思い出したくないことなど

成人向き。二十歳未満の閲覧禁止。家庭の事情でクラスメイトの女子の家に居候することになった僕の性的いじめ体験。

メライちゃんと語り合う

2011-07-09 06:20:25 | 8.夏休み恥辱編
 砂粒の混じるコンクリートに膝をついて、散々打たれたお尻を手で押さえていると、自分が素っ裸のままでいることを意識してしまう。女の人たちに射精するところをしっかり目撃されたことも恥ずかしかったけど、周りの人たちが普通に服を着ているのに、僕だけが何もまとってないと、射精させられた恥ずかしさがいつまでも強く残る。
 ひりひりする痛みが引くのを待つ僕の前で、お姉さんとミニスカートの女の人、髪の長い男の人の三人がしゃがみ込んで、僕のこぼした精液を葉っぱで拭き取っている。ミニスカートの女の人が面白がって、精液のべったりと張り付いた葉っぱを僕の背中から胸、お腹になすり付けた。生温いどろりとした感触が肌を滑った。
 お姉さんに手を引かれて、お姉さんの家に向かった。いじめられていたせいで約束の時間を過ぎてしまった。噴水の前を通りかかった時、ベンチのお母さんたちの視線が一斉にこちらを向いた。水遊びの子どもたちまでもが僕を指さして笑う。
 何度もパンツを返してくださいとお姉さんに頼んでいるのだが一向に応じてくれないので、僕は先ほど晒し者にされた時と全く同じ、真っ裸のまま噴水の前を通らなければならなかった。片手をおちんちんに当て、もう片方の手でお尻を隠す。それでも真っ赤に腫れたお尻は、到底隠しおおせるものではない。先程、僕のことを心配して声を掛けてきたお母さんのグループも、今では僕を「お尻を叩かれて喜ぶ変な子」と思い込んでいるらしく、お尻が更に真っ赤に腫れているのを見て、にっこり微笑むのだった。水遊びの幼児たちは、自分たちが水着をまとっていることの意味をはっきり理解したかのように僕を指さして、
「あのお兄ちゃん、真っ裸だね」
「お尻が真っ赤でお猿さんみたいだね」
 などと言い合って喜んでいる。
 広い公園を抜けて山道に入ると、すぐに神社があった。石段を覆う緑の苔が足の裏を柔らかく包み込む。いつまで素っ裸で歩かされるのか、いつ人と遭遇するのか、不安を覚えて辺りをきょろきょろ見回す僕の仕草を、振り返ったお姉さんが笑って見ている。と、六十歳くらいの夫婦が石段を上ってきた。
 とっさに大きな杉の幹に隠れたが、斜面の不安定な場所だったので、足が滑って夫婦の前に恥ずかしい姿を現わしてしまった。おちんちんこそ手で隠せたものの、夫は顔を顰め、妻は驚いたような顔をした。下の段でお姉さんが呼ぶので、僕は素早く夫婦に無言で会釈すると、石段を駆け下りた。お姉さんのところに着いてから恐る恐る顔を上げると、果たして夫婦はじっと立ち止まったまま、全裸の僕を睨み付けているのだった。
 家の前の通りに出る寸前の細い路地に来て、お姉さんはようやく僕にパンツを返す気持になってくれた。しかし、投げて寄こしたパンツは僕の手から離れて、どぶに落下した。拾い上げたパンツは、どぶの水をたっぷり吸い込んで重くなっていた。お姉さんは、パンツをどぶに落とした過失は僕にあるのだと言って、そのまま水を絞らずに穿くように命じた。濡れた白いブルーフのパンツはぴったり肌にくっ付いて、透けて見える。
 マジックの練習をする六角形のアトリエでは、すでに白い体操着とブルマ姿のメライちゃんが鷺丸君とマジックの練習に励んでいた。アトリエに入ろうとすると、鷺丸君のお母さんが「ちょっと待って」と制する。
「ちょっとそのびしょ濡れのパンツは何よ。足元にたらたらと滴が落ちてるじゃないの」
 そして、パンツをよく絞ってから入るように言う。アトリエ内のメライちゃんが来ないうちにと思って、お母さんの見ている前で手早くパンツを脱ぎ、芝生の上でパンツを絞る。お母さんにはおちんちん丸出しになってしまったけど、赤く腫れたお尻を見られる方が恥ずかしいので、敢えて正面を向いたままでいると、いきなりアトリエのドアが開いて、メライちゃんが顔を出した。
「どうしたの? 早く来てよ。あら、やだ。何そのお尻」
 とっさの判断でメライちゃんに背中を向けたのは、昨日の別れ際、メライちゃんが素っ裸にされた僕を慰めるように「お尻しか見てないから」と言ったのを思い出したからだった。メライちゃんには、まだおちんちんを見られていない。どうせまた素っ裸のところを見られてしまうのであれば、せめて一度見られたお尻をと思って後ろ向きになったのだが、同じ二者択一でお母さんに対しては、おちんちんを見られる方を選んだことを思い出し、羞恥で全身がかっと熱くなる。散々打たれて真っ赤になったお尻に驚いたのか、メライちゃんとお母さんが生唾を飲み込む音がした。
「何でもない、すぐに行くから中で待ってて」
 メライちゃんにお尻を晒している僕は、緊張のあまり肩の辺りが強張って、向きを変えられない。かろうじてそれだけ言うと、
「分かった」
 と、メライちゃんが答えて、ドアの閉まる音がした。僕は急に力が抜けて、膝ががくがく震えた。お母さんが僕のお尻を撫でながら、
「酷いわね。可哀想に」
 と言い、お尻の赤い理由を訊ねた。答えたくないので適当に誤魔化して、絞り終えたパンツを穿こうとする。お母さんは、僕の手からパンツを奪って、高く掲げて、
「きちんと教えないと、パンツを没収します」
 と、厳かに宣告した。アトリエの窓から、ちらりとメライちゃんの顔が見えた。おちんちんに手を当ててしっかり隠してうなだれている素っ裸の僕の姿を認めて、見てはいけないものを見たかのように、慌てて窓から離れる。
 昨晩から今朝にかけてY美に罰を受けたことを話し、ようやくパンツを穿くことができた僕は、足の裏を入念に拭いてからアトリエに入った。
 冷房の強く効いているアトリエでは、長袖のチェックのシャツとコーデュロイのズボン姿の鷺丸君がメライちゃんにマジックの指導をしていた。メライちゃんのブルマから肉付きの良い丸っこい脚が通風口から吹き下ろされる冷気に震えている。鷺丸君はスリッパを履いているけど、メライちゃんは裸足だった。そこへパンツ一枚でメライちゃんと同じく裸足の僕が入り、寒さに震えながら、マジックの練習に参加する。体操着姿のメライちゃんが回転ドアを押して入ると、入れ替わってパンツ一枚の僕が出てくる。
 メライちゃんは、初日よりも無遠慮に裸の僕を眺めるようになった。回転ドアの隠し部屋から出るタイミングを話す時も、顔を上げて僕を見つめる。鷺丸君は自分自身のトークを含めた演出について試行錯誤し、いろんなやり方を試みてはメライちゃんと僕にアドバイスを求めた。メライちゃんは盛んに自分の考えを述べた。お母さんが休憩のお茶と菓子を運んできた時、メライちゃんが演出に関して鷺丸君を唸らせるアイデアを次々と出すので、お母さんを驚かせた程だった。
 休憩中、鷺丸君はこめかみを人差し指でこすりながら沈思した。天井を見上げては大きく息を吐く。腕を組んだまま床を見つめて首を横に振る。そこへお姉さんが入ってきて、鷺丸君の相談に乗った。お姉さんは、パンツ一枚の身を竦めて麦茶を頂いている僕をじろじろ眺めながら、もっと裸の僕を利用してコミカル路線で行くべきだと主張した。
 昼食は母屋で食べた。お姉さんが作ったというカレーライスは辛かった。辛い物が苦手な僕は一口食べては噎せて、何杯も水を飲んだ。鷺丸君もメライちゃんも平気な顔をしてスプーンを口に運んでいる。甘口のカレーライスしか食べられない僕を見てお姉さんが、
「やだな、ナオス君、ほんとに幼児みたいなもんなのね、体だけじゃなくて」
 と、冷やかすのだった。
 食事が終わると、鷺丸君は「疲れたから少し昼寝する」と言い残して、自分の部屋に籠ってしまった。アトリエでは児童合唱の練習が始まった。取り残されたメライちゃんと僕は、縁側に並んで腰かけ、ぼんやりと芝生を眺めていた。
 全体的に鷺丸君の家は冷房が強いので、半袖シャツにブルマのメライちゃんやパンツ一枚の僕には、縁側に降り注ぐ夏の光がむしろ心地よいのだった。白い脚をぶらぶらさせて、メライちゃんが伸びをする。
「なんかいい気持ちだよね」
 と、メライちゃんが話し掛けてくる。もう僕が白いブリーフのパンツ一枚しか身にまとっていない格好でいることにもすっかり慣れたような、屈託のない笑顔を浮かべている。メライちゃんの明るさに救われた気持ちになった僕は、メライちゃんの語りかけにぽつりぽつりと言葉を返すことができた。メライちゃんは、最近学校を休みがちな僕を心配してくれて、学校で起きたことをいろいろと話してくれた。数学の先生は奥さんが病気で入院して以来、妙に優しくなったとか、国語の先生は若い女の人だけど男の子を毛嫌いしているようで女子にはとても優しいとか、この地域で有名な私立高校では来年から男子の推薦枠は撤廃され女子の推薦枠が拡大されたとか、僕には新鮮な話題ばかりだった。
 高校の女子推薦枠の拡大には、ある議員の力が働いているとのことだけど、その議員の名前はおば様の口からよく出てきた。おば様はその議員と頻繁に会っているようだった。僕は、普段ならば胸に仕舞っておくのに、ついメライちゃんにそんなことまで話してしまった。
「そうなんだ。Y美さんのお母さんて、すごいやり手なんでしょ。この地域の公共事業に随分関わっているんだね」
「そう思うよ。立派な公民館ができたのも、おば様が裏でいろいろやったみたい」
 僕は、その公民館でやらされた屈辱的なモデル体験のことを思い出しながら言った。
 メライちゃんが大きく息をつく。おば様の仕事のスケールの大きさに圧倒されたようだった。ふと、おば様に性的な奉仕を命じられたある夜のことが思い出された。おば様の背中に鞭で打たれたような蚯蚓腫れがあり、おば様はそのことについて一切語ろうとしなかったばかりか、それに気づいた僕に他言を禁止し、いつも以上に激しく体力の消耗する奉仕を命じた。まさか、そこまではさすがにメライちゃんに伝えなかったけど、メライちゃんが僕にY美の家での生活のことを訊ねるので、ついおば様への性的な奉仕ことまで話が及びそうになる。久し振りに人と対等関係になって会話をしたので、自分自身のコントロールが意外に難しく感じられるのだった。
「Y美さん、なんでナオス君につらく当たるのかな。お尻叩いたのもY美さんでしょ?」
 メライちゃんが子どものように揺する自身の足の先をじっと見つめながら、問う。その横顔には思い詰めたような気配があった。僕は嫌な予感がした。僕に同情して関わると、Y美は必ずメライちゃんにも酷いことをする。
「うん。でも、僕が悪いんだから仕方ないよ」
 それだけ答えて、後はこの手の質問にはお茶を濁し続ける。メライちゃんは、「ふうん」と言ったきり、黙ってしまった。僕は心の中でメライちゃんに詫びた。
 鷺丸君の呼ぶ声がして午後の練習が始まった。アトリエに入ると、合唱団の児童が休憩中だった。メライちゃんの後ろを歩く僕をじろじろと見て、「またパンツいっちょうの人だ」「寒くないのかな」「裸にされて可哀想」と囁く。
 夕方、長い練習が終わり、母屋に戻る。メライちゃんに続いて奥の部屋に入ると、メライちゃんが困ったような顔をして、
「あの、ごめん、ナオス君、出てってくれる?」
 と、もじもじしながら僕の後ろのドアを指す。
「・・・・・・」
 訳が分からずに突っ立っている僕に、メライちゃんが言いにくそうに、
「今から着替えるんだから」
 作業机の上にきれいに折り畳まれた花柄のワンピースを広げて見せた。マジックの練習で何度も走らされて疲労し、鈍くなっている僕の頭がようやく回転した。「ごめんね」と謝って部屋を出る。
 着替えを終えたメライちゃんが出てきて、僕に着替えるように促す。着替えがないことを告げると、メライちゃんは目を丸くした。
「嘘でしょ? じゃ、どうやってここまで来たの」
「途中までおば様に送ってもらった」
「帰りも迎えに来てくれるの?」
「分からない」
 もちろん誰も迎えに来てくれない。パンツ一枚の裸のまま帰るしかないことは分かっていた。しかし、またメライちゃんと昨日のように意地の悪い子どもたちのいる団地街を通り抜ける気はなかった。再び素っ裸に剥かれ、今度こそメライちゃんにおちんちんを見られてしまうような気がした。
「良かったら先に帰って」
「え、ナオス君はどうするの?」
「もう少し暗くなってから帰るから」
「私も付き合ってあげるから」
「いいよ。気にしないで」
 有り難い申し出だけど受ける訳にはいかなかった。
「駄目だよ。そんな裸のまま一人で帰るなんて」
 どうしても僕と一緒に帰ると言い張るのだった。すごく嬉しかったけど、好きな女の子の前でパンツ一枚の裸でいることが情けない。もじもじしていると、鷺丸君のお姉さんが来て、
「随分子どもっぽい服を着てるのね」
 と、メライちゃんの花柄のワンピースを冷やかした。そして、僕にメライちゃんと背中合わせに立つように命じる。
「ほんと、二人ともほとんど同じ背丈だね」
「いや、ちょっとメライの方が高いじゃん」
 鷺丸君がバナナ片手に口をもごもご動かしながら言った。
「二人とも幼い子どものような体形だよね。メライちゃんの服は小学生みたいだし、男の子の方はパンツいっちょうの裸だし」
 お姉さんが意地悪な顔をしてメライちゃんと僕を交互に見つめる。僕の裸の背中にメライちゃんのワンピースの布が当たる。その布の向こうにメライちゃんの柔らかい肉体が息づいている。お姉さんは自分の胸の辺りに手を上下させて、メライちゃんの胸が平たいことをからかう。
「だからマジックショーで入れ替えができるんだよ。おい、早く着替えろよ」
 鷺丸君が食べ終えたバナナの皮をぶらぶらさせて、着替えの部屋を指した。僕はパンツのゴムを押さえながら、両腕を胸の前で交差させる。
「何言ってんの。この子、初めからパンツいっちょうでここに来たのよ」
 お姉さんが弟の鷺丸君の不覚を笑った。
「そうか、初めから裸になって来たのか。どうせ本番ではみんなの前で裸になるんだから今のうちに慣れておくのもいいかもな」
 鷺丸君はバナナの皮を姉さんに渡すと、妙に感心しながら部屋を出た。バナナの皮を押し付けられたお姉さんをメライちゃんが不思議そうに見る。お姉さんは憮然として弟に何か言おうとしたが、大きく一息つくと、メライちゃんの視線に気づいて少しはにかむように俯き、台所の裏の生ごみ捨て場へ向かった。
 鷺丸君とお姉さんは、練習を終えたメライちゃんと僕がいつまでも家にいることを許してくれなかった。彼らには彼らの事情があるのだろう。だから、家の敷地から追い出された時も、「仕方がないよね」と、メライちゃんは文句を言おうとしなかった。自動車のひっきりなしに通る通りにパンツ一枚の裸で放り出された僕は、このまま団地街には入りたくなかったので、可愛らしいワンピースに布製の薄い鞄を提げたメライちゃんを誘って、裏の細い道に入った。鷺丸君の家に向かう途中、お姉さんたちにいじめられた公園に続く坂道だった。
 山の斜面に広がる広い公園には、樹木や生垣の囲みが到る所にあった。木陰の涼しいベンチにメライちゃんと並んで腰を下ろす。日中の暑い時間帯なので、あまり公園を通る人はいない。なんとなくメライちゃんとデートしているような気分になり、今更ながらパンツ一枚の裸でいることが恨めしかった。せっかくメライちゃんと公園に二人きりでいるのに、白いブリーフしか僕の身に着けている物はない。
 飲み物を買いに行ったメライちゃんを待っている間、何人かのおじさんおばさんが通り過ぎて、裸の僕に声を掛けた。ここへ来るまでにも何人かの女の人とすれ違い、パンツ一枚の僕を見て驚かれたり、「どうしたの?」と心配されたりしたけど、メライちゃんと二人で適当に誤魔化してきた。今度も僕一人で、「友達が服を持ってきてくれるのを待ってるんです」と答えた。出鱈目が自然に口をついて出るようになった。
 お待たせ、と言う声がして、振り向くと缶ジュースを抱えたメライちゃんが立っていた。自動販売機が見つからず随分探したらしい。白いハンカチで汗を拭きながら、買ってきた缶ジュースを一つ、僕に渡してくれた。汗でべったり背中に張り付いたワンピースが透けて下着のラインが見える。僕が缶ジュースの代金のことで相談しようとすると、
「いいよ、気にしないで」
「でも、なんか悪い・・・」
「そんな格好してたら現金の持ち合わせがないことくらい、分かるよ」
 そう返されると、パンツ一枚の僕は黙るしかなかった。でも、メライちゃんが言うと、嫌みに聞こえない。Y美の家で酷い扱いを受けている僕を気遣ってくれているんだと思う。メライちゃんは僕に、僕がどんな生活をさせられているのか、話すように求めた。話すことで気分が楽になるから、と言い添える。
 好きだという感情が後押ししたと思う。僕は話した。学校から帰ると、家に入る前に着ている物を脱いでパンツ一枚にならなくてはならないこと、家の中のトイレは女性専用であるから僕は使用が許されず、代わりに庭に建てられた便所小屋を使用すること、学校からは特別な理由がない限り速やかに帰宅し、家事に励むこと、などの規則の数々。メライちゃんは黙って耳を傾けていた。ふと、僕の傍らに置き物のようにある、そのぽっちゃりとした愛くるしい肉体を抱きしめたくなる衝動を覚えた。
「私には分からない。Y美さんもそうだけど、Y美さんのお母さんも、どこかゆがんでると思う」
 暗く、強張った表情をしてメライちゃんが言った。
「Y美さんて、あの人のグループに入ってないと、なんか話しづらいの」
 マジック公演への出演のことは、ある日突然昼休みにY美に呼ばれたのだとメライちゃんが打ち明けた。自分に話しかけてくるなんて珍しいと思いながら指定の場所に行くと、Y美の他にS子、ルコ、ミュー、風紀委員がいて、メライちゃんを取り囲んだ。
 最初は断った。しかし、断ると、今までの親しみを込めたY美の口調が一変した。Y美はメライちゃんに体育の授業中の態度のことで言いがかりをつけ、ねちねちと責め始めた。囲まれているので逃げられない。自分の非を認めさせられ、謝ると、鷺丸君のマジック公演への出演を承諾させるのだった。
「怖かったよ。私、泣きそうになった」
 当時のことを思い出したのか、メライちゃんが肩をびくっと震わせた。大柄な女子に囲まれて、小柄なメライちゃんが謝罪させられるまでの心理を思うと、胸が苦しくなった。僕はただ、何も言わずにメライちゃんを抱きしめたかった。メライちゃんを両腕で引き寄せて自分の裸の体をメライちゃんにくっ付けたら時間が止まって欲しい。そうすればもうY美やおば様のいる家に帰らなくても済むのに。
 それからこんなことがあった、とメライちゃんが話す。Y美が体育のH先生という、この春大学を出たばかりの女の先生に反抗的な口応えをし、そのためにH先生から平手打ちを見舞われたことがあった。このことを根に持ったY美は、放課後待ち伏せした。背丈は二人ともあまり変わらなかった。二人は取っ組み合い、校庭を砂まみれになって転がった。最初に立ち上がったのはY美だった。鳩尾を蹴られて苦しげに蹲るH先生の腰に片足を乗せ、ぐいぐいと体重を加えた。翌日からH先生は一週間学校を休んだ。
 この事件が表沙汰にならなかったのは、おば様が学校側に圧力を加えたからだ。僕はおば様が電話で、後一年で定年の校長先生は話の分かる良い人だと笑いながら話していたのを覚えている。
 それから話はお尻叩きになった。夕べから今日にかけてY美に竹刀でお尻を叩かれたことの理由をメライちゃんは知りたがった。
「Y美さんの気に障るようなことを言ったの?」
「僕が約束を破ったからいけないの」
「ふうん、どんな約束?」
「パンツ一枚でいないといけないのに服を着たから」
 あっという顔をしてメライちゃんが固まった。
「ごめんなさい、私が余計なことをしたから・・・」
 メライちゃんの大きな瞳が潤んで揺れる。
「気にしないで。どうせ口実だから」
「ごめんなさい、ほんとにごめんなさい」
 頭を下げるメライちゃんの頬を涙が伝った。
「泣かないで」
 メライちゃんの膝元の手に手を重ねる。ぷよぷよした肉付きの温かい手だった。メライちゃんをこれ以上悲しませたくなかった。
 長いこと、メライちゃんと僕は喋った。息が合うと、二時間以上もお喋りできることを知って少し嬉しく思った。ちびちび飲んだ缶ジュースを飲み切った時には、夕映えの空が急速に消えつつあった。メライちゃんがベンチから腰を上げた。
「帰ろうか。私が家まで送ってあげる」
 白いブリーフパンツしか身にまとっていない僕を上から下まで眺めて、「大丈夫だから」と、付け加える。
「うちの近所では、裸んぼで遊ぶ子もいるよ。男の子だからあまり恥ずかしがらないで」
 一瞬、背筋がぞくっとした。その理屈は、Y美やおば様が僕を素っ裸に剥いて人目に晒す時のそれと変わるところがなかった。カラスが鳴き声が鋭く頭上を過ぎった。メライちゃんと僕は、意地の悪い子どもたちがいる団地街は避けて、公園から住宅街を抜ける迂回コースを選んだ。
 家まで付き添ってくれたメライちゃんにおば様が礼を述べると、メライちゃんは飛び上がって驚き、「いえいえ、とんでもございません」と言って頭を下げた。
「まあ、随分可愛らしいお譲ちゃんね」
 おば様の一言にメライちゃんは顔を赤くし、逃げるように帰った。
 
 夏休みまであと五日だった。
 僕の生活パターンは今まで通りだった。学校に行き、授業を受け、家に帰ると服を脱いで掃除をしたりおば様やY美に言いつけられた用事をこなす。
 学校でのY美は、僕に対して威圧的な態度を取ることに変わりはなかったけど、Y美のグループ以外の生徒からY美と僕の関係が主人と奴隷のそれだと感づかれないような配慮は忘れなかった。ただN川さんだけは僕とY美の関係を知っているし、あの公民館での恐ろしい夜、素っ裸の僕をいじめ、性的に辱しめる場に立ち会っているので、時折意味ありげな微笑を浮かべて僕を見ることがあった。メライちゃんは何事もなかったかのように接してくれた。それどころか、以前よりも話をするようになった。
 おば様から寝室への呼び出しがあった。呼び出しがあった時は、全裸にならないといけない。その日は途中で脱がされなかったので、二階の自分に割り当てられた部屋でパンツを脱ぎ、廊下に出る。Y美の部屋からドア越しに音楽が聞こえた。いつもよりもかなり早い時間帯だった。階段を忍び足で降り、おば様の寝室のドアを叩く。おば様は下着姿でベッドに腰かけていた。
 おば様は夕食時にワインをいつもより多めに飲んだようで、酔っ払っていた。ブラジャーをたくし上げ、胸に僕の顔面を押し付ける。僕はおば様に仕込まれた方法でもっぱら口だけを用いて、奉仕に励んだ。ブラジャーやパンツも口でおば様の体から外す。爪先から首筋までゆっくりと舌を這わせ、特定の数か所を吸う。背中にあった蚯蚓腫れは大分退いていた。
 程なくして絶頂を迎えたおば様は、僕のおちんちんをいじりながら、「出す?」と訊ねた。激しい肉体労働のため、おちんちんは小さくてふにゃふにゃした状態だったが、おば様が口に含んで舌にを絡めるので、すぐに大きくなった。口の中でいきそうになる。おば様は射精の瞬間に口を放す。僕は「あっ」と一声発し、精液を出してしまった。
「たくさん出たね」
 ベッドに腰かけたおば様がにこにこしながら僕にティッシュの箱を渡す。自分で拭きなさい、という意味だった。床に飛び散った精液を拭き取る僕の背中におば様が足を乗せ、大きく伸びをした
 おば様の寝室を辞去して出ると、居間にY美がいた。
「何してたのよ、お母さんの部屋で」
 どきっとする程冷たい声でY美が問う。僕は両手でおちんちんを隠し、素っ裸の身を縮めた。
「なんで丸裸なんだ、お前は?」
 冷徹な眼差しで問いを重ねる。

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4 コメント

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更新ありがとうございます ()
2011-07-09 22:50:15
長い文章で有り難いです、おば様は権力あっても~大人だから精神病院ですね。狂ってる・Y美は男の体興味あっても、こうまで残虐になれるとは~しかし別れる時は辛いでしょうね・毎日、毎日、更新はまだかと~待ち望んでおります!
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Unknown (Gio)
2011-08-03 23:23:24
更新お疲れ様です。メライちゃんとどうなるのか、非常に続きが気になっています。無理はせずに頑張ってください。
返信する
櫂さま (naosu)
2011-08-06 12:22:18
コメントありがとうございます。
今後も病んだ世界を続けていきます。
どうぞよろしくお願いします。
返信する
Gio様 (naosu)
2011-08-06 12:24:25
いつもありがとうございます。
メライちゃんも今後かなり絡んでくるようにしたいと思っています。
どうぞ変わらぬお付き合いのほどをお願いいたします。
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