なんとか岸に這い上がることができた僕は、四つんばいの格好で荒々しく呼吸していた。上下に揺れる肩から、頭から、水滴が滴り落ちる。自分が一糸もまとっていない丸裸なのに、この先の急流で釣糸を垂らしている人たちからすぐに身を隠そうとしなかったのは、とにかくも5メートルの高みより滝壷に落ちて、さらに下流へ流されながら一命を取り留めたことに対する驚きと興奮で頭がいっぱいだったからだ。
まったくよく無事だったと思う。足から落下したのだが、それでも底に着かないほどの充分な深さが滝壷にあったことも幸運だった。それから川の急流に呑み込まれた。大きな岩に何度も体をぶつけ、いくつかの岩には掴まることができたものの、それもほんのわずかな間で、すぐに流された。股に岩をはさんで、おちんちんを打ちつけたこともあった。端のほうに流されて、大きな岩に抱きつき、ようやく岸まで手を伸ばせた。ほっとした瞬間、激しい水流の音がいきなり意識にのぼってきた。
釣り人が肘で隣りの釣り人を突っついて、あれを見ろというように僕のほうを指す。僕はとりあえず岩陰に全裸の身を転がした。少し気持ちが落ち着いたところで、もう一つの難問が頭を悩ませ始めていた。すなわち、どうやって家まで戻るか。まだ日は高く、人も多い。それよりも何よりも、僕にはここがどこなのか定かではなかった。みなみ川をさらに下った谷川で川幅も狭くなっていた。反対側の岸には山が迫っていて、濡れた山肌がつややかに光っていた。家の前の道に沿って谷川が流れていると思っていたのだが、僕が落下したことからも分かるように、川はずっと下を流れていて、さらに下降しているようだった。それに比べて家の前の道はどこまでも平坦だったように思う。
ここは谷底を流れる川のようだった。自分のいる岸の後ろを仰ぐと、丈高い草がぎっしり生えていて、道らしい道はない。どうしたら上まで行けるのだろうか。勇気を出して、釣り人たちに尋ねることにした。泳いでいて水着を流されてしまったと言えば僕の丸裸にも納得して、もしかすると親身になって帰り道を教えるばかりか、衣類を貸してくれるかもしれない。覚悟を決めると岩陰から出て、おちんちんに手を当てながら、おずおずと反対側の岸にいる釣り人たちに近づく。岩場に立って急流に竿を傾けている三人の釣り人は、ぎょっとした目で僕を見る。高校生くらいの、まじめそうな男の人たちだった。
「あの、すみません。この谷底から上がるにはどの道を辿ればよいでしょうか。ちょっと暑いから泳いでたら、意外に流れが速くて、水着をなくしてしまったもので…」
にきびを顔中に輝かせている三人の釣り人は、黙って僕に冷たい視線を送っている。誰一人口をひらこうとしなかった。ぽたぽたと足元に水滴を垂らしながらあられもない姿を晒していることに、改めて恥ずかしい思いが込みあがってくる。なんでいきなり訊ねたりしたのか、激しく後悔の念が湧く。
「すみません。困っているんです。教えていただけますか?」
三人のうち、真ん中の一人が首を横に振って薄笑いを浮かべた。もう一人が自分の後ろの山へ人差し指を向けた。そっちに上に行く山道があるのかと問うと、頷く。
「ほんとですか」
そのためには向こう岸に渡らなければならない。僕はもう一度川に入り、肩まで水に浸かった。急な流れによろめきながら、岩にしっかりつかまりつつ、向こう岸の、三人の釣り人がいる側にたどり着いた。両腕に力を入れて足を岸に上げる。
三人の前に立って頭を下げ、示された山道の方へ進もうとした時、
「お兄ちゃーん」
幸ちゃんの声だった。二人の友だちも一緒だった。彼女たちは手を振って、岩と岩の間をジャンプしてこちらに向かってくる。
「心配したんだよ、死んじゃったんじゃないかと思って。大丈夫だったの?」
息せき切って走ってきた幸ちゃんは、大きく見開いた目で僕を見て、僕の背中とお尻を交互にぴしゃぴしゃと叩いた。無事でよかった、と独り言のように呟いている。
釣り人が水面から針を上げて竿を岩の上に置くと、幸ちゃんのことを不思議そうに見た。その好奇な視線に気づいて幸ちゃんが振り向いた。
「どうも分からないな。君たちはこの子が水着をなくして素っ裸でいるのに、全然驚かないんだね」
いきなり釣り人に話し掛けられて幸ちゃんは少し驚いたようだったけど、すぐに落ち着きを取り戻して、返した。
「水着なくしたなんて、嘘ばっかり。この人は始めからずっと裸ですよ。裸のままここまで流されてきたんです」
どっと笑いが起こって、和やかな雰囲気になった。六人の間で僕だけが股間に手を当てて腰をすぼめ、裸体を小刻みに震わせながら、きょろきょろしている。幸ちゃんと二人の女の子は、僕がここまで流された経緯を面白おかしく釣り人の若者たちに話している。他の二人の釣り人も竿を片付けて、熱心に彼女たちの話に耳を傾け、愉快そうに笑い声を上げるのだった。
山の斜面に木の根が垂れ下がっていた。釣り人からここを登れば戻れると聞いた僕は、細くてロープのような木の根を掴み、土を蹴って這い上がろうとした。ちょっと足を踏み入れただけで土が崩れる。川を渡ったばかりで濡れていた僕の素足や膝小僧は、たちまち土まみれになった。危うい形で斜面に根を張っている木の幹に両足をかけた時にはお腹も土に汚れていた。
「どこに行く気なの、お兄ちゃんたら。勝手に変なとこ行かないでよ。素っ裸のくせに」
六人が和んで話をしている間に斜面の上のほうまでたどり着いた僕を見上げて、幸ちゃんが言った。片手で蔓、もう片方で木の幹を掴み、両足を開いて足場を確保している僕は、下にいる幸ちゃんたちに通常では見られない角度から下半身を晒している。お尻からおちんちんの袋にかけての部分が丸見えで、女の子たちがぽっかり口をあけたまま見上げていた。その時、僕の足元の土が崩れて、ずるずると体が滑り落ちた。
木の蔓は長くて、しっかり掴まっている僕の体が止まったのは、2メートル近く滑り落ちてからだった。悪いことに蔓の輪にすっぽりはまった手首が抜けなくなっていた。幸ちゃんたちの目の高さくらいの位置に、僕の土に汚れたお尻がある。隠そうとしてもどうにもならない状況だった。手首にからまった蔓を外そうとしてもがいていると、
「じたばたしないで。恥ずかしいかもしれないけど我慢して」
と、幸ちゃんが平手で力いっぱい僕のお尻を叩いた。痛い。小学四年生の女の子とは思えない力だった。三人の女の子たちはお尻に手をかけて僕の体を反転させようとした。僕が力を込めて拒んでいると、幸ちゃんが背後から手を伸ばしてきた。冷たい指がおちんちんを探り当てた。思わず声を上げる僕に構わず、おちんちんをぎゅっと掴む。おちんちんを引っ張って、体を正面に向かせるのだった。痛みを訴える僕の喉の奥から搾り出したような悲鳴に釣り人が笑い声を立てた。幸ちゃんは僕のおちんちんを力いっぱい引っ張った。千切れるような痛みが走った。
体を反転させられた僕は体を捻り、腿を上げて、六人の好奇心旺盛な目からおちんちんを隠した。
「すごい。こんな状況でも必至に隠してるよ。もうすっかり見られているのに」
「さっきよりもっと見られたくないことになっているんでしょ。こんなに間近だし」
女の子の感想に幸ちゃんが答えると、笑みを浮かべて、木の枝で僕の腿を打った。反転させられる際に、おちんちんの皮の部分を引っ張られたので、皮がすっかり伸び切っていた。亀頭はすっぽり皮にくるまれていた。もっとも見られたくない状態だった。
「わあ、皮がだらんと垂れてる。靴下みたいだね」
「おちんちんは靴下の中のクリスマスプレゼントなのよ」
きゃっきゃっと女の子たちが手を叩いて喜ぶ。僕は全身をむやみやたらに揺すって、どうにもならないこの恥ずかしさに耐えた。全身から汗が噴き出していた。その時、木の蔓が手首からすっと抜けた。硬い地面の上に尻餅をついた。
幸ちゃんたち女の子に追い立てられるように、釣り人たちが教えてくれたのとは違う方向へ歩まされ、結局それが遠回りだったのか近回りだったのか判然としないまま、ベニヤ板が向こう岸に掛かって橋の役目を果たしている処までいくつもの大小の岩を乗り越えて来た。向こう岸まで渡るのだと聞いて、僕はすぐに川に入った。なにしろ服を何も着ていないので、少しでも体を隠せる川は有り難かった。川の深さは胸の辺りまであった。流れが少し速いので水中の岩に掴まりながら、何度もバランスを崩して頭まで水に浸かりながら、やっと向こう岸までたどり着いた時、幸ちゃんが大声で僕を呼んでいるのに気づいた。
すぐに戻ってきて、と命令口調で叫んでいるのだった。僕は岸に手をかけていたけれども上がらないで、そのまま引き返した。川の中で僕は岸辺に立っている幸ちゃんを見上げる。幸ちゃんは頭からぽたぽた水滴を垂らしている僕にぐっと顔を近づけた。
「勝手な行動しないでよ、チャコ兄ちゃん。この一本橋を渡らないと駄目なの。みなみ川教の信者さんに怒られるよ」
と、ベニヤ板を指した。これは徳のある橋だから渡らずに向こう岸まで行くと神罰が下るそうだ。幸ちゃんは信者ではないと思ったが、この町では、みなみ川教の教えは信者以外にも影響を与えている。
僕は川から上がると、幸ちゃんたち女の子の先頭に立たされ、ベニヤ板に足をかけた。幅が二十センチくらいしかなく、慎重に渡らざるを得ない。両手でおちんちんを隠しながら進んだ。まばらに人影があり、僕が全裸でいることに気づく人がいるかもしれない。その人たちが好奇心を刺激されて、ここまで駆け寄り、騒ぐところを想像して、全身がかっと熱くなった。
橋のちょうど真ん中ぐらいで、幸ちゃんが手を伸ばしてきた。僕の股間に当てている手首を掴んで、立ち止まるのだった。四人の体重でベニヤ板がたわんでいる。僕は早く橋を渡りたかったが、立ち止まった幸ちゃんに手首を掴まれて、進むことができない。手を離してお願いだから、と僕が乞う。無情にも幸ちゃんは僕の手を後ろに回した。僕はお尻の上あたりで二つの手首を重ねて固定されてしまった。
向こう岸には丈高い草が密集していた。ちょうど橋のあるところだけ草が疎らで、通り道になっている。そこから人が現れたら、僕はいきなりその人におちんちんを晒すことになる。恥ずかしいからやめて、と僕は小声でお願いした。幸ちゃんは聞き入れてくれず、前よりもゆっくりした速度で進むのだった。
「チャコ兄ちゃん、川に入ってびしょ濡れだから、乾かしながら歩いたほうがいいんだよ。大丈夫、誰も見てないから」
確かに僕の体は濡れていて、水滴を垂らしながらベニヤ板の上を歩いていた。まだ七月に入っていないというのに真夏のように日差しが暑く、ねっとりと僕の体を包んだ。前方の草がそこだけ大きく揺れているのが目に入り、膝ががくがく震えた。人が来る。誰かがこっちに向かっている。だんだん近づいているのが草の揺れ方で分かる。
激しく身悶えした挙句、ついに幸ちゃんの手を振り解いて、僕は両手を前に回した。と、すかさず幸ちゃんが低く押し殺した声で、もし僕が勝手におちんちんを手で隠したりしたから川に突き落とすと宣告するのだった。川に落としてもすぐに岸に上けず、ずっと下のほうまで流すと言う。
「この川の流れは速いからね。この先、川幅も広がって、どんどん流されるよ。隣町まで流してあげる。私たちは勝手に帰るからね。チャコ兄さんだけ、恥ずかしい素っ裸でどうやって帰るのかな。楽しみだな」
迷っている猶予はなかった。隠したら、ほんとに幸ちゃんは僕を川に突き落とすだろう。そして僕は岸に上がることなく、全裸のまま、隣町まで流されてしまう。僕が全身を震わせながら、一旦は前に回した手をふたたび後ろに戻した。幸ちゃんが手首をがっしりと掴む。目の前の草が大きく割れて、まず足が見えた。僕は深呼吸して顔を伏せた。
草を掻き分けて河原に出てきたのは、ごま塩頭の老人とヘルパーのIさんだった。ベニヤ板の橋を裸のまま歩かされている僕を見ても、二人は大して驚いていない様子だった。手を後ろに拘束されて隠すことができないおちんちんを黙ってじっと見ている。
橋を渡りきると、ヘルパーのIさんが僕の前に立ちはだかった。幸ちゃんは岸に着いてもまだ僕の手を離してくれない。ごま塩頭の老人がいかめしい表情でIさんに寄り添っていて、何か僕に問い質したいことがあるようだった。
「あなた、正しい。この橋を渡ったのね。それはよいこと。でも、なんで体が濡れているのかしら」
「そうだ。それが聞きたいんだ。お前の体が濡れているというのは不思議だ。せっかくこの神聖な橋があるのに、濡れた体で渡るのは、どのような理由によるものか」
白のジャージ姿のIさんは冷ややかな調子で詰問し、ごま塩頭の老人は縦じまの着流しに懐手でどすの利いた声を響かせた。答えによっては僕を仕置きしかねない勢いで、大事なおちんちんを隠すこともできず、もじもじと俯いて、しどろもどろになっている僕に代わって、幸ちゃんが説明した。
いきなり川に入って向こう岸まで着いたのを呼び戻したのだと聞いて、Iさんは目を細めて笑った。ごま塩頭の老人の顔が真っ赤になっていた。僕になぜ橋を渡らずに川を歩いて渡ろうとしたのかと問う。これは橋に対するとてつもない侮辱だと言って、ステッキで足元の岩を強く叩いた。恐怖を感じた僕は震える声でほんとのことを話した。
「なんだって。素っ裸が恥ずかしいから川の中で少しでも隠したかっただと? 貴様、ふざけているのか」
あまりにも強く岩に叩きつけるので、ステッキが折れるのではと思った。興奮するごま塩頭の老人の肩に手を置いて、ヘルパーのIさんが制した。
「でもあなた、いつから裸なのかしら。私が竹刀で打たれたおちんちんの検査をした時、すでに服を着ていなかったわよね。あれからずっと丸裸のまま生活させられているんじゃないの。もう何日たつのかしら。それなのに、少しでも裸を隠したかったって、よく分からない。どういうこと? 今もこうしておちんちんを剥き出しにしているくせに」
後ろで掴んでいる僕の手首を回しながら、幸ちゃんが感嘆の声を上げた。
「お兄ちゃん、裸で生活するのが好きだったんだね。犬みたいだね。いつも丸出しにしているんでしょ」
ほてって伏せている僕の顔を幸ちゃんと幸ちゃんの二人の同級生の女の子が覗き込む。好きで裸の生活をしているのではない。いくら頼んでもY美もおば様も僕に服を着せてくれないのだった。今日は普通に服を着て学校に行ける筈だった。でも、おば様は僕にパンツ一枚も与えず、庭に放置して会社へ行ってしまった。
悔し涙が頬を伝った。Iさんが土下座したほうがよい、と僕に勧めた。ごま塩頭の老人の怒りを鎮めるにはそれしかないそうだ。岩や地面を打ち据えていたステッキがいきなり僕の腰を打ち、土下座を強要した。僕は、幸ちゃんに後ろ手の拘束を解いてもらい、地面に正座した。Iさんとごま塩頭の老人に向かって両手をついて頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
「わしらに向かって詫びるんじゃない。お前が侮辱した橋に土下座するんじゃ」
ステッキが背中に二度三度と振り下ろされる。僕は膝を上げて位置を変えると、ベニヤ板の橋に向けて頭を下げた。背中やお尻にステッキが振り下ろされた。声が小さい、頭の下げ方が丁寧ではない、などか叩かれる理由だった。そのたびに僕は呻き声を洩らし、土下座をやり直した。信者にとっては神聖な橋でも、僕にはただのベニヤ板にしか見えない。そんなものに向かって全裸のまま土下座させられるのは、理不尽で、悲しみの感情だけが胸に渦巻くのだった。
「チャコ兄ちゃん、かわいそう」
「かわいそうだね」
赤く腫れた僕の背中やお尻を撫でながら、幸ちゃんと幸ちゃんの同級生の二人の女の子が口々に同情の言葉を述べた。
大きくて平らな岩の上で僕はうつ伏せていた。眼下の川は僕の胸までの深さだったが、底の砂地が模様までくきやかに見えた。四つんばいにさせた僕のお尻を、ごま塩頭の老人とヘルパーのIさんが交互に十回ずつ、ステッキで叩いた。二人が打つたびに大きな声で数えさせられた。声が小さいと木の枝で背中を打たれた。呻き声をあげ、全身を悶えさせながら痛みに耐えたのだった。打ち終えると、Iさんは木の枝を川へ投げ捨て、ごま塩頭の老人の手を取って、歩き始めた。二人は穏やかな表情で幸ちゃんたちに手を振った。
じっと動かずにいる僕のそばで、幸ちゃんが川に入ったらどうかと囁いた。打たれて熱を帯びた体は川の水で冷やすのがよいというのがその理由だった。僕はすっかり疲れていたし、しばらく休んでいたら空腹と喉の渇きを覚えていたので、川に入りたくなかった。流されないように水中の岩に掴まるのは、それなりに体力を消耗する。朝食のトーストと半熟卵、ヨーグルトしか食べていない僕は、家に戻って喉を潤し、食事にありつくことだけを考えていた。
やんわりと、できるだけ傷つけないように断ったつもりだったが、それでも幸ちゃんは自分の提案を受け入れてもらえないことで気分を害したようだった。二人の友だちを促して、僕を仰向けにさせると、靴でおちんちんを踏みつけた。
「人がせっかく親切で言ってあげてんのに、なんで断るわけ? お尻だけじゃなくて、ここも打たれたほうがいいんじゃないの」
と、ズックの靴先で軽くおちんちんを小突く。二人の女の子に両腕を押さえつけられて動けない僕は、首を上げ、弱々しい声で謝った。
「ごめんね。傷つけたのなら謝る。謝るから、やめて」
「お兄ちゃん、なんでタメ口きいてんのかな。お願いしてるくせに」
「ごめんなさい。やめてください」
ぎゅっとおちんちんを踏みつけている足にじわじわと力が加わる。身動きできない僕は痛みを訴えることしかできなかった。逆光で幸ちゃんの体が黒い棒に見える。
「年下の女の子に丸裸でおちんちん踏まれるなんて、ほんと最低だよね。とっとと川に入ればいいのに。ここも打ってあげるから川の水で冷やしてね」
おちんちんの袋と靴の間に挟まれたおちんちんに、一段と強い圧力が加わった。と、突然足が離れて、青いズック靴が宙にあるのを見た。それが反動をつけているのだと分かった瞬間には激痛が走り、両腕を押さえていた女の子たちを振りほどき、体をくの字に曲げて、僕は涙を流していた。おちんちんの袋を蹴られたのだった。
言葉にならない声を洩らしてがくがく体を震わせている僕を三人の女の子が見下ろしていた。僕の痛がりようは彼女たちにとっても意外だったらしい。幸ちゃんが合図すると、三人の女の子は僕の手足を持って引きずり始めた。
川に落とされる、と思った僕は幸ちゃんに顔を向けて、川に落とさないようにお願いをしたが、無駄だった。一二の三の掛け声の後、僕の裸体は宙にあった。背中から川に落ちて、岩に掴まるまでたっぷり十メートルは流されてしまった。
川面まであと少しで顔を出す大きな丸岩にしがみ付いている僕は、両足を川底に着けようとぐっと力を絞って岩に胸を引き寄せ、腰を曲げた。一メートルくらい離れた岸辺で幸ちゃんたちが僕を見ていた。幸ちゃんは、透明な水のおかげて僕のお尻がしっかり見えることを指摘して笑った。川の中でも素っ裸がすぐにばれちゃうね、と女の子が言って幸ちゃんともう一人の女の子を笑わせた。
「そういえばチャコ兄ちゃん、お腹空いてて喉も渇いているって私に文句並べたよね。食べるものはないけど、水ならたくさんあるじゃん。飲みなよ」
「どういうこと?」
大きな岩の陰だから流れは少しは緩くなってはいるものの、気を抜くとすぐに流されてしまうので、つるつる滑る丸岩に両腕でしっかりしがみ付きながら、僕は幸ちゃんに問い返した。
「いいから、こっちに来て」
手招きする幸ちゃんのほうへ進もうとして、流されながら、岸辺に移動した。いやな予感を抱きながらも、流された僕のところまで歩いてくる幸ちゃんと女の子たちを待つ。幸ちゃんは岸辺に両膝をつけて、僕の髪の毛をつかむと、いきなり川の中に沈めた。
「お兄ちゃん頭悪いね。私は飲みなさいって言ったの。喉が渇いてるんでしょ。川の水を飲むのよ。ほら」
水中に沈められた僕はもがいて、なんとか顔を出す。水を吐いた。幸ちゃんが細い目尻を釣上げて、睨んでいる。いくらきれいなみなみ川の、透明な川の水でも、飲むことはできない。幸ちゃんは僕の髪の毛を掴んだまま離さない。僕が飲むと返事をしないでいると、ふたたび掴んだ髪の毛をぐっと押して川の中に沈めた。
引っ張り上げて、また沈める。それを何度も繰り返す。沈めている時間のほうが長く、僕は引っ張り上げられたわずかな時間に呼吸しなければならなかった。
「お兄ちゃんが飲むというまで止めないからね」
髪の毛を引っ張られて、すぐにまた川に沈められる。返事をしようとして口をあけると沈められ、川の水が口中にどっと入ってきて、返事ができなくなった。飲むといわない限り、幸ちゃんはこの行為をやめないと言う。
川の流れから僕を繋ぎとめているのが、幸ちゃんの掴んでいる髪の毛だけだった。頭皮の痛みに耐えながら、咳き込む僕を川に沈めては引っ張り上げ、また沈める。流れで浮き上がった僕のお尻を女の子たちが木の枝で突っついて遊んでいた。僕は苦し紛れに飲む飲むと何度も叫んだが、幸ちゃんは聞いていない風だった。
「お兄ちゃん、何言ってんのか分かんない。飲むって言ってるの?」
「飲みます、飲みますから」
「何を飲むのかな」
水中に僕の頭を沈めながら、幸ちゃんがのんきそうに訊ねる。引っ張り上げられたわずかな間に、
「川の水」
と、叫び、また沈められ、次に引っ張り上げられた時に、
「飲みます」
「ほんとに飲むの?」
両肩を上下させ、荒く呼吸している僕は、岸に両腕をかけて川に浸かったまま、腰をかがめて流れてくる川の水に口をすぼめて付けた。生臭い水が喉を通る。喉がごくごくと鳴るのを幸ちゃんは満足そうに眺めている。
「まだまだ水はいっぱいあるよ。飲みなよ。ほら、もっと飲みなよ」
川から口を離した僕に幸ちゃんが容赦のない命令を浴びせる。これ以上飲めませんと言ったらまた沈められる。僕は観念して川に口を付けた。
許されて岸に上がると、たらふく飲んだ川の水で僕のお腹が膨らんでいた。四つんばいになって、水を吐き出そうとしている僕の背中を叩いて、幸ちゃんが言った。
「少しでも水を吐いたら、また飲ませるからね」
髪の毛を掴んで僕を立たせる。お尻をぴしゃりと叩かれた。近くで小学生たちの遊ぶ声が聞こえた。反射的におちんちんに手を当てて隠してしまう。その仕草を見て、幸ちゃんがくすっと笑った。僕はベニヤ板の橋を渡った時と同じように女の子たちの先頭を歩かされた。草を掻き分けて、川とは反対側の斜面を登り始めた。
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まったくよく無事だったと思う。足から落下したのだが、それでも底に着かないほどの充分な深さが滝壷にあったことも幸運だった。それから川の急流に呑み込まれた。大きな岩に何度も体をぶつけ、いくつかの岩には掴まることができたものの、それもほんのわずかな間で、すぐに流された。股に岩をはさんで、おちんちんを打ちつけたこともあった。端のほうに流されて、大きな岩に抱きつき、ようやく岸まで手を伸ばせた。ほっとした瞬間、激しい水流の音がいきなり意識にのぼってきた。
釣り人が肘で隣りの釣り人を突っついて、あれを見ろというように僕のほうを指す。僕はとりあえず岩陰に全裸の身を転がした。少し気持ちが落ち着いたところで、もう一つの難問が頭を悩ませ始めていた。すなわち、どうやって家まで戻るか。まだ日は高く、人も多い。それよりも何よりも、僕にはここがどこなのか定かではなかった。みなみ川をさらに下った谷川で川幅も狭くなっていた。反対側の岸には山が迫っていて、濡れた山肌がつややかに光っていた。家の前の道に沿って谷川が流れていると思っていたのだが、僕が落下したことからも分かるように、川はずっと下を流れていて、さらに下降しているようだった。それに比べて家の前の道はどこまでも平坦だったように思う。
ここは谷底を流れる川のようだった。自分のいる岸の後ろを仰ぐと、丈高い草がぎっしり生えていて、道らしい道はない。どうしたら上まで行けるのだろうか。勇気を出して、釣り人たちに尋ねることにした。泳いでいて水着を流されてしまったと言えば僕の丸裸にも納得して、もしかすると親身になって帰り道を教えるばかりか、衣類を貸してくれるかもしれない。覚悟を決めると岩陰から出て、おちんちんに手を当てながら、おずおずと反対側の岸にいる釣り人たちに近づく。岩場に立って急流に竿を傾けている三人の釣り人は、ぎょっとした目で僕を見る。高校生くらいの、まじめそうな男の人たちだった。
「あの、すみません。この谷底から上がるにはどの道を辿ればよいでしょうか。ちょっと暑いから泳いでたら、意外に流れが速くて、水着をなくしてしまったもので…」
にきびを顔中に輝かせている三人の釣り人は、黙って僕に冷たい視線を送っている。誰一人口をひらこうとしなかった。ぽたぽたと足元に水滴を垂らしながらあられもない姿を晒していることに、改めて恥ずかしい思いが込みあがってくる。なんでいきなり訊ねたりしたのか、激しく後悔の念が湧く。
「すみません。困っているんです。教えていただけますか?」
三人のうち、真ん中の一人が首を横に振って薄笑いを浮かべた。もう一人が自分の後ろの山へ人差し指を向けた。そっちに上に行く山道があるのかと問うと、頷く。
「ほんとですか」
そのためには向こう岸に渡らなければならない。僕はもう一度川に入り、肩まで水に浸かった。急な流れによろめきながら、岩にしっかりつかまりつつ、向こう岸の、三人の釣り人がいる側にたどり着いた。両腕に力を入れて足を岸に上げる。
三人の前に立って頭を下げ、示された山道の方へ進もうとした時、
「お兄ちゃーん」
幸ちゃんの声だった。二人の友だちも一緒だった。彼女たちは手を振って、岩と岩の間をジャンプしてこちらに向かってくる。
「心配したんだよ、死んじゃったんじゃないかと思って。大丈夫だったの?」
息せき切って走ってきた幸ちゃんは、大きく見開いた目で僕を見て、僕の背中とお尻を交互にぴしゃぴしゃと叩いた。無事でよかった、と独り言のように呟いている。
釣り人が水面から針を上げて竿を岩の上に置くと、幸ちゃんのことを不思議そうに見た。その好奇な視線に気づいて幸ちゃんが振り向いた。
「どうも分からないな。君たちはこの子が水着をなくして素っ裸でいるのに、全然驚かないんだね」
いきなり釣り人に話し掛けられて幸ちゃんは少し驚いたようだったけど、すぐに落ち着きを取り戻して、返した。
「水着なくしたなんて、嘘ばっかり。この人は始めからずっと裸ですよ。裸のままここまで流されてきたんです」
どっと笑いが起こって、和やかな雰囲気になった。六人の間で僕だけが股間に手を当てて腰をすぼめ、裸体を小刻みに震わせながら、きょろきょろしている。幸ちゃんと二人の女の子は、僕がここまで流された経緯を面白おかしく釣り人の若者たちに話している。他の二人の釣り人も竿を片付けて、熱心に彼女たちの話に耳を傾け、愉快そうに笑い声を上げるのだった。
山の斜面に木の根が垂れ下がっていた。釣り人からここを登れば戻れると聞いた僕は、細くてロープのような木の根を掴み、土を蹴って這い上がろうとした。ちょっと足を踏み入れただけで土が崩れる。川を渡ったばかりで濡れていた僕の素足や膝小僧は、たちまち土まみれになった。危うい形で斜面に根を張っている木の幹に両足をかけた時にはお腹も土に汚れていた。
「どこに行く気なの、お兄ちゃんたら。勝手に変なとこ行かないでよ。素っ裸のくせに」
六人が和んで話をしている間に斜面の上のほうまでたどり着いた僕を見上げて、幸ちゃんが言った。片手で蔓、もう片方で木の幹を掴み、両足を開いて足場を確保している僕は、下にいる幸ちゃんたちに通常では見られない角度から下半身を晒している。お尻からおちんちんの袋にかけての部分が丸見えで、女の子たちがぽっかり口をあけたまま見上げていた。その時、僕の足元の土が崩れて、ずるずると体が滑り落ちた。
木の蔓は長くて、しっかり掴まっている僕の体が止まったのは、2メートル近く滑り落ちてからだった。悪いことに蔓の輪にすっぽりはまった手首が抜けなくなっていた。幸ちゃんたちの目の高さくらいの位置に、僕の土に汚れたお尻がある。隠そうとしてもどうにもならない状況だった。手首にからまった蔓を外そうとしてもがいていると、
「じたばたしないで。恥ずかしいかもしれないけど我慢して」
と、幸ちゃんが平手で力いっぱい僕のお尻を叩いた。痛い。小学四年生の女の子とは思えない力だった。三人の女の子たちはお尻に手をかけて僕の体を反転させようとした。僕が力を込めて拒んでいると、幸ちゃんが背後から手を伸ばしてきた。冷たい指がおちんちんを探り当てた。思わず声を上げる僕に構わず、おちんちんをぎゅっと掴む。おちんちんを引っ張って、体を正面に向かせるのだった。痛みを訴える僕の喉の奥から搾り出したような悲鳴に釣り人が笑い声を立てた。幸ちゃんは僕のおちんちんを力いっぱい引っ張った。千切れるような痛みが走った。
体を反転させられた僕は体を捻り、腿を上げて、六人の好奇心旺盛な目からおちんちんを隠した。
「すごい。こんな状況でも必至に隠してるよ。もうすっかり見られているのに」
「さっきよりもっと見られたくないことになっているんでしょ。こんなに間近だし」
女の子の感想に幸ちゃんが答えると、笑みを浮かべて、木の枝で僕の腿を打った。反転させられる際に、おちんちんの皮の部分を引っ張られたので、皮がすっかり伸び切っていた。亀頭はすっぽり皮にくるまれていた。もっとも見られたくない状態だった。
「わあ、皮がだらんと垂れてる。靴下みたいだね」
「おちんちんは靴下の中のクリスマスプレゼントなのよ」
きゃっきゃっと女の子たちが手を叩いて喜ぶ。僕は全身をむやみやたらに揺すって、どうにもならないこの恥ずかしさに耐えた。全身から汗が噴き出していた。その時、木の蔓が手首からすっと抜けた。硬い地面の上に尻餅をついた。
幸ちゃんたち女の子に追い立てられるように、釣り人たちが教えてくれたのとは違う方向へ歩まされ、結局それが遠回りだったのか近回りだったのか判然としないまま、ベニヤ板が向こう岸に掛かって橋の役目を果たしている処までいくつもの大小の岩を乗り越えて来た。向こう岸まで渡るのだと聞いて、僕はすぐに川に入った。なにしろ服を何も着ていないので、少しでも体を隠せる川は有り難かった。川の深さは胸の辺りまであった。流れが少し速いので水中の岩に掴まりながら、何度もバランスを崩して頭まで水に浸かりながら、やっと向こう岸までたどり着いた時、幸ちゃんが大声で僕を呼んでいるのに気づいた。
すぐに戻ってきて、と命令口調で叫んでいるのだった。僕は岸に手をかけていたけれども上がらないで、そのまま引き返した。川の中で僕は岸辺に立っている幸ちゃんを見上げる。幸ちゃんは頭からぽたぽた水滴を垂らしている僕にぐっと顔を近づけた。
「勝手な行動しないでよ、チャコ兄ちゃん。この一本橋を渡らないと駄目なの。みなみ川教の信者さんに怒られるよ」
と、ベニヤ板を指した。これは徳のある橋だから渡らずに向こう岸まで行くと神罰が下るそうだ。幸ちゃんは信者ではないと思ったが、この町では、みなみ川教の教えは信者以外にも影響を与えている。
僕は川から上がると、幸ちゃんたち女の子の先頭に立たされ、ベニヤ板に足をかけた。幅が二十センチくらいしかなく、慎重に渡らざるを得ない。両手でおちんちんを隠しながら進んだ。まばらに人影があり、僕が全裸でいることに気づく人がいるかもしれない。その人たちが好奇心を刺激されて、ここまで駆け寄り、騒ぐところを想像して、全身がかっと熱くなった。
橋のちょうど真ん中ぐらいで、幸ちゃんが手を伸ばしてきた。僕の股間に当てている手首を掴んで、立ち止まるのだった。四人の体重でベニヤ板がたわんでいる。僕は早く橋を渡りたかったが、立ち止まった幸ちゃんに手首を掴まれて、進むことができない。手を離してお願いだから、と僕が乞う。無情にも幸ちゃんは僕の手を後ろに回した。僕はお尻の上あたりで二つの手首を重ねて固定されてしまった。
向こう岸には丈高い草が密集していた。ちょうど橋のあるところだけ草が疎らで、通り道になっている。そこから人が現れたら、僕はいきなりその人におちんちんを晒すことになる。恥ずかしいからやめて、と僕は小声でお願いした。幸ちゃんは聞き入れてくれず、前よりもゆっくりした速度で進むのだった。
「チャコ兄ちゃん、川に入ってびしょ濡れだから、乾かしながら歩いたほうがいいんだよ。大丈夫、誰も見てないから」
確かに僕の体は濡れていて、水滴を垂らしながらベニヤ板の上を歩いていた。まだ七月に入っていないというのに真夏のように日差しが暑く、ねっとりと僕の体を包んだ。前方の草がそこだけ大きく揺れているのが目に入り、膝ががくがく震えた。人が来る。誰かがこっちに向かっている。だんだん近づいているのが草の揺れ方で分かる。
激しく身悶えした挙句、ついに幸ちゃんの手を振り解いて、僕は両手を前に回した。と、すかさず幸ちゃんが低く押し殺した声で、もし僕が勝手におちんちんを手で隠したりしたから川に突き落とすと宣告するのだった。川に落としてもすぐに岸に上けず、ずっと下のほうまで流すと言う。
「この川の流れは速いからね。この先、川幅も広がって、どんどん流されるよ。隣町まで流してあげる。私たちは勝手に帰るからね。チャコ兄さんだけ、恥ずかしい素っ裸でどうやって帰るのかな。楽しみだな」
迷っている猶予はなかった。隠したら、ほんとに幸ちゃんは僕を川に突き落とすだろう。そして僕は岸に上がることなく、全裸のまま、隣町まで流されてしまう。僕が全身を震わせながら、一旦は前に回した手をふたたび後ろに戻した。幸ちゃんが手首をがっしりと掴む。目の前の草が大きく割れて、まず足が見えた。僕は深呼吸して顔を伏せた。
草を掻き分けて河原に出てきたのは、ごま塩頭の老人とヘルパーのIさんだった。ベニヤ板の橋を裸のまま歩かされている僕を見ても、二人は大して驚いていない様子だった。手を後ろに拘束されて隠すことができないおちんちんを黙ってじっと見ている。
橋を渡りきると、ヘルパーのIさんが僕の前に立ちはだかった。幸ちゃんは岸に着いてもまだ僕の手を離してくれない。ごま塩頭の老人がいかめしい表情でIさんに寄り添っていて、何か僕に問い質したいことがあるようだった。
「あなた、正しい。この橋を渡ったのね。それはよいこと。でも、なんで体が濡れているのかしら」
「そうだ。それが聞きたいんだ。お前の体が濡れているというのは不思議だ。せっかくこの神聖な橋があるのに、濡れた体で渡るのは、どのような理由によるものか」
白のジャージ姿のIさんは冷ややかな調子で詰問し、ごま塩頭の老人は縦じまの着流しに懐手でどすの利いた声を響かせた。答えによっては僕を仕置きしかねない勢いで、大事なおちんちんを隠すこともできず、もじもじと俯いて、しどろもどろになっている僕に代わって、幸ちゃんが説明した。
いきなり川に入って向こう岸まで着いたのを呼び戻したのだと聞いて、Iさんは目を細めて笑った。ごま塩頭の老人の顔が真っ赤になっていた。僕になぜ橋を渡らずに川を歩いて渡ろうとしたのかと問う。これは橋に対するとてつもない侮辱だと言って、ステッキで足元の岩を強く叩いた。恐怖を感じた僕は震える声でほんとのことを話した。
「なんだって。素っ裸が恥ずかしいから川の中で少しでも隠したかっただと? 貴様、ふざけているのか」
あまりにも強く岩に叩きつけるので、ステッキが折れるのではと思った。興奮するごま塩頭の老人の肩に手を置いて、ヘルパーのIさんが制した。
「でもあなた、いつから裸なのかしら。私が竹刀で打たれたおちんちんの検査をした時、すでに服を着ていなかったわよね。あれからずっと丸裸のまま生活させられているんじゃないの。もう何日たつのかしら。それなのに、少しでも裸を隠したかったって、よく分からない。どういうこと? 今もこうしておちんちんを剥き出しにしているくせに」
後ろで掴んでいる僕の手首を回しながら、幸ちゃんが感嘆の声を上げた。
「お兄ちゃん、裸で生活するのが好きだったんだね。犬みたいだね。いつも丸出しにしているんでしょ」
ほてって伏せている僕の顔を幸ちゃんと幸ちゃんの二人の同級生の女の子が覗き込む。好きで裸の生活をしているのではない。いくら頼んでもY美もおば様も僕に服を着せてくれないのだった。今日は普通に服を着て学校に行ける筈だった。でも、おば様は僕にパンツ一枚も与えず、庭に放置して会社へ行ってしまった。
悔し涙が頬を伝った。Iさんが土下座したほうがよい、と僕に勧めた。ごま塩頭の老人の怒りを鎮めるにはそれしかないそうだ。岩や地面を打ち据えていたステッキがいきなり僕の腰を打ち、土下座を強要した。僕は、幸ちゃんに後ろ手の拘束を解いてもらい、地面に正座した。Iさんとごま塩頭の老人に向かって両手をついて頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
「わしらに向かって詫びるんじゃない。お前が侮辱した橋に土下座するんじゃ」
ステッキが背中に二度三度と振り下ろされる。僕は膝を上げて位置を変えると、ベニヤ板の橋に向けて頭を下げた。背中やお尻にステッキが振り下ろされた。声が小さい、頭の下げ方が丁寧ではない、などか叩かれる理由だった。そのたびに僕は呻き声を洩らし、土下座をやり直した。信者にとっては神聖な橋でも、僕にはただのベニヤ板にしか見えない。そんなものに向かって全裸のまま土下座させられるのは、理不尽で、悲しみの感情だけが胸に渦巻くのだった。
「チャコ兄ちゃん、かわいそう」
「かわいそうだね」
赤く腫れた僕の背中やお尻を撫でながら、幸ちゃんと幸ちゃんの同級生の二人の女の子が口々に同情の言葉を述べた。
大きくて平らな岩の上で僕はうつ伏せていた。眼下の川は僕の胸までの深さだったが、底の砂地が模様までくきやかに見えた。四つんばいにさせた僕のお尻を、ごま塩頭の老人とヘルパーのIさんが交互に十回ずつ、ステッキで叩いた。二人が打つたびに大きな声で数えさせられた。声が小さいと木の枝で背中を打たれた。呻き声をあげ、全身を悶えさせながら痛みに耐えたのだった。打ち終えると、Iさんは木の枝を川へ投げ捨て、ごま塩頭の老人の手を取って、歩き始めた。二人は穏やかな表情で幸ちゃんたちに手を振った。
じっと動かずにいる僕のそばで、幸ちゃんが川に入ったらどうかと囁いた。打たれて熱を帯びた体は川の水で冷やすのがよいというのがその理由だった。僕はすっかり疲れていたし、しばらく休んでいたら空腹と喉の渇きを覚えていたので、川に入りたくなかった。流されないように水中の岩に掴まるのは、それなりに体力を消耗する。朝食のトーストと半熟卵、ヨーグルトしか食べていない僕は、家に戻って喉を潤し、食事にありつくことだけを考えていた。
やんわりと、できるだけ傷つけないように断ったつもりだったが、それでも幸ちゃんは自分の提案を受け入れてもらえないことで気分を害したようだった。二人の友だちを促して、僕を仰向けにさせると、靴でおちんちんを踏みつけた。
「人がせっかく親切で言ってあげてんのに、なんで断るわけ? お尻だけじゃなくて、ここも打たれたほうがいいんじゃないの」
と、ズックの靴先で軽くおちんちんを小突く。二人の女の子に両腕を押さえつけられて動けない僕は、首を上げ、弱々しい声で謝った。
「ごめんね。傷つけたのなら謝る。謝るから、やめて」
「お兄ちゃん、なんでタメ口きいてんのかな。お願いしてるくせに」
「ごめんなさい。やめてください」
ぎゅっとおちんちんを踏みつけている足にじわじわと力が加わる。身動きできない僕は痛みを訴えることしかできなかった。逆光で幸ちゃんの体が黒い棒に見える。
「年下の女の子に丸裸でおちんちん踏まれるなんて、ほんと最低だよね。とっとと川に入ればいいのに。ここも打ってあげるから川の水で冷やしてね」
おちんちんの袋と靴の間に挟まれたおちんちんに、一段と強い圧力が加わった。と、突然足が離れて、青いズック靴が宙にあるのを見た。それが反動をつけているのだと分かった瞬間には激痛が走り、両腕を押さえていた女の子たちを振りほどき、体をくの字に曲げて、僕は涙を流していた。おちんちんの袋を蹴られたのだった。
言葉にならない声を洩らしてがくがく体を震わせている僕を三人の女の子が見下ろしていた。僕の痛がりようは彼女たちにとっても意外だったらしい。幸ちゃんが合図すると、三人の女の子は僕の手足を持って引きずり始めた。
川に落とされる、と思った僕は幸ちゃんに顔を向けて、川に落とさないようにお願いをしたが、無駄だった。一二の三の掛け声の後、僕の裸体は宙にあった。背中から川に落ちて、岩に掴まるまでたっぷり十メートルは流されてしまった。
川面まであと少しで顔を出す大きな丸岩にしがみ付いている僕は、両足を川底に着けようとぐっと力を絞って岩に胸を引き寄せ、腰を曲げた。一メートルくらい離れた岸辺で幸ちゃんたちが僕を見ていた。幸ちゃんは、透明な水のおかげて僕のお尻がしっかり見えることを指摘して笑った。川の中でも素っ裸がすぐにばれちゃうね、と女の子が言って幸ちゃんともう一人の女の子を笑わせた。
「そういえばチャコ兄ちゃん、お腹空いてて喉も渇いているって私に文句並べたよね。食べるものはないけど、水ならたくさんあるじゃん。飲みなよ」
「どういうこと?」
大きな岩の陰だから流れは少しは緩くなってはいるものの、気を抜くとすぐに流されてしまうので、つるつる滑る丸岩に両腕でしっかりしがみ付きながら、僕は幸ちゃんに問い返した。
「いいから、こっちに来て」
手招きする幸ちゃんのほうへ進もうとして、流されながら、岸辺に移動した。いやな予感を抱きながらも、流された僕のところまで歩いてくる幸ちゃんと女の子たちを待つ。幸ちゃんは岸辺に両膝をつけて、僕の髪の毛をつかむと、いきなり川の中に沈めた。
「お兄ちゃん頭悪いね。私は飲みなさいって言ったの。喉が渇いてるんでしょ。川の水を飲むのよ。ほら」
水中に沈められた僕はもがいて、なんとか顔を出す。水を吐いた。幸ちゃんが細い目尻を釣上げて、睨んでいる。いくらきれいなみなみ川の、透明な川の水でも、飲むことはできない。幸ちゃんは僕の髪の毛を掴んだまま離さない。僕が飲むと返事をしないでいると、ふたたび掴んだ髪の毛をぐっと押して川の中に沈めた。
引っ張り上げて、また沈める。それを何度も繰り返す。沈めている時間のほうが長く、僕は引っ張り上げられたわずかな時間に呼吸しなければならなかった。
「お兄ちゃんが飲むというまで止めないからね」
髪の毛を引っ張られて、すぐにまた川に沈められる。返事をしようとして口をあけると沈められ、川の水が口中にどっと入ってきて、返事ができなくなった。飲むといわない限り、幸ちゃんはこの行為をやめないと言う。
川の流れから僕を繋ぎとめているのが、幸ちゃんの掴んでいる髪の毛だけだった。頭皮の痛みに耐えながら、咳き込む僕を川に沈めては引っ張り上げ、また沈める。流れで浮き上がった僕のお尻を女の子たちが木の枝で突っついて遊んでいた。僕は苦し紛れに飲む飲むと何度も叫んだが、幸ちゃんは聞いていない風だった。
「お兄ちゃん、何言ってんのか分かんない。飲むって言ってるの?」
「飲みます、飲みますから」
「何を飲むのかな」
水中に僕の頭を沈めながら、幸ちゃんがのんきそうに訊ねる。引っ張り上げられたわずかな間に、
「川の水」
と、叫び、また沈められ、次に引っ張り上げられた時に、
「飲みます」
「ほんとに飲むの?」
両肩を上下させ、荒く呼吸している僕は、岸に両腕をかけて川に浸かったまま、腰をかがめて流れてくる川の水に口をすぼめて付けた。生臭い水が喉を通る。喉がごくごくと鳴るのを幸ちゃんは満足そうに眺めている。
「まだまだ水はいっぱいあるよ。飲みなよ。ほら、もっと飲みなよ」
川から口を離した僕に幸ちゃんが容赦のない命令を浴びせる。これ以上飲めませんと言ったらまた沈められる。僕は観念して川に口を付けた。
許されて岸に上がると、たらふく飲んだ川の水で僕のお腹が膨らんでいた。四つんばいになって、水を吐き出そうとしている僕の背中を叩いて、幸ちゃんが言った。
「少しでも水を吐いたら、また飲ませるからね」
髪の毛を掴んで僕を立たせる。お尻をぴしゃりと叩かれた。近くで小学生たちの遊ぶ声が聞こえた。反射的におちんちんに手を当てて隠してしまう。その仕草を見て、幸ちゃんがくすっと笑った。僕はベニヤ板の橋を渡った時と同じように女の子たちの先頭を歩かされた。草を掻き分けて、川とは反対側の斜面を登り始めた。
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