映画の「アウトブレイク」(1995年)についてはすでに書きましたが、今日紹介するのは2019年にカナダで作られたドラマ版の「アウトブレイクー感染拡大ー」です。
これは新型コロナが流行する前に作られたドラマである、という点が重要。まるで今の状況を見てきたかのようなパンデミックの様子が描かれているからです。
「カナダでの第1話の初O.A.は今年1月7日で、日本での新型コロナウイルス感染者が確認された日から遡ること10日前。撮影は2019年で、中国で最初の感染者が発見されるよりも前だが、現在の世界の現状を“予言”していたかのように正確でリアルな描写の数々に、誰もが驚かずにはいられない。」(CINEMA CAFE NETより)
舞台はカナダのモントリオール。
緊急衛生研究所の所長であるアンヌ・マリー・ルクレールが主人公。ホームレスのイヌイットたちの間で謎の風邪(新型コロナウイルスであると後に判明)が蔓延して亡くなる人が続出している。その原因を突き止めようと動き出すアンヌ・マリーだったが、彼女は夫マルク(医師)との間に問題を抱えていた。マルクは同じ病院で働く医師クロエと浮気をしていたのだ。
アンヌ・マリーとふとしたきっかけで知り合ったイヌイットのネッリ(後にアンヌ・マリーと共に働くことになる)の従妹アラシーが謎の風邪で死ぬ。
ホームレスのイヌイットの間で流行している病気なので「イヌイットのウイルス」と人々は呼びイヌイットたちを排斥するが、アンヌ・マリーたちはその原因を突き止めようと必死になる・・
こうして、アンヌ・マリーを中心として、
初期のウイルス犠牲者であるアラシーとその従姉ネッリ、何かと圧力をかけてくる公安大臣とそのパ-トナー(ゲイカップル)、この二人の子どもの代理母を務める女性など、多数の人が登場しますが、一人ひとりを実に丁寧に描いています。
最初は少し冗長に感じたけれど、人物たちの関係が明らかになっていき、感染が拡大していくにつれて、すっかりハマってしまいました。
感染源はどこなのか、誰がどういう経路で感染していったかを、衛生研究所の人たちは克明に追いかけます。一人ひとりの行動が感染に深くかかわっているからです。
感染源と感染経路を克明に追えば、感染拡大は確実に防げるとアンヌ・マリーたちは考えます。今の東京の現状を見るとよくわかりますね。東京はもう遅いけど。
イヌイットのことはほとんど知らなかったのですが(アジア系の人たちだと思った)、彼らはアメリカインディアンのように先住民であるにもかかわらず差別され、ホームレスになるなど、社会の中で隅に追いやられています。最初の感染者たちはこのホームレスの中から出ます。
カナダというと何となくクリーンなイメージがありますが、実はアメリカとそう変わらない差別社会であるようです。
このドラマは、パンデミックに至るまでの人々の描写が実に的確です。
たとえば新型コロナ(CoVAと呼ばれるウイルス)を「イヌイットのウイルス」と呼んだり、アラシーは病院で長時間待たされた挙句死んでしまったり、また病院のマスクを大量に盗んで転売する看護師がいたり、病気のフェレットを騙して売りさばいたりと、結局ウイルスを蔓延させるのは人間であることが実によく描かれています。
人々のエゴと欲望がウイルスの蔓延を促しているというわけ。
人間はどこでも似たようなことをします。おそらく他の国々でも似たような経路をたどって感染が拡大していったのではないでしょうか。
シーズン1は感染源が明らかになったところで終わりますが、シーズン2もあるようなのでぜひ見たいと思っています。
アンヌ・マリーが実にプロに徹していて見事です。
彼女に比べると夫のマルクのダメさ加減は目を覆うばかり。見た目はカッコいいけど優柔不断でとことん自己中。三人の女たちを次々乗り換えてしかもまだ甘えようとしている。ダメ男の典型。
というわけで女性には溜飲の下がるストーリーです。
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