冒頭の子供たちが遊んでいるシーンで、
アンドレスは「警察」役であり、捕まえた少女が「帰らせて」と嘆願したとき、
オモチャの手錠をはずし逃がしてやった。
だが、軍政下で「成長」した彼は、
やがて自分の母を誘惑して反体制運動に引きずりこんだ(それによって、母と父を引き離し自分たちの家庭を台なしにした)と思えるアルフレドを
セバスチャンが属する準軍事組織にそれとなく「密告」する。
そして、家のなかの独裁者である祖母オルガには、
彼女が嫌がるビー玉の音をわざと立てて心臓発作を起こさせてしまう。
アンドレスは大人に反抗する「恐るべき子供」になりたくてなったのではない。
現実がそうした子供を生んだのだ。
(『すばる』2012年1月号)