ディズニー+に入ったついでに、マーベルのアメコミ作品、
「ワンダヴィジョン」
を見てみました。
これ、のっけからかなり驚かされます。
何しろ、1950年代のニュージャージー州、ウェストビューという田舎町が舞台のTVのホームドラマ(シットコム)から始まるのです。
しかもTVに登場しているのが、ワンダ・マキシモフ。
ワンダ・マキシモフは「X-Men 」や「アベンジャーズ」に登場するミュータントで、現実改変能力を持つスカーレット・ウィッチと呼ばれる魔女です。
え、何これ?
と思って見ていくと、ワンダの夫ヴィジョン(人造人間シンセゾイド)まで登場します。
しかもどこまでもシットコムの世界。コメディなので時々観客の笑い声が入る。しかも画面は白黒。
え、何、どうなってるの?
と???の世界に迷い込んだままドラマは進行します。
ところが、第4話目になって、突然外の世界が描かれ、これまでの種明かしがされます。
ここからはネタバレ全開でいきますね。じゃないと説明できないので。
実は、この町ウェストビューはワンダの妄想が作り出した世界。
ワンダは超能力者なので、単なる妄想を超えて現実の町そのものを改変してしまう。
町の住人たちも、実在の住人たちの意識を操作して演じさせている(本人たちは、ワンダに操られているので演じているという実感はない)というもの。
「アベンジャーズ/インフィニティウォー」で死んだはずのヴィジョン(ワンダの夫)が生きているのも、赤ん坊が一日で生まれ、その日のうちに10歳になったりするのも、ワンダの妄想の世界だから。
つまり、これって、人間の意識の世界の話なんですね。
そして、それを外側から観察しているS.W.O.R.D(地球外生命体の活動や宇宙からの脅威を観察する国際的な諜報機関)やFBIの人たちもいる。ウェストビューは六角形のシールドのようなもので外界から隔てられていて(ヘキサゴンからヘックスと呼ばれる。hexは呪いを意味する)中に入るとワンダの妄想の世界に取り込まれてしまう。
S.W.O.R.Dの一人モニカ(ミュータントで「アベンジャーズ」の一人)がこの世界に紛れ込みます。
紛れ込んだとたん、モニカはワンダの魔法にかかって自分が誰だったのか忘れてしまう。それくらい強力な魔法で町は覆いつくされ、ワンダは妄想の世界を確固たるものにしていきます。
最初は白黒だった画面に部分的に色が現れ、回を追うごとに街や人々がカラフルになり時代が変遷していくあたり、ちょっと背筋がぞくぞくする感じです。
昔読んだファンタジー小説「ザ・ギバー」(ロイス・ローリー著)を思い出しました。白黒の世界に、ある時突如まっ赤なリンゴが現れます。それが一体何なのか、目の錯覚なのか、何かが変化したのか、主人公にはわからない。シンボリックではあるけれど、実際にもパワーを持つ色の描写が印象的でした。
それはともかく、ワンダの世界に色が現れ町や人々が活性化していき、まるで本物のアメリカの田舎町という風情を感じさせますが、あくまでもこれはワンダの妄想世界。
それを外から観察しているS.W.O.R.Dの人たちは、この世界を破壊しようとしますが、入りこんだらワンダの妄想に取り込まれてしまうので作戦はうまくいかない。
そして、8話目くらいになってようやく、なぜワンダがTVのシットコムの世界を再現したのかが明らかになっていきます。
ワンダが失ったものの大きさと、あまりに大きな悲しみに観客は気づかされるわけです。
人はあまりに大きな悲しみに襲われるとやはりアナキンのようにダークサイド落ちていくらしい。
ワンダも例外ではなく、悲しみに押しつぶされそうになって、かろうじて自分を守るために妄想の世界を作りあげたのですね。でも、人々を巻き込んでしまったことに彼女はなかなか気づかない。
悲しみや苦しみがあまりに大きいとき、人はなかなか外の世界に気づかないものです。
そこに、彼女と同じくらいの力を持ったもう一人の魔女アグネスが現れます。
また、ヴィジョンの部品を回収して新たに作られた白いヴィジョンも現れ、ワンダとアグネス、ヴィジョンと白ヴィジョンの対決が行われるという最終話はマーベルお約束のストーリー展開です。
でもね、これ、これまでのマーベル作品群とかなり違って見えるのは、やはり「意識」の世界を描いているからなんじゃないかしら。
時代は変わりつつあるなあという印象。
私たちの住んでいる世界だって、もしかすると誰かの妄想で作り上げられた虚構の世界かもしれないぞ、という感じかな。世界はとてもフレキシブルな場所で、内側にいるとわからないけど、いったん外に出て眺めてみると六角形だったりするかもしれない・・
このドラマは「ドクター・ストレンジ」の続編に続くようですが、「ドクター・ストレンジ」続編もすごく楽しみです。
マーベル作品はアメコミ特有の泥臭さというか、独特の雰囲気があって、私はイマイチ好きじゃないのだけど、エンターテイメントとして楽しめる作品群であることは確かですね。
このドラマはアベンジャーズを見ていない人にも楽しめるので、よかったら見てみてください。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます