年4月カモミールが満開の頃

1.柱の垂直修正
柱、梁、桁が済むと小屋組に入る前に、柱の垂直を修正しておかねばならない。
貫板と下げ振りで垂直定規を作り、柱に当てて垂直を見る。
傾き量は多いところで、10mm程である。
これは誤差としては、少ない方のようである。
伝統構法で建てると、長い枘や渡り顎や厚貫の組手を使うことにより、
垂直や直角に据えることを気にせず、ハメ込んで組立てていくだけで
自動的に垂直や直角がとれているのだ。
金物偏重の筋違い工法だと、絶えず垂直を気にしながら、
仮筋違いで止めていくようだ。
傾き量の多いところは、ロープねじりを使って修正する。
修正が済んだところで、アンカーボルトのナット、柱枘の込栓、貫の楔を
すべて締める。これは、このあと作業が進む度に、何度か締める。

2.小屋束を建てる
小屋束を梁の上に建てるには脚立では間に合わず、
梁の上に乗らなければならない。
梁や桁の上だけでは、心もとないので足場板をのせる。
近所の人に戴いた足場板は、厚さ6㎝で長さも4mと厚くて長いので、大変重い。
それを半分に切って使うことに。それでも梁の上へ持ち上げるのに苦労する。
梁や桁の幅は12cmだが、足場板だと30cmある。30cmあれば、安心して作業ができる。
小屋束と束つなぎをかついで上へ上げる。
足場板の上であっても、つかまるところがないので、やはりコワイのは変わらぬ。
ソロリ、ソロリ、ビクビク、ユルユルと動いて束つなぎを組み込んでから束を立てる。
い、は、ほ、と、り、る通りと同じパターンを6回繰り返す。
これだけで、丸一日かかる。


二重梁と棟束の取り付け


短く切った足場板を小屋貫に架ける

3.せっかく建てた小屋束を解体!!??
建て終った小屋束を見ると桁方向に弱そうだ。
母屋をかければ、安定するだろうが、屋根勾配が6.5寸なので、小屋束の背が相当高い。小屋裏の利用を考えているので、二重梁の下を立って通れる程の高さがある。それだから一層不安定に見える。
桁方向にゆすられると、パタンと倒れてしまいそうだ。
一度不安になると、止まらない。どんどん不安になってくる。
設計当初は、小屋束を貫でつなぐことも考えていたが、小屋裏の利用に邪魔だと思ったし、小屋組は、母屋、垂木、野地板と屋根がかかれば,面で安定がはかれるだろうとも思って、貫をやめてしまった経緯がある。
だが、この背の高い小屋束を目の前にしたら、どうしても、貫がほしくなった。
丸一日かけて、組み上げた小屋束を解体するのはイヤだった。
貫板を、後で釘止めする方法はあるが、せっかくの貫構造にケチがつく。


組み上がった小屋束
さあどうしようか。
頼りになる筈もない妻に相談すると、
あさっりと、”解体してやり直したら”と。
もう二度としたくないと思っていることを、気軽にもう一度やれと、おっしゃる。
「私だって、セーターを編んでいて、首まで編んでも、そこで失敗に気付いたら、全部ほどいて裾からやり直すのよ。それと同じよ」
とも、おっしゃる。
セーター編みも家作りも同じか。
「せっかくここまでやったのだから、このままでやり直せる方法を考えたらいいじゃない」
と言う返事を期待していたのに。あっさりと解体せよと。
自分でやってないから、これまでの苦労を知らないから、
こんなに気軽に言えるのだと妻の返事にあきれてしまう反面、
気にいらないのなら、悔いを残さないように、
やり直せばいいのだという気持ちも出てきた。

結局頼りになる筈もない妻の一言により、解体してやり直すことに。

狭い高い足場の上で、束つなぎの長い枘を束から抜くのに、大変難儀したし、


小屋束取り外す。 2006年4月28日

運び上げたものを、また運びおろすのもむなしかった。


解体した小屋束の材を抱えて、下ろしてりるところ。

作業場で束に貫穴をあけ、貫を新たに作り、
丸一日遅れで、再び小屋束を建て直すことができた。



新たに貫を入れた小屋束 2006年4月29日

貫を通すと安定感が出て一安心。
あとで悔やむことがなくなったことも大安心。
妻に感謝。

4.母屋・二重梁
一の母屋を低い方の束に載せ、二重梁を高い方の束へ渡して載せ、それを押さえ込むように、二の母屋をのせる。
足場を少しづつ移動させながら、この作業を行うので大変面倒だ。
母屋の枘穴が束の枘へ入り、鎌継ぎの上木が下木へピタリと収まるととても気持ちいい。
なかなかいい腕をしているなと自分をほめたくなる。
母屋や棟木は、1本吊りで上げた。


一の母屋組立て中 滑車は一本吊り

一方向からだけでは無理なので、反対側に丸太を挿し替えようと、丸太を縛り付けていたロープをはずした時に、声を掛けられた。
今日は日曜日なので、昼から訪ねてくる人が多い。
建前は、やはりおもしろいようだ。
少し喋っていたら、先程ロープをはずした丸太が、隣の家の倉庫めがけて倒れた。
”しまった。屋根瓦が割れる”と思った時、
丸太は倉庫の手前10cm程のところへ倒れてくれた。
アブナイ、アブナイ、心引き締めねば。

5.棟上げ
後は棟木だけとなった小屋組がどれ程、しっかりしたものか、少し母屋にのって、ゆすってみた。
ビクともしないと思ったのに、ユラユラと動くではないか。
貫も通し、母屋ものせたのに、ふれを完全には止められない。
こういうものなのかどうか解からない。屋根面ができないと、安定しないのか。
だが、コレでは、屋根工事中が不安なので、仮筋違いを入れることに。
高い方の小屋束に十字に入れる。
これで、ピタリとゆれが止まった。筋違いの威力にあらためておどろく。
やはり、筋違い構造の方が良かった?
いや、剛構造と柔構造の違いなのだ、自分に言いきかせて、棟木をのせることに。


いよいよ棟上げ完了

棟束を二重梁に差し込む。二重梁にのせた足場と、この母屋を足場に棟木を棟束へおとす。一番高い位置に居るという緊張感がある。
最後の3本目の棟木が収まった。


最後の棟木を納めたところ

とうとう棟上げだ。
家の骨組が完了しただけなのに、建築の世界では、上棟式と言って、棟上げを盛大に祝う。自分でやってみて、棟上げの嬉しさがよくわかった。
数ヶ月もかけて、刃物でケガもせず、刻んできた材が果たしてうまく組み立てられるのか、やり直しは出てこないのか、高い所から落ちないか、等々の関門を突破してようやくここまでたどりつけた。
この後、屋根掛け、外装、内装、設備としなければならないことは、
山ほどあるものの、家作りの全工程の8割方が済んだ気分だ。
家作りの一番おもしろい部分が終わった。とりあえずはうまくいったようだ。
建前に要した日数はちょうど2週間。
思っていたより、ずっと早かった。


2006年5月1日 祝棟上げ

付記 妻・ひろより
 大体において、セーターは裾より、編み始める。
 複雑な模様編みなどの場合、首まで編み上がると、
 出来上がった模様を、眺め透かし、かなりの達成感がある。
 その時、裾の方の間違いに気付いた時のショックたるや

 良妻・ひろとしては、
 編み物を例えにした、このアドバイスは
 夫にとっては、最善、最良、的確で
 快く、受け入れてもらえるだろうと、自負していたのに。
 どうも,気に食わなかった様子である。

 夫は、日頃
 偉大なる哲学者ソクラテス を自分になぞり、
 妻・ひろのことを
 ソクラテスに無頓着な、悪妻・クサンチッペと、評して
 慰めているらしい。

 大変、心外ではあるが・・
 悪妻クサンチッペがいたからこそ
 きっと
 ソクラテスも、「なにくそ! まだまだ頑張らにゃあ~」
 と、努力したのではないかと、想像する。
 
 で、現在、

2007年9月15日現在 階段でロフトに上がったところ

 出来上がった、ロフト(小屋裏)に上がる時
 
  この、がすご~く、邪魔である。
  「この、(貫) 取れへんの?いちいち、潜るの、面倒くさいわあ.
    大きいもの、ロフトに上げるにも、不便やン」
  夫・ヒロからの、
    はっきりとした答えは、まだ聞けていない。


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一人で建てる木組の家~⑩建前その②続き:柱・梁・桁

2007年09月13日 | 『一人で建てる木組みの家』
5 カケヤ打ちは気持ちいい

軒桁をのせる

滑車で吊り上げた梁を,柱の上枘へ落とす時、
上枘は2重枘になっていて
上の方は3cm角と細い棒状であるため、とても心細い。
梁が横へゆれてコツンと当たればポキリと折れそうである。
注意深く少しずつロープをゆるめて梁を降ろしてくる。
ここで言っておかなければならないが、
一人で建てる家ではあるが、
この時も妻の助力を求めてしまった。
吊り上げる時は、自分で吊り上げるのだが、
次には吊り上げた梁を、
枘と枘穴が合うように誘導してやらねばならない。
それから少ずつ降ろすのだが、
この時に降ろす人が居るととても助かるのだ。
吊り上げには相当の力が必要だが、
降ろす時には、
ロープを土台に巻きつけて、ブレーキをかけながら降ろすので、
力は要らない。女の力で充分である。
枘と枘穴を合わせるのに、梁をのせる時は、それ程苦労はいらない。
手で柱を動かしてやれば充分に自由に動いてくれる。
だが、梁をのせて、その上に桁をのせる時には、
梁で柱が固定されているので、自由には動いてくれないので
枘と枘穴が合わず落とし込めない。
こんな時には、カケヤで叩いても無理なので、ロープを使う。
引き寄せたい柱同志にロープをかけ渡して
その間に棒杭を差し込んでロープをねじってやる。
ロープが引きちぎれるかと思う程ねじれてきたら、
柱が1mm2mmと寄ってくる。
思う位置に来たら、桁を落とし込んでやる。


ロープでのねじり寄せ


ロープでのねじり寄せ2


通し枘の楔止めと渡り顎

梁や桁自身の重さで、3分の2ぐらいまでは枘に入り込む。
それ以上は、カケヤで叩き込む。
少しずつ少しずつ、入っていくのがわかる。
これでガッチリガッチリ決まっていくのだと思うと、
とても気持ちいい。
苦労して刻みをした甲斐があった。
カケヤは、大と中を借りていた。
扱い易いので最初は中を使っていたが、
途中から大の方が力がよく伝わるようで、
重いけれど打ち込み易いので
大を使う。
梁の天端にカケヤのへこみ傷を付けないために、
当て板をしてカケヤで叩くが、
真直ぐにふりおろさないと、当て板がバウンドする。
ヘタをすると、当て板が大きくはねて、下へ落ちてしまう。
仕方なく拾い上げに下へ降りて、また梁の上へあがるということになる


脚立の上でのカケヤ打ち 腰が引け気味

6 高いところは コワイ
梁をかける段階では脚立の上での作業だが、
桁をかける時にはかけ渡した梁の上に
のることもあった。
と言っても、コワゴワまたいで座るだけである。
地上からは3メートル程の高さだが、慣れぬ身にはとても高く感じる。
元々高い所は苦手だ。
かつて友人に、
「テレビアンテナを2階の屋根に取り付けるから、手伝って欲しい」
と言われ、断れずに屋根に上がったものの、
コワくて何もできないで、昼食だけご馳走になって帰ったことがある。
梁の上だけでも、このザマだから、これからどうなるか。
若い大工が梁の上にのって、威勢よくカケヤを振り上げているのをよく見るが、
とてもそんなマネはできない。
幅12㎝の梁にまたがって、力が入りにくいなと思いながら、
コワゴワカケヤを使うだけである。
それども、ダイナミックに建前をしているという気持ちで大満足である。


渡り顎を組むカケヤ打ち

7 組み立てるとデカイぞ
柱、梁、桁と組み上がってくると、思ったよりも大きい家だ。
4間×5間の20坪の家だが、
骨組の立体が出来上がるとそのボリュームは大したものだ。
積んであったこれらの材の量に比べれば、
組み上がった骨組立体はデカイデカイ。
家具作りでもそうだ。
特に箱物は、加工して置いている材からは、
思いもよらない大きなモノが出来上がってくる。
「基礎を見た時は、小屋でもできるのかと思っていたら、
大そうな家ができてきたね」
と言う人もいた。
こうして一挙に建物が建ち上がってくると、
やはり目立つらしく、近所の人達が声を掛けてくれる。
今時、三又と滑車で吊り上げることなどしないから、
とても珍しいらしく、
少し離れてたところに車を止めてこちらを眺めている人もいる。

8 三又のパズル
三又を使って梁をかけて、次へ移る時、
梁方向へ動くならそのまま三又を歩かせてやれば、
次にかける梁のところへ行くことができる。
しかし、
い通りからほ通りというように、隣の通りに移る時はそうはいかない。
三又をばらす必要がある。
三又の脚を開いて、背を低くしてから、脚立に登り、
滑車をはずして持っておりる。
もう一度脚立に登って、今度は三又の脚1本のロープをはずす。
三本の丸太をまとめて持ち運べないので、2本と1本に分けるのだ。
そしてそれらを隣の通りへ運ぶ。
この時、この6mの長い丸太を、組み上がった柱や貫や梁の間をかいくぐらせねばならない。
大きな立体パズルである。おまけに丸太は重い。
頭と体を使うゲームである。
無理矢理こじると柱に傷がつく。優しく大胆に丸太を抜く。
うまく抜けたら次の通りに三又を組立てる。
脚立に登り、三本の頭を縛ってから、滑車を吊るす。
そして材木置き場から梁材を運んできて吊り上げる。
これを何度も繰り返す。
柱と梁だけで5日かかった。
5日とも夕方になれば、クタクタに疲れていた。

9 雨
建前4日目の途中で雨に降られた。
一般的には建前は雨に会わぬように、日を選んで2~3日で棟上げするようだが、一人で建てるとなると早くできないので、途中の雨は覚悟はしていた。
ただ、材木が雨に打たれるとよくないのは解かっているので気にはしていたが、建前の途中ではどうしようもない。横積みをして染み込んだ雨がカビを呼ぶのとちがい、建った材木は乾くのも早いだろうと自分に言い聞かせてそのまま雨打たせ。材木入荷してからここまで7ヶ月。加工済材も未加工材も屋外にブルーシートをかけて積んだきたので、雨に何回も打たれている。安物のブルーシートはすぐに劣化して雨が染みとおるようになったので、材は相当湿ってしまった。そのせいで、黒いカビが出ているのもあった。がなんとか我慢できる程度だった。
しかし建前中の雨を甘く見たの大失敗だった。
と言うのは、材木が汚れるのはカビの色素の沈着よりも、鉄錆との反応の汚れの方がひどかった。釘を1本も使わない骨組である筈なのに。なぜ鉄が
仮筋違いに打ち付けた釘が良くなかった。何度かの雨で黒いアクが柱にこびりついてしまった。野地板をかけてからは、全体をシートで覆ったが、遅かった。建前途中と言えど、手を打つべきであった。
柱の汚れ取りは検討課題として残っている。


桁行完了 2006年4月25日


桁行完了 
手前は筍を煮ているところ カモミールも咲いている

付記 妻・ひろより
 三又と滑車で、1本の柱から立て始めた、大昔風建前当初より、
 柱が立ち並び、骨組が出来てからのほうが、
 夫は ノロノロ いや コツコツと 地味な行動を続けていた。
 夫は、三又を一又で使うことを 元船乗りのAさんに教えてもらい
 「そうや、三又で使う必要はないんや」と恐ろしく、感動し、
 家作りを 「大きな立体パズル」 と評し、イヤに満足気だった。
三又や滑車を組み立てたり、解体したり、
 それをロープで柱にくくったり、解いたり・・
 1日で多人数でする建前とは、大違いの様子であった。
 それでも、少しづつ、確実に、建前は進んでいった。
 私はいつも、
 蟻が、小さな体で、自分よりはるかに大きくて重そうな虫を
 少しづつ、少しづつ運んでいる姿を見つけては
 「わあ~凄い!どこまで運ばはるんやろ」
 と感動して、尊敬しているけれど・・・
 ホント、蟻のように立派な、夫 である。


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一人で建てる木組みの家~⑨建前その2;柱・梁・桁

2007年02月08日 | 『一人で建てる木組みの家』
1 材木の持ち上げ
 材木を組んでいくには、材木を持ち上げなければならない。
柱材は抱え上げて枘穴へ落とし込むことができるが、
横架材は自分の背より高い所へ持ち上げて枘穴へ入れこまねばならない。
 機械力に頼らず、人力のみで一人で建てることを考えていたので、
設計の段階から、構造材1本の重量は、
できるだけ持ち上げられる範囲内に抑えようとした。
一本もので済ましたいところを、継手を使って小さいピースに分けることもした。
 それでも、梁(240×120×4000)だけは、
1本が60~70㎏になってしまうことは避けられなかった。
その他の桁や母屋などは、自分で担ぎ上げられる重さと長さだが、
梁だけは、道具を使わねば上げられないと思っていた。
60~70㎏と言えば、
自分の体重と同じだから、抱えるぐらいは大丈夫と思っていたが、
搬入された時に梁材を試みに持ち上げようとしたら上がらない。
腰を据えて下腹に力を入れて最大の力でようやく持ち上がった。
加工する時には、20mほど抱えて運ばねばならない。
ヨタヨタと持って歩いたが、最初は15m程のところで取り落としてしまった。
足の上は免れた。 
次からは10m程のところに仮置きして一旦一息いれらるように枕木をおいた。
運び終えると、腰がジンジンと鳴った。 
 
これ程の重さのものを柱の上に載せるには、相当の吊り上げ力が必要だ。

クレーン車は使わないことにしていた。
一日何万円もの賃料を支払う気もないし、
何よりも、建前にどれぐらいの日数がかかるのか分からないのだから。

本によれば、ジンポールクレーンと言って定置式のクレーンを自作して、
ログハウスの組み立てに使うとあったが、少し大がかりだ。
ログハウスの丸太は、大きいものなら200~300kgはありそうだから、
当初からこれぐらいのことは考えておかねば組み上げられないのだろう。
 
当初の考えでは、三又にチェーンブロックを据えようとしていた。
造園工が庭木や庭石を吊っているあれだ。
鎖をジャラジャラと引っ張ると、何トンもの大きな岩が持ち上がる。

その話を近所の人にすると、
自分の家に滑車があるから貸してくれると。
渡りに舟だ。

チェーンブロック(プロはチンブロと略して呼ぶらしい)では、
吊り上げ高さに限界があるようなので、滑車なら自由が効きそうだ。

60kg位のものを上げるなら、
チェーンブロックより滑車を使う方がうまくいきそうだ。
また軽いので、簡便で機動性もありそうだ。


柱建て始め


三又と滑車


2 三又
 三又はミツマタではなく、サンサでもなく、サンマタと呼ぶ。
1回目の練習で三又を立てようとして立てられなかった。
これは先端を3本まとめて縛ったからだった。
6mの足場丸太は3本まとめては持ち上げられないので、
先に2本縛りつけてどこかへ立てかけておき、
それへ3本目を縛りつけてから、足を開けばうまく3脚に立った。

考えていてもわからないので、何度も試行しながらようやく解決した。
3脚に立てば、後は1本づつ動かせていけば3脚を歩かせることができる。
脚を広げれば低く、狭めれば高くなる。
 丸太が3本あるのだから三又で使うことしか頭になかったが、
場所と場合によっては、二又や1本で使うこともできる。

これは滑車を貸してくれた近所の人に教えてもらった。
この人は元船乗りさんで、船を作っていたこともあるそうで、
色々と教わることが多い。

二又の時は、もう1本はロープで引っ張る。
1本の時は、何かに添え立てて使い、1本吊りと言う。

どっちも試してみた。
特に1本吊りの方は軽いものを上げるのにとても簡単で便利だった。


短い梁の1本吊り



梁1本吊り 手前のカタマリは助手(妻)

3 滑車
 元船乗りさんに借りた滑車は、錆びないようにモーターオイルに漬けてあった。
さすがに道具を大事にしている人だ。
2重輪滑車 と 単輪滑車 と一つずつ借りた。
その時にロープのかけ方も教わった。
重量は3分の1になると聞いた。

家に持ち帰り、滑車のにわか勉強。
中学校で習った筈だが、今の私の頭の中にある知識は、
せいぜい定滑車と動滑車が一つずつの図があるだけ。
”動滑車が1つ増えるごとに、重量は半分ずつに減っていくのだ”
ということぐらいを、一つ覚えしているだけだから、
重量が "2分の1", "4分の1" になるのは理解できるが、
"3分の1になる" 
おまけに2重輪の滑車があるとは 
 
色々調べてみて、なんとか納得。
2重輪滑車を定滑車、単輪滑車を動滑車とすれば
重量はやはり3分の1になる。
60kgの梁を20㎏で持ち上げることができる。

ただし3mの高さに上げるのにロープはその3倍の9mが必要となる。
買っておいた綿ロープは10m巻きだからなんとかいけそうだ。

ただ困ったことに 
教わったロープのかけ方を次の日にはすっかり忘れてしまい、
何度かやり直してようやくうまくいった。
試みに軽い桁を上げるとスルスルと軽快に上がってくれた。


滑車と三又


長い梁の据え付け


滑車へのロープかけ


三又での梁の吊り上げ


4 組み立て順序
 土台組み立ての時の失敗を繰り返さないように、
組み立ての順序を事前に検討した。
梁の継ぎ手の台持ち継ぎの上木と下木の関係や
桁の追掛大栓継ぎの上木と下木の関係から
建方順序が制限され、
北西角の "いの9" の柱から建てねばならないことがわかった。
 
柱を土台の枘穴へ建て込む。
貫板があるので柱と同時に組み立てる。これが難しい。
貫板は最多で4段だが区間により段数が違う。
コーナー柱は片鎌、長柄の楔止めとしているので真上から落し込むのではなく、
手前で落し込んでスライドさせる必要がある。
このため貫板があるととてもやりづらい。
それぞれの枘の遊びを利用して少しずつ少しずつはめ込んでいく。
貫板を差し込んでから、下へ落し込むと柱が安定する。
柱の下枘が長枘でもあるので、この状態でもしっかりしている。
梁を載せる前に直角方向の柱も建てて貫をつなぐと
仮筋違いを打たなくてもいい程に安定するが、
仮筋違いを打って、強固にしておく。
1列目の梁方向の柱が建つと、
梁を滑車を使って吊り上げて柱の上枘へ落し込む。

すべての梁が据わると
次に梁と直角方向の桁と梁つなぎを据えて
1階部分の建前が完了する。


仮筋違いで止めているところ


梁の設置が完了


付記 妻より

「建前の時は、手伝うで」 
「グレン (クレーン車) 貸しちゃるで」
近所の人も知人も友人も、しきりに声をかけてくれた。

それに対して
 「一人でやってみたいんです」「手助けのいる時はお願いします」
夫は、いつもいつも、そう答えていた。
 「クレーン車貸したげるって。借りたらいいやん」
と、勧める私を無視し、

夫は、いつのまにか
中学の社会の教科書で「昔の道具」として紹介されていたような
“代物”組み立てていた。
 
 「それって、井戸のつるべ?」
 「そうや、でも、ちょっと違う」
 と、嬉嬉としていた。

その代物 つまり、三又と滑車で、
試しに、材木を持ち上げて
 「ホントや、Aさんの言うとおりや。Aさん、よう知っとるわ」
としきりに、滑車を借りた元船乗りさんのことを感心していた。

建前開始は、2006年4月19日

私は、夏野菜の植え付け準備やハーブ苗の植え付けで
 菜園やハーブ園をウロウロしていた。

夫は、時どき、呼びにきては
「ちょっと、ロープを持っていてくれ」
と頼んだ。

やはり、自分一人ではできないらしい。
「妻と建てる木組の家やな」
と、恩に着せては、ロープを持っていた。

なのに、夫から、
 ”カタマリ” (助手)扱いをされるとは




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一人で建てる木組みの家~⑧建前その1:土台の取り付け

2007年01月12日 | 『一人で建てる木組みの家』
ようやく建前に入る。

柱を建てる前に土台を基礎のアンカーボルトに取り付ける。
土台はこの上に骨組が真直ぐに正確に組まれるためには、水平位置とレベルが正確でなければならない。
これから組み上げていく骨組の一番の基準になる部分であるため 納得のいくまで注意深く取り付ける。

1 アンカーボルトの穴あけ
 基礎のアンカーボルトを取り付けるのは、二通り程の施工法を本で見つけた。しかしどちらもどうも納得がいかない。そこで、我流にアレンジすることに。
アンカーボルトの位置を土台におとすのに、本ではどちらも現場合せ(基礎の上に土台をのせる)をしているが、我流では巻尺でアンカーボルト位置を測定し、その寸法を土台におとすことにした。芯からのずれ幅は芯から30㎜の逃げ墨から測定した。結果は良好。位置に大きなズレはなかった。
アンカーボルトの穴の直径をどれくらいにするのか。本には載っていない。アンカーボルトの直径が10.5mmだから、11~12mmが最良だろうが施工誤差を吸収できない。余裕がある方が施工が楽だが、限度があろう。六角ナットの対角長さが21mmであるところから18mmとすることにした。
アンカーボルトの働きは引き抜きに対するものであることからすれば 調整代に余裕をみてギリギリいっぱい大きい穴としても問題ないだろう。
 穴あけは土台の上面からすると書いてあるものもあるが、鉛直にはうまくあけられないので やはり下面からするのが妥当だろう。しっかりドリルを構えて真直ぐにあけたつもりでも、なかなかうまくあけられない。そこで、下面から3分の2、上面からも3分の2の深さであけることにすればうまく貫通できた。


土台のアンカーボルトの穴あけ (2006年4月16日)

2 土台の仮組み
 手あたり次第に土台を組み始めたら、途中で組めなくなってしまった。
 組み方には、順番があった。継手は受け側を先に据える。全体的には、外周から内側へ。少し考えればすぐにわかることだが、組み立てとなると気がはやって先に手が動いてしまう。
 ネコ土台は事前に釘で土台へ仮止めしておいた。3箇所ほどの小さなマチガイはあったがなんとか組み立ては完了した。
 
 一見キレイに収まっているように見えるので、このまま柱を組み上げていこうかとも思ったが、我慢我慢。
 基礎石積の天端レベルがうまくレベリングできていないので、土台で調整をする必要がある。丁張り杭は取り払ったので土台に棒切れをうちつけて杭替わりとし、バケツとホースでレベルを出してから水糸を張り、レベルの様子を見てみる。一番高いところと一番低いところで11mmの差。思ったより、誤差が大きい。5mmまでを許容誤差として、それ以上は修正することにした。

 修正はネコ土台を削って行う。伝統工法では、土台そのものを削って調整していることからすれば、ネコ土台を削ることはたやすいことだ。
 それでも、せっかく組み上がった土台をバラして取りはずす。
 
 取りはずしている様子を見て、妻が不審げに言う。

 「せっかく組み上がったのにまたはずすの?こんなこと、プロでもするの? 
 素人の私が見ても、おかしいと思うよ」 と。

 基礎のレベルがしっかり出ておれば、この作業は必要はないだろう。
 今は基礎天端のセルフレベリングという方法があるらしいが。
 何も好きでやっているわけじゃない。
 腹立たしいことを言ってくれるわ。


土台の仮組中 (2006年4月17日)


土台の取付中 (2006年4月18日)


ネコ土台の高さ微調整

3  土台の本組立
 80枚以上のネコ土台の内半数程を1~6mmカンナで削ってから元の土台は釘止めする。そしてもう一度土台を基礎へ据付ける。2回目はスムーズに据付けられた。アンカーボルトのナットは、きつく締めてから、少しゆるめておく。


土台の鎌継ぎと蟻枘


土台のアンカーボルト留め (2006年4月18日土台取付完成)

4 柱建てに向けて
  さあいよいよ明日から、本格的な建前の柱建てだ。
 滑車で吊り上げる練習をしておこうと、三又を立てようとしたが立てられない。
 6mの足場丸太3本の細い先端を3本まとめて縛りつけてから起こそうとしたが、どうにもこうにも起き上がってくれない。カメラの三脚を組み立てるような感覚で考えていたが、大マチガイ。
 物の大きさがヒューマンスケールを越えると考え方を変えねばならない。
さあ どうする。


 付記 妻ひろより
いよいよ、家の組み立てが始まった。
私は、長い間かかって刻んだ仕口同士が、果たしてちゃんと合うか、少し心配で、
しばらく様子を見ていた。
夫は、土台の凸凹になった仕口を、木槌でガンガンと叩き込みながら、
そして、「くそ、ちょっと、入らへん。削り直しや」と修正もしながら、
コツコツと土台を組み立てていた。

しかしだ。しかしだ。
 もう組み上がって次は・・・と、期待して見に行くと 

 夫は、せっかく木槌でガンガンと打ち込んで組み立てた土台を、
組み立てる時よりももっと苦労して、木槌でガンガンとはずしているではないか。

いくら木組みの家とはいえ、土台だけで
いったい、夫は、何をしているのだろう。

プレハブなら、たった1日で、木造軸組でも建前は3日程でできるというのに。
夫は、これから全部、つまり柱、梁、総てを組み立てては確認しては、
そしてまた、はずしていくつもりだろうか。
効率が悪すぎるではないか。 
この調子では、建前だけで、何ヶ月かかることやら。

聞くと、家の水平は、土台が一番大切だからと、説明された。
そういえば、住宅メーカーでパートをしていた頃、新居完成引渡時に、
床にビー玉を転がして、水平を確認する施主様がいると聞いたことがある。

よし、私も、完成したら、床にビー玉を転がしてみよう。
果たして、ビー玉は転がり落ちるか、とどまるか。

楽しみだ。

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一人で建てる木組みの家~⑦刻み

2006年11月23日 | 『一人で建てる木組みの家』
1 刻みは地道な裏仕事
 材木の組手や継手の加工を行うことを刻みと言う。材木を少しずつ切ったり削ったりして刻んでいき、思う形態を作り上げる。刻みとはよく言ったものである。
 昨秋10月から始めて、刻みを終えたのが、今春3月末だった。間にみかんの収穫や発送作業が入ったので、半年程かかっているが、正味刻みにかけた日数は3ヶ月程だ。それでも、コツコツと大変な時間がかかった。屋外に積み上げてた材木を家の横の差し掛け屋根の下へ運び込んで加工し、加工が済めばまた屋外へ運び出して積んでいく。運搬距離だけでも相当な長さだ。骨組材だけでも、150本はあり、小さな材を加えるとゆうに200本は越える。1日に1~2本程しか刻めない時もある。始めの内はなかなか思うように進まず、いつになればこの作業が終わるのか気が急いた。また、この刻み方で果たしてきちんと木が組めるのであろうか不安も出てきた。それでも建前を夢を見ながら、半ばを過ぎれば少しは気が楽になった。終盤になれば要領も得て早く進むようになった。
 建前は1週間もすれば、目の前に忽然と大きな建物が現れるから、とても早く家が建ったと人は感心してくれるが、この刻みの期間は計算に入っていない。刻みは地道な裏仕事である。同時に最も大切な仕事でもある。

刻みが完了した柱


土台の継手調整


2 枘と枘穴
 材木をT字に組む場合、枘と枘穴で組む。土台と柱の長柄や梁や桁と柱の重ね枘がそうだ。この時、枘の寸法をどうするのかに大変迷った。枘と枘穴は同じ大きさに作ったのでは入らない。小さな材なら、同じ大きさに作っておいて、木殺しと言って枘の方を玄能で叩き締めればやせて入れられるし、木が元にもどれば、枘穴に密着して抜けなくなるという効果もある。しかし家のような大きな材では、これはあてはまらない。材がいくらか反ったり、ねじれているため枘がピッタリ枘穴位置に来るとも限らない。
 近頃の金具偏重の建前では、入り易いゆるい枘が歓迎されると聞く。反対に昔の建前では、カケヤで思い切り叩き込んでようやく入るぐらいの固さの枘だったと言う。本を見ても枘の寸法加減ははっきりとは書いていない。コキホゾと言って枘先を思いっきり細くして入り易くしたのをみたことがある。また墨線の太さだけ(0.5mmぐらいか)枘先を細くすると書いたものもある。しかし枘長によってその加減は変わってくる筈だ。結局12cmの長柄は幅で2mmずつ細くした。
 建前時には、カケヤで叩き込む時、少しずつ少しずつ締まりながら入って行く時の手の感触がとても快感だった。ゆるすぎず、きつすぎず、うまくいったのではないだろうか。

棟束の加工 小さい材ほど加工が難しい


3 角ノミ盤はとても重宝
 職業訓練校では、ノミと玄能で枘穴をあける練習をよくした。何回やっても表から彫った穴と裏から彫った穴がうまく合致せず、いつも食い違っていた。慣れてくればスピードだけは早くなった。
 だが本番ではノミと玄能ではなく、角ノミ盤を使おうと最初から思っていた。早くてきれいな穴が正確にあけられるなら数万円の機械代は充分にモトがとれると思った。その通りだった。早くできるのに加えて正確な枘穴あけられるというのは、強度に影響することだから、初心者には都合が良い。また手ノミでは彫りづらい込み栓穴のような細い穴も簡単にあけられるし、少し複雑な鎌形の穴もキリ先を少し回転させればうまく開けられる。刻みについては、角ノミ盤を使うことで、かなり工期が短縮できた。
 角ノミ盤を使っていて一つ困ったことがあった。同一平面にいくつかの枘穴をあける時に、角ノミ盤を次の位置へスライドして移動させるのだが、その時に木くずがローラーの下に入り込んで材の表面を傷つける。傷つかぬように木くずを吹き飛ばすのだだが、どうしても飛ばしきれないで、傷をつけてしまう。刻みももう少しで終わるという時に、解決法を見つけた。角ノミ盤を片側だけ少し持ち上げてスライドさせればよかったのだ。たったこれだけのことが思い付かなかった。当然取扱説明書にも本にも書いていないことだ。いつも使っているプロの大工に尋ねれば、すぐに答えてくれていたかもしれぬような些細なことだが、物作りにはこの些細なことを知っているか知らぬかで大きな差が出てくる。こんなところがプロとアマの違いだろうか。

角ノミ盤


4 丸ノコには要注意
 大きな家を作る大工と小さな家具を作る家具職人とを比べてみてどちらが大きな機械を使うと言えば、以外にも家具職人の方なのである。大きなモノを作るのに、大きな機械がいるのかと思うがそうではない。大きな材木をを加工するには、材木を置いて機械を動かすのである。小さな材木を加工するには、大きな機械の上で,材木を動かすのがうまくいくのである。
 大工は、肩にかつげるほどの道具箱一つで大きな家や塔を建てる。家具職人は、工房一杯の大きな機械に囲まれて色々の小物や家具を作る。
 材木を切断するにはノコギリを使う。家具作りでは昇降盤という丸ノコ盤を使って正確に挽き切る。大工は手ノコと手もちの丸ノコを使う。手ノコに比べて丸ノコは数倍のスピードとパワーがある。これも刻みの工期短縮の立役者である。
 しかしこの丸ノコはスピードとパワーがあるだけ、それだけ取扱いには注意が必要である。大工の機械道具で最も事故の多いのがこの丸ノコらしい。材木を切っている時、角度が曲がったりするとキックバックと言って、丸ノコがガンとはね返されるときがある。この時丸ノコをしっかり押さえておかないと怪我をすることになる。
 丸ノコだけは、長年使っていても慣れることがない。いつも真剣勝負の気持ちで立ち向かう。うまく使えば、これ程重宝するノコギリはない。まさに丸刃の剣?諸刃の剣である。

丸ノコ


5 カンナは名通訳?
 家を建てるに際して、新しく購入した道具がある。電動工具では枘穴をあける角ノミ盤と、敷居や鴨居の溝を彫るミゾキリ機であり、手工具では大工用の叩きノミである。
 ノミについては、こちらへ越してくる前に、大阪の道具屋筋であちこちの店を見て廻ったが、気に入ったものがなかった。こちらに来てからはインターネットで良さそうなのがあったのでようやく手に入れることができた。これが大変なスグレモノだった。小物作りに使っている薄刃の細工用の追入れノミより2~3倍も大きくて重いのに軽々とよく切れるのである。また使い続けてもなかなか切れやまないのである。追入れノミはいつも研いでいたのに、この叩きノミはめったに研がなくてもよい。
 大工の醍醐味は、刃ものがよく切れることに尽きる。サクサクスルスルと木が切れるととても仕事が楽しく疲れることがない。
 材木はほとんどが表面を仕上たものを購入したが、それでも仕上げには、カンナをかけた。切れ味はノミよりカンナの方がよく解る。ノミは玄能で叩くが、カンナは手で引くため、力の入れ加減や木材の表面の凸凹を手や腕や体全体で感じ取ることができる。ヒノキは軽快にスギは少し重めに感じる。同じ材種でも節があればゴツゴツと引っかかるし、柾目なら気持ちよく引き切れる。節のところは逆目立ってうまく仕上がらないが、刃を研ぎなおし、刃の出を最小限にし、裏刃も刃先に再接近させて、サッとカンナをかける。節も含めてツルツルに仕上がった時のなんと気持ちの良いこと。何度も指先で撫でてしまう。
 機械ではこうはならない。とりあえずそれなりの仕上がりになるだけだ。機械を通したのでは木のクセは感じとれない。木の持つ性質やクセを読み取れるのは手工具を通してである。ノミやカンナは木の言葉を伝える名通訳と言えそうだ。

カンナと叩きノミ


付記 妻・ひろより
 夫は、これらの道具で、きれいに削れ、スベスベになった材木を、
 手でなぜ、ほほを摺り寄せて、
 「ホラ、これ触ってみ、気持ちいいで」
 と私にも、触るように勧めてくれる。
 夫があまり気持ち良さそうな顔をしているので、
 「そうかな」と一緒に触ってみる。
 しかし、ヒノキ、スギと材が変わるごとに、
 毎回毎回違いを説明して、進めてくれる。、
 「本当、スベスベできもちいいなああ~~」 とは言うけれど。
 「変ってるぅ~、まあ、これ位木が好きやから、木工や家を建てたいと思うのやな」 
 とちょっと、あきれている。
 私には、材の違いによる、肌触りなんぞ、あまり解らない。
 それに勧めてもらっても、それ程嬉しくもないけれど。


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一人で建てる木組みの家~⑥墨付け

2006年09月29日 | 『一人で建てる木組みの家』
1.やはり加工図は必要
墨付けとは、木材の継手や組手の加工をする時に切断線や番付けを印すことをいう。組み上げていく順に墨付けと刻みを行うことにして、土台から始めようとした。既に作成しておいた平面図や伏図という図面を見ながら一本一本の土台に墨付けをしようとしたが、頭の中が混乱して墨付けできない。家具作りの時は板材や角材の一枚一枚の図面(施工図)を作成してそれに従い墨付けするものだが、家作りではそれ程の必要もないだろうとタカをくくっていたら、とてもとても難しい。結局一本一本の加工図を作成することにした。加工図を作成する時に充分に考えておけば、あとは考えることなく機械的に加工図に従って墨付けしておけば良いし、その方が間違いない。ただ加工図の作成には部材ごとに1日~2日程も日数がかかる。それでも柱材の墨付けの時には加工図が大いに力を発揮した。上枘と下枘の他に貫穴の加工があるため、柱一本と言えど、何箇所も同じ様な加工があり、図面がなければとてもスムーズには墨付け出来なかっただろう。

加工図


2.番付け~いの一番はどこ?
第一番のことを「いの一番」と言うがこれは建築の番付けから来ている。家を真上から見た時、柱の位置を現すのに、縦横軸にいろは・・の文字と一二三の数字が用いられ「いの一番」であったり「ろの3番」であったりする。この「いの一番」の位置を左上角にすれば下がり番付け、右下角にすれば上がり番付けと言うそうで、どちらを使っても良いようである。しかしどちらもピンと来ない。これを受験勉強で悩まされた数学のXY座標と考えればとても解り易いではないか。ということなら「いの一番」は(0.0)の点の位置である左下角になる。これなら考え易い。

るの5(左~土台の柱枘穴と蟻溝、右~鎌継手)


ろの4(ネコ土台と土台へ差し込まれた長枘込栓打ち)


るの9(土台のコーナー部分 柱枘穴は片鎌となっている)



3.墨つぼ、墨さし
材木に印や文字を書くには墨つぼと墨さしを使い、直線を書くには墨糸を使う。これはすばらしい発明品であり、いかにも日本人的で私はとても好きだ。昔の大工はこの墨つぼを欅の木を使って自作したそうだが、私は残念ながらプラスチック製の市販品。いつかは立派なのを彫って見たいと思っている。墨さしだけは、自分で真竹を削って作った。線を引く方は先をヘラ状にして細く割き、文字を書く方は丸棒にして先を金槌で叩いて筆のようにする。どちらも使い易いようにするには、なかなかの工夫が必要だ。何度も削り直しては使い、ようやく手に馴染むようになったと思う頃には墨付けはもう終わる間際だった。

墨つぼ 墨さし


4.中心線は必要か?カーペンター定規の威力
建築の図面表示は土木とちがって、すべて中心線表示である。中心線がとても大事なのである。だから墨付けは先ず材木の中心線を墨糸で打つところから始まる。その中心線を基準にして、仕口の形態を描く。材の表と裏に中心線を引く作業は中々大変だ。材が反っていたら反りに合わせて中心線を途中で折る。
もし、いつでも材の中心位置を出すことのできる定規があれば、中心線を出すことも必要なくなる。そんな定規があるのか。カーペンター定規というのがそうだ。この定規を本で見た時はその仕組みにとても感動した。とても簡単な仕組みだが思いついた人は大した知恵者だ。本の写真を見ながらナラ材で自作して使ってみたら、とても便利だった。これを使うことで中心線を引く作業はやらなくて済んだ。製材した角材だけを使う限りはカーペンター定規だけで事足りる。しかし梁材にマツ丸太を使うような場合には中心線は必須であるが。

カーペンター定規


付記・妻ひろより

昨年(2005年)9月末に家の骨組の材木が搬入され、
その材木を加工後、組み始めたのは今年の(2006年)4月中旬であった。
その間実に7ヶ月間も、
夫は黙々と、材木に印を入れたり、刻んだりしていたようである。
最も、みかんの収穫や宅配があり、家作りは中断したが。
いったい夫が、7ヶ月間も、家作りの過程で何をしていたのか、
妻・ひろは何も思い出せない。
せめて写真でも見て思い出そうとしたが、
作業風景写真さえもほとんど撮っていない。
そういえば、「墨付けのため、手を真っ黒にしていたな」
と思い出す程度である。
今文字打ちをしていて、
夫が、地味で面白くない、家の下ごしらえの仕事を、延々としていた
ことがやっと解った。
ただ、「いの一番」と言われても調味料しか思い浮かばないし、
XY座標など、なんのことやら・・・・・・

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一人で建てる木組みの家~⑤木組み~

2006年09月15日 | 『一人で建てる木組みの家』
1.金物類は使わない 
 “安心して住める家”は地震や台風に強くて丈夫でなければならない。そのためには、軸組みの家では骨組がしっかりしている必要がある。骨組をしっかりさせるためには、どのように木を組むのかが重要になってくる。
 木と木を長手方向に継ぐのを継手、十字や丁字に組み合わせるのを組手といい、両方をあわせて仕口と呼ぶ。この仕口の補強に現在では、ボルトや金物が使われているのが大半である。ボルトや金物の使用を前提とした仕口ではなく、もう少し高度な仕口構造とし、ボルトや金物の替わりに込栓や楔を使えば現在の金物重視の家よりも丈夫な家ができるようだ。釘を一本も使っていない家という言われ方をすることがあるが、これがそうだ。一昔前の家は皆そうだった。大工技量の低下や施工のスピードアップを図るために金物重視に変わってしまったと本には書かれているがそうは思わない。金物を使えば仕口は少しは低ランクの仕口でよいだろうが、ボルトや金物を取り付ける手間が追加されればそれ程スピードアップが図れるわけでもない。大工技量は金物を使うようになって低下したのであって因果が逆である。
 実際に自分で材木を刻んでみて、加工が難しくて困ったということはなかったし、楔や込栓を作る手間はかかったが、これだって大工ならまたたく間に作りあげるだろう。全体的にも刻みにかかった時間は大変長かったが、熟練した大工なら私の半分の時間で仕上げることだろう。
ボルトや金物は木が乾燥すれば必ず緩んでくるし、錆びにも弱い。木だけで組む方が、断然丈夫で長持ちするようである。

垂木までの骨組が完了したところ(2006年5月9日)


木組みに使った込栓と楔の総て(2006年4月3日)
金物類に替わるこれらの小さな接続木具類が家の強度を高めてくれるはず


2.土台
土台は地表面近くで木を横に寝かすことから腐朽に注意しなければならない。この土台方式は、城を石垣の上に建てる頃から使われたらしく、工期短縮を図るための方式だったようだ。木の本来の使い方からすれば、独立基礎の上に直接柱を建てる方がずっと良いに決まっている。だがこの方式は手間や技術の点から私には適わないと、土台方式を採ることにした。土台と柱の組手は、長柄差しの込栓打ち又は片鎌長柄差し楔止めとした。

土台の仕上がり ネコ土台も見えている (2006年4月18日)


3.折置組
 柱と梁と桁が組み合さる場合、大きく分けて京呂組と折置組という二つの方法がある。
京呂組が一般的であるが、ここでは折置組とした。
金物類に頼らないとしたら、柱のてっぺんに加工した重ね柄で梁と桁を貫く折置組が明らかに強いと思ったからだ。間取りの自由度から選ぶなら京呂組らしいが、私は強さを求めた。また引き抜き対策として重ね柄それぞれに割楔を打った。

柱の頂部の重ね枘 (2005年11月13日) 
30㎜角の先の方はいかにも細くて心もとないが、がっちりと組まれれば一体となって十分に強度を発揮してくれるようだ


折置組 柱の重ね枘に一段目の梁が載ったところ。この上に桁が載ってくる (2006年4月22日)


柱に梁を載せて楔を打ち込んだところ (2006年4月22日)



4,渡り顎
 梁と桁が十字に組み合さる時は渡り顎とした。一種の相欠き組みである。緊結度を高めるために柱のないところには雇い太枘(ダボ)を打った。下の梁側は地獄枘とし上の桁側は割楔打ちとした。

渡り顎 桁と頭つなぎの渡り顎 (2006年1月6日)



5.厚貫
 壁補強には筋違いを入れずに厚貫の貫構造とした。粘りのある構造で、一挙に倒壊はしないようである。当初、壁は落し板壁工法を検討していたが、壁の強度を出すためには、落し板を金物の長ボルトで締め付けねばならないし、柱への溝加工が大変そうなのでとりやめた。
 貫はごく普通に使われているが、厚貫(t=30㎜)ではなく12~15㎜の薄い貫材を使用し、構造材というよりは壁の下地材的な役割を果たしている。 
 構造材としての貫板は柱との緊結法として、下げ鎌や掛け子彫りをして楔で止めることにしている。
 この上に壁材としては、外壁は下見板張り、内壁は羽目板か木摺りへのしっくい塗りを考えており、竹小舞下地の壁塗りではない。厚板と土壁とで強い壁となることからすれば、今回の厚板+板壁の構造は強度的に不安が残る。軸組算定という計算式で建物の強さを確かめようとした時、厚貫そのものには倍率が算定されていないため、この計算式には厚貫の強度が反映されない。それでも無理矢理木摺り板の壁として計算すれば、地震力にはOKだが、風圧力に対しては梁間方向で少し強度不足と出ている。
 四隅だけでも筋違いを入れようかと考えたが、柔の貫構造と剛の筋違い構造がミックスされても良いだろうかとやはり疑問が湧いた。結局厚貫の強度やその他の組手の強度を期待することにして、このままとした。

貫板を4段設けている。柱の中では下げ鎌などの加工をして楔で留めている 
(2006年4月26日)


6、小屋組の組手
 小屋組を物置として利用し空間を広くとるために小屋束を高くした。そのため二重梁やつなぎ梁を入れた。また小屋束の桁行方向の補強のために貫板を通した。(これは組み上げてから、不安になり、組み上げた小屋束をとり下ろして加工し直して再び組んだ。1日のロスであったが気持ちはスッキリした。)
 小屋組も1階と同じく、小屋束と梁とは長枘差し込栓打ち、小屋束と二重梁と母屋とは重ね枘割楔打ちとした。

小屋組が完了したところ 二重梁とつなぎ梁で背の高い小屋束をつないでいる。
(2006年5月1日)


7,継手
 継手は一般的に行われている方法よりも1ランク上とされる方法をとった。

 *土台・母屋・棟木 ~ 腰掛け目違い鎌継ぎ
 *梁         ~ 台持ち継ぎ
 当初は追掛大栓継ぎの持ち出し継ぎを考えていたが、大きい梁材を見ていて持  ち出し継ぎがとても不安に思え、柱の上でしっかりと継ぐ台持ち継ぎへ変更した 
 *桁         ~ 追掛大栓継ぎ


桁の追掛大栓継ぎの調整をしているところ (2006年3月22日)


柱に梁を載せているところ 梁を柱の上で継ぐ台持ち継ぎが見えている
(2006年4月21日)


付記 妻・ひろより

大三島の人たちは、誰でも、家作り全般に詳しい。
昔は、自分や近所の家を建てる時は、大工さんの手元として、の人たちが総出で下働きしたそうである。
女子衆も、「○○さんの家の瓦を載せる手伝いの時、屋根に上って怖かった」などと話してくれる。

だから、夫が家を建てていると、「道具を貸すで」「手伝うで」と親切に声をかけてくれる。
いろいろアドバイスもしてくれる。
夫は、「コレコレ、シカジカ、ウンヌン、従って大丈夫」と自分流の建築方法を、講釈する。
聞いた人は、「なるほど、それなら、丈夫じゃ」と感服する。
(多分、自分の家じゃないからかも

しかし、たった今、私は、夫の『⑤木組み』の文字打ちをして、初めて知ったが 
夫自身も、この家が台風や地震に対して絶対大丈夫であるという確固たる自信や確証がある訳でもなさそうだ 

ここは、特別に風の強いところである。
私は、「台風大丈夫?」「風で屋根飛ばへん?」
と、夫に詰め寄った。
講釈タレの夫は、
「それは、解らへん。、いろいろ調べて建ててはいるから、大丈夫だろうとは思うが。夫の建てた家で、二人で死んだら、本望やろ」
と無責任にも言い放つではないか 

台風13号が、日本に近づきつつある。
新築中の家には、まだ戸がない
柱や見せ梁、敷居が、ビシャビシャになるだろう。
それどころか、屋根が、強風で、吹き上げられないだろうか

台風シーズンの我家は、あっちもこっちも、スリリング


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一人で建てる木組みの家~④木材~

2006年09月01日 | 『一人で建てる木組みの家』
1.木材をどこに使うか 
木は基本的には火や水に弱いものである。火事になれば木造家屋はやはり燃えやすいし、切り倒されて山林に放置された木は数年で朽ちて腐ってしまう。広葉樹などは2年もすれば朽ちる。だが法隆寺のヒノキは千年でも腐らない。スギであっても湿気から遠ざければ、数百年は大丈夫だろう。だから、火や水に近いところには木を使おうとは思わない。風呂場の浴槽や壁は水に強いステンレスやタイルを考えているし、台所のレンジ裏や薪ストーブ裏の壁には不燃ボードにしっくいを塗ろうと考えている。ただそれ以外は総て木作りになるだろう。木材ほど多様性のある優れた材料はない。軽軟で加工成形は楽だし、なによりも親しみの湧く材料だ。ただ火災だけはどうにもならない。火事を起こさぬように注意しなければ。

2.国産材か輸入材か
 どちらを使いたいかと尋ねられたら、当然のごとく国産材と答えるだろう。それも地場産の木材を使いたい。書物では地場産の木材の良さを示して使うことを奨励してはいるが、私の周りではまだ実例を見ない。材木購入時に、関係機関や材木店に地場産材を使いたい旨を伝えても、どこからも積極的な反応は帰ってこなかった。なぜこだわるのかという感じだった。というのも、低コストでと言う条件をつけるから、それなら輸入材という、低コスト=輸入材の公式が出来上がってしまっているからだ。それやこれやで結局は地場産材へのこだわりは消えた。が、せめて国産材へのこだわりはあったので、スギなら低コストに見合うと国産材のスギを中心に使うことにした。
 小物の木工品作りでは国産材へのこだわりはない。使用量も少なく、色彩や質感の多様性を求めるなら輸入材もおもしろい。ただ、自分がその中に入り込んで暮らす家を作るなら、やはり日本で育った木を使いたいし、沢山の木材を使うなら日本の森林を守るためにも国産材を使うことにこだわった。

3.材木の種類はスギが中心
 スギは一等材であれば、外国産の輸入材よりも安価である。一等材とは言っても材木等級では最下級である。節があることを気にしなければ良い。また軽量なため
“一人で建てる”には取り扱い易い。加工するには軟らかいのでノコギリで切るには易しいが、ノミやカンナで削るには刃物をよく切れるようにしておかないときれいには仕上がり難い。カンナ削りなどは、ヒノキを削るほうがずっと易しくツルツルに仕上がる。
 適材適所と言われるように、使用する箇所に応じてスギ以外にもその他の材種を使用した。耐湿性を要求されるネコ土台や土台にはベイヒバやヒノキを。梁は材の背高を押さえるために強度のあるベイマツを。磨り減りに強くなければならない敷居や鴨居にはヒノキを。使用量の多い床材については、当初はスギを考えていたが、長年の使用における表面の汚れや傷のことを考えるとヒノキに軍配が上がった。
 『法隆寺を支えた木』などでよく知られる西岡棟梁はヒノキの良さを充分に伝えてくれている。総てヒノキで作れば悩まなくてもいいのだが、“低コスト”を考えるとやはりスギが中心となった。

第1回目材木搬入 2005年9月


4.木材の乾燥をどうするのか
 木を使って家を建てる場合、木の乾燥をどうするのかが大きな問題となる、どうするもこうするも、木は充分に乾かしてから使うのが常識だと言う人もいるだろう。私も小物の木工品作りでは、よく乾燥した暴れの少ない材木を使いたいと思っている。乾燥が不十分だと、反り、割れ、縮み、ねじれなど出来上がった作品を台無しにしてくれることがある。
 だが家作りではこの乾燥の考え方が少し違っている。ログハウスは最近では充分に乾燥させた丸太やマシンカット材を使うが、そもそもの丸太小屋は切ったばかりの丸太を積んで作った。だからセトリングと言って、木が乾いて収縮することを見越した仕掛けがある。また軸組の家でも、少々乾燥が不十分でも、木組みで押さえ込んでしまえば歪んだり狂うことはないとも言われている。
 どの書物にも材木の乾燥の重要性が述べられている。3年以上寝かせて天然乾燥させると良いという風に。だがそうはいかないのが現実だ。天然乾燥材もあるが大変高くつくと材木店主に言われた。低コストなら未乾燥材にするかとも思ったが、主要構造材が刻んでいる途中で、反ったりねじれたりしたら、建前の時に一人ではどうしようもなくなるではないか。
 悩んだ末に人工乾燥材を使うことにした。見積もりをとると未乾燥の荒材に比べて、プレーナーをかけた人工乾燥材でも一割強程だけ高いだけだったので、主要構造材だけは乾燥材とした。建前の時には何とかうまく収まった。ただやはり、人工乾燥材は日が経つと仕上げ表面の木のツヤがなくなってしまうのが残念だ。

積み上げられたスギの4寸角材 
搬入された材木の量の多さに唖然とした


5.材木の太さは1ランク上
 “安心してすめる家”を素人が作るので、材木は太くてしっかりしたものが良いだろうと、一般的に使うものより太くした。一般的には柱で言えば10.5cm角(3寸5分角)を使用するが、1ランク上の12㎝角(4寸角)を使った。昔から行われている木を組むための組手や継手の仕口はいろいろあるが、自分で刻んでみても気付いたのだが、どうも4寸角を基準に寸法が決められているようだ。と言うことは、4寸角材を使うのが無理がなく、しっかりした木組みができるのだと自分では納得している。
 建前を見た近所の人は、ことごとくがしっかりした太い材を使っていると感心してくれた。3寸5分角を見慣れた目では4寸角の柱は相当太く見えるようだ。

6.防腐剤や防蟻剤を使うのか
 ”健康的な家”作りを目指すため薬剤の使用は避けた。土台や柱の足元には、湿気による腐りやシロアリの害を防ぐために防腐剤や防蟻剤を塗るのが通例であるが、基礎を高くしてネコ土台で通風性を確保し、耐湿性の強いベイヒバや芯持ちヒノキを使うことで腐りや蟻害を防げると考えた。
 建物の外装は15mm厚の杉板を下見板張りとしたが、これにもペンキもオイルスティンもなにも塗らないことにしている。日が経てば黒く汚れてくるだろうが、それも古びた木の味わいと見ることにしている。庇は屋根と同じように、何らかの屋根材を載せるものだが、屋根のように雨が当たることも少ないので下見板張りとしてなにも被っていない。どうなるのか見極めるでつもりいる。

購入2ヶ月後ようやく刻みの完了した4寸角材 2005年11月中旬
手前が土台のヒノキ 向こう側が柱のスギ


付記 妻・ひろより

材木満載のクレーン付き4tトラックが2台連ねて我家に来るのを見たとき、夫も私も、びっくりした。
夫は、自分がこれだけの量の材木に刻み加工ををするのかと不安になったそうだ。
私は、これで3分の1と聞き驚いた。

家作りの撮影担当は妻・ひろだが、基礎や単に材木加工だけの変化のない面白くない写真はほとんど撮ってない。(かなり長時間かけていたが)
それで、夫より、「肝心の大事な写真がない」と、クレームが出ている。
夫の指示で撮ったはずの写真も、訳が解らず、ゴミ箱に捨てたようである。
夫に言わせれば、文章も家作りも、”面白くない部分”が、なくてはならぬ大切なところらしい。
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一人で建てる木組みの家~③丁張り・基礎

2006年08月26日 | 『一人で建てる木組みの家』
[実際施工]

1.丁張りはレベル出し、直角出しともなかなか手間取った。
レベルは散水用のビニールホースの先にガラス管をつけて,バケツの水で水盛りをしたが、バケツの水の量に対して散水用ビニールホースでは管径が太いのか、2度目にチェックしたら、最初のレベル位置と少しずれていた。これはマズイ。大切な水準測量なので、ビニールホースを細い透明ホースに変えると、ズレはほとんどなくなった。

ホースの先に試験管の底を抜いたガラス管を取り付けてある

 
 直角出しはチェックをピタゴラスの定理でするため、巻尺での距離測定が必要となる。「一人で建てる家」と言いながら、この時ばかりはもう一人助手がどうしても必要だった。悔しながら妻・ひろに手伝ってもらう。
風が吹くとすぐに2~3mmの誤差が出るので、じっくりと風が止むのを待たねばならなかった。妻・ひろは、「3mmぐらい、いいやん~」と言うが説得、説得。

2.床堀はツルハシとスコップと鍬で行った。基礎砕石は省略した。
ただし路床は自作のタコを使って充分に締め固め整正をした。
タコ突きは慣れぬ体の使い方なので、腰にひびいた。

自作のタコ:防風林のスギとみかん園の傍に生えていたコナラの木で作った


3.石積みは根気の作業だった。下段に大きな石を使い、上に行くに従って小さな石を積んだ。購入した割栗石はホルンフェルスの硬い石だったので、積み石は割って形を整えることはせず、そのままで石の形を見ながらうまくかみ合うように積んでいった。そのため石をくるくる回しては合わせ、合わなければ他の石を探すという風にとても時間がかかった。
 一段積んでは手練りコンクリートを流し込み、翌日に二段目を積んだ。上段にいくに従い石が小さくなるので、コンクリートを流し込むと積んだ石が押されて動いた。
 中腰の作業は腰が痛く、途中からは地べたに座り込んでの作業だった。




コンクリートの練り板は、ブリキ板の看板を利用している


4.手練りコンクリートは石積みの隙間へ入り込み易いように、スランプを柔らかめに骨材を25mm以下とした。それでもなかなか入りにくく、最初は空積み風にしたかったので、目地を考えていなかったが、強度のことを考えてモルタル目地を入れることとした。結構隙間が多いので、指先や棒でモルタルを押し込んだ。裏面は見えないので大雑把に、表面は丁寧に水とスポンジで洗った。

5,アンカーボルトは正確性を期すため、石やブロックを積みながら設置するのではなく、スリーブ管を入れておいて、積み上がった時点でまとめて設置することにした。スリーブ管は紙製ボイドを使用するのが標準であるが、今回は青竹があったので、代用した。節を抜いて少し割って置くと、取り外し易かったと思う。

スリーブ管の青竹


6.天端レベリングは、大変苦労した。ブロック積みの方は、ブロックを板ではさみ込んで、板のレベルに合わせてモルタルを塗ればよいのだが、石積の方はそうはいかない。試行錯誤のあげく結局水糸を2本張って、それに合わせてモルタルを塗ることにした。水糸がモルタルに付着して、とてもやり辛かったが、まあ何とかそれなりに仕上がった。

石積みと同じ栗石を使った束石


付記;妻・ひろより

夫にとっては、測量での誤差の2,3mmが、とても重要なことらしい。
たったの2~3mmが 
もしかして、風ではなくて、私のせいかもしれないのに・・・ 
『私の巻尺の持ち方は、いい加減で、その時々で違っていたかもしれない』

タコのスギは、1年以上前、
みかん畑の防風スギを十数本、切り倒した時のものである。
風通しと陽当たり良くして、みかんが病気にならない為である。

その時も、夫は、太い重いスギ丸太を、きっちりと並べて、整理した。
「適当に、積んでおいたらいいやん」と言うのに。 
しかし、あの時のスギ丸太が何かと重宝している。 

2005年1月末 10m近いスギを、手鋸で徐々に伐採した


コメント (7)
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一人で建てる木組みの家~②丁張り・基礎~

2006年08月19日 | 『一人で建てる木組みの家』
[考え方]
丁張りは、トランシットやレベルという精密光学機器を使ってやれば、早く正確にできるものだが、機器には頼らないことにした。
直角を出すには、三・四・五の大ガネとピタゴラスの定理を使う。
水準出しは、バケツとビニールホースを使う。

バケツとビニールホースを使っての水準出し


丁張り材の貫板や杭は、廃屋解体時に残しておいた板やみかん園で伐採した防風垣の杉丸太を活用。
遣方は建物周り四周をめぐらすようだが、材料の節約をはかる為、四隅だけにした。
基礎はハンドメイドハウスの本を読むと、たいてい専門業者に任せることを薦めている。しかし地盤が悪くなく、背の高い基礎にすることもなければ、自分で充分にできると考えた。
ただし、型枠を組んで生コンクリートを流し込む一般的なコンクリート基礎ではなく、レンガ積みや石積みなどの組積工法が頭の中にあった。
最もナチュラルでやりたかったのが石積みだが、土留としての石積みではなく、建物基礎の石積みとなると、切石をレンガのように積むか、片面は石を積んで、もう片面はコンクリートを打つといったものになる。
切石だと高くつきそうだし、型枠を使ったコンクリートはやりたくなかった。
本をいろいろ読み漁っていて目に留まったのが、イギリスの羊止めの石垣だった。
両側面に大きめの石を積みながら、間に小さい石を詰めていく空積みの石垣だった。

「手仕事イギリス流クラフト全科」~抜粋 羊止めの石垣


この間詰めをコンクリートにすれば、ナチュラルで頑丈な建物の基礎ができると考えた。両側面の石が型枠になるのだ。石材も基礎栗石のような安価なものでよいし、少しずつ積んでは、手練りのコンクリートを流し込むという作業は”一人で建てる”にまさにふさわしい工法だ。
建物外観を形成する外側の四周に、石積み基礎を用い、外側から見えない内側の基礎は施工性のスピーディなコンクリートブロック積みとした。
また束石についても、石積み基礎に使用した割栗石で施工した。

石積みの間詰めコンクリートの様子



石積み基礎       ~ 高さ0,5m、長さ29m 作業延べ日数29日
コンクリートブロック基礎~ 高さ0,61~0,66m 作業延べ日数16日
束石           ~ 36箇所 作業延べ日数3日

石を積んでいる様子 丁張りも見えている


石積み基礎完成



石積み基礎・コンクリートブロック基礎とも完成



追記~妻・ひろより~

栗石は島の砕石屋さんで、丁度良いのが出たので、購入した。
この砕石屋さん、何かと私達を気に掛け、時々覗いてくれる。
夫考案の基礎も、「そんな、手で石を積むなんて、大変な!」
と、コンクリート基礎を薦め、
「型枠も手回しのコンクリートミキサーも貸してあげるから」
と反対した。

しかし、黙々と、ジグソーパズルのように栗石を積み上げ、
手練のコンクリートで固めていく、基礎を見て、

「うちの栗石がこんな風に、きれいに使われるなんて」
と感心してくれた。

「いつになったらできるか」 と私も心配したが、
2005年3月着工、7月末にようやく基礎が完成した。


2005年3月 購入した栗石で試積み
コメント (2)
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