私は日本語教師なので外国人に日本語を教えています。
JLPTという日本語能力試験に向けたテキストにこういう質問があります。
「事故の責任は君にあるといわざるをえない」
という文章は、
①君に責任がある。②君に責任はない。
のどちらか?
これが、外国人にはえらく難しいようです。
「あるといわざるをえない」
「ある」は肯定。「ない」は否定。
なので、答えは②の「君に責任はない」だ、というのです。
そこで私は「いわざる」は「言わない」だと説明します。
つまり「言わないわけにはいかない」という意味で、
「言わない」「いかない」の二重否定なので、「君に責任がある」が正しい答えだと。
生徒は「えー、だったら最初から『君に責任がある』て言えばいいじゃん」と言います。
(この「いいじゃん」も実は「いいではないか」の省略形なので「ない」という否定が含まれているのですが・・)
また、こういう文章もあります。
「今回ほど断られるのが怖いと思うことはない」
これも「怖い」と思うのか、思わないのか。
生徒は「思わない」と答えます。
だって、「思うことはない」とあるのだから「思わない」でしょう?
またこういうのもあります。
「心がはればれとするとは言えないのではないか」
これは「心がはればれとする」のか「はればれとしない」のか?
生徒は「はればれとする」と答えます。
だって、「言えない」「ないか」で二重否定になるので、答えは「はればれとする」だと。
日本語って本当に厄介です。
文法を説明したところで(強調構文だとか、二重否定に見えるけどちょっと違うのだとか、英語にも似たような表現があるでしょうとか)でも、すんなりとは受け止めてもらえません。
「ない」があるのに、なんで「ある」になるのか。
逆に「ある」があるのに、なんで「ない」になるのか。
日本人は日常的に使っているので、説明しようとするとかえって混乱します。
そういうものだから、そうなのだ。
結局そういうしかない。
まあ、言葉って結局習慣なのですね。
英語だって似たようなものです。
YouTubeで私が好きな動画を挙げておきます。
言語って、理屈じゃ説明できない理不尽なことが多いよねえ、
と思わなくもない日々を送っていなくもない、日本語教師です。
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