ビートルズ、といえば私の青春です。
といっても、友人たちほどではなかったのですが。友人たちときたらもう、それはすさまじい熱狂ぶりでした。
その友人たちに感化されてビートルズが好きになり、毎日聴いたものです。
この映画は、ビートルズに捧げたオマージュといってもいいでしょう。
「イエスタディ」(ダニー・ボイル監督 2019年)
監督のダニー・ボイルは「トレイン・スポッティング」「スラムドッグ&ミリオネア」等の監督でもあります。
基本的にコメディです。SF要素もちょっとあるけど、SF映画じゃない。
売れないミュージシャンのジャックはある日交通事故に合います。ちょうどその時、世界中で10秒間停電するというアクシデントが起こり、ジャックが病院で目をさますと、そこは、ジャックのいた世界とそっくりなのに、何かが違う世界でした。
その世界には、ビートルズがいない。コカ・コーラもない、ハリー・ポッターもない・・
両親や友人、彼のマネージャーであるエリーなど身近な人たちはそのままなのに、何かが微妙に違う世界に、ジャックはまぎれこんでしまいます。
そして、たまたま彼がビートルズの曲を演奏したところ、それを聞きつけたエド・シーラン(本人出演)が彼をスターダムに押し上げる、というストーリー。
そこに、ジャックと彼のマネージャーであり幼馴染であるエリーとの、ちょっとややこしくて微妙な恋愛が絡んできます。
エリーを演じているのが、「ガーンジー島の読書会の秘密」でジュリエットを演じたリリー・ジェームス。
ジャックを演じるのはヒメーシュ・パテル。どこまでも人の好さそうな表情がいい。何より歌が上手い。
最後の方にちょっとしたサプライズがあります。
ストーリーはシンプルで大体予測がつくのですが、予測を裏切る仕掛けもあり、全体にハートウォーミングな物語に仕上がっています。
ジャックは元の世界に戻れるのか?
それは映画を見てのお楽しみ。
もしかすると、この世界とそっくりだけど、微妙に違うパラレルワールドがすぐ隣にあって、ちょっとしたきっかけで私もそっちに行けるかも・・
という想像をかきたてます。
その世界がこの世界より、より良い世界だといいなあ。
でも、ハリー・ポッターやビートルズ、スターウォーズのない世界はどうなんだろう・・といろんな空想ができちゃう映画でもあります。
ビートルズのコアなファンにとっては、もしかするとあり得ない映画なのかもしれません。
でも、「スター・ウォーズ」がそうであるように、伝説は様々な形で語り継がれるものです。
この映画は、ビートルズをすっかり忘れた現代に(ビートルズのいない世界に)ビートルズの魅力を再配達してくれる役割をもっているような気がします。
何より、久しぶりにビートルズの曲を聴いて、そうだ、もう一度ビートルズを聴こう!と思いました。
難しいことは抜きにして、気軽に楽しみたい映画です。