トランクが閉められて、真っ暗になった。エンジンの振動が、全裸の僕の肌という肌に直接伝わってくる。
肛門に埋められた尻尾が原因で、二日前からうんちが出なくなっている。隣町の肛門科医院へ、この尻尾を外してもらいに行くのだった。その医院は、みなみ川教のごま塩頭の老人が紹介してくれた。院長は、みなみ川教の信者たちに、肛門を傷つけずに指を差し入れる方法などを定期的にレクチャーしているという。
15分で着くという話だった。が、夕方の渋滞にはまったのか、むなしくエンジンが響くばかりで一向に進まなくなった。一刻も早く尻尾を抜いてもらいたい僕にとって、この渋滞はかなり苦しく、僕はトランクの中で全身に脂汗をにじませて転がっていた。
やっとのことで車が動き出したと思ったら、頻繁に右左折、急発進、急停止を繰り返した。道に迷ったのか、同じところをぐるぐる回っているようにも感じられた。
気持ち悪くなって、僕はY美に無理矢理食べさせられた給食の残りを吐きそうになった。Y美と雪ちゃんの前で、お尻を高く突き上げて尻尾を振ったり、頭の後ろで両手を組み、勃起したおちんちんを左右に揺すったりした。雨の中、四つんばいで必死に歩き、Y美と雪ちゃんに僕の体を隅々までさらした。Y美はそのご褒美として、鞄から給食の残りを取り出したのだった。
「あんた、お昼食べてないでしょ。持ってきてあげたから、食べな。ほら、私たちの前て食べなよ」
植木鉢の受け皿を取ると、そこにビニール袋にごちゃ混ぜに入れた給食を盛って、砂利に正座している僕の前に差し出した。クリームシチューとサラダとひじきとチーズと千切れたパンが入り混じっている。さらに雨までその中に降り注いでいた。
お昼は食べていなかったが、うんちでお腹が張っていて、とても食欲はなかった。
「お腹が痛くて食べれません」と断ると、Y美がしゃがんで、まじまじと僕の顔を見つめた。そして、自分が手を挙げてみんなが見守る中、この給食の残りを貰ってきたのだと話し、それが年頃の十三歳の女の子にとってどれだけ恥かしいことだか想像できるかと訊ねた。それも全部お腹を空かして待っているだろう僕のことを思ってしたこと、ビニール袋に給食の残りを入れて貰っている時、自分は乞食のような気分を味わったことなどを縷縷と述べるのだった。
それでもなお僕が食べるのをためらっていると、髪の毛を掴んで、皿の上に僕の顔を押し付けた。
「食べなってばよ。食べないと、今あんたが私たちにさせられたチン芸を、今度はクラスの女子全員の前でさせるよ。それでもいいの?」
そのような経緯で全部食べさせられた給食だったが、荒々しい運転に振り回されて、気持ちが悪くなってしまい、降り注ぐ雨に薄められた給食の味が喉元までせり上がってくるのだった。
車を止めてほしい。僕はトランクの中から乗員席に向かってドンドン叩いた。返事がない。ならば返事があるまで叩くしかない。と、車が急停止した。反射的に口から無理矢理口に詰め込まされた給食が逆流した。僕は目に涙をにじませながら暗いトランクの中で吐き続けた。
ふたたび急停車。トランクが開けられた。自らの大量の吐瀉物に裸身を汚した僕を見て、おば様が顔をそむけた。後ろからY美が覗いて、舌打ちをした。
「ゲロまみれじゃん。これ、お母さんが仕事で使う車だよ。こんなに汚してどうするの」
舗装された駐車場だった。雨は上がっていた。住宅街の一画らしく、買物帰りの人びとが夕暮れの通りをのどかに歩いていく。トランクから出ると、その場で土下座させられた。吐瀉物にまみれて全身がべたべたしている素っ裸の体を小刻みに震わせて、僕は両手をついた。
「トランクの中を汚してしまって、申し訳ありません。帰ったらきれいに掃除します」
くさい、汚い、と鼻をつまんでY美は僕の汚れた体からなるべく離れて歩こうとした。病院は駐車場の隣りにあった。見ると、おば様はすたすたと先を歩いている。Y美が走っておば様に追いつく。僕はおちんちんを隠して車の陰を利用しながら、通りの人びとに尻尾を垂らした恥かしい裸身を見られないように進んだ。
診察時間はとっくに終わっていて、僕は特別の患者なのだった。入り口で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えるが、僕は素足なので、そのままスリッパを履こうとしたら、Y美に取り上げられた。おば様が、僕の足の裏が汚れているので、四つんばいになって膝をついて進むように命じた。
受け付けの女の人が「他に誰もいないから。お客さん、服を着ていないようですけど、どうぞ」と言うので、僕は素っ裸のまま待合室に通された。おば様は待合室の長いすに腰掛けて僕を引き寄せると、ウェットティッシュで足の裏を丁寧に拭いた。それから立たせると、僕の体を拭き始めた。胃液と胃液に溶けかかった給食や消化されていない食べ物が体のあちこちに付いていた。僕はうんちがしたくて溜まらず、じっと立っていられないほどだったが、Y美が後ろから僕のお尻をぎゅっとひねって、「じっとしてなさいよ。お母さんが拭いてくれているんだから」と、僕が腰を曲げてしゃがみ込もうとするのを許さないのだった。
Y美が受け付けへ初診受付票の書き込みをしに行った。それと同時に、おば様の僕の体を拭く手は、おちんちんに移った。ウェットティッシュを通しておば様の指が軽く圧力をおちんちんに加えてくる。袋の裏を撫ぜ、肛門を揉み、もう片方の手で輪を作り、おちんちんに通す。亀頭の裏側を肉厚な指がゆっくり通過し、戻り、やや速く動く。僕はお腹が痛くて全身に鳥肌を立てている状態であったが、それでもつーんと快感の波の高まりを感じた。と、おば様は僕のうんちの溜まった下腹部をぎゅっと押すのだった。痛い。痛いのに、まるでそれがスイッチででもあったかのように、おちんちんが大きくなってしまった。「できた」とおば様が独り言のように呟いて、僕のおちんちんから手を放した。
思い切り背伸びをした子どものように大きくなったおちんちんは、亀頭をてかてか光らせながら、自分の隠れ場所を自ら探して、ひくひく動いていた。受付から戻ったY美がこれを一瞥して、「何これ」と怪訝な表情でおば様に聞いた。
「ティッシュで拭いてあげていたら、大きくなっちゃったみたいなの」
「信じられない。チャコ、あんた、ほんとのほんとに変態なんだね。もうすぐ呼ばれるのに、早く元に戻しなさいよ、早く」と、剥き出しの亀頭をぺんぺんと丸めた紙で叩く。
「やめなさい。逆効果よ」と、おば様が笑って制した。
診察室から僕の名を呼ぶ声がした。
返事はあっても来ないので、看護婦が待合室の仕切りカーテンをめくった。見慣れているはずの看護婦もぽっと顔を赤らめた。おちんちんは、股間に手を当てた僕の指の間から、斜め45度上方を向いて大きく屹立していた。もう片方の手で膨らんだ下腹部を押さえて、よろめきながら僕は診察室に入った。両側でY美とおば様が僕のおぼつかない足取りを支えてくれた。仕切りカーテンをくぐると、看護婦が不機嫌な顔をしていた。その年嵩の看護婦は、一瞬でも顔を赤らめたことで看護婦としてのプライドが傷ついたのかもしれない。
「真っ裸で勃起させたまま診察室に入った患者は、当院始まって以来です」と、ぴしゃりと言ってのけるのだった。
診察台に仰向けになった僕の左右の手首をベルトで固定すると、両足を広げたまま持ち上げ、お尻が上半身に対して直角になる位置で足首に固定ベルトを嵌めるのだった。
医師が僕の体をくんくんと嗅いで、「胃液のにおいがする」と呟いた。おちんちんは勃起したままだった。医師は、「君のおちんちんがもう少し大きかったら、診察する僕のおでこに当たっちゃうな」と言って、笑った。傍らのY美とおば様も笑った。
ライトのスイッチがオンになった。肛門にローションがたっぷり塗られ、肛門鏡がずぶずぶと挿入されていく。医師は肛門鏡を覗いて言った。
「これが例のゴムの物体です。ほら、直腸にくっ付いているよ。見ますか」
Y美とおば様が交互に覗く。Y美が医師に写真撮影の許可を求めた。
「私は別に構わないが、被写体となるこの人はどうかな」
「写真なんて、やめてください。絶対いやです。やめてください」と、がっしり固定された手足を揺さぶって抵抗したが、医師に「動くな」と叱られた。ストロボが何回か光って写真撮影が終わった。
また、鋏のような形をした器具も挿入された。これで肛門を拡張するらしい。Y美とおば様が感嘆して覗いていた。
「こんなにお尻の穴が開いているよ。赤ちゃんの拳だったら、入っちゃうんじゃないの」
「直径10cmくらいかしらね」そして、シャッターを切る音が続いた。
肛門にどろどろした液体が注ぎ込まれてゆく。肛門拡張器で肛門を広げたまま、医師が細長い器具を操って、直腸付近にこびり付いているゴム状の球体を引っ張り出そうとしている。「もう少しだぞ」と、医師が掛け声をかけた。
ゴム状の球体がぐんぐん肛門入り口まで引きずり出されてくる。後わずかという処で、医師は手を止めた。このまま引きずり出すと、栓を抜くようなものだから、うんちが飛び出してくると言うのだった。
「僕はこの診察室をうんちで汚したくないんだ」と、医師は悩ましげに眉間の皺を寄せた。
「ごもっともですわ」おば様が答えた。「では、こういう時、どのような選択肢があるか、教えていただいても構いませんか」
「新聞紙を広げてそこにぶちまけるという方法があるが、後の処理は当院で行うので、その処理代を治療費に上乗せすることになる。もう一つは、ほら、この窓から畑が見えるけど、そこの畑では馬に供する人参を育てているのだが、肥料に人糞を使っているんだな。馬が食う人参だから気にしてないんだ。その畑に人糞を提供すると、畑の主から謝礼がもらえる、今日の治療費を払ってお釣りがくるほどの謝礼がね。畑の主は私の友人だから呼べばすぐに来てくれるよ。その代わり彼が指定する場所で栓を抜いてうんちをひり出さなければならないけどね」
「決まってますわ。すぐにその畑の主を呼んでください」おば様の凛とした声が響いた。
「待ってください。普通にトイレで出したらいけないんですか」拘束を解かれた僕が上半身を起こして問うと、医師は、「あ、そうだね。その方法があった。忘れていたよ」と額をぺんと叩いて笑った。「トイレで普通に流しましょうか」
「いいえ。畑に肥料を提供します」おば様は澄ました顔でそう言うと、とにかく早くうんちを体外へ放出したくて全裸の身に脂汗をにじませている僕に向かって、「ねえ、そのほうかいいわよね」と、相槌を求めるのだった。
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肛門に埋められた尻尾が原因で、二日前からうんちが出なくなっている。隣町の肛門科医院へ、この尻尾を外してもらいに行くのだった。その医院は、みなみ川教のごま塩頭の老人が紹介してくれた。院長は、みなみ川教の信者たちに、肛門を傷つけずに指を差し入れる方法などを定期的にレクチャーしているという。
15分で着くという話だった。が、夕方の渋滞にはまったのか、むなしくエンジンが響くばかりで一向に進まなくなった。一刻も早く尻尾を抜いてもらいたい僕にとって、この渋滞はかなり苦しく、僕はトランクの中で全身に脂汗をにじませて転がっていた。
やっとのことで車が動き出したと思ったら、頻繁に右左折、急発進、急停止を繰り返した。道に迷ったのか、同じところをぐるぐる回っているようにも感じられた。
気持ち悪くなって、僕はY美に無理矢理食べさせられた給食の残りを吐きそうになった。Y美と雪ちゃんの前で、お尻を高く突き上げて尻尾を振ったり、頭の後ろで両手を組み、勃起したおちんちんを左右に揺すったりした。雨の中、四つんばいで必死に歩き、Y美と雪ちゃんに僕の体を隅々までさらした。Y美はそのご褒美として、鞄から給食の残りを取り出したのだった。
「あんた、お昼食べてないでしょ。持ってきてあげたから、食べな。ほら、私たちの前て食べなよ」
植木鉢の受け皿を取ると、そこにビニール袋にごちゃ混ぜに入れた給食を盛って、砂利に正座している僕の前に差し出した。クリームシチューとサラダとひじきとチーズと千切れたパンが入り混じっている。さらに雨までその中に降り注いでいた。
お昼は食べていなかったが、うんちでお腹が張っていて、とても食欲はなかった。
「お腹が痛くて食べれません」と断ると、Y美がしゃがんで、まじまじと僕の顔を見つめた。そして、自分が手を挙げてみんなが見守る中、この給食の残りを貰ってきたのだと話し、それが年頃の十三歳の女の子にとってどれだけ恥かしいことだか想像できるかと訊ねた。それも全部お腹を空かして待っているだろう僕のことを思ってしたこと、ビニール袋に給食の残りを入れて貰っている時、自分は乞食のような気分を味わったことなどを縷縷と述べるのだった。
それでもなお僕が食べるのをためらっていると、髪の毛を掴んで、皿の上に僕の顔を押し付けた。
「食べなってばよ。食べないと、今あんたが私たちにさせられたチン芸を、今度はクラスの女子全員の前でさせるよ。それでもいいの?」
そのような経緯で全部食べさせられた給食だったが、荒々しい運転に振り回されて、気持ちが悪くなってしまい、降り注ぐ雨に薄められた給食の味が喉元までせり上がってくるのだった。
車を止めてほしい。僕はトランクの中から乗員席に向かってドンドン叩いた。返事がない。ならば返事があるまで叩くしかない。と、車が急停止した。反射的に口から無理矢理口に詰め込まされた給食が逆流した。僕は目に涙をにじませながら暗いトランクの中で吐き続けた。
ふたたび急停車。トランクが開けられた。自らの大量の吐瀉物に裸身を汚した僕を見て、おば様が顔をそむけた。後ろからY美が覗いて、舌打ちをした。
「ゲロまみれじゃん。これ、お母さんが仕事で使う車だよ。こんなに汚してどうするの」
舗装された駐車場だった。雨は上がっていた。住宅街の一画らしく、買物帰りの人びとが夕暮れの通りをのどかに歩いていく。トランクから出ると、その場で土下座させられた。吐瀉物にまみれて全身がべたべたしている素っ裸の体を小刻みに震わせて、僕は両手をついた。
「トランクの中を汚してしまって、申し訳ありません。帰ったらきれいに掃除します」
くさい、汚い、と鼻をつまんでY美は僕の汚れた体からなるべく離れて歩こうとした。病院は駐車場の隣りにあった。見ると、おば様はすたすたと先を歩いている。Y美が走っておば様に追いつく。僕はおちんちんを隠して車の陰を利用しながら、通りの人びとに尻尾を垂らした恥かしい裸身を見られないように進んだ。
診察時間はとっくに終わっていて、僕は特別の患者なのだった。入り口で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えるが、僕は素足なので、そのままスリッパを履こうとしたら、Y美に取り上げられた。おば様が、僕の足の裏が汚れているので、四つんばいになって膝をついて進むように命じた。
受け付けの女の人が「他に誰もいないから。お客さん、服を着ていないようですけど、どうぞ」と言うので、僕は素っ裸のまま待合室に通された。おば様は待合室の長いすに腰掛けて僕を引き寄せると、ウェットティッシュで足の裏を丁寧に拭いた。それから立たせると、僕の体を拭き始めた。胃液と胃液に溶けかかった給食や消化されていない食べ物が体のあちこちに付いていた。僕はうんちがしたくて溜まらず、じっと立っていられないほどだったが、Y美が後ろから僕のお尻をぎゅっとひねって、「じっとしてなさいよ。お母さんが拭いてくれているんだから」と、僕が腰を曲げてしゃがみ込もうとするのを許さないのだった。
Y美が受け付けへ初診受付票の書き込みをしに行った。それと同時に、おば様の僕の体を拭く手は、おちんちんに移った。ウェットティッシュを通しておば様の指が軽く圧力をおちんちんに加えてくる。袋の裏を撫ぜ、肛門を揉み、もう片方の手で輪を作り、おちんちんに通す。亀頭の裏側を肉厚な指がゆっくり通過し、戻り、やや速く動く。僕はお腹が痛くて全身に鳥肌を立てている状態であったが、それでもつーんと快感の波の高まりを感じた。と、おば様は僕のうんちの溜まった下腹部をぎゅっと押すのだった。痛い。痛いのに、まるでそれがスイッチででもあったかのように、おちんちんが大きくなってしまった。「できた」とおば様が独り言のように呟いて、僕のおちんちんから手を放した。
思い切り背伸びをした子どものように大きくなったおちんちんは、亀頭をてかてか光らせながら、自分の隠れ場所を自ら探して、ひくひく動いていた。受付から戻ったY美がこれを一瞥して、「何これ」と怪訝な表情でおば様に聞いた。
「ティッシュで拭いてあげていたら、大きくなっちゃったみたいなの」
「信じられない。チャコ、あんた、ほんとのほんとに変態なんだね。もうすぐ呼ばれるのに、早く元に戻しなさいよ、早く」と、剥き出しの亀頭をぺんぺんと丸めた紙で叩く。
「やめなさい。逆効果よ」と、おば様が笑って制した。
診察室から僕の名を呼ぶ声がした。
返事はあっても来ないので、看護婦が待合室の仕切りカーテンをめくった。見慣れているはずの看護婦もぽっと顔を赤らめた。おちんちんは、股間に手を当てた僕の指の間から、斜め45度上方を向いて大きく屹立していた。もう片方の手で膨らんだ下腹部を押さえて、よろめきながら僕は診察室に入った。両側でY美とおば様が僕のおぼつかない足取りを支えてくれた。仕切りカーテンをくぐると、看護婦が不機嫌な顔をしていた。その年嵩の看護婦は、一瞬でも顔を赤らめたことで看護婦としてのプライドが傷ついたのかもしれない。
「真っ裸で勃起させたまま診察室に入った患者は、当院始まって以来です」と、ぴしゃりと言ってのけるのだった。
診察台に仰向けになった僕の左右の手首をベルトで固定すると、両足を広げたまま持ち上げ、お尻が上半身に対して直角になる位置で足首に固定ベルトを嵌めるのだった。
医師が僕の体をくんくんと嗅いで、「胃液のにおいがする」と呟いた。おちんちんは勃起したままだった。医師は、「君のおちんちんがもう少し大きかったら、診察する僕のおでこに当たっちゃうな」と言って、笑った。傍らのY美とおば様も笑った。
ライトのスイッチがオンになった。肛門にローションがたっぷり塗られ、肛門鏡がずぶずぶと挿入されていく。医師は肛門鏡を覗いて言った。
「これが例のゴムの物体です。ほら、直腸にくっ付いているよ。見ますか」
Y美とおば様が交互に覗く。Y美が医師に写真撮影の許可を求めた。
「私は別に構わないが、被写体となるこの人はどうかな」
「写真なんて、やめてください。絶対いやです。やめてください」と、がっしり固定された手足を揺さぶって抵抗したが、医師に「動くな」と叱られた。ストロボが何回か光って写真撮影が終わった。
また、鋏のような形をした器具も挿入された。これで肛門を拡張するらしい。Y美とおば様が感嘆して覗いていた。
「こんなにお尻の穴が開いているよ。赤ちゃんの拳だったら、入っちゃうんじゃないの」
「直径10cmくらいかしらね」そして、シャッターを切る音が続いた。
肛門にどろどろした液体が注ぎ込まれてゆく。肛門拡張器で肛門を広げたまま、医師が細長い器具を操って、直腸付近にこびり付いているゴム状の球体を引っ張り出そうとしている。「もう少しだぞ」と、医師が掛け声をかけた。
ゴム状の球体がぐんぐん肛門入り口まで引きずり出されてくる。後わずかという処で、医師は手を止めた。このまま引きずり出すと、栓を抜くようなものだから、うんちが飛び出してくると言うのだった。
「僕はこの診察室をうんちで汚したくないんだ」と、医師は悩ましげに眉間の皺を寄せた。
「ごもっともですわ」おば様が答えた。「では、こういう時、どのような選択肢があるか、教えていただいても構いませんか」
「新聞紙を広げてそこにぶちまけるという方法があるが、後の処理は当院で行うので、その処理代を治療費に上乗せすることになる。もう一つは、ほら、この窓から畑が見えるけど、そこの畑では馬に供する人参を育てているのだが、肥料に人糞を使っているんだな。馬が食う人参だから気にしてないんだ。その畑に人糞を提供すると、畑の主から謝礼がもらえる、今日の治療費を払ってお釣りがくるほどの謝礼がね。畑の主は私の友人だから呼べばすぐに来てくれるよ。その代わり彼が指定する場所で栓を抜いてうんちをひり出さなければならないけどね」
「決まってますわ。すぐにその畑の主を呼んでください」おば様の凛とした声が響いた。
「待ってください。普通にトイレで出したらいけないんですか」拘束を解かれた僕が上半身を起こして問うと、医師は、「あ、そうだね。その方法があった。忘れていたよ」と額をぺんと叩いて笑った。「トイレで普通に流しましょうか」
「いいえ。畑に肥料を提供します」おば様は澄ました顔でそう言うと、とにかく早くうんちを体外へ放出したくて全裸の身に脂汗をにじませている僕に向かって、「ねえ、そのほうかいいわよね」と、相槌を求めるのだった。
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