狭い空間の中で目をあけた。相変わらず素っ裸のままだった。
トイレ小屋に閉じ込められた僕は、体をくの字に曲げて横になっていた。中央の和式便器に背中があたる。竹刀で滅多打ちされた体のあちこちが痛い。赤く腫れあがったお尻は絶えずひりひりして、無造作に仰向けになることができない。
便器の向こうに洗面器があった。2リットルほど水の入った小さな水瓶から水を汲んで、ハンドタオルを浸すと、それをお尻に当て、うつ伏せになって、お尻を上げた。
どれくらいの間、眠っていたのだろう。時間が分からない。四面の板の上方は格子で吹き通しになっている。そのおかげで意外に涼しい。昼の光線がさんさんと降り注いでいた。恐らく正午近くだろう。小皿におにぎりが四つあった。その一つを口に入れる。乾燥して硬いご飯粒を噛みながら、僕は考えた。二時半から三時までにはおば様がいったん家に帰ってきて、ここから出してもらえるのではないか。
おにぎりを二つ食べて、うつらうつらしていた。何もすることがない。戸を引いてみた。がたがたと音がするだけでびくとも動かない。南京錠が掛けられているのだった。周囲の板を蹴り破って外に出ることは、簡単にできそうだった。しかし、外に出たところで、施錠された家には入れない。素っ裸のまま家の外に出て助けを求めても、この地域全体に及ぼすおば様の社会的な力は大きいので、一見親切そうな農家のおじさんおばさんに保護されて、すぐにおば様の元に連れ戻されるだろう。
今のこの奴隷生活もずっと続くわけではないと、自分に言い聞かせている。おば様の経営する会社の独身寮で住み込みで働いている母からは、ハガキが届いていた。「おば様の言うことをよく聞くように、Y美ちゃんに嫌われないように」と書かれていた。周囲への過剰な気遣いでいつも疲労している母らしい内容だった。僕はまだ返事を書いていない。息子が学校に行かず、庭のトイレ小屋に素っ裸のまま監禁されていると知ったら、母はなんと思うだろうか。しかも全身に竹刀で叩かれた跡を生々しく残している。
元気ですよ、女だけの家に男の人がいて頼もしい限り、力仕事とか手伝ってもらっている、ほんとに優しい心持ちのいい息子さんね、映画館に連れて行ってあげたのよ、などと時々おば様は母に会って報告して、息子にしばらく会えない母を安心させているそうだ。おば様によるかなり嘘の混じった、あるいは肝心な点が隠されている報告に対して、母が疑いの目を向けないように僕は祈った。
叩かれた全身が熱を帯びて、だるい。お尻に当てていたハンドタオルを洗面器の水に浸けて、絞った。腕や脇腹、足など、痛みの激しい部位を冷たいハンドタオルでさする。そのうち、さざなみのように眠気が来て、眠った。ごく浅い眠り。節々の痛みで目が覚めて、落ち着くと、また浅く眠る。その繰り返しだった。
遠くでトラクターのエンジン音がかすかに響いていたが、それも止んだ。トイレの底を流れるかすかな水音がわずかに意識にのぼってくるばかりで、地上からすべての生き物が死に絶えたような静けさだった。水を飲んで、残っていたおにぎりを平らげた。うつ伏せになって、目をつむる。頭がはっきりしない。眠気を覚えた。
小学生たちが騒ぎながら表の通りを過ぎてゆく。その音で僕はぴくっと顔を上げた。高学年らしい子の声も混じっている。まもなくおば様が帰ってくる時間だ。
立ち上がって、ゆっくり腕を天井に向かって伸ばす。上端の格子からかすかに風が吹いて、胸の辺りを撫でた。
小学生たちの下校に伴い、通りも賑わしくなった。車がクラクションを鳴らして通り過ぎた。僕はおば様の帰宅を心待ちにしている。早くここから出してもらいたかった。
日がやや西に傾いて、格子から光線が折れ曲がって入る。おば様は帰ってこない。仕事が忙しくて家に立ち寄る時間がなかったのだろう。たまにそういう日があった。今朝は普段よりも遅く出掛けたから、なおさら時間が取れなかったのかもしれない。
洗面器のぬるんだ水の中に沈んでいるハンドタオルを取り上げて、額に当てた。通りの物音に耳をすます。人の話し声などが聞こえる。人は歩きながらよく話し、よく笑うと思った。僕は何もすることがない。熱っぽい体を横にして、眠気を催せば眠るだけだった。檻の中の動物のような生活。
浅い眠りの中で何度か途切れ途切れの夢を見た。現実のことだとしても、少しもおかしくない夢だった。門をあけて誰かが庭に入ってきた。メライちゃんの声がした。メライちゃんは誰かを探して庭に入ってきたようだった。「なおす君、なおす君」と、僕の名を小声で呼ぶ声がして、トイレ小屋に近づいてくる。そして、トイレの戸を軽く叩くのだった。「いるの? いるのならあけて。大切なことを話しにきたの」メライちゃんの押し殺した声から必死な思いが伝わってきた。「メライちゃん。来ないほうがいいよ。ここには」僕はメライちゃんがY美に見つかることを案じて、そう言った。「いいの。私は平気。それよりあけていい?」「ちょっと、だめだよ」僕は自分が裸でいることをメライちゃんに悟られまいとした。「なおす君、もしかして裸なの。分かった。そうなんだね。きっとそうだと思った。早くこの家から逃げ出したほうがいいよ。Y美のお母さんとY美は、とんでもないことを考えているんだから。普通の生活ができなくなっちゃうよ」
激しく戸を叩く音がして、意識が別の次元にワープしたような錯覚を覚えた。
「生きてる? チャコ」Y美の声だった。現実に戻ったらしい。格子から入ってくる光線が弱々しくなっていることに気が付いた。
「今、何時くらいですか」
「七時十分前だよ。返事がないから死んでるかと思った」
「すみません。おば様はまだ帰ってきていないんですか」
「知らない。パーティーがあるから深夜にならないと帰らないよ」
「お願いなんですけど、ここから出してもらえないでしょうか」
「そうなの。出してあげるようにお母さんから言われているんだけど、南京錠の鍵が見つからないの。みなみ川教のIさんは鍵を郵便受けに入れることになっているんだけど、ないの。さっきまで探してたんだけどさ」
申し訳なさそうなY美の口調に、僕は何も言えなかった。おば様が合鍵を持っているはずなので、帰ってくるまでの辛抱だとY美がしおらしく付け加えた。
「チャコ、お腹空いたんじゃないの。朝から小さなおにぎり四つしか食べてないでしょ」
「はい。だってそれしか食べ物がないから」
「水はあるの?」
「水はまだ少し残っています。何か食べる物を上の格子から入れてくれませんか」
「いくら私の背が高くたって、あそこまでは届かないよ。脚立を運ぶのも大変だし。もう少し我慢してよ。夕飯はメンチカツだよ。おいしいからさ。待ってなよ」
あくまでも明るい声だった。Y美は今日、学校でよいことがあったのかもしれない。
「でもさ、水と食事だけあれば、結構その中でも生活できるんだね。うんちとかおしっこの問題もないしね。トイレだってなかなか衛生的なんだよ。私さ、このトイレ、汲み取り式と思ってたの。チャコにもそう言ったことがあったよね。違うんだって。このトイレね、小さな川の上に建てたんだって。みなみ川の支流。だから、全部流して、田んぼのほうに流れて、桑畑の向こうの下水に合流する仕組みみたいだよ。ほら、便器の下から水の音がするでしょ。いつもきれいに流してくれるから、蝿とかがたかることもない。それに吹き通しもあって、涼しくない?」
「はい。涼しくて過ごしやすかったです。ただ、その、虫が…」
「虫? え、蚊とか? そうか、お母さんに虫除けの薬塗ってもらったでしょ」
「はい。でも…」それが寝汗で流れてしまったことなどを僕は伝えた。すると、Y美はそそくさと家から蚊取り線香を持ってきて、焚いた。トイレ小屋の周囲に二箇所置いてくれたのだった。蚊取り線香のにおいがする。僕はお礼を述べた。
「いいよ。それより体の痛みはどうなの。まだ痛む?」
思いもかけぬY美の優しい物言いに戸惑いながらも、僕は率直に体の腫れがひいていないこと、体を曲げたりする時に痛みが走ることを告げた。
「ごめんね、チャコ。私もエスカレートしちゃったみたい。お母さんに叱られた時、すごくむかついたんだけど、授業中とか休み時間とかに、ふとあんたのこと思い出して、急に可哀想になっちゃったの。泣きながら土下座してる素っ裸の男の子を竹刀で思い切り打ったりして、悪かったなって。おちんちんとか、おちんちんの袋とかもずいぶん叩いちゃったけど、どうなの?」
戸の隙間からY美の吐息が漏れてくるかのようだった。僕は誘われるままに、今朝の屈辱的な検査の話をした。ヘルパーのIさんに連れられて、女子高生たちに射精させられたと聞いて、Y美は怒りの感情を表わした。
「ひどい。あのIさんて、相当危ない、変な人だよね。私、大っ嫌い。なんか信者の人たちは、みんな一目置いてるみたいだけど、信者でもない一般の人を自分たちの儀式に巻き込むのは、やめてほしいよね。精液検査なんて名ばかりで、実際はその精液を儀式かなんかに使うんでしょ。勝手に女子高生たちに遊ばせないでほしいわ」
ひとしきりまくしたてると、Y美は空腹を覚えたと言って立ち去るのだった。
すっかり暗くなった。天井近くの格子に家の明かりがかすかに届いている。僕はお腹を空かせたまま、壁に寄りかかっていた。お尻の下に敷いたハンドタオルが乾いていた。蛙の鳴き声ががんがん響いている。おば様が帰ってこないのなら、せめてY美が気晴らしに来てくれるとよいと思った。いろいろな話をしてくれるだけで有り難い。ところが、食事に行ったまま、なかなか戻ってこないのだった。
いっそ眠ってしまえば楽なのだが、少しも眠れそうもない。トイレの狭い空間の中で、痛む手足をかばいながら体操をした。痛いからといってずっと動かさないでいると、そのまま固まってしまうような気がした。
体を疲れさせると、眠れる。そう思って運動することにした。まずは垂直飛び。縄を回さない縄跳びのように小刻みに飛んだ。便器の盛り上がった部分に素足をかけてジャンプすれば、天井近くの格子に届くだろうか、やってみた。指先がかろうじて格子に触れただけだった。着地に失敗して、両側の板に腰をしたたかぶつけたあと、便器につまづいてしまった。足とお尻を打って、僕は痛みに蹲った。いきなり運動をしたので、すぐに息ぎれするのだった。
退屈のあまり、頭の中で四桁の数字を組み合わせて遊んでいると、蛙の鳴き声に混じって人の話し声がした。Y美だった。もう一人、同い年くらいの女の人の声がした。こちらに向かっている。僕は身構えた。
「どう元気なの、チャコ」Y美が軽く戸を叩いた。僕が返事をすると、二人が笑った。
「F田雪ちゃんが家の用事で立ち寄ったから、連れてきたよ。雪ちゃんにはあんたもずいぶん体じゅうを観察されたもんねえ」
くすくす笑うY美の声にかぶさって、どこか幼い女の子の声がして、「こんばんは」と聞こえた。僕が黙っていると、Y美が「挨拶してんだから無視してるんじゃねえよ」と、戸を叩いて叱った。僕は謝りながら、挨拶を返した。Y美は僕に正座を命じた。
「ちゃんと私たちのほうを向いて正座しなさいよ。見えないと思って足を崩したってすぐ分かるからね。正座崩したら、夕食抜きだよ」
「はい」
命じられた通り、声のするほうを向いて正座した。雪ちゃんが「犬をしつけているみたいだね」と言って、笑った。
「ほんと、犬みたいなんだよ。やっぱりトイレ小屋に閉じ込めておくのが一番かな」
「ええ。でも、チャコ、学校は休んだんですか。そうですか。それは大変ですね。え、裸なの? ほんとですか。ずっと素っ裸のまま監禁されてるんですか」
「そうだよ。夕べからずっと裸。今朝なんか、オールヌードのまま、あすこの農道まで連れ出されて、女子高生たちに射精させられたんだって。信じられないよね」
「おもしろい。見たかったなあ、私、まだ一度も射精したとこって見たことないし」
「雪ちゃん、まだ小学六年なのに過激だよ。そのうち見せてあげるからさ」
きゅるきゅる、と僕のお腹が鳴った。二人の女の人が大笑いする。僕は少しだけ足を崩した。と、いきなりY美の怒声がした。
「こら、きちんと正座してなさい。いくらお腹が空いてたって、夕飯抜きにするからね。本気だよ、私は」
「ごめんなさい」頭を下げて、再び正座する。Y美と雪ちゃんは、楽しそうにお喋りを続けた。僕は俯いて耳を傾けていた。
「お腹空かしてるみたいだけど、チャコは大丈夫かな」
「そうだ。雪ちゃんがあの格子の隙間からご飯をやんなよ。チャコがほんとに裸でいるのかどうか、確かめたいでしょ」
「見たい、見たい。ぜひ私にやらせて」
はしゃぎながらY美と雪ちゃんが脚立を運んできた。
「わ、ほんとだ。ほんとに丸裸なんですね、チャコさん。檻の中の動物みたい。今さらそんなに恥ずかしがらないでよ。こっち向いて、チャコ」
懐中電灯に照らされてうろたえる僕を格子窓から見下ろして、Y美と雪ちゃんが楽しそうに笑うのだった。夕飯を食べたかったら言う通りにしないと駄目、とY美に脅かされ、僕は懐中電灯の光の中で、おちんちんを手で揺すりながら腰を振らされた。おちんちんが大きくなると、両手を頭の後ろで組んで跳躍しながら回れ、とか、おちんちんの袋をめくって裏側までよく見せろ、などとY美と雪ちゃんが交互に、ほとんど思いつくまま命じ、僕は意志をなくした人形のようになって、次々と言われたことをこなすのだった。
「おもしろい。ずるいなあY美さんは。いつもこんな楽しい遊びをしてるんですか」
「そうでもないよ。じゃあ最後にもっとおもしろいの見せてあげる」
「それって、なになに」
「まあ、見てなよ」そう言ってY美は使い捨て用の透明なプラスチックのコップを一つ、下へ落とした。それにおしっこをしなさいと言う。「おしっこ出ません」と答えると、「いいから出しなさい。出すまで食事なし」と、にべもない。上から照らされる懐中電灯の明るさの中で、僕は正面を向いて立たされていた。コップをおちんちんの先に当てる。脚立に乗ったY美と雪ちゃんが格子から顔を覗かせて囃す。それほど間を置かないで、おしっこが出た。使い捨ての薄いコップがじょぼじょぼと音を立てる。
彼女たちにもよく見えるように、彼女たちがいる板壁に体を押し当ててコップに溜まったおしっこを掲げさせられた。薄黄色の液体が懐中電灯に照らされる。
「はい。では飲んで」
「うっそお。おれ、飲んじゃうんですか、おしっこを」
「その通り。チャコは自分のおしっこを飲むのが大好きなんだよ。ね、チャコ」
どうせこれを飲み干さないうちは夕飯にありつけないのだろう。僕は泣き叫びたい気持ちを堪えて、生温かいコップを目の高さまで持ち上げた。少し喉が乾いていたのにまかせて、懐中電灯の光の中、横向きに立ったまま、おしっこに口を付けた。
「わ、すごい。ほんとに飲んでる。犬だって自分のおしっこを飲んだりしないのに」
「すごいでしょ、うちのチャコは。同級生や年下の女の子に見られながら、おちんちん丸出しの素っ裸で自分のおしっこを飲んじゃうんだから」
やっとの思いで全部飲み干すと、ご褒美と称して、格子の間から白米とメンチカツが直接落とされた。僕は急いで両手で掬うと、お皿を所望した。しかし、お皿の類は格子の間から入れることができないという理由で断られた。便器の横に白米とメンチカツ、胡瓜、トマトを置くと、Y美に命じられるまま、四つんばいになって、手を使わずに食べた。四つんばいで食事する僕の裸体を、真横上方から懐中電灯の光が照らし続ける。
雪ちゃんを送ってくると言ったまま、Y美はなかなか帰ってこなかった。ぼんやりと壁にもたれかけたまま、長い時間を過ごす。門の外に車の止まる音がして、誰かが降りた。声がする。おば様だ。アルコールが入っているようだった。こちらには来ないで、そのまま家に入ってしまった。
蛙の鳴き声に包まれて、時間が止まってしまったのではないかと思われた。
家のほうからY美とおば様の話し声がする。やがて二人が庭に出て、こちらに向かう足音が聞こえた。
「おりこうさんでいましたか、チャコさん」
「お願いです。ここから出してください」
「ごめんね。ほんとにごめん。ヘルパーのIさんがさ、南京錠の鍵を郵便受けに入れ忘れたんだって。で、その鍵を持ったまま、隣町に行って、いつ帰るか分からないんだってさ。あんたも運が悪いね。もう笑うしかないんじゃない」
まだ酔っ払っているおば様が声高に笑い出した。
「合鍵もないしさ。悪いけど、あと一晩だけ、我慢してくれない? 明日の夜には鍵を渡してもらうからさ」
「そんな、ひどいです。おば様」
「仕方ないでしょ。ずっと閉じ込めておくなんて言ってないわよ。出たら、いいことしてあげるから。我慢、我慢。男の子でしょ。じゃ、お休み。もう十二時過ぎてるわよ」
ばたんと家のドアが閉まる音がした。
「ごめんね。お母さん、酔っ払うと全然駄目なんだ。お酒弱いの」
先ほどとは打って変わった優しい物言いで、Y美が詫びた。
「チャコはいやかもしれないけど、せっかくだから誰にも邪魔されない一人の時間を満喫してよ。ね、欲しいものがあればなんでも用意するから。虫除けの香取線香も新たに三つ、追加したんだよ。これで蚊に刺されずに安心して寝れるね。朝になったら、水も追加してあげるからね」
「ありがとうございます。あと、何か着る物をください。さすがに夜になると、寒いです。肌掛けでもいいんですけど」
「え? 着る物? 肌掛け?」Y美の口調が不意に鋭くなった。
「はい。裸だと、寒いです」
「何言っちゃってんの。優しくすると、すぐ付け上がるんだね。あんたは罰として、服を着させてもらえないんでしょ。素っ裸にされているんでしょ。忘れちゃ駄目じゃん。全裸だから寒いって? 当り前だよ、そんなの。寒いのも罰のうちでしょ。残念だけど、肌掛けだって渡せないね。一晩中、裸で震えていればいいよ。おちんちんでもしごいていれば、少しはあったまるんじゃないの?」
何度も何度も謝ったが、無駄だった。いつもの癖で、土下座までしたけど、Y美を引き止めることはできなかった。おば様にも増して強くドアを閉める音が響いた。
格子から吹きおりてくる夜風が寒い。僕は生まれたままの体を小さく丸めて、隅っこで震えていた。
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トイレ小屋に閉じ込められた僕は、体をくの字に曲げて横になっていた。中央の和式便器に背中があたる。竹刀で滅多打ちされた体のあちこちが痛い。赤く腫れあがったお尻は絶えずひりひりして、無造作に仰向けになることができない。
便器の向こうに洗面器があった。2リットルほど水の入った小さな水瓶から水を汲んで、ハンドタオルを浸すと、それをお尻に当て、うつ伏せになって、お尻を上げた。
どれくらいの間、眠っていたのだろう。時間が分からない。四面の板の上方は格子で吹き通しになっている。そのおかげで意外に涼しい。昼の光線がさんさんと降り注いでいた。恐らく正午近くだろう。小皿におにぎりが四つあった。その一つを口に入れる。乾燥して硬いご飯粒を噛みながら、僕は考えた。二時半から三時までにはおば様がいったん家に帰ってきて、ここから出してもらえるのではないか。
おにぎりを二つ食べて、うつらうつらしていた。何もすることがない。戸を引いてみた。がたがたと音がするだけでびくとも動かない。南京錠が掛けられているのだった。周囲の板を蹴り破って外に出ることは、簡単にできそうだった。しかし、外に出たところで、施錠された家には入れない。素っ裸のまま家の外に出て助けを求めても、この地域全体に及ぼすおば様の社会的な力は大きいので、一見親切そうな農家のおじさんおばさんに保護されて、すぐにおば様の元に連れ戻されるだろう。
今のこの奴隷生活もずっと続くわけではないと、自分に言い聞かせている。おば様の経営する会社の独身寮で住み込みで働いている母からは、ハガキが届いていた。「おば様の言うことをよく聞くように、Y美ちゃんに嫌われないように」と書かれていた。周囲への過剰な気遣いでいつも疲労している母らしい内容だった。僕はまだ返事を書いていない。息子が学校に行かず、庭のトイレ小屋に素っ裸のまま監禁されていると知ったら、母はなんと思うだろうか。しかも全身に竹刀で叩かれた跡を生々しく残している。
元気ですよ、女だけの家に男の人がいて頼もしい限り、力仕事とか手伝ってもらっている、ほんとに優しい心持ちのいい息子さんね、映画館に連れて行ってあげたのよ、などと時々おば様は母に会って報告して、息子にしばらく会えない母を安心させているそうだ。おば様によるかなり嘘の混じった、あるいは肝心な点が隠されている報告に対して、母が疑いの目を向けないように僕は祈った。
叩かれた全身が熱を帯びて、だるい。お尻に当てていたハンドタオルを洗面器の水に浸けて、絞った。腕や脇腹、足など、痛みの激しい部位を冷たいハンドタオルでさする。そのうち、さざなみのように眠気が来て、眠った。ごく浅い眠り。節々の痛みで目が覚めて、落ち着くと、また浅く眠る。その繰り返しだった。
遠くでトラクターのエンジン音がかすかに響いていたが、それも止んだ。トイレの底を流れるかすかな水音がわずかに意識にのぼってくるばかりで、地上からすべての生き物が死に絶えたような静けさだった。水を飲んで、残っていたおにぎりを平らげた。うつ伏せになって、目をつむる。頭がはっきりしない。眠気を覚えた。
小学生たちが騒ぎながら表の通りを過ぎてゆく。その音で僕はぴくっと顔を上げた。高学年らしい子の声も混じっている。まもなくおば様が帰ってくる時間だ。
立ち上がって、ゆっくり腕を天井に向かって伸ばす。上端の格子からかすかに風が吹いて、胸の辺りを撫でた。
小学生たちの下校に伴い、通りも賑わしくなった。車がクラクションを鳴らして通り過ぎた。僕はおば様の帰宅を心待ちにしている。早くここから出してもらいたかった。
日がやや西に傾いて、格子から光線が折れ曲がって入る。おば様は帰ってこない。仕事が忙しくて家に立ち寄る時間がなかったのだろう。たまにそういう日があった。今朝は普段よりも遅く出掛けたから、なおさら時間が取れなかったのかもしれない。
洗面器のぬるんだ水の中に沈んでいるハンドタオルを取り上げて、額に当てた。通りの物音に耳をすます。人の話し声などが聞こえる。人は歩きながらよく話し、よく笑うと思った。僕は何もすることがない。熱っぽい体を横にして、眠気を催せば眠るだけだった。檻の中の動物のような生活。
浅い眠りの中で何度か途切れ途切れの夢を見た。現実のことだとしても、少しもおかしくない夢だった。門をあけて誰かが庭に入ってきた。メライちゃんの声がした。メライちゃんは誰かを探して庭に入ってきたようだった。「なおす君、なおす君」と、僕の名を小声で呼ぶ声がして、トイレ小屋に近づいてくる。そして、トイレの戸を軽く叩くのだった。「いるの? いるのならあけて。大切なことを話しにきたの」メライちゃんの押し殺した声から必死な思いが伝わってきた。「メライちゃん。来ないほうがいいよ。ここには」僕はメライちゃんがY美に見つかることを案じて、そう言った。「いいの。私は平気。それよりあけていい?」「ちょっと、だめだよ」僕は自分が裸でいることをメライちゃんに悟られまいとした。「なおす君、もしかして裸なの。分かった。そうなんだね。きっとそうだと思った。早くこの家から逃げ出したほうがいいよ。Y美のお母さんとY美は、とんでもないことを考えているんだから。普通の生活ができなくなっちゃうよ」
激しく戸を叩く音がして、意識が別の次元にワープしたような錯覚を覚えた。
「生きてる? チャコ」Y美の声だった。現実に戻ったらしい。格子から入ってくる光線が弱々しくなっていることに気が付いた。
「今、何時くらいですか」
「七時十分前だよ。返事がないから死んでるかと思った」
「すみません。おば様はまだ帰ってきていないんですか」
「知らない。パーティーがあるから深夜にならないと帰らないよ」
「お願いなんですけど、ここから出してもらえないでしょうか」
「そうなの。出してあげるようにお母さんから言われているんだけど、南京錠の鍵が見つからないの。みなみ川教のIさんは鍵を郵便受けに入れることになっているんだけど、ないの。さっきまで探してたんだけどさ」
申し訳なさそうなY美の口調に、僕は何も言えなかった。おば様が合鍵を持っているはずなので、帰ってくるまでの辛抱だとY美がしおらしく付け加えた。
「チャコ、お腹空いたんじゃないの。朝から小さなおにぎり四つしか食べてないでしょ」
「はい。だってそれしか食べ物がないから」
「水はあるの?」
「水はまだ少し残っています。何か食べる物を上の格子から入れてくれませんか」
「いくら私の背が高くたって、あそこまでは届かないよ。脚立を運ぶのも大変だし。もう少し我慢してよ。夕飯はメンチカツだよ。おいしいからさ。待ってなよ」
あくまでも明るい声だった。Y美は今日、学校でよいことがあったのかもしれない。
「でもさ、水と食事だけあれば、結構その中でも生活できるんだね。うんちとかおしっこの問題もないしね。トイレだってなかなか衛生的なんだよ。私さ、このトイレ、汲み取り式と思ってたの。チャコにもそう言ったことがあったよね。違うんだって。このトイレね、小さな川の上に建てたんだって。みなみ川の支流。だから、全部流して、田んぼのほうに流れて、桑畑の向こうの下水に合流する仕組みみたいだよ。ほら、便器の下から水の音がするでしょ。いつもきれいに流してくれるから、蝿とかがたかることもない。それに吹き通しもあって、涼しくない?」
「はい。涼しくて過ごしやすかったです。ただ、その、虫が…」
「虫? え、蚊とか? そうか、お母さんに虫除けの薬塗ってもらったでしょ」
「はい。でも…」それが寝汗で流れてしまったことなどを僕は伝えた。すると、Y美はそそくさと家から蚊取り線香を持ってきて、焚いた。トイレ小屋の周囲に二箇所置いてくれたのだった。蚊取り線香のにおいがする。僕はお礼を述べた。
「いいよ。それより体の痛みはどうなの。まだ痛む?」
思いもかけぬY美の優しい物言いに戸惑いながらも、僕は率直に体の腫れがひいていないこと、体を曲げたりする時に痛みが走ることを告げた。
「ごめんね、チャコ。私もエスカレートしちゃったみたい。お母さんに叱られた時、すごくむかついたんだけど、授業中とか休み時間とかに、ふとあんたのこと思い出して、急に可哀想になっちゃったの。泣きながら土下座してる素っ裸の男の子を竹刀で思い切り打ったりして、悪かったなって。おちんちんとか、おちんちんの袋とかもずいぶん叩いちゃったけど、どうなの?」
戸の隙間からY美の吐息が漏れてくるかのようだった。僕は誘われるままに、今朝の屈辱的な検査の話をした。ヘルパーのIさんに連れられて、女子高生たちに射精させられたと聞いて、Y美は怒りの感情を表わした。
「ひどい。あのIさんて、相当危ない、変な人だよね。私、大っ嫌い。なんか信者の人たちは、みんな一目置いてるみたいだけど、信者でもない一般の人を自分たちの儀式に巻き込むのは、やめてほしいよね。精液検査なんて名ばかりで、実際はその精液を儀式かなんかに使うんでしょ。勝手に女子高生たちに遊ばせないでほしいわ」
ひとしきりまくしたてると、Y美は空腹を覚えたと言って立ち去るのだった。
すっかり暗くなった。天井近くの格子に家の明かりがかすかに届いている。僕はお腹を空かせたまま、壁に寄りかかっていた。お尻の下に敷いたハンドタオルが乾いていた。蛙の鳴き声ががんがん響いている。おば様が帰ってこないのなら、せめてY美が気晴らしに来てくれるとよいと思った。いろいろな話をしてくれるだけで有り難い。ところが、食事に行ったまま、なかなか戻ってこないのだった。
いっそ眠ってしまえば楽なのだが、少しも眠れそうもない。トイレの狭い空間の中で、痛む手足をかばいながら体操をした。痛いからといってずっと動かさないでいると、そのまま固まってしまうような気がした。
体を疲れさせると、眠れる。そう思って運動することにした。まずは垂直飛び。縄を回さない縄跳びのように小刻みに飛んだ。便器の盛り上がった部分に素足をかけてジャンプすれば、天井近くの格子に届くだろうか、やってみた。指先がかろうじて格子に触れただけだった。着地に失敗して、両側の板に腰をしたたかぶつけたあと、便器につまづいてしまった。足とお尻を打って、僕は痛みに蹲った。いきなり運動をしたので、すぐに息ぎれするのだった。
退屈のあまり、頭の中で四桁の数字を組み合わせて遊んでいると、蛙の鳴き声に混じって人の話し声がした。Y美だった。もう一人、同い年くらいの女の人の声がした。こちらに向かっている。僕は身構えた。
「どう元気なの、チャコ」Y美が軽く戸を叩いた。僕が返事をすると、二人が笑った。
「F田雪ちゃんが家の用事で立ち寄ったから、連れてきたよ。雪ちゃんにはあんたもずいぶん体じゅうを観察されたもんねえ」
くすくす笑うY美の声にかぶさって、どこか幼い女の子の声がして、「こんばんは」と聞こえた。僕が黙っていると、Y美が「挨拶してんだから無視してるんじゃねえよ」と、戸を叩いて叱った。僕は謝りながら、挨拶を返した。Y美は僕に正座を命じた。
「ちゃんと私たちのほうを向いて正座しなさいよ。見えないと思って足を崩したってすぐ分かるからね。正座崩したら、夕食抜きだよ」
「はい」
命じられた通り、声のするほうを向いて正座した。雪ちゃんが「犬をしつけているみたいだね」と言って、笑った。
「ほんと、犬みたいなんだよ。やっぱりトイレ小屋に閉じ込めておくのが一番かな」
「ええ。でも、チャコ、学校は休んだんですか。そうですか。それは大変ですね。え、裸なの? ほんとですか。ずっと素っ裸のまま監禁されてるんですか」
「そうだよ。夕べからずっと裸。今朝なんか、オールヌードのまま、あすこの農道まで連れ出されて、女子高生たちに射精させられたんだって。信じられないよね」
「おもしろい。見たかったなあ、私、まだ一度も射精したとこって見たことないし」
「雪ちゃん、まだ小学六年なのに過激だよ。そのうち見せてあげるからさ」
きゅるきゅる、と僕のお腹が鳴った。二人の女の人が大笑いする。僕は少しだけ足を崩した。と、いきなりY美の怒声がした。
「こら、きちんと正座してなさい。いくらお腹が空いてたって、夕飯抜きにするからね。本気だよ、私は」
「ごめんなさい」頭を下げて、再び正座する。Y美と雪ちゃんは、楽しそうにお喋りを続けた。僕は俯いて耳を傾けていた。
「お腹空かしてるみたいだけど、チャコは大丈夫かな」
「そうだ。雪ちゃんがあの格子の隙間からご飯をやんなよ。チャコがほんとに裸でいるのかどうか、確かめたいでしょ」
「見たい、見たい。ぜひ私にやらせて」
はしゃぎながらY美と雪ちゃんが脚立を運んできた。
「わ、ほんとだ。ほんとに丸裸なんですね、チャコさん。檻の中の動物みたい。今さらそんなに恥ずかしがらないでよ。こっち向いて、チャコ」
懐中電灯に照らされてうろたえる僕を格子窓から見下ろして、Y美と雪ちゃんが楽しそうに笑うのだった。夕飯を食べたかったら言う通りにしないと駄目、とY美に脅かされ、僕は懐中電灯の光の中で、おちんちんを手で揺すりながら腰を振らされた。おちんちんが大きくなると、両手を頭の後ろで組んで跳躍しながら回れ、とか、おちんちんの袋をめくって裏側までよく見せろ、などとY美と雪ちゃんが交互に、ほとんど思いつくまま命じ、僕は意志をなくした人形のようになって、次々と言われたことをこなすのだった。
「おもしろい。ずるいなあY美さんは。いつもこんな楽しい遊びをしてるんですか」
「そうでもないよ。じゃあ最後にもっとおもしろいの見せてあげる」
「それって、なになに」
「まあ、見てなよ」そう言ってY美は使い捨て用の透明なプラスチックのコップを一つ、下へ落とした。それにおしっこをしなさいと言う。「おしっこ出ません」と答えると、「いいから出しなさい。出すまで食事なし」と、にべもない。上から照らされる懐中電灯の明るさの中で、僕は正面を向いて立たされていた。コップをおちんちんの先に当てる。脚立に乗ったY美と雪ちゃんが格子から顔を覗かせて囃す。それほど間を置かないで、おしっこが出た。使い捨ての薄いコップがじょぼじょぼと音を立てる。
彼女たちにもよく見えるように、彼女たちがいる板壁に体を押し当ててコップに溜まったおしっこを掲げさせられた。薄黄色の液体が懐中電灯に照らされる。
「はい。では飲んで」
「うっそお。おれ、飲んじゃうんですか、おしっこを」
「その通り。チャコは自分のおしっこを飲むのが大好きなんだよ。ね、チャコ」
どうせこれを飲み干さないうちは夕飯にありつけないのだろう。僕は泣き叫びたい気持ちを堪えて、生温かいコップを目の高さまで持ち上げた。少し喉が乾いていたのにまかせて、懐中電灯の光の中、横向きに立ったまま、おしっこに口を付けた。
「わ、すごい。ほんとに飲んでる。犬だって自分のおしっこを飲んだりしないのに」
「すごいでしょ、うちのチャコは。同級生や年下の女の子に見られながら、おちんちん丸出しの素っ裸で自分のおしっこを飲んじゃうんだから」
やっとの思いで全部飲み干すと、ご褒美と称して、格子の間から白米とメンチカツが直接落とされた。僕は急いで両手で掬うと、お皿を所望した。しかし、お皿の類は格子の間から入れることができないという理由で断られた。便器の横に白米とメンチカツ、胡瓜、トマトを置くと、Y美に命じられるまま、四つんばいになって、手を使わずに食べた。四つんばいで食事する僕の裸体を、真横上方から懐中電灯の光が照らし続ける。
雪ちゃんを送ってくると言ったまま、Y美はなかなか帰ってこなかった。ぼんやりと壁にもたれかけたまま、長い時間を過ごす。門の外に車の止まる音がして、誰かが降りた。声がする。おば様だ。アルコールが入っているようだった。こちらには来ないで、そのまま家に入ってしまった。
蛙の鳴き声に包まれて、時間が止まってしまったのではないかと思われた。
家のほうからY美とおば様の話し声がする。やがて二人が庭に出て、こちらに向かう足音が聞こえた。
「おりこうさんでいましたか、チャコさん」
「お願いです。ここから出してください」
「ごめんね。ほんとにごめん。ヘルパーのIさんがさ、南京錠の鍵を郵便受けに入れ忘れたんだって。で、その鍵を持ったまま、隣町に行って、いつ帰るか分からないんだってさ。あんたも運が悪いね。もう笑うしかないんじゃない」
まだ酔っ払っているおば様が声高に笑い出した。
「合鍵もないしさ。悪いけど、あと一晩だけ、我慢してくれない? 明日の夜には鍵を渡してもらうからさ」
「そんな、ひどいです。おば様」
「仕方ないでしょ。ずっと閉じ込めておくなんて言ってないわよ。出たら、いいことしてあげるから。我慢、我慢。男の子でしょ。じゃ、お休み。もう十二時過ぎてるわよ」
ばたんと家のドアが閉まる音がした。
「ごめんね。お母さん、酔っ払うと全然駄目なんだ。お酒弱いの」
先ほどとは打って変わった優しい物言いで、Y美が詫びた。
「チャコはいやかもしれないけど、せっかくだから誰にも邪魔されない一人の時間を満喫してよ。ね、欲しいものがあればなんでも用意するから。虫除けの香取線香も新たに三つ、追加したんだよ。これで蚊に刺されずに安心して寝れるね。朝になったら、水も追加してあげるからね」
「ありがとうございます。あと、何か着る物をください。さすがに夜になると、寒いです。肌掛けでもいいんですけど」
「え? 着る物? 肌掛け?」Y美の口調が不意に鋭くなった。
「はい。裸だと、寒いです」
「何言っちゃってんの。優しくすると、すぐ付け上がるんだね。あんたは罰として、服を着させてもらえないんでしょ。素っ裸にされているんでしょ。忘れちゃ駄目じゃん。全裸だから寒いって? 当り前だよ、そんなの。寒いのも罰のうちでしょ。残念だけど、肌掛けだって渡せないね。一晩中、裸で震えていればいいよ。おちんちんでもしごいていれば、少しはあったまるんじゃないの?」
何度も何度も謝ったが、無駄だった。いつもの癖で、土下座までしたけど、Y美を引き止めることはできなかった。おば様にも増して強くドアを閉める音が響いた。
格子から吹きおりてくる夜風が寒い。僕は生まれたままの体を小さく丸めて、隅っこで震えていた。
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包茎や無毛短小を言葉でからかわれたら、もっと面白いと思います。
コメント、ありがとうございます。
そのようなご要望、まさにぼく自身の願望でもあります。
好物は後回しにする癖があって、やっと好物にたどりついたらすでにお腹がいっぱいになっている、なんて現実でよくやってしまう失敗を犯さないように、そのようなシーンも適度に織り交ぜて進めたいと思います。
ありがとうございました。