6月14日(日)
新宿から小田急線の急行に乗ること50分、終点の「相模大野」で、小田原行きの電車に乗換え「東海大学前」で降りる。「東海大学前」と言いながら、大学は駅前にはなく、そこから坂道を15分ほど登っていく。運動不足解消にはちょうどいい。道の途中には学生相手の喫茶店をはじめ、地元のレストランが多い。坂を登り切ると、さすがに見晴らしがよく、下の街並みが一望できる。正門を抜けてから、さらに10分ほど歩き、ようやくサッカー場へたどり着く。
きょうは春季リーグの最終戦。相手は専修大学。昨年度1位と2位の対戦だが、今シーズンの戦績はお互いによくない。明治は勝点12の8位。専修は勝ち点13の7位。それでも、1位との勝点差は6と7。秋季リーグに優勝をめざして巻き直しをはかるには、どちらもここでは負けられない。
写真:先発メンバー
前半、専修は前がかりに激しいプレスをかけてくる。明治のパスをカットしては攻め込む。開始後15分ぐらい、明治はなかなか敵陣にボールを運べないが、やがてボールをまわしながら敵陣深く攻め入るようになる。しかし、35分に専修得意のゴール前のボールまわしからルーズボールになり、斜め左30メートル当たりから地を這うようなシュートを打たれ先取点を奪われる。
失点後、選手たちはセンターサークル手前に集まって話し合う。どんなことを話したのか分からないが、まだ前半なので焦らずにやろうとか、ゴールの近くでシュートを打たせないように体を寄せよう、とか、そんなところだろうか。 失点した直後に、選手がどう対応するか、どういう話し合いをするか。つねづね興味があった。これまでは、外から見ていて、選手のあいだでそうした動きが見られなかった。ようやく自主的にやるようになったようだ。
前半はそのまま0-1で終了。 ハーフタイムで、栗田監督から「横パスやバックパスを狙っている相手のプレスを逆に利用しよう。まず同点を狙おう」との指示。三浦コーチから「負けているのだから、前に行くときは(各自が)決断するように。迷うな!」との檄がとぶ。
後半、明治は見違えるような動きを見せる。開始直後、和泉竜司(政経4)がボールを持ち込み、小谷光毅(政経4)がゴール右上のネットを揺らす。この同点弾で、気分が一気に晴れた。あとで、小谷に聞いたところでは、試合後に相手のゴールキーパー福島春樹君(全日本学生代表、2016年浦和レッズ入団予定)から、今年いちばんのゴールだったと言われたという。それくらい素晴らしいシュートだった。
写真:喜ぶ小谷に駆け寄る和泉と木戸
10分すぎに、専修は前の二人を交替させる。とにかくよく走る、いいチームなのだ。 20分すぎに、俊足の高橋諒(文4)がハーフウェイ手前からドリブルでぐいぐい敵陣に入り込み、鋭く低いクロスをだす。それを地面に顔をつけるような木戸皓貴(文2)のダイビングヘッド。さすがのGK福島君も防げなかった。小谷のシュートもよかったが、木戸のシュートはうまいという以上に迫力が感じられた。しかも、逆転のゴールだった。今年の印象に残る3つのベストゴールの候補に入れたい。
写真:ドリブル突破する高橋
あとで聞けば、鉄壁の守備を誇る専修が、今シーズン1点以上失点したのはこれが初めてだという。数々のシュートをぎりぎりで防いできたGK福島君から奪った2点は価値がある。 後半の最後に、明治は専修の猛反撃に遭うが、小谷に代えて岩田拓也(商3)を、足をつった高橋に代えて鈴木達也(商4)を投入し、彼らが獅子奮迅の活躍を見せて、専修に得点を許さず、ついに2−1の勝利を収めた。
サブの選手たちと応援席は、まるで優勝したような喜びよう。それはそうだ。アミノバイタルでは5戦全勝で優勝したが、リーグ戦ではここ7戦勝利なし(4敗3分)だったから。
試合後に、神川明彦総監督から、DFの鳥海晃司(商2)にお褒めの言葉があった。下級生ながら試合に出させてもらい、失敗を重ねチームに迷惑をかけ(スタッフに怒られ)ながら、こうして成長していくのだろう。試合を見学にいらっしゃったOBの原さんも、鳥海がよかった、とコメントをくださった。
きょうで、ようやく春リーグが終わった。きょうの勝利で順位は1つだけあがって、12チーム中の6位。けっして良くはないが、悲観するほどでもない。1位の国士舘が引き分けたので、勝点差は5に縮まった。
「この嵐のおかげで/もっと苦しいことを/ 考えずにいられるのだ」
『リア王』第三幕第四場で、自分の娘たちや部下に手ひどい仕打ちを受けて、嵐のなかで、リア王が忠臣ケントに語る言葉だ。
逆境の中でも、これは最悪の事態でない、この逆境のほうがまだマシ、と思うことで、人は望みを少しは持てるのかもしれない。
5月は、引き分けや負けつづきで1つも勝てなかったが、内容は悪くなかった。だから、希望は捨てなかった。選手にも自信を失わずにポジティヴに考えようと言った。とはいえ、選手たちがどれだけ心からその言葉を聞いてくれたのか分からないが、いま、チームの調子は上り坂。ここでリーグが中断するのが惜しいくらい。
秋には、5月の「嵐」を笑い飛ばしたい。