庭には草木が茂っていて隠れる場所に不自由はしなかったものの、一箇所にしばらくとどまっていると蚊や蚋に刺されるので、適当に場所を移動しなければならなかった。頭の先から爪先まで何もまとっていない素っ裸で青空の下をうろうろしている。動物になった気分だった。最初は素足に土や小石、芝生が痛かったり、くすぐったかったりしたが、何日も全裸で生活させられているうちに足の裏も丈夫になった。
家屋に横付けされた物置の向かいにはフェンスしかなくて、フェンスの向こうは田んぼ、その端には農道があった。農道に人がいないことを確認して物置をあける。何か布切れ、せめて腰の回りでも覆うものはないかと探していると、男の人の声がした。振り向くと、ランニングシャツに短パンのおじさんがこちらを向いて手を振っていた。ジョギングの途中らしい。僕はさっと股間に手を当てて、そばの茂みに隠れた。
「おーい、隠れなくてもいいんだよ。君はなんで裸なんだ?」
陽気な声を農道から投げかけてくる。答えようがないので黙っていると、
「おーい、答えてくれよ。なんで丸裸で庭にいるんだい?」
と、さらに大きな声を出す。その無意味に大きな声は、僕がここに全裸でいることを周りの人に知らせるようなものだった。黙っていると、しつこく叫び続けるに違いない。僕はおちんちんを手で隠してフェンスの前に立ち、
「服を探しているんです」
と、その男にだけ聞こえるような必要最小限の声量で正直に答えた。
「何? 服だって?」
農道からいきなり田の畦に飛び移って、男の人がこちらへ走ってくる。あっという間にフェンスの前まで来ると、フェンス越しに僕の体をしげしげと眺め回した。
「悪いけど、ちょっと手をどかしてもらえないか」
「な、なんでですか?」
「君が女の子か男の子か確かめてみたいんだよ」
「男の子です」
またしても見知らぬ人に素っ裸で尋問される恥ずかしさで体が火照る。おちんちんを隠している手に力が入った。
「だったら手をどかして、ちゃんとおちんちんが付いているかどうか、見せなさい」
スポーツ刈りの壮年の男が汗で濡れたランニングシャツに風を通そうとして、裾を摘まんでぱたぱた揺らしていた。言う通りにしないと力ずくでも調べるかもしれない。
少しずつ手の力を抜いて、この名前も知らないジョギングの男に思い切っておちんちんを見せると、男は明るい笑顔に戻って、言った。
「あ、毛が生えてないけどほんとにおちんちんだ。白いお尻と華奢な背中が見えたから、てっきり女の子かと思った。おちんちんがないと、女の子か男の子か、ちょっと分からないね。胸のない女の子もいるからね」
手を振って農道に戻ると、男は何事もなかったかのように走り去った。
トイレ小屋に一週間も全裸のまま閉じ込められ、つらい思いを経験したのに、南京錠を掛けられ、中に隠れることかできないとなると、中に入って今の哀れな格好を隠したくなる。トイレ小屋の周囲をうろうろしていたが、畑のおばさんたちに気づかれてしまい、ちらちらとこちらを見ては笑い声を立てていた。
アジサイの花の陰に隠れたり、物置の下にしゃがんだり、柿の木の幹に身を隠したりして、昼間の長い時間を過ごした。どの隠れ場所も完全に外から見えないというわけではなく、畑、田んぼ、通りのどこかしらから見えてしまう。僕は外を誰も人が通らないのを確認してから、思い切って門の前を過ぎて家の裏手に回ってみた。
フェンスと家屋の間が2メートルくらいの幅しかなく、土に雑草が生えているだけだった。素足に土がひんやりした。フェンスの向こうは桑畑で、通りから隙間だらけの桑畑を越えて、こちらが丸見えだった。みなみ川教信者の老人たちの家まで見える。隠れ場所としては、全然よくないけれど、少なくとも南側に面した畑及び農道と西側の田んぼ及び農道からは恥ずかしい体を隠すことができる。しかし、桑畑に人が入ってきたらもちろん、東側の家の前の道を人や車が通るだけで、急いで場所を移動しなければならない。昼間はあまり人が通らないとはいえ、安心できない。たった今も軽トラックが2台極めつけの低速で通過した。そこにさえいれば誰からも裸を見られることのない場所を探している僕は、ふたたび門の前を小走りに過ぎて、南側の庭に回った。
この家の縁の下に盥があって、服が入っているから取ってきなさいとおば様に言われたから腹ばいになって奥まで進み、盥を押しながら外まで戻ったのに、盥には何も入っていなかった。騙されたと気づいた時にはもう遅く、おば様と専門職は仕事に出掛けていた。家は完全に戸締りされていて、僕は庭に全裸で放り出されたままになった。Y美は僕が学校に来ていないのをどう思うだろうか。窮屈だけど我慢して、縁の下に潜り込むことにした。ここならたとえ庭まで誰かが入ってきたとしても気づかれない。
縁の下に潜って、明るい日差しが降り注ぐ庭を地上に十五センチの高さから見ている。飛び石の上を蟻の行列が通っている。おば様の会社の同僚である専門職から今朝受けたひどい仕打ちを思い出し、頭に血が上った。柴犬におちんちんを舐められてだんだん気持ちよくなってしまったが、大きくさせると噛み切られると脅かされ、必至に勃起しないように我慢したことや、専門職の前でオナニーさせられたことなど、思い出したくないことなどが頭の中を駆け巡る。
正午を告げる時報が鳴って、一時間は経っただろうか。ずっと同じ姿勢で縁の下に潜っているので体の節々が痛い。周囲に人の気配がしないのを幸いに思い切って出る。柿の木の横で伸びをしていると、誰かが門をあけて入って来た。
「ごめんください。水道局ですが」
急いでトイレ小屋の後ろに隠れようとしたが、もう遅かった。水道局の人は僕のほうを見て唖然としている。
「あんた、何してるの」
水道局のおばさんが目をぱちくりさせている。
「すみません。ちょっと事情があって」
両手を股間に当てて、腰を引きながら、僕は答えた。
「なんで裸でいるの。学校はどうしたの? 小学生でしょ?」
いきなり目に入った裸の人に対する警戒を解いたおばさんがずんずん近づいてくる。
「中学生です。服はこの家の人に取り上げられてしまって…」
一歩二歩後退りして、水道局のおばさんの質問に応じる。その威圧的な視線に一糸まとわぬ心細い体が震えてしまう。僕は平静を装うために逆に問うことにした。
「水道局の人が何の用ですか」
「素っ裸のくせに妙に冷静に質問するのね。検針に来たのよ」
大股できびすを返して、家の裏にあるメーターを覗きに言った。検針が済むと、アジサイの花の陰にいる僕のところに来て、
「あんた、親が破産してこちらのお宅にやっかいになっているんでしょ」
と、相変わらず威圧的な調子で詰問する。
「そうです。あの、何か着るものを貸してください」
「そんなものあるわけないじゃない。あなた、この家の人に服を取り上げられたって言ったわよね」
「はい」
「世話になっている人のこと、悪く言っていいのかしら。言いつけるからね。自分で勝手に裸になってるくせに。いくら暑いからって学校にも行かないで裸で外をうろついているなんて、おかしいわ。絶対Y美ちゃんのお母さんに言いつけますからね」
それだけ言うと、軽蔑の眼差しで僕の頭から素足の指まで眺め回して、門の外へ出て行った。
小学生の帰宅時間になった。外の通りをランドセルを背負った子どもたちが賑やかに過ぎてゆく。僕は空腹を覚えていた。家には入れずこの格好では表にも行けないから昼食が食べられない。Y美は寄り道しなければ四時くらいには帰ってくる。Y美に事情を話せば、衣類すべては無理にしてもパンツ一枚くらいは穿かせてもらえるのではないか、そして何か食べ物を口に入れるのを許してくれるのではないか、と考えた。あと少しの辛抱だ。それまでは子どもたちの予測がつかない行動に注意して、裸に気づかれないよう縁の下に身を潜めているしかない。わいわい騒ぎながら帰宅する子どもたちの声がよく聞こえてくる。
一際高い黄色い声がしたかと思うと、庭に赤いゴムボールが転がってきた。縁の下に隠れている僕のすぐ目の先でボールが止まった。ワーッと歓声がして、転がり込んだボールを拾いに子どもたちが数人、門の中に入ってきた。靴の柄から女の子と分かった。女の子がしゃがんでボールを取る時、ふと縁の下のほうへ首を回した。
まずい。僕は急いで腹ばいのまま後ろへ下がった。が、材木の出っ張りにお尻がぶつかってうまく進めない。女の子は縁の下の暗がりの中でなにやら動く物を見つけて、驚愕の表情でじっと動かなくなった。
「どうしたの」
「ほら、この中、誰かがいるよ」
「うそ、どれどれ」
三人の女の子が縁の下を覗いた。一人はF田さん宅の次女で幸ちゃんだった。
「あ、なんだ。お兄ちゃんじゃない」
安心した幸ちゃんが明るい声を上げた。
「え、幸ちゃんの知っている人なの?」
「知ってるよ。この間の鉱石はこのお兄ちゃんに川で採ってもらったんだよ。お兄ちゃん、パンツ一枚になって川に入ってくれたの」
「へえ、そうなんだ」
幸ちゃんの二人の友だちが覗き込んだまま、感心したように頷いている。僕は縁の下で三人に見つめられながら、この子たちが何も気づかずにこの場から立ち去ってくれることを祈っていた。
「ねえ、お兄ちゃん、そんなところで何してるの? ねえってば。何してるのよ。出てきてよ、お願いだから」
「ごめんね、幸ちゃん。ちょっと出られないの」
「なんでさ。何してんのよ」
小学四年生とは思えない、すれた口の聞き方をする。
「ごめんね。僕ね、裸なの」
恥ずかしい思いで体中が熱くなる。見られるよりも先に白状したほうがましだと判断して、思い切ってほんとのことを言った。
「なんで裸なのよ。おかしいよ」
「おば様に叱られて裸のまま庭に放り出されちゃったの」
「うそだあ。それってすっごく可哀想。でもパンツくらい穿いてるんでしょ?」
縁の下の薄闇に向かって、三人の女の子がまなこを凝らしている。僕は足をもじもじさせて、好奇の目を光らせている女の子たちに顔を向けた。
「パンツも穿いてない」
吐き捨てるようにそう言うと、女の子たちが大きく息をついて、互いの顔を見合わせた。
「じゃ、裸でもいいから、ちょっと出てきてよ」
「やだよ。恥ずかしいもの」
「でも私、お兄ちゃんの裸、見たことあるもん」
「やだよ。ボールを取ったら早く出て行って」
強い調子で言い張ると、女の子たちは諦めて立ち上がった。どうやら立ち去ってくれるようだ。何か話をしながら鉄扉をあけて出て行く。すると、ほどなくしてまた駆け込んでくる足音がした。
「お兄ちゃんお兄ちゃん、大変。ボールが落っこちちゃったの」
この家と桑畑の間にある小川にボールが落ちたという。Y美に桑畑に捨てられたパンツを拾いに行き、結局パンツを流して無くしてしまった、その小川だった。
断っても幸ちゃんは納得しなかった。取りに行かないなら、僕が縁の下に素っ裸の身を潜ませていることをみんなにばらすと脅かす。
「それだけは勘弁してよ。ね、幸ちゃん。幸ちゃんが僕の立場だったら、やっぱり恥ずかしいでしょ。みんなに見られたくないよね」
「当り前じゃん。でも、何にも服を着てないんだったら、服が濡れる心配がないでしょ。靴も靴下も濡らさなくていいんでしょ。ボールを取ってくれてもいいじゃん」
子どもは残酷で、自分の身に置き換えて考えることに長けていない。下手に説得しようとすると、幸ちゃんはほんとに大勢の人をここに呼び寄せかねない。
「分かった分かった。取ってあげるから、幸ちゃんは桑畑のほうに行って待ってて」
「ほんとに? 約束だからね」
こうなったら、もうおちんちんさえ見られなければいいと思って、川に入ることにした。周りに人の気配がないのを確認して、縁の下から出る。百日紅の真っ赤な花が咲いて、一日で一番暑い午後だった。直射日光が背中に刺すように降り注ぐ。
通りや田んぼの向こうの農道に人がいないのを確認して、おちんちんを手で隠しながら、家の裏手に回る。桑畑には、幸ちゃんと二人の友だちがいて、草に遮られて流れの上にとどまっている赤いゴムボールを指で示していた。女の子たちはほんとに僕が素っ裸なのを見て、軽く驚いていた。
「このボールだね。今、取ってあげるから、ちょっとあっちを向いてて」
片手をおちんちんに当てたまま、フェンスに足をかけた。こっちを見ないようにお願いしたにもかかわらず、顔をそむけてくれたのはほんの一瞬で、すぐに女の子たちはおちんちんを片手で隠しながらフェンスを跨ぐ僕のほうへ目を向けるのだった。お尻も見られたくないから、横を向いたまま、フェンスを跨ぎ、女の子たちの向かい岸に着地した。
幅2メートルくらいの小川は、以前僕が夜中に入った時よりも流れが速くなっているようだった。草と泥の入り混じった地面にずぶずぶと足が沈む。膝まで川に浸かると底は泥でくるぶしが泥の中に沈んだ。足を取られて、バランスを崩したまま、一気に深みにはまってしまった。前回よりも水量が増している。爪先立ちして顎まで迫る水に抗いながら、ボールへ手を伸ばす。水面に伏している草に流れを止められているボールをようやく引き寄せると、サッカーのスローイングのように両手をあげて、向かい岸にいる幸ちゃんたちへ投げてあげた。
投げ終わると同時に一歩、小川の真ん中へ足を踏み出してしまった僕は、深夜にひとりで入った頃よりもはるかに速くなっている水流に体を押し出されてしまった。幅が狭いのだから、せめて向こう岸の草に掴まろうとしたが、深くて足が届かない不安定な状態の上に流れが想像以上に速い。女の子たちが呆然と見守る中、僕は浮き沈みしながら道路の下まで流されてしまった。
道路の下は間口が狭くて人が入れないようになっているはずだった。ここから岸に上がればいいと思っていた。が、いつのまにか間口を狭めていた鉄柵が撤去されていて、あれよと思うまもなく、僕は道路の下の暗いトンネルを流されて行った。
このままどこへ流されるか分からない不安があった。道路の下を横切るように流れる真っ暗なトンネルの中で鉄の突起物に掴まることに成功したものの、トンネルの両側には岸がなく、このまま流れに抗って元の岸まで泳いで戻るのは、絶望的に難しかった。といって、ここで鉄の突起物に掴まっていても埒があかない。全力で泳いでみたら、あるいはなんとかなるかもしれない。一二の三で呼吸を止め、クロールで流れとは逆の方向に向かって泳ぎ出した。しかし、あっという間に泳ぎの体勢そのものを崩されるほどの強い流れに押されて、僕は道路の反対側へ流された。
道路の下のトンネルを出るところでコンクリートにお尻がぶつかった。川の中に縦幅三十センチほどのコンクリートが通されていて、水流を上と下に分けているようだった。突然日の光が白く飛び込んできたかと思うと、上に押し出されて、そのままコンクリートの斜面を滑る形になった。突起物になんとか掴まった僕に次々と水が流れてくる。ふと下を見て体が縮んだ。斜面を流れる水は、そのまま五メートルほどの高さから滝壷に落下しているのだった。
斜面の突起物にしがみ付いた僕は、なんとか斜面の両脇に茂っている草むらへ体を投げ出したいと考えた。しかし、コンクリートの斜面がぬるぬる滑って、何か掴まるものでもないかぎり、移動は不可能だった。水深十センチもない斜面の上でうつ伏せのまま突起物にしがみついている僕を見つけて、女の子たちが叫んだ。
「やだ、あんなところにいる」
道路を渡って、道路の脇の丈高い雑草が密集している所からは川岸のほうへ入れないので、大回りして細い道を通った幸ちゃんたちが走り寄って来た。
「見ないで。幸ちゃんたちはあっち行ってていいから」
僕の必至の叫びもむなしく、草を掻き分けて、幸ちゃんたち三人の女の子が近づく。彼女たちのすぐ目の先では、水が絶えず流れてぬるぬるしている斜面の上で突起物にしがみついている僕がいた。その隠しようのない全裸を夏の白い日差しのもとに晒していた。滑って膝も曲げられない。突起物を両手で掴んで、顔に落ちてくる水を払いながら、うつ伏せの体をまっすぐ伸ばしている。
「お尻丸見えだよ。お兄ちゃん、何やってんのよ、恥ずかしいなあ。早く上がってきなよ。いつまでふざけてんの?」
無情にも嘲る幸ちゃんに、二人の女の子が同意するような笑い声を立てた。
「滑って動けないんだよ。心配しなくていいから、幸ちゃんたちは向こうに行ってて。ね? 言うこと聞いて、向こうに行ってて」
「素っ裸でお尻丸出しのくせに、私に命令するようなこと言わないで。ここから下に落ちたら大変だよ。ほら、お兄ちゃんの上に蔓が伸びているじゃん。それに掴まればいいんじゃないの?」
見上げると、草の蔓が僕の頭のすぐ上で揺れていた。片手を突起物から離して恐る恐る蔓を掴む。引っ張ってみて丈夫そうだったので、もう片方の手も蔓へ移し変える。その途端、滑って体が反転し、うつ伏せから仰向けになってしまった。
「きゃー、嘘でしょ」
「信じられない」
「やあだ、お兄ちゃんたら、おちんちん丸見え」
三人の女の子が一斉に手を叩いて囃した。両手でしっかり蔓を掴んでいるが、仰向けのま腕が伸びきって、おちんちんを隠すこともできない。身をよじって隠そうとする僕に向かって、幸ちゃんが大声を出した。
「蔓が切れるよ。お兄ちゃん、動かないで」
頭が真っ白になる。素っ裸でおちんちんを晒している恥ずかしさと滝壷に落ちる恐怖で体が震える。ふと幸ちゃんたちのほうを見ると、幸ちゃんが蔓の端を握っているではないか。しまった、騙された。蔓はもう一つの上の突起物を通って僕の頭まで下りていたのだった。幸ちゃんが蔓から手を離すと、僕はそのまま滝壷へ水もろとも落下してしまう。三人の女の子が力を合わせて蔓を引いている。僕の体が少し上がった。
「分かったでしょ、お兄ちゃん。下手におちんちんを隠そうとしたら、蔓から手を離すからね。滝壷に落ちたくなかったら、恥ずかしくても、くすぐったくても、じっと我慢しててね。いいかしら?」
「やめて、幸ちゃん。お願いだからこんな馬鹿な真似はやめて」
「ねえ、お兄ちゃん。それが人に物を頼む時の言い方?」
「お願いです。蔓をもっと引っ張ってください」
「いいから、おとなしくしてて」
有無を言わせぬ迫力で僕の哀訴をシャットアウトすると、幸ちゃんは斜面にぎりぎりまで近づいてしゃがんだ。そして、木の棒切れを僕のおちんちんに向かって伸ばした。僕はといえば蔓をつかんだ両手を離すこともできず、身をよじれば滝壷へ落とされる。呻き声をあげてこの屈辱に耐えるしかなかった。
「見ててごらん。こうやってると、だんだんおちんちん大きくなるから」
二人の女の子に教えながら、幸ちゃんが棒切れでおちんちんを撫でる。表と裏を交互にゆっくり撫でる。木の硬い感触も気にならないほどのソフトなタッチで執拗に撫でたり擦ったりしている。
水が流れる斜面で蔓に両手を取られ、仰向けの恥ずかしい裸体を晒し続けている僕は、何度かたまらなくなって身を悶えさせた。が、その度に自分より四つも年下の女の子に叱られ、じっと動かないことを約束させられるのだった。
「見て見て。おちんちん、少しずつ大きくなってるのが分かるでしょ。こうやって刺激してあげると、おちんちんが大きくなるんだって。雪姉ちゃんが言ってた」
「ほんとだ。おもしろい」
「皮の中から何か出てきたね」
棒切れでおちんちんをいじられながら、しかしこれでも滝壷に落とされるよりは数等マシだと自分に言い聞かせ、理不尽な快感地獄に耐える。感じてしまえば女の子たちをいたずらに喜ばせるだけで、この種のいじめがエスカレートするだけだと思えばこそ、歯を食いしばって感じないように頑張ったのだが、棒切れによる刺激はあまりにも巧みで、とうとう僕のおちんちんはこれ以上大きくならないところまで膨張してしまった。
女の子たちが歓声を上げる。僕は幸ちゃんに命じられ、感謝の言葉を言わされた。
「僕の小さなおちんちんを撫でて大きくして下さり、ほんとにありが」
「聞こえないよ」
「ありがとうございました」
「だめ。始めから、やり直し」
頭上から流れてくる水に顔が濡れるおかげで悟られなかったが、僕の両頬は悔し涙でも濡れていた。年下の女の子に屈辱的な感謝の言葉を何度も言わされた。逆らえば五メートル下の滝壷に落とされてしまう。
「この勃起したおちんちんをさらに擦りつづけるとね、白い液体が飛び出すんだってさ。雪姉ちゃんが言ってたよ。せっかくだからやってみようか」
「見たい見たい」
二人の女の子が幸ちゃんの提案に賛成する。この格好のまま射精させられる? そう思った途端、体の力ががっくり抜けた。それと同時に手が滑って蔓を離れた。
あっと思った時には、僕は五メートルの高さから滝壷へ落下していた。
人気blogランキングへ
FC2 Blog Ranking
![にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説へ](http://novel.blogmura.com/novel_love/img/novel_love80_15.gif)
(お気に召された方、よろしければクリックをお願いします。)
家屋に横付けされた物置の向かいにはフェンスしかなくて、フェンスの向こうは田んぼ、その端には農道があった。農道に人がいないことを確認して物置をあける。何か布切れ、せめて腰の回りでも覆うものはないかと探していると、男の人の声がした。振り向くと、ランニングシャツに短パンのおじさんがこちらを向いて手を振っていた。ジョギングの途中らしい。僕はさっと股間に手を当てて、そばの茂みに隠れた。
「おーい、隠れなくてもいいんだよ。君はなんで裸なんだ?」
陽気な声を農道から投げかけてくる。答えようがないので黙っていると、
「おーい、答えてくれよ。なんで丸裸で庭にいるんだい?」
と、さらに大きな声を出す。その無意味に大きな声は、僕がここに全裸でいることを周りの人に知らせるようなものだった。黙っていると、しつこく叫び続けるに違いない。僕はおちんちんを手で隠してフェンスの前に立ち、
「服を探しているんです」
と、その男にだけ聞こえるような必要最小限の声量で正直に答えた。
「何? 服だって?」
農道からいきなり田の畦に飛び移って、男の人がこちらへ走ってくる。あっという間にフェンスの前まで来ると、フェンス越しに僕の体をしげしげと眺め回した。
「悪いけど、ちょっと手をどかしてもらえないか」
「な、なんでですか?」
「君が女の子か男の子か確かめてみたいんだよ」
「男の子です」
またしても見知らぬ人に素っ裸で尋問される恥ずかしさで体が火照る。おちんちんを隠している手に力が入った。
「だったら手をどかして、ちゃんとおちんちんが付いているかどうか、見せなさい」
スポーツ刈りの壮年の男が汗で濡れたランニングシャツに風を通そうとして、裾を摘まんでぱたぱた揺らしていた。言う通りにしないと力ずくでも調べるかもしれない。
少しずつ手の力を抜いて、この名前も知らないジョギングの男に思い切っておちんちんを見せると、男は明るい笑顔に戻って、言った。
「あ、毛が生えてないけどほんとにおちんちんだ。白いお尻と華奢な背中が見えたから、てっきり女の子かと思った。おちんちんがないと、女の子か男の子か、ちょっと分からないね。胸のない女の子もいるからね」
手を振って農道に戻ると、男は何事もなかったかのように走り去った。
トイレ小屋に一週間も全裸のまま閉じ込められ、つらい思いを経験したのに、南京錠を掛けられ、中に隠れることかできないとなると、中に入って今の哀れな格好を隠したくなる。トイレ小屋の周囲をうろうろしていたが、畑のおばさんたちに気づかれてしまい、ちらちらとこちらを見ては笑い声を立てていた。
アジサイの花の陰に隠れたり、物置の下にしゃがんだり、柿の木の幹に身を隠したりして、昼間の長い時間を過ごした。どの隠れ場所も完全に外から見えないというわけではなく、畑、田んぼ、通りのどこかしらから見えてしまう。僕は外を誰も人が通らないのを確認してから、思い切って門の前を過ぎて家の裏手に回ってみた。
フェンスと家屋の間が2メートルくらいの幅しかなく、土に雑草が生えているだけだった。素足に土がひんやりした。フェンスの向こうは桑畑で、通りから隙間だらけの桑畑を越えて、こちらが丸見えだった。みなみ川教信者の老人たちの家まで見える。隠れ場所としては、全然よくないけれど、少なくとも南側に面した畑及び農道と西側の田んぼ及び農道からは恥ずかしい体を隠すことができる。しかし、桑畑に人が入ってきたらもちろん、東側の家の前の道を人や車が通るだけで、急いで場所を移動しなければならない。昼間はあまり人が通らないとはいえ、安心できない。たった今も軽トラックが2台極めつけの低速で通過した。そこにさえいれば誰からも裸を見られることのない場所を探している僕は、ふたたび門の前を小走りに過ぎて、南側の庭に回った。
この家の縁の下に盥があって、服が入っているから取ってきなさいとおば様に言われたから腹ばいになって奥まで進み、盥を押しながら外まで戻ったのに、盥には何も入っていなかった。騙されたと気づいた時にはもう遅く、おば様と専門職は仕事に出掛けていた。家は完全に戸締りされていて、僕は庭に全裸で放り出されたままになった。Y美は僕が学校に来ていないのをどう思うだろうか。窮屈だけど我慢して、縁の下に潜り込むことにした。ここならたとえ庭まで誰かが入ってきたとしても気づかれない。
縁の下に潜って、明るい日差しが降り注ぐ庭を地上に十五センチの高さから見ている。飛び石の上を蟻の行列が通っている。おば様の会社の同僚である専門職から今朝受けたひどい仕打ちを思い出し、頭に血が上った。柴犬におちんちんを舐められてだんだん気持ちよくなってしまったが、大きくさせると噛み切られると脅かされ、必至に勃起しないように我慢したことや、専門職の前でオナニーさせられたことなど、思い出したくないことなどが頭の中を駆け巡る。
正午を告げる時報が鳴って、一時間は経っただろうか。ずっと同じ姿勢で縁の下に潜っているので体の節々が痛い。周囲に人の気配がしないのを幸いに思い切って出る。柿の木の横で伸びをしていると、誰かが門をあけて入って来た。
「ごめんください。水道局ですが」
急いでトイレ小屋の後ろに隠れようとしたが、もう遅かった。水道局の人は僕のほうを見て唖然としている。
「あんた、何してるの」
水道局のおばさんが目をぱちくりさせている。
「すみません。ちょっと事情があって」
両手を股間に当てて、腰を引きながら、僕は答えた。
「なんで裸でいるの。学校はどうしたの? 小学生でしょ?」
いきなり目に入った裸の人に対する警戒を解いたおばさんがずんずん近づいてくる。
「中学生です。服はこの家の人に取り上げられてしまって…」
一歩二歩後退りして、水道局のおばさんの質問に応じる。その威圧的な視線に一糸まとわぬ心細い体が震えてしまう。僕は平静を装うために逆に問うことにした。
「水道局の人が何の用ですか」
「素っ裸のくせに妙に冷静に質問するのね。検針に来たのよ」
大股できびすを返して、家の裏にあるメーターを覗きに言った。検針が済むと、アジサイの花の陰にいる僕のところに来て、
「あんた、親が破産してこちらのお宅にやっかいになっているんでしょ」
と、相変わらず威圧的な調子で詰問する。
「そうです。あの、何か着るものを貸してください」
「そんなものあるわけないじゃない。あなた、この家の人に服を取り上げられたって言ったわよね」
「はい」
「世話になっている人のこと、悪く言っていいのかしら。言いつけるからね。自分で勝手に裸になってるくせに。いくら暑いからって学校にも行かないで裸で外をうろついているなんて、おかしいわ。絶対Y美ちゃんのお母さんに言いつけますからね」
それだけ言うと、軽蔑の眼差しで僕の頭から素足の指まで眺め回して、門の外へ出て行った。
小学生の帰宅時間になった。外の通りをランドセルを背負った子どもたちが賑やかに過ぎてゆく。僕は空腹を覚えていた。家には入れずこの格好では表にも行けないから昼食が食べられない。Y美は寄り道しなければ四時くらいには帰ってくる。Y美に事情を話せば、衣類すべては無理にしてもパンツ一枚くらいは穿かせてもらえるのではないか、そして何か食べ物を口に入れるのを許してくれるのではないか、と考えた。あと少しの辛抱だ。それまでは子どもたちの予測がつかない行動に注意して、裸に気づかれないよう縁の下に身を潜めているしかない。わいわい騒ぎながら帰宅する子どもたちの声がよく聞こえてくる。
一際高い黄色い声がしたかと思うと、庭に赤いゴムボールが転がってきた。縁の下に隠れている僕のすぐ目の先でボールが止まった。ワーッと歓声がして、転がり込んだボールを拾いに子どもたちが数人、門の中に入ってきた。靴の柄から女の子と分かった。女の子がしゃがんでボールを取る時、ふと縁の下のほうへ首を回した。
まずい。僕は急いで腹ばいのまま後ろへ下がった。が、材木の出っ張りにお尻がぶつかってうまく進めない。女の子は縁の下の暗がりの中でなにやら動く物を見つけて、驚愕の表情でじっと動かなくなった。
「どうしたの」
「ほら、この中、誰かがいるよ」
「うそ、どれどれ」
三人の女の子が縁の下を覗いた。一人はF田さん宅の次女で幸ちゃんだった。
「あ、なんだ。お兄ちゃんじゃない」
安心した幸ちゃんが明るい声を上げた。
「え、幸ちゃんの知っている人なの?」
「知ってるよ。この間の鉱石はこのお兄ちゃんに川で採ってもらったんだよ。お兄ちゃん、パンツ一枚になって川に入ってくれたの」
「へえ、そうなんだ」
幸ちゃんの二人の友だちが覗き込んだまま、感心したように頷いている。僕は縁の下で三人に見つめられながら、この子たちが何も気づかずにこの場から立ち去ってくれることを祈っていた。
「ねえ、お兄ちゃん、そんなところで何してるの? ねえってば。何してるのよ。出てきてよ、お願いだから」
「ごめんね、幸ちゃん。ちょっと出られないの」
「なんでさ。何してんのよ」
小学四年生とは思えない、すれた口の聞き方をする。
「ごめんね。僕ね、裸なの」
恥ずかしい思いで体中が熱くなる。見られるよりも先に白状したほうがましだと判断して、思い切ってほんとのことを言った。
「なんで裸なのよ。おかしいよ」
「おば様に叱られて裸のまま庭に放り出されちゃったの」
「うそだあ。それってすっごく可哀想。でもパンツくらい穿いてるんでしょ?」
縁の下の薄闇に向かって、三人の女の子がまなこを凝らしている。僕は足をもじもじさせて、好奇の目を光らせている女の子たちに顔を向けた。
「パンツも穿いてない」
吐き捨てるようにそう言うと、女の子たちが大きく息をついて、互いの顔を見合わせた。
「じゃ、裸でもいいから、ちょっと出てきてよ」
「やだよ。恥ずかしいもの」
「でも私、お兄ちゃんの裸、見たことあるもん」
「やだよ。ボールを取ったら早く出て行って」
強い調子で言い張ると、女の子たちは諦めて立ち上がった。どうやら立ち去ってくれるようだ。何か話をしながら鉄扉をあけて出て行く。すると、ほどなくしてまた駆け込んでくる足音がした。
「お兄ちゃんお兄ちゃん、大変。ボールが落っこちちゃったの」
この家と桑畑の間にある小川にボールが落ちたという。Y美に桑畑に捨てられたパンツを拾いに行き、結局パンツを流して無くしてしまった、その小川だった。
断っても幸ちゃんは納得しなかった。取りに行かないなら、僕が縁の下に素っ裸の身を潜ませていることをみんなにばらすと脅かす。
「それだけは勘弁してよ。ね、幸ちゃん。幸ちゃんが僕の立場だったら、やっぱり恥ずかしいでしょ。みんなに見られたくないよね」
「当り前じゃん。でも、何にも服を着てないんだったら、服が濡れる心配がないでしょ。靴も靴下も濡らさなくていいんでしょ。ボールを取ってくれてもいいじゃん」
子どもは残酷で、自分の身に置き換えて考えることに長けていない。下手に説得しようとすると、幸ちゃんはほんとに大勢の人をここに呼び寄せかねない。
「分かった分かった。取ってあげるから、幸ちゃんは桑畑のほうに行って待ってて」
「ほんとに? 約束だからね」
こうなったら、もうおちんちんさえ見られなければいいと思って、川に入ることにした。周りに人の気配がないのを確認して、縁の下から出る。百日紅の真っ赤な花が咲いて、一日で一番暑い午後だった。直射日光が背中に刺すように降り注ぐ。
通りや田んぼの向こうの農道に人がいないのを確認して、おちんちんを手で隠しながら、家の裏手に回る。桑畑には、幸ちゃんと二人の友だちがいて、草に遮られて流れの上にとどまっている赤いゴムボールを指で示していた。女の子たちはほんとに僕が素っ裸なのを見て、軽く驚いていた。
「このボールだね。今、取ってあげるから、ちょっとあっちを向いてて」
片手をおちんちんに当てたまま、フェンスに足をかけた。こっちを見ないようにお願いしたにもかかわらず、顔をそむけてくれたのはほんの一瞬で、すぐに女の子たちはおちんちんを片手で隠しながらフェンスを跨ぐ僕のほうへ目を向けるのだった。お尻も見られたくないから、横を向いたまま、フェンスを跨ぎ、女の子たちの向かい岸に着地した。
幅2メートルくらいの小川は、以前僕が夜中に入った時よりも流れが速くなっているようだった。草と泥の入り混じった地面にずぶずぶと足が沈む。膝まで川に浸かると底は泥でくるぶしが泥の中に沈んだ。足を取られて、バランスを崩したまま、一気に深みにはまってしまった。前回よりも水量が増している。爪先立ちして顎まで迫る水に抗いながら、ボールへ手を伸ばす。水面に伏している草に流れを止められているボールをようやく引き寄せると、サッカーのスローイングのように両手をあげて、向かい岸にいる幸ちゃんたちへ投げてあげた。
投げ終わると同時に一歩、小川の真ん中へ足を踏み出してしまった僕は、深夜にひとりで入った頃よりもはるかに速くなっている水流に体を押し出されてしまった。幅が狭いのだから、せめて向こう岸の草に掴まろうとしたが、深くて足が届かない不安定な状態の上に流れが想像以上に速い。女の子たちが呆然と見守る中、僕は浮き沈みしながら道路の下まで流されてしまった。
道路の下は間口が狭くて人が入れないようになっているはずだった。ここから岸に上がればいいと思っていた。が、いつのまにか間口を狭めていた鉄柵が撤去されていて、あれよと思うまもなく、僕は道路の下の暗いトンネルを流されて行った。
このままどこへ流されるか分からない不安があった。道路の下を横切るように流れる真っ暗なトンネルの中で鉄の突起物に掴まることに成功したものの、トンネルの両側には岸がなく、このまま流れに抗って元の岸まで泳いで戻るのは、絶望的に難しかった。といって、ここで鉄の突起物に掴まっていても埒があかない。全力で泳いでみたら、あるいはなんとかなるかもしれない。一二の三で呼吸を止め、クロールで流れとは逆の方向に向かって泳ぎ出した。しかし、あっという間に泳ぎの体勢そのものを崩されるほどの強い流れに押されて、僕は道路の反対側へ流された。
道路の下のトンネルを出るところでコンクリートにお尻がぶつかった。川の中に縦幅三十センチほどのコンクリートが通されていて、水流を上と下に分けているようだった。突然日の光が白く飛び込んできたかと思うと、上に押し出されて、そのままコンクリートの斜面を滑る形になった。突起物になんとか掴まった僕に次々と水が流れてくる。ふと下を見て体が縮んだ。斜面を流れる水は、そのまま五メートルほどの高さから滝壷に落下しているのだった。
斜面の突起物にしがみ付いた僕は、なんとか斜面の両脇に茂っている草むらへ体を投げ出したいと考えた。しかし、コンクリートの斜面がぬるぬる滑って、何か掴まるものでもないかぎり、移動は不可能だった。水深十センチもない斜面の上でうつ伏せのまま突起物にしがみついている僕を見つけて、女の子たちが叫んだ。
「やだ、あんなところにいる」
道路を渡って、道路の脇の丈高い雑草が密集している所からは川岸のほうへ入れないので、大回りして細い道を通った幸ちゃんたちが走り寄って来た。
「見ないで。幸ちゃんたちはあっち行ってていいから」
僕の必至の叫びもむなしく、草を掻き分けて、幸ちゃんたち三人の女の子が近づく。彼女たちのすぐ目の先では、水が絶えず流れてぬるぬるしている斜面の上で突起物にしがみついている僕がいた。その隠しようのない全裸を夏の白い日差しのもとに晒していた。滑って膝も曲げられない。突起物を両手で掴んで、顔に落ちてくる水を払いながら、うつ伏せの体をまっすぐ伸ばしている。
「お尻丸見えだよ。お兄ちゃん、何やってんのよ、恥ずかしいなあ。早く上がってきなよ。いつまでふざけてんの?」
無情にも嘲る幸ちゃんに、二人の女の子が同意するような笑い声を立てた。
「滑って動けないんだよ。心配しなくていいから、幸ちゃんたちは向こうに行ってて。ね? 言うこと聞いて、向こうに行ってて」
「素っ裸でお尻丸出しのくせに、私に命令するようなこと言わないで。ここから下に落ちたら大変だよ。ほら、お兄ちゃんの上に蔓が伸びているじゃん。それに掴まればいいんじゃないの?」
見上げると、草の蔓が僕の頭のすぐ上で揺れていた。片手を突起物から離して恐る恐る蔓を掴む。引っ張ってみて丈夫そうだったので、もう片方の手も蔓へ移し変える。その途端、滑って体が反転し、うつ伏せから仰向けになってしまった。
「きゃー、嘘でしょ」
「信じられない」
「やあだ、お兄ちゃんたら、おちんちん丸見え」
三人の女の子が一斉に手を叩いて囃した。両手でしっかり蔓を掴んでいるが、仰向けのま腕が伸びきって、おちんちんを隠すこともできない。身をよじって隠そうとする僕に向かって、幸ちゃんが大声を出した。
「蔓が切れるよ。お兄ちゃん、動かないで」
頭が真っ白になる。素っ裸でおちんちんを晒している恥ずかしさと滝壷に落ちる恐怖で体が震える。ふと幸ちゃんたちのほうを見ると、幸ちゃんが蔓の端を握っているではないか。しまった、騙された。蔓はもう一つの上の突起物を通って僕の頭まで下りていたのだった。幸ちゃんが蔓から手を離すと、僕はそのまま滝壷へ水もろとも落下してしまう。三人の女の子が力を合わせて蔓を引いている。僕の体が少し上がった。
「分かったでしょ、お兄ちゃん。下手におちんちんを隠そうとしたら、蔓から手を離すからね。滝壷に落ちたくなかったら、恥ずかしくても、くすぐったくても、じっと我慢しててね。いいかしら?」
「やめて、幸ちゃん。お願いだからこんな馬鹿な真似はやめて」
「ねえ、お兄ちゃん。それが人に物を頼む時の言い方?」
「お願いです。蔓をもっと引っ張ってください」
「いいから、おとなしくしてて」
有無を言わせぬ迫力で僕の哀訴をシャットアウトすると、幸ちゃんは斜面にぎりぎりまで近づいてしゃがんだ。そして、木の棒切れを僕のおちんちんに向かって伸ばした。僕はといえば蔓をつかんだ両手を離すこともできず、身をよじれば滝壷へ落とされる。呻き声をあげてこの屈辱に耐えるしかなかった。
「見ててごらん。こうやってると、だんだんおちんちん大きくなるから」
二人の女の子に教えながら、幸ちゃんが棒切れでおちんちんを撫でる。表と裏を交互にゆっくり撫でる。木の硬い感触も気にならないほどのソフトなタッチで執拗に撫でたり擦ったりしている。
水が流れる斜面で蔓に両手を取られ、仰向けの恥ずかしい裸体を晒し続けている僕は、何度かたまらなくなって身を悶えさせた。が、その度に自分より四つも年下の女の子に叱られ、じっと動かないことを約束させられるのだった。
「見て見て。おちんちん、少しずつ大きくなってるのが分かるでしょ。こうやって刺激してあげると、おちんちんが大きくなるんだって。雪姉ちゃんが言ってた」
「ほんとだ。おもしろい」
「皮の中から何か出てきたね」
棒切れでおちんちんをいじられながら、しかしこれでも滝壷に落とされるよりは数等マシだと自分に言い聞かせ、理不尽な快感地獄に耐える。感じてしまえば女の子たちをいたずらに喜ばせるだけで、この種のいじめがエスカレートするだけだと思えばこそ、歯を食いしばって感じないように頑張ったのだが、棒切れによる刺激はあまりにも巧みで、とうとう僕のおちんちんはこれ以上大きくならないところまで膨張してしまった。
女の子たちが歓声を上げる。僕は幸ちゃんに命じられ、感謝の言葉を言わされた。
「僕の小さなおちんちんを撫でて大きくして下さり、ほんとにありが」
「聞こえないよ」
「ありがとうございました」
「だめ。始めから、やり直し」
頭上から流れてくる水に顔が濡れるおかげで悟られなかったが、僕の両頬は悔し涙でも濡れていた。年下の女の子に屈辱的な感謝の言葉を何度も言わされた。逆らえば五メートル下の滝壷に落とされてしまう。
「この勃起したおちんちんをさらに擦りつづけるとね、白い液体が飛び出すんだってさ。雪姉ちゃんが言ってたよ。せっかくだからやってみようか」
「見たい見たい」
二人の女の子が幸ちゃんの提案に賛成する。この格好のまま射精させられる? そう思った途端、体の力ががっくり抜けた。それと同時に手が滑って蔓を離れた。
あっと思った時には、僕は五メートルの高さから滝壷へ落下していた。
人気blogランキングへ
FC2 Blog Ranking
![にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説へ](http://novel.blogmura.com/novel_love/img/novel_love80_15.gif)
(お気に召された方、よろしければクリックをお願いします。)
マカ[MACA まか:http://www.hikanpo.com/product.asp?id=189
魔根:http://www.hikanpo.com/product.asp?id=208
三便宝:http://www.hikanpo.com/product.asp?id=113
福源春:http://www.hikanpo.com/product.asp?id=51