思い出したくないことなど

成人向き。二十歳未満の閲覧禁止。家庭の事情でクラスメイトの女子の家に居候することになった僕の性的いじめ体験。

服消える

2011-04-03 16:59:01 | 8.夏休み恥辱編
 Y美とその友達のルコとミューは、丸裸に剥いた僕をじっくり観察した。
 同級生の女の人の前で、生まれたままの格好の僕は四つん這いにさせられたり、仰向けのまま左右に大きく開いた両足を持ち上げられたりした。彼女たちの手で何度もおちんちんを大きくさせられたが、いつも射精寸前のところで止められた。
 最後は刺激された快楽に頭が朦朧となって、「出させてください」とお願いする始末だった。Y美は、「そんなに出したければ自分でしなさいよ」と、冷たく言い放ち、彼女たちが見ている前でオナニーを強要するのだった。
 僕が生まれて初めて射精を経験したのは、このY美の家に居候してからだった。Y美に強制されて、白い液体がおちんちんの先から飛び出した瞬間、Y美の甲高い笑い声が響いた。その声が忘れられない。それ以降、僕は一人でこっそりと精液を出したことが未だにない。いつも誰かに強制されて、射精している。
 今回も射精の瞬間をしっかり見つめられてしまった。肩で息をする僕に向かって、ミューが微笑しながら言った。
「男の子って、なんか大変だね」
「なんで?」と、ルコが首を傾げる。
「いろんな恥ずかしいこと、させられるんだもん」
「それは、チャコだから仕方ないよ。この子はうちで世話してるんだから」
 Y美がそう返すと、彼女の足元で四つん這いになって床の精液をティッシュで拭きとる僕のお尻をぴしゃりと叩いた。その日、僕はもうパンツは返されず、翌朝まで素っ裸のまま過ごした。

 夏祭りのマジックショーの手伝いを命じられた僕は、土曜日、学校が終わると、そのまま鷺丸君の家に向かった。僕と同じく手伝いをすることになったメライちゃんと一緒に行きたかったけど、メライちゃんはY美に呼ばれて教室に居なかった。
 Y美によると、僕の背格好がメライちゃんと似ているのが好都合とのことだった。ミューとルコの居る前で僕を真っ裸にしたのは、マジックショーの手伝いとは全く関係がないとY美が言った。Y美はいつもの通り、僕を性的に弄びたかっただけで、マジックショーの手伝いでは恥ずかしい思いをすることはないだろう、と不安におののく僕を安心させるのだった。
 この夏祭りは、地元企業や自治体、学校、ボランティアたちが一丸となって盛り上げる地域の一大イベントだった。おば様も運営委員の一人として、関わっている。夜、おば様への性的な奉仕が済むと、ベッドで夏祭りの歴史などを聞かせてくれた。
 休み時間、メライちゃんにその話をすると、
「へえ、そんなに古くからやってる祭りなんだ。でも私、なんか今回のマジックショーの出演は、気が重いなあ」
 と、メライちゃんの白い顔が更に白くなるのだった。
「なんで? イベントに出たくても一握りの人しか出られないのに」
 夏祭りのショーは、オーディションで選ばれないと出られない。鷺丸君は毎年選ばれていた。
「いやだよ、私。だって鷺丸君でしょ?」
「うん。鷺丸君なら別に意地悪なことはしないと思うけど」
 少しでもメライちゃんの不安を取り除かせることができたら、という思いを込めて答えた。しかし、メライちゃんの気持ちは沈んだままだった。
「でもあの人、手品とか、自分が舞台に出ることになると、すごい頑固になるでしょ」
「そうだったっけ?」
 そういえばそうかも、と思いながら、とぼけた。鷺丸君は、僕やメライちゃんと同じ中学一年生で、隣りのクラスだった。男子の中では、スポーツで優れた身体能力を発揮している一部の生徒を除くと、もっとも名前の知られた一人だった。しかしながら、学校ではあまり存在感を出さないようにしていた。いつも息を殺している、という印象だった。鷺丸君をよく知る人は、あえて目立たないようにしている、と評した。
 小学校の低学年の頃からマジックが得意で、自治体や学校のイベントで披露しては大変な喝采を得ている人、それが鷺丸君だった。プロのマジシャンから手ほどきを受けているらしい。もし鷺丸君がそれを望めば、僕たちの学校で一番目立つ生徒にも容易になり得ただろう。しかし、この極めて個性的な人は、専ら自分のマジックの腕を磨くことにストイックに専念するのだった。
「マジックのことや自分の舞台のことになると、人が変わるの。自分の考えを譲らないみたいよ。私、なんか怖いな」
 メライちゃんが頬杖をついたまま、溜息をついた。
「でも、それはむしろいいことじゃないかな。それだけ真面目ってことだし」
 気が重そうなメライちゃんとは反対に、僕はわくわくしていた。何よりも、メライちゃんと一緒の時間のできたことが嬉しかった。しかも、マジックの手伝いはY美の命令だから、メライちゃんと過ごす間、あの口うるさい、何かと干渉したり雑事を言い付けたりするY美に邪魔される心配がない。久し振りに自由を味わえるのだった。
 マジックショーの手伝いの帰りを想像するといっそう胸がときめいた。メライちゃんと二人で夕暮れの道を帰る。肩を並べて畦道を歩く。二人が親密になるような、いろんな話ができるだろう。もしかすると、メライちゃんの華奢な体に触れる機会があるかもしれない。考えただけでも体が羽毛のように軽くなる。
「のんきそうでいいね、ナオス君」
 メライちゃんにこんな皮肉を言われる始末だった。
 街路樹の下の広い歩道を進み、右に曲がり、十棟を超える団地の敷地を通り抜けて信号を待つ。マジックの練習が終われば、この道をメライちゃんと二人で帰る。道路を挟んで一軒家が並んでいて、その一つが鷺丸君の家だった。
 呼び鈴を鳴らすと、鷺丸君のお母さんが愛想良く出迎えてくれた。鷺丸君の家は平屋で、Lの形の家屋の間にはきれいな芝生が広がっていた。庭の広さに比して家屋が小さいように感じられた。芝生の向こうに六角形の奇妙な建物がガラス戸越しに見えた。
「あれは、アトリエなのよ」
 冷たい麦茶を出してくれた鷺丸君のお母さんが教えてくれた。
「以前はあそこでピアノを教えていたの。ピアノを弾くのが嫌いになってからは指揮を覚えて、児童合唱の指導をしているのよ」
 鷺丸君のお母さんは丸い上品な顔立ちながら、意志の強そうな太い眉があった。「ピアノが嫌いになったの」と、もう一度力強く繰り返した。鷺丸君は、いつもあのアトリエでマジックの練習をしていると言う。
 鷺丸君がアトリエから戻るのを待っていると、鷺丸君のお姉さんがメライちゃんを連れて入ってきた。お姉さんは近くの公立高校の制服姿だった。鷺丸君の家が見つけられずに前の通りをうろうろしていたメライちゃんにお姉さんが声を掛けたらしい。お母さんに似て柔らかな物腰で、炎天下を歩き続けたメライちゃんに手拭いを勧めた。お姉さんは油絵を勉強しているとのことだった。居間に飾られた静物画は、お姉さんの描いたものだと言う。メライちゃんが絵に関心を示すと、「もっと見せてあげる」と、メライちゃんを誘って廊下に出た。
 お母さんと二人っきりになった僕は、お母さんから幾つか僕の個人的なことに関する質問を受けた。僕がY美の家に世話になっていることをお母さんは知っていた。
「大変よね、あなたも」
 意味のよく分からない笑みをこぼして、お母さんがそっと上目遣いで僕を見た。
「なんでピアノが嫌いになったんですか」
 気になっていたことを訊ねてみた。お母さんの眉がびくりと動いた。聞いてはいけない質問だったかもしれない。
「人が必死で弾いているのに馬鹿にされたら腹が立つわよね。むかついたら、もう一生ピアノは弾かないって決めたの。それが何か?」
 無表情で睨まれ、僕はただ、「はい」としか答えられなかった。
「分かってくれるわよね」
 元の柔らかい微笑を浮かべて、お母さんが念を押した。
 アトリエから戻ってきた鷺丸君は、長袖のシャツに長ズボンという、とても灼熱の外を歩けそうもない格好をしていた。アトリエはよほど冷房が効いているのだろう。お母さんの横に腰掛けると、真向かいの僕に、
「遅かったじゃん」
 と、言った。
 お姉さんの後ろから居間に戻ってきたメライちゃんの格好を見て、僕は目を丸くしてしまった。なんと、メライちゃんは体操着にブルマという出で立ちだった。しかも、靴下を脱いで裸足になっている。
「メライちゃん、どうしたの、その格好」
「やだ、ナオス君、そんなに驚かないでよ。Y美さんに体操着に着替えるように言われてたんだから。激しい運動をするからって」
 僕の視線を避けるように顔を伏せて、もじもじしながらメライちゃんが答えた。白い体操着越しにブラジャーの線が見えた。と、不意に僕のお腹が鳴った。昼食を食べていなかったことを思い出した。
 学校は午前中で終わり、普通は自宅で昼食を取る。メライちゃんは途中でパンと牛乳を買って公園で済ませたという。
「パンと牛乳ならあるわよ。食べて食べて」
 お姉さんが台所から牛乳瓶とアンパンを一つ、持ってきてくれた。僕はお礼を述べて、牛乳を飲み、アンパンを食べながら、鷺丸君の説明を聞いた。
 マジックは単純だった。回転ドアがあり、通り抜けると、衣装が一瞬にしてがらりと変わる。体操着姿のメライちゃんが駆け足で回転ドアを押して入ると、メライちゃんと僕が回転ドアで入れ替わって、メライちゃんとは異なる衣装の僕が出てくる。
 メライちゃんと僕の背格好がほぼ同じなので、観客の目には同一人物のように見せるのは容易らしい。それがこのマジックの手伝いに僕たちが選ばれた理由だった。
 問題は、体操着にブルマ姿のメライちゃんに対して、僕がどんな格好をして出てくるか、ということで、鷺丸君もそこまでは考えを固めていなかった。
「どうしようか、いろいろ考えたんだけど」
 腕組をして、天井を見上げながら鷺丸君が溜息をついた。
「学校の制服姿に戻るのが一番自然かな」
「つまんないよ、そんなの」
 お姉さんが弟である鷺丸君の案を言下に否定した。
「もっと意外性のあるものでなくちゃ」
「意外性ねえ・・・うーん」
 鷺丸君はますます考え込んでしまった。その後もぽつりぽつりと自分のアイデアを言うのだが、お姉さんやお母さんから「つまらない」「ありきたり」と、片っ端から却下される。水着姿になる案すらも、メライちゃんが体操着だから、意外性が薄いとのことだった。
「意外性があって、笑いを誘うのがいいよ」
 お姉さんが隣りで畏まっている僕をじろじろ見ながら、舌で唇を湿らせた。
「いっそ裸になっちゃうってのは、どう?」
「はだか?」
 これには鷺丸君だけでなく、みんなが一斉に唖然とした顔でお姉さんを見つめた。
「そうだよ。裸。パンツいっちょうになっちゃうの」
「パンツいっちょう?」
 あまりのことに声を出せない僕に代わって鷺丸君が驚きの声を上げた。夏祭りのイベント会場には千人近い人たちが集まる。パンツ一枚の裸でスポットライトを浴びるのは、それなりに覚悟が必要である。
「面白いじゃない。体操着のメライさんが走って回転ドアを通り抜けると、服が消えてパンツいっちょうになるの。絶対に受けるわよ。この子、中学一年生とは思えない幼い体つきだから、裸でも恥ずかしくないでしょうし」
 お母さんが穏やかな笑みを浮かべて、お姉さんの考えを支持した。メライちゃんも僕も、組み合わせた手の中で指をもぞもぞ動かし、床を見つめるばかりだった。
「分かった。それで行こう」
 膝を叩いて鷺丸君が決断した。そして、僕を見て、服を脱ぐように促した。今まで、パンツ一枚どころか、何度も素っ裸をいろんな人に晒されてきた。だから、今さらここでパンツ一枚の裸になることに抵抗を覚えなくてもよいのかもしれないが、やはり、できれば服は着ていたい。脱ぐと、未熟な体が剥き出しになってしまう。
 それに、これが裸になることに抵抗を覚える一番の原因なのだが、ここにはメライちゃんがいる。これまで何人もの同級生に裸を見られ、おちんちんを弄ばれてきたけど、メライちゃんの前で裸に剥かれたことはなかった。
 笑顔がすごく可愛くて、マラソン大会でふらふらになりながらも完走した僕に真っ先に駆け寄って労ってくれたメライちゃん。学校を休んだ翌日、試験に出るところだと言ってこっそりノートを貸してくれたメライちゃん。小柄でぽっちゃり体型、顔も小さいけど、目だけは大きくて、それがくりくりとよく動くメライちゃん。同じ女子でも大柄で細身の、先天的に意地の悪いY美とは大違いだった。そんなメライちゃんの見ている前で服を脱ぎ、パンツ一枚にならなくてはならない。メライちゃんは、事態の思わぬ成り行きに顔を赤くして、同情する目で僕を見ている。
「早く脱がないと駄目じゃないの」
 お姉さんがそう言って僕の肩を叩いた。僕はソファから立ち上がったけど、なかなかワイシャツのボタンにまで手が届かない。窓から、庭の芝生を歩いてアトリエに向かう小学生が見えた。ほとんどが女児だが、男の子も混じっていた。
「どうしても脱がなきゃ駄目?」
 鷺丸君に訊ねる。
「うーん、そうだな」
 腕を組んで、再び思案を巡らす。鷺丸君はよく考え込む人だった。
「いつまでも意地を張らないの。さ、裸になる。Y美さんにあなたが協力を渋ってるって報告したくないのよ」
 ためらう僕をお姉さんが優しい声で叱った。お姉さんは、Y美と通じているようだ。ここで服を脱ぐとは、つまり、これからマジックの練習時には、いつも裸にさせられるということに他ならない。
「靴下も脱いでね。フローリングの床は滑るから」
 ワイシャツを脱ぎ、ズボンのベルトを緩めた僕にお母さんが付け加えた。ズボン、靴下を脱ぐと、シャツを頭から抜き取った。これで僕が身に付けているのは、白いブリーフパンツ一枚だけということになる。メライちゃんは遠慮して顔を背けたが、お姉さんとお母さんは好奇心に満ちた眼差しを注いできた。
「へえ、白いブリーフパンツとは小学生みたいだな」
 ゴムを引っ張り上げて、やっとお尻の割れ目が隠れる程度のパンツを見て、鷺丸君が呟いた。おば様がサイズを間違えて買ったものだが、今の僕の生活環境では、これ以外に穿く物はないのだった。
 物陰でおしっこの染みがないか、こっそりパンツを確認していると、突然後ろから、
「平気平気。パンツ汚れてない。黄色くなってないよ」
 と、声を掛けられて、肩をびくんと震わせてしまった。お姉さんがにやにや笑いながら僕を見ていた。
 脱いだ物や鞄は一室にまとめるようにお母さんが言い、メライちゃんがその場所を案内してくれた。パンツ一枚の心細い格好で荷物を抱え、メライちゃんの後ろを歩く。紺色のブルマがぷるんぷるんと揺れていた。
「ここに置くんだって」
 ドアを開けて、メライちゃんがそう言うと、すぐに顔を伏せた。裸にされた僕をなるべく見ないようにしてくれている。メライちゃんはここで体操着に着替えたらしく、横長の作業机の上にブラウス、スカート、靴下がきちんと折り畳まれてあった。僕は自分の衣類をその横に並べ、鞄を下に置いた。
「これからマジックの練習に来た時は、あの部屋に行って着替えてね」
 と、戻ってきた僕たちにお姉さんが言い、すぐに、
「あ、あなたは脱ぐだけだったね」
 と、僕を指して訂正した。お母さんが上品な笑い声を立てた。
 ガラス戸から芝生に下りて、蒸した空気の中をアトリエに向かう。メライちゃんと僕にはサンダルが与えられず、熱を帯びた飛び石の上を「熱い、熱い」と発しながら素足で渡った。強い日の光が僕のたった一枚身に付けているパンツに照り返して、後ろを歩くお姉さんがしきりに「眩しすぎるよ、そのパンツ」とこぼした。
 六角形の建物の屋根は、江戸時代に描かれた富士山の絵のように先がとがっていた。中に入ると、冷気が襲ってきた。いきなり十数人の小学生の視線が集まった。
「先生、あの人、なんで裸なんですか?」
「身体検査でもするんですか」
「はいはい。あなたたちはいいから、合唱の練習を始めましょう」
 お母さんが小学生の質問を制して舞台に小走りで向かい、ピアノ担当の女の人に合図を送った。
「じゃ、俺たちはこっちで練習しようか。隣りで合唱してるけど、気にしないで」
 鷺丸君が舞台の向かいの隅に僕たちを誘導した。ピアノの和音が鳴り、小学生たちの発生が響く中、鷺丸君が作ったという回転ドアの説明を聞く。
 アトリエ内は冷房が強く効き過ぎて、寒くてならなかった。半袖にブルマのメライちゃんが腕を摩りながら足を震わせる。
「私でも寒いのに。ナオス君、大丈夫?」
 小さな白いブリーフパンツしかまとっていない僕を気遣って、伏せ目がちにメライちゃんが訊ねた。もちろん、寒い。その場でピョンピョン跳ねていないと、凍えてしまいそうだった。
「寒いよ。冷房止めてよ。ナオス君が可哀想じゃない」
 カーディガンに羽織り、長ズボンをまとって涼しい顔つきの鷺丸君にメライちゃんが訴えたが、鷺丸君は首を横に振った。
「これから激しい運動するんだから、これ位で丁度いいんだよ。まず、ウォーミングアップね。ダッシュして」
 鷺丸君だけでなく、お母さんも付き添いのお姉さん、合唱の児童たちも、みんな冷房対策の格好をしている。こんな中、体操着とパンツ一枚の僕たちは、傍から見ても寒そうに違いなかった。鷺丸君が手を打つと、メライちゃんと僕は並んで走った。十五メートル程度の距離を何度も往復する。
 体が温まってきたところでマジックの練習が始まった。
 回転ドアマジックの仕掛けは単純だった。回転ドアは一つの軸を中心にして四つのドアがくるくる回るのだが、そのうちの二つのドアに隠し部屋がある。入る者がドアを押すとそのまま隠し部屋に入り、バネ仕掛けで隠し部屋の後ろのドアが閉まる。それと同時に、別の一人がもう一つの隠し部屋の中から出てくる。
 回転ドアを通り抜けると、服装が一瞬にして変わるように見えるのは、このような理由による。メライちゃんと僕は同一人物を演じなければならなかった。
 これらのマジックと回転ドアの設計は鷺丸君が考え、父親の知り合いの制作会社に頼んで作ってもらったのだとお姉さんが教えてくれた。メライちゃんは感嘆したが、僕はあまり感心しなかった。それが姉さんには面白くなかったのか、こっそり、「可愛くないのね、あなた」と僕の耳元で囁く。妙に冷めた低い声だった。
 僕がメライちゃんほどにこの回転ドアの仕組みに感動しなかったのは、入る者と出る者のタイミングを合わせるのが難しいからだった。どうせならば、二つの隠し部屋のドアが同時に開く仕組みにしてくれたら良かったのに、と思う。
 まずメライちゃんが走って回転ドアを押し、中の隠し部屋に入り、僕が別の隠し部屋が出てくるのだが、タイミングを間違えると、メライちゃんが入った方向に出てしまったり、出るのが大幅に遅れてしまったりする。
 なかなかタイミングを掴めない僕に、鷺丸君は根気よく付き合ってくれた。隠し部屋から飛び出す合図をいろいろと考えて試みてくれたが、うまくいかなかった。休憩時、麦茶と菓子を運んでくれたお姉さんの方が苛立っていた。
「あなた、真面目にやってるの?」
 お姉さんに呆れたような表情で問われた。休憩中も羽織る物を与えられず、パンツ一枚の心細い格好でいる僕は、「はい。まあ」と曖昧に答えて、俯いてしまった。すると、お姉さんの手が僕の顎の下に伸びて、ぐいと顔を上げさせた。
「ちゃんと目を見て答えなさいよ」
「はい」
 軽蔑の冷たい眼差しが僕の顔に吹き付けられた。ピアノの伴奏にのって、小学生たちの歌声が先程からずっと聞こえている。学校で習う歌だった。お姉さんが、さっきY美が立ち寄ったという話をした。僕は全く気付かなかったが、窓から中を覗いていたという。
「ほんと? まだいるのかな?」
 メライちゃんが窓の方に首を向けて、不安そうな素振りを見せた。どうもメライちゃんはY美を恐れている。僕のように苛めに遭っているのかもしれない。メライちゃんの怯えた目を見ると、Y美のことが憎くなってきた。こんな性悪女、いつかやっつけてやりたいのだが、体の大きさが全然違うから、まともに張り合ったらとても勝てない。
「Y美さんは、もう帰った。みんなによろしくだって。ナオス君のパンツ一枚の姿を見て顔を赤くしてたよ。」
 お姉さんがそう答えて笑うと、メライちゃんもようやく明るい表情になった。 
 合唱の小学生たちは合唱の練習中、パンツ一枚の裸で走ったり、叱られたりしている僕を見て、くすくす笑っていた。練習を終えてアトリエから出る時も、僕たちに好奇の視線を無遠慮に向けていた。
 激しい練習が六時を過ぎてようやく終わった。鷺丸君は「初日だからこれで満足しなくてはならない。少しずつよくなっている」と評して、練習を締めくくった。が、お姉さんは不満そうだった。アトリエを出て母屋に戻る途中、メライちゃんと僕はお姉さんから沢山小言を頂戴した。
「やる気が感じられない。やるんなら本気を出しなさいよ」
「はい。申し訳ありません」
 芝生の上で直立不動の姿勢を保ち、頭を下げる。メライちゃんとの帰宅を楽しみにしている僕は、早く母屋に戻って服を着たかった。しかし、信じられないことに、作業机にはメライちゃんの制服しかなかった。僕の脱いだ衣類はどこにもない。玄関には靴すらなかった。制服に着替えを済ませたメライちゃんも一緒に探してくれたが見つからない。新聞受けから夕刊を取ってきたお姉さんがパンツ一枚の裸のまま途方に暮れている僕を見て、
「何してるの?」
 と、問う。
「服が見つからないんです」
「あ、言うの忘れてた。ごめん。ナオス君の服とか靴、鞄は全部Y美さんが持って帰ったよ。家ではどうせパンツ一枚なんだから、もう服を着る必要はないんだって。メライちゃんと二人で一緒に歩いて来るようにって」
「え、私も行かなくちゃいけないの?」
「そう。メライちゃんにも渡す物があるみたい」
 お姉さんがメライちゃんに答える。僕は鷺丸君に着る物を貸してほしいとお願いしたが、断られてしまった。直接肌に触れる物は神聖だから布切れ一枚、靴も貸せないそうだ。よく分からない。お母さんが「それもそうね」と、鷺丸君に同意した。
 お姉さんに背中を押され、メライちゃんと僕は玄関から外に出される。ドアの裏側から施錠の音がした。裸足でパンツ一枚しか身に付けていない僕を直視しないように気遣いながら、メライちゃんが言った。
「仕方ないよね。私、付き添うからさ、恥ずかしいと思うけど我慢して帰ろうよ」
 とても楽しみにしていたメライちゃんとの帰宅なのに、制服姿のメライちゃんに対し、パンツ一枚の裸ではとても対等に話なんかできない。情けなくて涙が出そうになった。メライちゃんは恥ずかしい格好の僕を保護して歩く決心をしたのか、
「行こうよ」
 と、僕の裸の肩を叩いて、優しく促した。


5 コメント

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Unknown ()
2011-04-04 15:05:56
見られまいとして必死に隠しているのをからかわれながら、最後にはいとも簡単に見られてしまうのがツボです。そして、もちろん無毛短小包茎の可愛いおちんちん。見ているのは女だけ。特に同年代の女の子たちからは、もうかなり大人の身体になっている自分たちと比べられ、「この子って、まだまだこんなに子どもなんだ」と言われ、ペニスやチンポではなく、「おちんちん」と呼ばれ可愛がられながら嘲笑され弄ばれるのが好きです。
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久しぶりに (プー)
2011-04-11 16:36:40
久しぶりに来たら、更新されて嬉しいです^^頑張ってください
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メライちゃんが可愛い (BOSE)
2011-04-13 17:39:12
メライちゃんとナオスくんが一緒に裸で過ごしたりするとかを期待しましたが、ナオスくんが主役だからその話は無いですね ><

応援してます!頑張ってください!
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Unknown (Gio)
2011-04-30 21:26:48
ご無事で何よりです。私の方も無事でした。こうしてコメントすることで、naosuさんの助けになれたら嬉しいです。頑張ってください。
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Y美の命消える (女子中学生)
2013-05-18 14:28:02
ナオス君!これも屈辱な思い出でしたね。Y美は、もう死にました。だからナオス君!Y美の墓をぶち壊してやれば!そしてY美の死体を蹴りまくれば。
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