6月7日(日)
「海のことを考えるとき、老人はいつもラ・マルla marということばを思いうかべた。それは、愛情をこめて海を呼ぶときに、この地方の人々(キューバの小港コヒマルの漁師たち)が口にするスペイン語だった」*(1)
通常、スペイン語で「海」は、エル・マルel marという。海という名詞marの前に、日本語にはない冠詞をつける。冠詞には、女性名詞の前につけるla(女性形)と、男性名詞の前につけるel(男性形)があり、複数形にはそれぞれlas とlosをつける決まりになっている。
さきの文章『老人と海』によれば、キューバの西海岸地方では、漁師たちによってラ・マルla marと女性形の冠詞がついている。キューバの漁師たちは海を女性扱いしているという。だが、もともとスペインでは、海は男性形の名詞で、エル・マルel mar と呼ばれる。
著者ヘミングウェイの書いたことは、果たして本当なのか。
あるとき、ハバナ郊外の海岸で聞きまわったことがある。確かに、誰もが女性形の冠詞laをつける。
だからと言って、スペインのスペイン語が正しくて、キューバのスペイン語が正しくない、とは言えない。どちらも正しい。言語というものは、サッカーと同じように「生き物」。環境や文化によって影響を受けるということだ。
いよいよ、きょうはアミノバイタル杯の決勝。3位決定戦(流経大VS法政大)のあとの第2試合。そのあとに閉会式が控えているとあって、総理大臣杯(全国大会)出場を決めた大学の選手たちもスタンドで見守っている。
どうせ総理大臣杯(夏のインカレ)出場は決まっているのだから、優勝しようが優勝しまいが関係ない。そう考える人もいるだろうが、栗田監督は、「優勝しなければ、2位も7位(出場の最低ライン)も同じ」と檄をとばす。
選手も5月の無勝利で、勝つことに飢えている。勝利に貪欲になっている。
スターティングメンバーは、GK服部一輝(法3)、DFに、右から室屋成(政経3)、小出悠太(政経3)、小池佑平(経営4)、高橋諒(文4)、MFに柴戸海(政経2)、差波優人(商4)、瀬川祐輔(政経4)、道渕諒平(農3)、FWに和泉竜司(政経4)、藤本佳希(文4)。後半30分に、瀬川の代わりに、岩田拓也(商3)を投入。
試合は、互いに0-0で譲らず、延長戦にもつれ込む。前半に道渕に代えて早坂龍之介(法3)を、後半に小池に代えて工藤将太郎(商4)を投入するも、決着がつかず、PK戦に突入。
先攻は明治で、和泉、高橋、差波、早坂、藤本、と5名の選手が全員手堅くゴールを決める。一方、筑波大は1本目がGK服部に弾かれて失敗。明治5人目の藤本がゴールを決めたので、筑波の最後の選手が蹴らずに、明治の優勝が決まった。
それにしても、後半の後半から延長にかけて、筑波大の猛攻はすばらしかったが、それをぎりぎりで凌いだ小出やGK服部らのディフェンスもすごかった。 全員でつかんだ優勝だけに、少しは自信がついたかもしれない。
優勝することでチームが一体になれたことがいちばんよかった。マネージャーたちも、学連の仕事にでている部員たちも、日頃の苦労が報われたにちがいない。もちろん、応援席で声をからして応援してくれた部員たちも、である。
筑波の応援も最初から魂がこもっていた。明治のほうもそれに負けないくらいこもっていた。でも、サッカーの神様が、すこしだけ勝ちたい意欲のまさる明治に、味方をしてくれたのかもしれない。
アミノバイタル杯の5試合では、すべて無失点で切り抜けることができた。勝負事では調子が悪くても、内容が悪くても、負けない(引き分けに持ち込む)こと、あわよくば勝利をつかむことが大事。そんなことは誰でも知っている。問題は、選手たちがそれを試合中に実行できるかどうか、だ。
来週のリーグ戦最終節、専修大戦にそれが試される。