製パンマニュアル
パン作りは料理と同じでマニュアル化し難い分野です。作り手のセンス、感、経験で良し悪しが決まり、お客様からの評価が決まります。
パン学校では不完全なマニュアルに沿ったパン作りを教えるだけで、学生は不完全なパン作りをさらに不完全に習得する。であればお客様が満足するパンが作れない、しかし作る本人はパンが出来たことで満足してしまう。このギャップを埋めることなく店を持つ、これは誰にとっても不幸で、いったん店を持つと進歩が止まる、周りを見なくなるので知識が増えない、アイデアが枯渇する。パン学校卒業者はただでさえ知識が乏しく、技術が未熟で、縦横の繋がりが無く、孤立無援で、開業してしまったら、店はどうなりますか。
食パン、フランスパン、バターロール、クロワッサンが作れます。それは単に教わった配合・マニュアルでその商品だけ作れるだけであって、その他の商品は全く未知の世界。お客様のニーズは多様で、食パンだけをとっても、角型、山型、昔ながらの食感、甘い、シットリ、モチモチ感、ソフトかどうか、トースト用、サンドイッチ用、その他まだまだ好みはあります。パン専門店としての品揃えとポリシーをどう貫くか。もっとも、他人の作った配合でパンを作り販売しているなら、自身のポリシーは何所に在るのか解りませんが、ポリシーなど不要ですか?
売上を伸ばすには、何か特別な商品が必要です。出来れば複数。食パン、フランスパン、パイ、サンドイッチ、他では買えない商品、これが集客に役立ちます。総売上の10%以上をその商品だけで上げられる、そういう商品を創り、育てると売上が安定します。しかし、そんな商品学校では教えてもらえません。自身で創らねば、それにはマニュアルからの脱却が不可欠です。自身で創る、これは商品の設計から、配合の組み立て、製法の決定、工程への組み込みと調整、マニュアルの作成と全てを成し遂げなければなりません。これが出来て始めてプロの仲間入りが出来ます。
誰にも作れると思いがちなパン、プロと素人の差が解らぬパン屋、実は途轍もない差が隠れているのです。プロと言われる人たちの中にもトンでもない差があることも事実ですが。それを理解せず異業種からパン業界へわざわざ参入しながら、1~2年で撤退した企業が沢山あります。パン屋の技術は製造技術だけではありません。製造の技術はもちろん大切ですが、それ以上に継続的に売上を伸ばし、利益を上げ続けること、これは至難の業です。人件費は嵩む、材料費は垂れ流し、技術は低下、人材は流出・集まらない、こんな難問山積のパン屋の改善は管理のプロと言えども困難極まりない問題です。それが毎日噴出する訳で、管理が簡単なベークオフのベーカリーに転換してゆかざるを得ない状況です。
この様な状況であるから、リテールベーカリーの生き残る道があるのですが、大半のリテールベーカリーが消えようとしている。いい加減な技術と知識では生き残れませんよ。