狭いトイレ小屋に素っ裸のまま監禁されて、二日目の朝を迎えた。
四面の板は、天井近くの部分だけ格子になっている。Y美はそこからホースを差し入れようとして伸ばしたものの、ホースの先端を格子に届かせるのが精一杯だった。「この役立たずのホース」Y美は力任せにホースを引っ張りながら、罵った。
「よく見なよ、チャコ。このホース、あんたのおちんちんに似ていない?」
脚立に乗って格子から覗いているY美は、彼女の正面に向かって僕を立たせた。
「ほら、おちんちんを手に取って、よく見比べてごらんよ。引っ張ったって短すぎるところとか、皮をかぶっておちんちんの先っぽだけが顔を覗かせているところとか、そっくり。私にばっかりおちんちんを見せていないで、自分で手に取ってよく見なさいよ」
いじわるな思い付きで輝いている眼差しにじっと見つめられながら、僕はおちんちんを手で持ち上げて、亀頭を見た。普段なら朝の生理現象で大きくなっているのだが、この日は一晩じゅう寒さに震えていたせいもあって、皮の中に小さく包まっていた。
「どうなの。似ている? 似ていない? はっきり自分の口で言って」
「似ています」
「何が似ているの?」
「おちんちんが…」
「誰の? もう、いらつくなあ。正確に丁寧に言わないと、また痛めつけるよ」
まずい。言う通りにしないと、Y美の要求はエスカレートする。
「ごめんなさい。僕のおちんちんが似ています」
いきなりホースから水が飛び出して、おちんちんや腹部を打った。Y美がレバーを引いたのだった。
「あんたのおちんちんが何に似ているのか、分からないよ」
顔を目掛けてホースの水が飛んできた。
「申し訳ありません。僕のおちんちんがそのホースに似ています」
「ばっかじゃないの、あんた」ホースの水がぴたりと止んだ。おちんちんの先からぽたぽたと雫が落ちる。「それは思い上がりってもんでしょうが」
反応できずに立ち尽くしている僕をY美が嘲笑する。
「あんたの、皮をかぶった小さなおちんちんは、このホースよりもレベルが低いの。だって、ホースは格子の先に顔を出しているけど、あんたのおちんちんは、袋の中に入ったままじゃないの。似ているなんて、自惚れないでよね」
再びホースの水が僕の裸体をあちこち打った。固形石鹸が投げられ、それで体を洗うように言われた。ホースから迸る水を頭から浴びながら、僕は石鹸を体に塗りつけた。
また長い一日が始まった。昨日に続いて今日も学校を休んで、この狭いトイレに閉じ込められている。先生にはY美のほうから事情を説明するという。まもなく期末試験が近いのに、僕は何の準備もしていなかった。この家に居候してから、僕の学力は明らかに低下していた。今度の期末試験でさらに成績が下がるのは必至だ。
授業中もぼんやりすることが多く、先生に叱責されたり、メライちゃんに心配されたりした。メライちゃんと一人の友人だけが最近の僕の変化に気づいて、Y美の家での生活をあれこれ訊ねてきた。僕はなんでもない風を装って真実を隠した。
格子から差し入れられた四つのおにぎりだけで、夜を迎えた。蛙の鳴き声が空腹の体に響く。Y美が板越しに学校での出来事を話してくれた。メライちゃんが僕のことを心配していたらしい。Y美は怒っていた。
「くそちび女のくせに、私の家できちんと面倒をみているのか心配してるんだよ。それって私に対しても、私のお母さんに対しても、すごく失礼なことだよね。だから言ってやったよ。そんなに気になるんだったら一度見にくればいいじゃんって。そしたら、そのうちに行ってみたいって返事しやがるの。よかったねチャコ。あいつが来たら、オールヌードのまま対面させてやるからね。メライにあんたのちっちゃいおちんちんを見せてあげなよ。想像するだけで楽しくなるね」
もしメライちゃんがこの家に遊びに来たら、ほんとにY美はそれを実行ずるだろう。学校に行ったら、メライちゃんに絶対に来てはいけないことを、よくよく言い含めなければならない。しかし、下手な言い方をしたらかえって怪しんでしまうだろう。僕は言い方を考えながら、頭の中で何度もデモンストレーションをしながら、格子から落とされた白米と豚肉の生姜焼きを拾い集めて、食べた。
深夜になればおば様が帰宅して、僕をここから出してくれることになっていた。おば様が昼間に家に立ち寄った時、ヘルパーのIさんに夕方会う予定があるのでその時に鍵を返してもらうのだと話してくれた。しかし、その期待は見事に裏切られた。ようやく帰ってきたおば様は、昨日と同じく、したたかに酔っ払っていて、鍵のことなどすっかり忘れていたと、高笑いするのだった。
「ごめんね、チャコ。不自由だろうね。そんな狭い所に素っ裸のまま閉じ込められて、さぞ苦しいことだろうね。でもね、あと一日の我慢よ。明日には、あ、もう12時を過ぎているから今日か、今日の夜には、絶対にここから出してあげるから。もしも鍵を受け取れなかったら、この小屋自体を壊してあげるからね。何か欲しいものはあるかしら。ずっと裸のようだけど寒くないの?」
「少し肌寒いです。タオルケットを一枚、貸してください」
「あらやだ。タオルケットもないの? 可哀想に。すぐ用意してあげるからね。Y美も気が利かないわね。服を与えるのが無理なら、せめてタオルケットでも投げ込んであげればよいのに」
両膝を抱えて座り込んだ僕は、タオルケットが届けられるのをじっと待った。しかし、いつまでたっても来ない。蛙の鳴き声に混じって草むらから虫の声がする。耳を傾けているうちに、眠くなってきた。ここに閉じ込められて以来、眠りは最大の贈物といってよかった。眠っていれば、とにかく時間が過ぎてくれる。タオルケットに身を包む望みもむなしく、僕は三日目の朝を迎えるのだった。
朝になって格子から差し込まれたホースで水浴びをさせられた。
一日分の食事をY美が投げ込む。僕はぐったりしていた。Y美に竹刀で滅多打ちされた体がまだずきずきと痛む。
外でY美とおば様の会話が聞こえた。おば様は今晩も遅くなるらしい。
学校から帰ってきたY美が脚立にのぼって格子から中を覗いた。タイミング悪く、僕はうんちをしている最中だった。Y美が大笑いしながら「お尻洗ってあげる」と言って、ホースを引っ張ってきた。迸る水がお尻に冷たく当たる。「やめてください。自分で拭きますから。やめて」と叫んだが、Y美は聞く耳を持たない。結局、トイレットペーパーまで水浸しにしてしまい、使い物にならなくしてしまった。
新しいトイレットペーパーを所望すると、Y美は、うんちの際はその都度お尻を水洗いしてあげるからそんなものは不要だと断じるのだった。
深夜になって、おば様が声を掛けてきた。今日もヘルパーのIさんには会えなかったという。僕が半べそをかいていると、優しく励ましてくれた。明日になればきっと出してあげる。おば様はそう約束して、家屋に戻った。
トイレ監禁生活、四日目。
頭がぼんやりして、どのように過ごしたのか覚えていない。Y美に竹刀で打たれた痣がだいぶ薄くなったように思われた。ただ、まだ体がところどころ痛む。お尻の腫れは退いてきた。
学校から戻るとY美がまず話し掛けてきてくれる。Y美は思いやりにあふれた優しい女の子のようにも感じられる。なんでもしてほしいことをいってごらんと言うので、早くここから出してほしいと答えると、途端に性格が一変し、口汚く僕を罵り始めた。
学校には風邪をこじらせたと報告したという。
トイレ監禁生活、五日目。
夕方、Y美が雪ちゃんを連れて遊びに来た。僕は昼間にうんちをしたまま、お尻を洗っていなかった。格子から覗いている二人に向かって、お尻を広げるように言われた。さすがに恥ずかしくてためらっていると、雪ちゃんが「愚図愚図していると庭で捕まえた青大将をこの中に放り込むよ」と脅かした。全身に鳥肌が立つ。言われた通りにするしかない。逆立ちして足を広げた。Y美のちょうど真下に僕のうんちで汚れた肛門がある。雪ちゃんがホースの先端に取り付けられたレバーを引いた。激しい水流が僕の肛門を打つ。おちんちんの袋にも容赦なく当たって、時折鋭い痛みが走る。うんちを洗い流す水が下腹部から胸を伝ってくる。水の色を確かめようと首を曲げた途端、排泄物を洗い流す水が顎から唇まできた。
「きれいになったでしょ」
ホースの水を止めて、Y美が満足そうに頷いた。
「でも、ほんとにきれいになったのかなあ」
雪ちゃんが首を傾げる。すると、Y美が僕に肛門に指を入れるように命じた。そして、その入れた指を二人が見ている前で舐めさせる。
「どうなの、うんちの味がする?」
「しません」僕は嘘を言った。
「ほら、きれいになったんだよ」
Y美が雪ちゃんに笑顔を向けると、ようやく雪ちゃんも納得したようだった。
トイレ監禁生活、六日目。
差し入れの食事の量が圧倒的に少ないので、いつもお腹を空かしている。
珍しくおば様が格子に顔を当てて中を覗いた。僕のやせ衰えた裸を見て、軽い驚きの声を上げた。量が少ないだけでサプリメントなどで補っているから栄養の片寄りはそんなにない筈だとおば様が説明する。僕は体力がなくなって、いつも眠たい。しかし、長く眠ることができず、小刻みに目を覚ましている。目を覚ましている時も眠っている時も、基本的にはそんなに変わらないような気がする。始終ぼんやりして、自分がどんどん動物に近くなっているのを実感する。しかも、素っ裸なので尚更だった。
トイレの入り口に掛かっている南京錠の鍵を今晩ヘルパーのIさんから受け取るのだとおば様が言う。その話はもう何回目だろう。そのたびに僕は裏切られてきた。さすがに腹立たしさを覚えて返事をしないでいると、おば様の声のトーンが下がった。
「そんな反抗的な態度でいいのかしら?」
トイレ監禁生活、七日目。
大きな鋏でおちんちんを切り取られる夢を見て、悲鳴を上げた。その声を聞き留めて、庭に入ってきた者があった。
「誰かいるのですか。もし、もし」
ヘルパーのIさんだった。あの強制射精の朝から僕がずっとここに閉じ込められていると聞いて、大変驚いていた。あれからちょうど一週間が過ぎていたのだった。
その日の夕方、おば様が南京錠の鍵を外してくれた。戸があいて、夕暮れの光がまとめて入り込んできた。Y美とおば様に肩を担がれながら、庭石を踏んで家屋に向かう。二人の女の人の背丈は僕よりも二十五センチ以上高いので、爪先立ちで歩く格好になった。
しばらくソファの上で思うさま体を伸ばして横になっていた。Y美がうつ伏せの僕の背中に乗って、肩や腰のあたりをマッサージしてくれた。Y美はしかしすぐにマッサージの手を止めて、僕の体が臭いと言った。
「臭いのも無理はないでしょ。この一週間、ずっと水道水で水浴びしてただけなんだから。お風呂が沸いているから入れてあげる」
おば様が僕の手を引いて、お風呂場に連れて行ってくれた。おば様はたっぷり一時間以上かけて汚れを洗い落としてくれた。湯船に体を沈めると、生き返ったような心地がした。大きく息をつく僕を見て、おば様が「よかったね」と微笑んだ。
湯から上がると、おば様がバスタオルで丁寧に体を拭いてくれる。大きめのバスタオルを体に巻いた僕は、二階の自分の部屋に行って、久しぶりに衣類を身に着けようとした。この家ではパンツ一枚しか身にまとうことが許されていないのだが、おば様が優しいので、今回は特別に服の着用が認められるような気がしたのだった。
が、それは甘い考えだった。脱衣所が出ようとする僕のバスタオルを、おば様はあっさり剥ぎ取った。そして手首を掴んで、食卓へ引っ張って行くのだった。
「あの、せめてパンツくらい穿いてもいいですか」
「いいじゃない。我慢しなさい。男の子でしょ」
食卓ではすでにY美が食事を始めていた。半袖のシャツにジーパン姿で、これから友だちの家に泊まりに行くのだと言う。おば様はホットパンツにベージュのポロシャツを身にまとっていた。僕だけが一糸まとわぬ素っ裸で、一週間ずっとこの格好だったにも関わらず、トイレの狭い空間から解放されてこうして普通に生活する場に引きずり出されると、改めて疼くような恥ずかしさを覚えるのだった。Y美はそんな僕のおちんちんをちらと見て、すぐに視線を食卓に戻した。
「Y美、あなたは何時頃に家を出るの?」
「五分後には出る。急がないと約束の時間に遅れる」
せわしく食事するY美のそばで、僕がおちんちんを手で隠して立っていると、おば様に気を付けの姿勢を取るように言われた。おちんちんから離した手を腰に当てて、指の先までしっかり伸ばす。ずっと狭い場所に閉じ込められて足腰が弱まっているので、起立しながらも足がぶるぶる震えてしまう。
「まだ毛が生えてこないわね。いつになったら生えてくるのかしら」
鋭く値踏みする目つきで、おば様がおちんちんを睨みつけている。
「知らない。保健の教科書にもあったけど、皮かぶってるし小さいから、毛が生えたって役に立たないんじゃないの? まだ毛なんか早いでしょ」
食事の手を止めることなく、Y美が興味なさそうに答えた。
台所へ食器を運び終えると、Y美はボストンバッグを持って玄関に向かった。
「じゃあ行ってくるね」
「S子のお母さんによろしくね。明日、遅刻しないで学校に行きなさいよ」
「分かってるよ」
呟くように言って、玄関に立つおば様と僕をちらと見てから、出て行った。これでY美は明日の夕方まで帰らないことになる。
玄関におば様と全裸の僕が並んで立っている。おば様が僕のほうを向いた。
「今晩は私と二人きりなのよ。いろいろ教えてあげる」
居間に戻るおば様に従って、僕は囚人の気持ちで歩いた。
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四面の板は、天井近くの部分だけ格子になっている。Y美はそこからホースを差し入れようとして伸ばしたものの、ホースの先端を格子に届かせるのが精一杯だった。「この役立たずのホース」Y美は力任せにホースを引っ張りながら、罵った。
「よく見なよ、チャコ。このホース、あんたのおちんちんに似ていない?」
脚立に乗って格子から覗いているY美は、彼女の正面に向かって僕を立たせた。
「ほら、おちんちんを手に取って、よく見比べてごらんよ。引っ張ったって短すぎるところとか、皮をかぶっておちんちんの先っぽだけが顔を覗かせているところとか、そっくり。私にばっかりおちんちんを見せていないで、自分で手に取ってよく見なさいよ」
いじわるな思い付きで輝いている眼差しにじっと見つめられながら、僕はおちんちんを手で持ち上げて、亀頭を見た。普段なら朝の生理現象で大きくなっているのだが、この日は一晩じゅう寒さに震えていたせいもあって、皮の中に小さく包まっていた。
「どうなの。似ている? 似ていない? はっきり自分の口で言って」
「似ています」
「何が似ているの?」
「おちんちんが…」
「誰の? もう、いらつくなあ。正確に丁寧に言わないと、また痛めつけるよ」
まずい。言う通りにしないと、Y美の要求はエスカレートする。
「ごめんなさい。僕のおちんちんが似ています」
いきなりホースから水が飛び出して、おちんちんや腹部を打った。Y美がレバーを引いたのだった。
「あんたのおちんちんが何に似ているのか、分からないよ」
顔を目掛けてホースの水が飛んできた。
「申し訳ありません。僕のおちんちんがそのホースに似ています」
「ばっかじゃないの、あんた」ホースの水がぴたりと止んだ。おちんちんの先からぽたぽたと雫が落ちる。「それは思い上がりってもんでしょうが」
反応できずに立ち尽くしている僕をY美が嘲笑する。
「あんたの、皮をかぶった小さなおちんちんは、このホースよりもレベルが低いの。だって、ホースは格子の先に顔を出しているけど、あんたのおちんちんは、袋の中に入ったままじゃないの。似ているなんて、自惚れないでよね」
再びホースの水が僕の裸体をあちこち打った。固形石鹸が投げられ、それで体を洗うように言われた。ホースから迸る水を頭から浴びながら、僕は石鹸を体に塗りつけた。
また長い一日が始まった。昨日に続いて今日も学校を休んで、この狭いトイレに閉じ込められている。先生にはY美のほうから事情を説明するという。まもなく期末試験が近いのに、僕は何の準備もしていなかった。この家に居候してから、僕の学力は明らかに低下していた。今度の期末試験でさらに成績が下がるのは必至だ。
授業中もぼんやりすることが多く、先生に叱責されたり、メライちゃんに心配されたりした。メライちゃんと一人の友人だけが最近の僕の変化に気づいて、Y美の家での生活をあれこれ訊ねてきた。僕はなんでもない風を装って真実を隠した。
格子から差し入れられた四つのおにぎりだけで、夜を迎えた。蛙の鳴き声が空腹の体に響く。Y美が板越しに学校での出来事を話してくれた。メライちゃんが僕のことを心配していたらしい。Y美は怒っていた。
「くそちび女のくせに、私の家できちんと面倒をみているのか心配してるんだよ。それって私に対しても、私のお母さんに対しても、すごく失礼なことだよね。だから言ってやったよ。そんなに気になるんだったら一度見にくればいいじゃんって。そしたら、そのうちに行ってみたいって返事しやがるの。よかったねチャコ。あいつが来たら、オールヌードのまま対面させてやるからね。メライにあんたのちっちゃいおちんちんを見せてあげなよ。想像するだけで楽しくなるね」
もしメライちゃんがこの家に遊びに来たら、ほんとにY美はそれを実行ずるだろう。学校に行ったら、メライちゃんに絶対に来てはいけないことを、よくよく言い含めなければならない。しかし、下手な言い方をしたらかえって怪しんでしまうだろう。僕は言い方を考えながら、頭の中で何度もデモンストレーションをしながら、格子から落とされた白米と豚肉の生姜焼きを拾い集めて、食べた。
深夜になればおば様が帰宅して、僕をここから出してくれることになっていた。おば様が昼間に家に立ち寄った時、ヘルパーのIさんに夕方会う予定があるのでその時に鍵を返してもらうのだと話してくれた。しかし、その期待は見事に裏切られた。ようやく帰ってきたおば様は、昨日と同じく、したたかに酔っ払っていて、鍵のことなどすっかり忘れていたと、高笑いするのだった。
「ごめんね、チャコ。不自由だろうね。そんな狭い所に素っ裸のまま閉じ込められて、さぞ苦しいことだろうね。でもね、あと一日の我慢よ。明日には、あ、もう12時を過ぎているから今日か、今日の夜には、絶対にここから出してあげるから。もしも鍵を受け取れなかったら、この小屋自体を壊してあげるからね。何か欲しいものはあるかしら。ずっと裸のようだけど寒くないの?」
「少し肌寒いです。タオルケットを一枚、貸してください」
「あらやだ。タオルケットもないの? 可哀想に。すぐ用意してあげるからね。Y美も気が利かないわね。服を与えるのが無理なら、せめてタオルケットでも投げ込んであげればよいのに」
両膝を抱えて座り込んだ僕は、タオルケットが届けられるのをじっと待った。しかし、いつまでたっても来ない。蛙の鳴き声に混じって草むらから虫の声がする。耳を傾けているうちに、眠くなってきた。ここに閉じ込められて以来、眠りは最大の贈物といってよかった。眠っていれば、とにかく時間が過ぎてくれる。タオルケットに身を包む望みもむなしく、僕は三日目の朝を迎えるのだった。
朝になって格子から差し込まれたホースで水浴びをさせられた。
一日分の食事をY美が投げ込む。僕はぐったりしていた。Y美に竹刀で滅多打ちされた体がまだずきずきと痛む。
外でY美とおば様の会話が聞こえた。おば様は今晩も遅くなるらしい。
学校から帰ってきたY美が脚立にのぼって格子から中を覗いた。タイミング悪く、僕はうんちをしている最中だった。Y美が大笑いしながら「お尻洗ってあげる」と言って、ホースを引っ張ってきた。迸る水がお尻に冷たく当たる。「やめてください。自分で拭きますから。やめて」と叫んだが、Y美は聞く耳を持たない。結局、トイレットペーパーまで水浸しにしてしまい、使い物にならなくしてしまった。
新しいトイレットペーパーを所望すると、Y美は、うんちの際はその都度お尻を水洗いしてあげるからそんなものは不要だと断じるのだった。
深夜になって、おば様が声を掛けてきた。今日もヘルパーのIさんには会えなかったという。僕が半べそをかいていると、優しく励ましてくれた。明日になればきっと出してあげる。おば様はそう約束して、家屋に戻った。
トイレ監禁生活、四日目。
頭がぼんやりして、どのように過ごしたのか覚えていない。Y美に竹刀で打たれた痣がだいぶ薄くなったように思われた。ただ、まだ体がところどころ痛む。お尻の腫れは退いてきた。
学校から戻るとY美がまず話し掛けてきてくれる。Y美は思いやりにあふれた優しい女の子のようにも感じられる。なんでもしてほしいことをいってごらんと言うので、早くここから出してほしいと答えると、途端に性格が一変し、口汚く僕を罵り始めた。
学校には風邪をこじらせたと報告したという。
トイレ監禁生活、五日目。
夕方、Y美が雪ちゃんを連れて遊びに来た。僕は昼間にうんちをしたまま、お尻を洗っていなかった。格子から覗いている二人に向かって、お尻を広げるように言われた。さすがに恥ずかしくてためらっていると、雪ちゃんが「愚図愚図していると庭で捕まえた青大将をこの中に放り込むよ」と脅かした。全身に鳥肌が立つ。言われた通りにするしかない。逆立ちして足を広げた。Y美のちょうど真下に僕のうんちで汚れた肛門がある。雪ちゃんがホースの先端に取り付けられたレバーを引いた。激しい水流が僕の肛門を打つ。おちんちんの袋にも容赦なく当たって、時折鋭い痛みが走る。うんちを洗い流す水が下腹部から胸を伝ってくる。水の色を確かめようと首を曲げた途端、排泄物を洗い流す水が顎から唇まできた。
「きれいになったでしょ」
ホースの水を止めて、Y美が満足そうに頷いた。
「でも、ほんとにきれいになったのかなあ」
雪ちゃんが首を傾げる。すると、Y美が僕に肛門に指を入れるように命じた。そして、その入れた指を二人が見ている前で舐めさせる。
「どうなの、うんちの味がする?」
「しません」僕は嘘を言った。
「ほら、きれいになったんだよ」
Y美が雪ちゃんに笑顔を向けると、ようやく雪ちゃんも納得したようだった。
トイレ監禁生活、六日目。
差し入れの食事の量が圧倒的に少ないので、いつもお腹を空かしている。
珍しくおば様が格子に顔を当てて中を覗いた。僕のやせ衰えた裸を見て、軽い驚きの声を上げた。量が少ないだけでサプリメントなどで補っているから栄養の片寄りはそんなにない筈だとおば様が説明する。僕は体力がなくなって、いつも眠たい。しかし、長く眠ることができず、小刻みに目を覚ましている。目を覚ましている時も眠っている時も、基本的にはそんなに変わらないような気がする。始終ぼんやりして、自分がどんどん動物に近くなっているのを実感する。しかも、素っ裸なので尚更だった。
トイレの入り口に掛かっている南京錠の鍵を今晩ヘルパーのIさんから受け取るのだとおば様が言う。その話はもう何回目だろう。そのたびに僕は裏切られてきた。さすがに腹立たしさを覚えて返事をしないでいると、おば様の声のトーンが下がった。
「そんな反抗的な態度でいいのかしら?」
トイレ監禁生活、七日目。
大きな鋏でおちんちんを切り取られる夢を見て、悲鳴を上げた。その声を聞き留めて、庭に入ってきた者があった。
「誰かいるのですか。もし、もし」
ヘルパーのIさんだった。あの強制射精の朝から僕がずっとここに閉じ込められていると聞いて、大変驚いていた。あれからちょうど一週間が過ぎていたのだった。
その日の夕方、おば様が南京錠の鍵を外してくれた。戸があいて、夕暮れの光がまとめて入り込んできた。Y美とおば様に肩を担がれながら、庭石を踏んで家屋に向かう。二人の女の人の背丈は僕よりも二十五センチ以上高いので、爪先立ちで歩く格好になった。
しばらくソファの上で思うさま体を伸ばして横になっていた。Y美がうつ伏せの僕の背中に乗って、肩や腰のあたりをマッサージしてくれた。Y美はしかしすぐにマッサージの手を止めて、僕の体が臭いと言った。
「臭いのも無理はないでしょ。この一週間、ずっと水道水で水浴びしてただけなんだから。お風呂が沸いているから入れてあげる」
おば様が僕の手を引いて、お風呂場に連れて行ってくれた。おば様はたっぷり一時間以上かけて汚れを洗い落としてくれた。湯船に体を沈めると、生き返ったような心地がした。大きく息をつく僕を見て、おば様が「よかったね」と微笑んだ。
湯から上がると、おば様がバスタオルで丁寧に体を拭いてくれる。大きめのバスタオルを体に巻いた僕は、二階の自分の部屋に行って、久しぶりに衣類を身に着けようとした。この家ではパンツ一枚しか身にまとうことが許されていないのだが、おば様が優しいので、今回は特別に服の着用が認められるような気がしたのだった。
が、それは甘い考えだった。脱衣所が出ようとする僕のバスタオルを、おば様はあっさり剥ぎ取った。そして手首を掴んで、食卓へ引っ張って行くのだった。
「あの、せめてパンツくらい穿いてもいいですか」
「いいじゃない。我慢しなさい。男の子でしょ」
食卓ではすでにY美が食事を始めていた。半袖のシャツにジーパン姿で、これから友だちの家に泊まりに行くのだと言う。おば様はホットパンツにベージュのポロシャツを身にまとっていた。僕だけが一糸まとわぬ素っ裸で、一週間ずっとこの格好だったにも関わらず、トイレの狭い空間から解放されてこうして普通に生活する場に引きずり出されると、改めて疼くような恥ずかしさを覚えるのだった。Y美はそんな僕のおちんちんをちらと見て、すぐに視線を食卓に戻した。
「Y美、あなたは何時頃に家を出るの?」
「五分後には出る。急がないと約束の時間に遅れる」
せわしく食事するY美のそばで、僕がおちんちんを手で隠して立っていると、おば様に気を付けの姿勢を取るように言われた。おちんちんから離した手を腰に当てて、指の先までしっかり伸ばす。ずっと狭い場所に閉じ込められて足腰が弱まっているので、起立しながらも足がぶるぶる震えてしまう。
「まだ毛が生えてこないわね。いつになったら生えてくるのかしら」
鋭く値踏みする目つきで、おば様がおちんちんを睨みつけている。
「知らない。保健の教科書にもあったけど、皮かぶってるし小さいから、毛が生えたって役に立たないんじゃないの? まだ毛なんか早いでしょ」
食事の手を止めることなく、Y美が興味なさそうに答えた。
台所へ食器を運び終えると、Y美はボストンバッグを持って玄関に向かった。
「じゃあ行ってくるね」
「S子のお母さんによろしくね。明日、遅刻しないで学校に行きなさいよ」
「分かってるよ」
呟くように言って、玄関に立つおば様と僕をちらと見てから、出て行った。これでY美は明日の夕方まで帰らないことになる。
玄関におば様と全裸の僕が並んで立っている。おば様が僕のほうを向いた。
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ねちねちと進めますので、お付合いいただければ幸いです。
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終わっていません。まだまだ続くのですが・・・
すみません。気長にお待ちください。
よろしくお願いします。