思い出したくないことなど

成人向き。二十歳未満の閲覧禁止。家庭の事情でクラスメイトの女子の家に居候することになった僕の性的いじめ体験。

クレソン

2013-10-13 10:45:22 | 8.夏休み恥辱編
 おちんちんの袋がキーンと痛み、砂の中で身悶えした。このところ連続しておちんちんの袋を蹴られているので、時折鋭い痛みが走るようになった。おちんちんの根元を袋ごとロープで括られ、砂場から逃げることができない。僕は相変わらず素っ裸だった。一糸も纏わない格好のまま三回目の朝を迎えた。
 昨夜の悪夢がまざまざと蘇り、口中に無理矢理飲まされた精液が湧き出てくる。思い出したくない、の一語に尽きる。全裸のFさんは女の人たちに開かされた両足を押さえ付けられた。そのおかげで、みっくんはFさんの秘所をじっくり目に焼き付けながら、僕の口の中で果てたのだった。僕はFさんに背中を向けて、ひたすらみっくんのを咥え、舌を使って奉仕をした。だから僕は、奉仕の最中にみっくんが「すえげよ、Fさんの。びろびろしてるよ」と評したFさんの性器を、とうとうじっくり見ることができなかった。
 どっと放出された精液を手の中に吐き出そうとすると、いきなりY美が僕の鼻を抓まみ、口の中に含んだみっくんの精液を無理矢理飲み込ませた。自分のとは味が違うかとY美に訊ねられ、「同じような味です」と答えると、女の人たちは、なぜか知らないけれども大笑いするのだった。
 朝を迎え、さらさらと体を滑る白砂の上で夢と現実の間を行ったり来たりしながら、僕は朝の生理現象が終わることをひたすら祈っていた。硬くなったおちんちんがどうにもならない。母屋の玄関から出てくるルコの姿が見えた。白いTシャツに短パン姿だった。手に歯ブラシとコップ、タオルを持っている。僕は、急いで体を起こして正座をした。本来であればおちんちんを太腿の間に挟んで隠すところだけど、朝の生理現象で硬化しているため、それができない。こうなったら上体を低くして隠すしかない。何か着る物があればさり気無く隠すことができるのに、全くの裸でいるのは、こういう点でも困ることだった。ルコが近くまで来ると、僕は頭を深々と下げて朝の挨拶をした。しかし、ルコは無言だった。僕を無視して、側溝の蓋を外し、岩に硬く結びつけたロープを解く。ロープを引っ張られ、勃起状態のおちんちんが露わになってしまったけど、ルコはフンと馬鹿にしたように一瞥しただけで、やはり何も言わなかった。朝の散歩に連れて行かれるのかと思ったら、母屋の近くに据えられた蛇口へ向かった。蛇口には芝生や木に水をやるためのホースが付いていた。ルコがホースを外し、僕にコップと歯ブラシを渡した。僕は短く刈られた芝生を抜けて縁側近くのコンクリートで歯を磨き、顔を洗った。
 庭に面したガラス戸のカーテンが開けられ、Y美やS子が伸びをする姿がガラス越しに見えた。女の人たちは全員、このルコの別荘に泊まったらしい。素っ裸のまま女の人たちにいたぶられ続けて疲労困憊だった僕は、みっくんの性欲処理を済ますと、すぐに猛烈な眠気に襲われ、外の砂場に連れて行かれたのもよく覚えていない程だった。みっくんはその後、Y美とS子に散々に冷やかされて、ほうほうの体で逃げるように帰ったという。
 それにしてもルコの僕に対する風当たりは尋常ではなかった。無理強いされたこととはいえ、僕がみっくんの性器を咥えてしまったことは、ルコにしてみれば当然許されるべきことではなかったのだろう。僕が顔を拭いているといきなりタオルを取り上げられ、後ろ髪を掴まれて立たされた。デッキブラシで背中とお尻を集中的に叩かれる。僕は悲鳴を上げてルコに許しを乞うのだが、ルコは無言で僕を叩き続けた。
 自分の意に反して、何の性的欲望を伴わずに大きくなったおちんちんが明るい日差しのもとに晒される。Y美がガラス戸を引いて、居間に雑魚寝していた女の人たちに声を掛けた。S子やミュー、風紀委員、N川さん、エンコが縁側に出てきて、芝生とコンクリートの境目に立たされている僕を見つめた。ルコがおちんちんを手で隠している僕のお尻をデッキブラシで擦り、手を頭の後ろで組むように言いつけた。もう何度も見られているのだから、と自分に言い聞かせ、命じられた通りにする。勃起したおちんちんを見て、N川さんがくすくす笑いながら「注射でも打たれたみたいだね」と、言った。
 ブラジャーとパンツだけ身に付けることを許されたFさんがいそいそと朝食の準備をしている。エンコがデッキブラシで僕の足の裏をごしごしと洗った。僕に家の中でFさんの手伝いをさせるためだった。おしっこをしてから、おちんちんは次第に元の大きさに戻った。僕は食卓にヨーグルトやサラダ、Fさんが焼いた目玉焼きを運んだ。Fさんは、この家の中で一番年上で、監督役をルコの親から仰せつかっていたのに、すっかり従順な召使女に成り下がってしまった。Y美たちが様々な品数の朝食を摂っている間、Fさんと僕は、食事をすることも許されず、隅でじっと立ったまま待機させられた。Fさんの白い下着姿のすぐ横で、素っ裸の僕もまた気をつけをする。おちんちんに触れることが許されないため、小さくなったおちんちんを包皮の中から引っ張り出す機会が得られなかった。Fさんが皮を被った無毛のおちんちんを見て、「可哀想に。まだこんな子どものおちんちんを丸出しにさせられて、あの子たちに散々苛められて」とか細く声を震わせた。
 朝食が終わり、後片付けの皿洗いをFさんと一緒に済ますと、Fさんは家の掃除、僕には庭の草むしりをすることになった。庭に素っ裸のまま出され、頭の後ろで手を組むように命じられた僕の全身にN川さんとエンコがふざけ半分で日焼けクリームを塗った。おちんちんの皮や袋にまでクリームを塗り込む。その後、虫除けスプレーをやはり全身にくまなく噴射してくれた。
 砂利の間に生えた雑草を毟り、袋に入れる。暑くて、汗がぽたぽた落ちてくる中、雑草を残らず取り去っていると、Y美とルコの会話が聞こえた。
「ねえ、ルコ。クレソンをお母さんへの土産に持って帰りたいんだけど、案内してよ」
「いいよ。でも、沼の中に入るから長靴とか必要だよ。お洋服も汚れるかもしれないし」
「私は採らないよ、チャコを連れていくから」
「すっぽんぽんのまま?」
「当然でしょ。せっかく裸のままにしてるんだから、使わなくちゃ」
 こうして僕は、クレソン採りに借り出された。一度門の外に出て、舗装路をしばらく上り方面に進み、裏山に入る。朝の散歩コースとは反対の方向で、僕にとっては初めて通る幅の狭い山道だった。僕は相変わらずの素っ裸だったけど、この山道は人と遭遇する確率が低そうだったし、もし人の気配があれば十分に余裕を持って察することができ、素っ裸の身を木の後ろや草かげに隠せばよいだけの話だから、普通に歩かされた。ただ、門の外から山道に入るまでの舗装路だけは、さすがに人に見られる心配があったから、Y美とS子、ルコがしっかり僕をガードしてくれた。これは僕のためというよりも、後々、裸の男の子を連れ回しているという噂を立てられるのを嫌がるルコのためであった。ルコのたっての望みをY美とS子は仕方なく聞き入れたという感じで、ルコは頻りにY美とS子に恐縮しているようであった。
 山道を下って渡り板をつないだ平らなにところに湿地帯があった。奥の方は浅い池とも思えるくらい水が張っている。その中間ほどの位置に緑の葉が沢山あった。この辺りに自生する山菜に詳しいルコによると、あれがクレソンだと言う。早速、Y美が僕に湿地帯に入って採ってくるように命じた。
 いやいやながら足を沼地に入れる。足の裏が柔らかい泥の中に着地点を求めて、ずぶずぶと沈み、脛が沼の中に隠れた。次の一歩のために足を沼から引っ張り出すのが一苦労で、その間は片足で立っていなければならない。僕はバランス感覚をフルに活用して、なるべくリズミカルに進むようにした。沼は次第に深くなり、クレソンの群生に手が届いたところでは、膝頭までも沼に浸かった。
 細長い板を組み合わせて作られた遊歩道の上で女の人たちが待っている。そこは木陰の涼しい場所だった。僕はカンカン照りを背中に浴びながらせっせとクレソンを摘む。ルコが「根っこを引き抜いたら駄目、途中で折って」と大きな声で注文をつけた。Y美がその理由を聞くと、根っこから抜くと次から生えなくなるから、とルコが答えた。手に持てる限りのクレソンを採って戻ると、せっかくだから私の分も採って来てよ、とS子がY美に目配せをしてから言った。
 こうして僕は何度もクレソンの群生するところまで泥濘の中を往復させられることになった。なるべく体に泥が付かないように細心の注意を払いながらクレソンを採る僕の背中越しに中高年らしい女性の上品な感じの笑い声が聞こえた。
 また人に素っ裸を見られているのか。僕は恥ずかしさと惨めさの混じった気持ちのまま、泣き出したくなるのを我慢した。ルコが愛想笑いを浮かべて話をしている。僕は右手と左手に分けて持ったクレソンで交互におちんちんを隠しながら、内股気味にして戻った。ルコが話している女性の隣には、小学生三年生くらいの女の子とその弟と思われるような幼い男の子がいた。だんだん近づいてくる僕を不思議そうに見つめている。僕は、じっと見つめる子どもたちの視線から素っ裸の身を隠したくて、向きを変えて逃げたかったけれど、もちろんY美がそれを許す筈がない。子どもたちの祖母らしき人は、ルコとの話を中断して僕に視線を向けていた。
 内股気味の歩きがおかしいのか、男の子がくすっと笑った。湿地から渡り板に上がり、採ってきたクレソンを残らずルコに手渡すと、素早く片手でおちんちんを、もう片方の手で胸からお腹を隠し、じろじろ見る新たな三人の目からなるべく裸を隠す。膝頭を境にして、足が白色とにび色の二色に分かれていた。泥に包まれた裸足の指が周りの人たちのサンダルや靴に混じって、一際惨めな感じを与えた。
「なるほどね。裸になればお洋服の汚れる心配がないわよね」
 子どもたちからオバーチャンと呼ばれている女の人が言った。実年齢よりもうんと若い人が着るようなスポーツウェアと派手な色のズボンを穿いている。その気になればY美やルコとも同世代のように話ができるとでも誇るかのように、豪快な笑い声を上げた。
「ええ。この子はすごく役に立つんですよ」
 Y美が明るい声で返し、戸惑ったように目を泳がせているルコに一瞬、鋭い、叱咤するような一瞥を向けた。オバーチャンと孫たちは恐らくこの近所の人たちで、ルコの親とも付き合いがあるのだろう。男の子を素っ裸に剥いてクレソンを採らせていたという話がルコの父親の耳に入ってしまうかもしれない。父親だけならまだしも、父親の愛人にも知られ、「まあ、ルコちゃんたら、やるわね」などと冷やかされるかもしれない。ルコの表情が苦痛にゆがんだ。それから急に怒りの形相を浮かべた。昨日、僕がみっくんの相手をさせられた時と同じような。
「何休んでんの? あそこに草に混じって白い花があるの見える?」
 ぴしゃりとお尻を叩かれ、ルコの指す方を見る。渡り板からそれほど離れていないところに水草が群がっていて、その中に白い花が幾つか見えた。僕が頷くと、ルコが「採ってきてよ」と短く命じた。女の子とオバーチャンが言葉を交わしていた。オバーチャンは僕をじろじろ見ながらうっすらと笑いを浮かべていたけど、女の子は険しい顔つきで僕を睨みつけている。
 突然、背後から肩を叩かれた。Y美だった。白いビニール袋の中からY美が一つかみのクレソンを出して、僕に渡す。僕が片手で受け取ると、さらにもう一つかみ出した。両手を使わなければ受け取れない数のクレソンを袋から出して、僕におちんちんを隠させない。僕の背後ではオバーチャンと女の子と男の子がいて、無防備なお尻を見られていることだけでも恥ずかしいのに、Y美は回れ右して女の子にクレソンを差し上げるように命じた。両手はクレソンで塞がっているから、おちんちんを股間に押し込むしかない。体の向きを変えるのと同時に腰を屈めて迅速に太腿の間におちんちんを隠す。オバーチャンは、おちんちんのない股間にちょっと驚いたような顔をした。女の子にクレソンを渡す時、すぐに後ろにいるY美が「何これ」と言いながら、固く閉じた太腿の間に収めたおちんちんをいじり始めた。
 くすぐったい。ぎゅっと外へ押し出すので、太腿を閉じる僕の努力もむなしく、おちんちんが露わになってしまった。相変わらず険しい顔つきのまま目の前に差し出されたクレソンを見つめていた女の子の視線がたちまちおちんちんに移った。
「早く沼に入りなさいよ。何やってんの?」
 女の子がなかなかクレソンを受け取ってくれないので、いつまでもおちんちん丸出しのまま膝を曲げている、そんな状態の僕のお尻をルコが力一杯叩いた。仕方がない。僕は女の子に押し付けるようにしてクレソンを渡すと、渡り板から湿地帯へ足を下ろした。軟らかい泥土を踏んだ足の裏が地面を求めてずぶずぶと沈む。
「いいわね。男の子は簡単に真っ裸になれるから。いろいろ自由にできるわね」
 女の人のどんな指示にも従う僕を見て、オバーチャンが感心したように嘆息した。
「生意気な男の子は裸にしちゃえば、割と素直になるんですよ」
 Y美が返した。口ごもるルコの中で怒りのようなものが溜まりつつある。Y美はその様子を楽しそうに見ていた。
 その白い花、と言われても白い花は幾つかあり、どれがルコの目当ての花か分からない。僕の手が白い花を採ろうとするたびに、「違う、それじゃない」と罵声が飛んだ。或いはわざと曖昧な言い方をして僕を迷わせているのではないかと疑っていると、ルコがさも業を煮やしたとばかりに、
「いいよ、もう、私が採るから。ナオス君、四つん這いになってよ」
 と命じた。泥に塗れるのは足だけで済むようにしてきた僕の努力を嘲うかのような指示だった。おちんちんを手で隠しながら、渡り板と水草の生えている中間の地点に戻る。ルコが僕の背中を踏み台にして好きな花へ手を伸ばせる位置に立つと、渡り板の上には、Y美とルコ、S子にオバーチャンと二人の孫がいて、この六人の洋服を着た人たちは、湿地帯に真っ裸のまま入らされた僕が四つん這いの姿勢になるのを無言で待っている。ルコが急かした。
「早く。四つん這い」
 膝を曲げて膝頭が水面に触れるとそのまま泥に沈む。着いた手は手首から少し先までが泥に沈んだ。こうなったらもう、おちんちんも水の中に隠れてしまえば良いのだけれど、生憎水深が足りず、おちんちんは垂れ下がったままの状態になった。オバーチャンが孫たちの手を引いて、僕の右斜めに移動する。その場所からは、動くたびにぷるぷる揺れるおちんちんが丸見えだった。男の子が指をさして笑っている。
 あっと思わず声を上げてしまった。ルコが土足のまま僕の背中に片足を乗せた。片方の足は渡り板から離さず、上半身を水草の方へ傾け、手を伸ばす。泥の底にある地面に着地した手のひらにルコの体重が伝わる。僕は腕にいっそうの力を込めて、ルコを支えた。僕の苦しみを知ってか知らずか、ルコはのんびりと花を採っている。
 最初、僕は渡り板に対して並行の形で四つん這いの姿勢を取っていたけど、途中から渡り板と垂直になるように四つん這いの姿勢を改めさせられた。こうすることで、ルコは今までよりも奥の草まで手を伸ばすことができるようになる。尾骶骨のやや上辺りにルコが足を乗せると、その部分が撓み、お尻がやや上がった。S子が「やだ。お尻の穴ばっちり見えるよ」と大きな声で知らせるので、もうおちんちんが見えない位置にいたオバーチャンと二人の孫は、すぐに僕の真後ろに移った。お尻の穴もおちんちんの袋の裏側も、渡り板から至近距離でじっくり観察されてしまう。Y美が木の枝でおちんちんの袋やおちんちんを裏側からつんつんと突いて、女の子や男の子を喜ばせている。
「やだわ。こんなにお尻の穴見られちゃって。幾ら男の子でも可哀想かも」
「平気ですよ、気にしないでくださいね」
「この子、辛い思いをしてるんじゃないかしら」
 生暖かい息がお尻に吹きかけられた。唾が飛んだ。Y美とオバーチャンは、よほど僕の晒されたお尻の穴を顔を近づけているようだった。相変わらずおちんちんの袋やおちんちんを細い棒のようなものがつんつんと突っついてくる。Y美に代わってS子が女の子と男の子におちんちんの突っつき方を教えているようだった。木の枝が当たると、ぴくっとして少し痛いけど、二本の枝で両側から挟むようにしておちんちんを擦られると、不本意ながら性的な気持ち良さを覚えてしまう。
 もうやめて、やめてください、と祈るような思いで訴える。オバーチャンが僕に示した同情、あれが偽物でなければ、エスカレートするY美たちのいじめを止めようとする筈だと信じて、背中に乗せられた片足の重さと恥辱にわなわなと震えながら声を絞り出す。
「うるさいな。動かない」
 そう言うが早いか、ルコが背中に両足を乗せた。重い。たちまち僕の腕は崩れ、胸までも泥の中に浸かってしまう。お臍の辺りにもぬるっとした泥の感触があった。唯一の幸いは、おちんちんやお尻の穴も泥に沈んで見えなくなったことだった。背中を水や泥が覆いつつあるのか、ルコが何度も足を踏み替えながら、素早く僕に指示を出した。
「目と口を閉じて」
 その理由は問うまでもなかった。僕が目と口を閉じると同時にルコに頭を踏まれ、顔が泥の中に突っ込まれた。ルコが僕の頭を踏み、背中にどすんと体重がかかる。ルコ勢いをつけて渡り板に戻ったらしい。どうやらルコは少し靴を汚しただけで済んだようだった。蓮の葉で靴を拭くルコが耳の中まで泥の詰まった僕の視線を感じたのか、ふと手を止めてこちらを見た。それから、渡り板の上に落とした白い花を集めた。
「これ、ナオス君の背中を借りて摘んだんだけど、好きな花じゃなかったから、全部ナオス君にあげるね」
 全身泥に浸かった僕に向かって、ルコが萎れた花を投げつけた。
 もう、さっきまでのように恐る恐る泥の中を歩く必要はなくなった。Y美とS子はそのように判断したらしい。二人は、オバーチャンとその孫たちがクレソンの礼を述べて立ち去ると、僕に泥の中を匍匐前進でクレソンの生えている場所よりも更に奥へ向かうように言いつけた。湿地帯の真ん中辺りがどれだけ深い泥になるのか知りたいという、ただそれだけの他愛のない理由で、このやたらと体力を消耗させる苦役を僕に強いるのだった。クレソンの群れているところからは、匍匐前進をする僕の肩まで泥に浸かった。これ以上進むと、首、顔と泥が迫ってくるのは明かだった。Y美が戻ってくるように呼びかけている。その声は、夢から醒める直前に聞く天からのお告げのように聞こえた。
 ハスの葉で拭った顔の周り以外は泥に覆われた素っ裸の身を、S子が衣服をまとっているみたいだと評した。行きとは違う道で帰ることをY美が主張し、山道ではなく人家のまばらにある公道を通ってルコの別荘に戻った。途中で会った人たちには、Y美が例によって作り話を披露し、僕が湿地帯に落ちたため、やむを得ず服を全部脱がしたのだと説明した。あからさまに僕に侮蔑の視線を送る人たちも少なくなかった。小さな子を連れた母親は、特にそうだった。
 留守番をしていたミュー、風紀委員、N川さん、エンコの四人が門まで出てきて、全身泥にまみれた僕の体を見て驚きの声を上げた。僕は庭に連れて行かれ、N川さんとエンコに庭の水撒き用のホースとデッキブラシで全身をごしごし洗われた。縁側のガラス戸越しに下着姿のFさんがY美たちにお茶を運んでいるのが見えた。
 天気予報では台風の接近に伴い、午後から豪雨になるとのことだった。全身泥まみれで歩かされている時、少し風が冷たく感じられたけれど、まだ雲と青空が仲良く半分ずつ空を占めていた。ところが今、僕が相変わらずの素っ裸のまま待機させられているコンクリートから見る空は、雲の独占状態だった。もうどこにも青空は見えない。汚れた色の雲が重たそうに垂れ下がっている。今にも雨が降りそうだった。コンクリートのすぐ横に縁側があり、そこの網戸から女の人たちの話し声が聞こえる。
 泥濘の中の匍匐前進でよほど疲れたのか、僕は外壁にもたれながらぐっすり眠ってしまった。コンクリートを打つ雨の硬い音で目が覚めた。雨はたちまち大降りになった。その間、幸運なことに僕は誰からも相手にされなかった。時折、縁側から女の人たちがちらちらと雨の様子を覗きに来る。僕は真っ裸のまま、おちんちんの根元を袋ごとロープで縛られていたけど、手足の拘束はなかったので、ロープの長さ約10mの範囲は自由に動くことができた。僕は庇の狭い空間に体育座りをして、土砂降りになって当分やみそうもない雨を見つめていた。どこにも隠れる場所がなかった。
 少し肌寒く感じられるけど、羽織る物が何もない。丸裸の体を摩っていると、鉄扉から傘にすっぽり頭を包まれた人が入ってきた。膝までのスカートは雨にびっしょりと濡れて膝に貼りついている。ピンクの長靴が水溜りを勢いよく踏み、水しぶきが僕の体にかかった。僕の顔を上げさせようとして、わざと水しぶきをかけたのかもしれない。
 来客者は、S子のバスケットボール部の先輩だった。中身のぎっしりと詰まったリュックサックを庇の下のコンクリートに置き、僕の剥き出しの乳首をそっと指で撫でた。先輩は、僕があの河原でのいじめ以来、ずっと裸のままなのかと訊ねた。僕が頷くと、先輩は僕のおちんちんを隠している手を払い、おちんちんを指でいじりながら、顔を近づけ、「君もずっと外の空気に当たっていいですね」と、赤ちゃん言葉で冷やかした。
 アキ先輩、と縁側のガラス戸から顔だけ出してS子が呼んだ。
 呼ばれて振り返った先輩は、すぐに家の中に招き入れられた。
「これから大事な話し合いをするから、お前はそこで大人しくしてな」
 家の中からY美が僕を冷たい目で見下ろしながら命令する。冷房を切ったというルコの声がして、Y美が網戸を閉めた。そのおかげで女の人たちの話し合いが家の外、庇の下にいる僕に筒抜けだった。
 アキ先輩が言った。あのたくましい肉体を持つ男性のモン先輩がY美たちから差し出された奴隷のような女性、H山さんの肉体にのめり込んでしまい、一昨日も昨日もH山さんを呼び出して、性欲の奉仕をさせている。この上、Y美は、Fさんまでもモン先輩に差し出そうとしているようだけど、ちょっと待ってほしい。
 続いてY美の声が聞こえた。「Fさん、悪いけど下着も取って。そう、全部脱ぐの。早くして。お盆で隠さないの。お盆は食卓に置いて。はい、両手を頭の後ろで組む。今更恥ずかしがっても仕方ないでしょ。諦めてよ」
「すごい立派なおっぱい。さぞかし自慢でしょうね」
「陰毛抜いてもいいでしょ。こんなに毛深いんだからね」
 女の人たちがFさんの肉体を弄んでいるらしい。女の人たちの冷やかしに混じってFさんのすすり泣きが聞こえる。
 やがて、きっぱりとアキ先輩の宣言する声が聞こえた。
「こいつの体は、いかにもモン好みだから、私としては面白くないね。なんであいつばっかりいい思いさせてやる必要があるの? 私は、ほら、Y美ちゃんちに居候してるとかいう、あのはだかんぼくん。あの子のお尻の穴で遊ばせてもらいたいんだけどね」
「アキ先輩は、男の子のお尻の穴が好きですね」と、S子がくすくす笑う。
「違うよ。私は男の性欲って奴がいつも女の穴に向けられていることにすっごく不満な訳。そんなにやりたいんだったら、男どうしでやればいいって思うのよ」
「それって、すごくない?」S子が素っ頓狂な声を上げた。
「訓練して広げてやらなくちゃいけないけどね。その気になれない男に迫られた時の代用として、お尻の穴の広がる男の子を用意しておく。これは、女の私たちにとって、とても大切な仕事、しっかりやらなくてはならないことのような気がするんだよ」
 沈黙。みんな、はっとしだに違いない。僕もまた息を飲んだ。折り曲げた膝を結ぶ手がきゅっと締まる。
「今日はね、注射器を持って来たの。ルコちゃん、牛乳を出してくれる? 外にいるはだかんぼちゃんにたっぷり注ぎ込んでやるの」
 激しさを増す雨の地面を叩きつける音を切り裂くように、アキ先輩の嬉々とした声が響いた。


7 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-10-13 23:20:49
みっくん、悪臭いッ!キモッ!ゲェ~!
Fさん裸でCFMNで無くなった。
初期の頃が良かった。
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Unknown (Unknown)
2013-10-14 03:25:35
フェラシーンはカットか……残念です
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久しぶりの更新感謝です ()
2013-10-15 16:02:48
ナオス君は持久力や耐久力体力があって凄いですよね怪我もしないとはー性的拷問休む暇なし、食事もなしでは普通考えられない!まあ、精神病院に属する相手だからーでもおば様とy 美が一緒に精神病院に入院するところ見てみたいーこの小説ナオス君が普通に家に帰りまた恋人もできるところまで読んでみたいですー勝手ばかりですみませんでした。次号も期待しております
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久しぶりの更新感謝です ()
2013-10-15 16:02:48
ナオス君は持久力や耐久力体力があって凄いですよね怪我もしないとはー性的拷問休む暇なし、食事もなしでは普通考えられない!まあ、精神病院に属する相手だからーでもおば様とy 美が一緒に精神病院に入院するところ見てみたいーこの小説ナオス君が普通に家に帰りまた恋人もできるところまで読んでみたいですー勝手ばかりですみませんでした。次号も期待しております
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ずっと裸なの (KBC)
2013-10-15 18:20:03
ナオス君は、「衣類没収」のストーリー以降、全裸みたいですね。ナオス君は、Y美の命令で、服を全部脱いで、パンツ一枚になったのですが、パンツは、Y美に無理やり脱がされたのですね。あの時、ナオス君が、何処かへ逃げていたらどうなっていたのかと疑問に思います。Y美は、力づくでもナオス君の服を脱がすことが出来るみたいですね。
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Unknown (Gio)
2013-10-19 15:06:02
更新お疲れ様です。
何事もなくよかったです。
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更新しました (naosu)
2013-11-09 12:56:46
みなさま、コメントに感謝します。

いろいろと貴重なご意見、ありがとうございます。
参考にさせていただいております。
展開が遅くて申し訳ございません。
少しずつ進みます。

櫂様
応援ありがとうございます。
お付き合いいただき、嬉しく思います。
今後ともよろしくお願いします。

KBC様
そうですね。ずっと裸です。
早く服を着たいと思っています。
服を着てもすぐに脱がされますが。

Gio様
長くお付き合いいただき、感謝しています。
月に一度は更新したいと思っています。
どうぞよろしくお願いします。




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