長内那由多のMovie Note

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『クリード 炎の宿敵』

2019-03-11 | 映画レビュー(く)

大ヒットを記録し、批評家からも大絶賛された前作はシルヴェスター・スタローンを40年ぶりにアカデミー賞の舞台へ送り出し、監督のライアン・クーグラー、主演のマイケル・B・ジョーダンはマーヴェルに一本釣りされて『ブラックパンサー』を製作。その後の活躍は知っての通りだ。スタローンが脚本を手掛けた第2弾は自身の出番はそこそこにスターバリューを増したジョーダン、テッサ・トンプソンへ見せ場を譲ってシリーズの継承を行っている。今回の敵は『ロッキー4 炎の友情』でアドニスの父アポロを殺したロシアの殺人ボクサー、ドラゴとその息子。まさに乗り越えなければシリーズリブートはあり得ない倒すべき宿敵だ。

古風な筋立てだが、ドラゴ役ドルフ・ラングレンの年輪のような深い皺が思いがけない深みを生み出している。かつてロッキーを苦しめたドラゴは国家に見捨てられ唯一、残った息子を究極のボクシングマシーンへと育て上げていた。それは自ずとスタローンに見初められ、『ロッキー4』でメジャーデビューしながらも決して順風満帆とは言えない俳優人生を送ったラングレン自身のキャリアとダブる。相変わらずセリフはほとんどないが、クライマックスはその表情が行間を生み、泣かされてしまった(ドラゴJR.をラングレンの実息と錯覚してしまった程だ!)。

前作を機に大ブレイクしたジョーダンとトンプソンはシリーズをすっかり自分のモノにして頼もしい主演っぷりだ。シリーズ史上最強の敵を前に苦戦に陥るクリードをジョーダンはたぎるような怒りを持って熱演。隠し切れない品の良さ、優しさと共存するパンクさが彼の魅力だろう。
そんなジョーダンに対して“姉さん”風情のトンプソンは得意の歌声も披露。かつてのエイドリアンのような内助の功ではなく、共に人生を歩む戦友としてボーイッシュな格好良さだ。そんな二人が親になる事を前に戸惑うシーンがいい。そう、スタローンはこんな繊細な描写もできる人だよな、と思い出した。

 アポロの仇討も済んでシリーズの継承はついに完成。いよいよクリード伝説が始まるであろう次回作が楽しみだ。


『クリード 炎の宿敵』18・米
監督 スティーブン・ケイブルJr.
出演 マイケル・B・ジョーダン、シルヴェスター・スタローン、テッサ・トンプソン、フロリアン・ムンテアヌ、ブリジット・ニールセン、ドルフ・ラングレン
 

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