越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(16)

2015年06月24日 | サッカー部長日記

6月14日(日) 

新宿から小田急線の急行に乗ること50分、終点の「相模大野」で、小田原行きの電車に乗換え「東海大学前」で降りる。「東海大学前」と言いながら、大学は駅前にはなく、そこから坂道を15分ほど登っていく。運動不足解消にはちょうどいい。道の途中には学生相手の喫茶店をはじめ、地元のレストランが多い。坂を登り切ると、さすがに見晴らしがよく、下の街並みが一望できる。正門を抜けてから、さらに10分ほど歩き、ようやくサッカー場へたどり着く。

きょうは春季リーグの最終戦。相手は専修大学。昨年度1位と2位の対戦だが、今シーズンの戦績はお互いによくない。明治は勝点12の8位。専修は勝ち点13の7位。それでも、1位との勝点差は6と7。秋季リーグに優勝をめざして巻き直しをはかるには、どちらもここでは負けられない。

写真:先発メンバー

前半、専修は前がかりに激しいプレスをかけてくる。明治のパスをカットしては攻め込む。開始後15分ぐらい、明治はなかなか敵陣にボールを運べないが、やがてボールをまわしながら敵陣深く攻め入るようになる。しかし、35分に専修得意のゴール前のボールまわしからルーズボールになり、斜め左30メートル当たりから地を這うようなシュートを打たれ先取点を奪われる。

失点後、選手たちはセンターサークル手前に集まって話し合う。どんなことを話したのか分からないが、まだ前半なので焦らずにやろうとか、ゴールの近くでシュートを打たせないように体を寄せよう、とか、そんなところだろうか。 失点した直後に、選手がどう対応するか、どういう話し合いをするか。つねづね興味があった。これまでは、外から見ていて、選手のあいだでそうした動きが見られなかった。ようやく自主的にやるようになったようだ。

前半はそのまま0-1で終了。 ハーフタイムで、栗田監督から「横パスやバックパスを狙っている相手のプレスを逆に利用しよう。まず同点を狙おう」との指示。三浦コーチから「負けているのだから、前に行くときは(各自が)決断するように。迷うな!」との檄がとぶ。  

後半、明治は見違えるような動きを見せる。開始直後、和泉竜司(政経4)がボールを持ち込み、小谷光毅(政経4)がゴール右上のネットを揺らす。この同点弾で、気分が一気に晴れた。あとで、小谷に聞いたところでは、試合後に相手のゴールキーパー福島春樹君(全日本学生代表、2016年浦和レッズ入団予定)から、今年いちばんのゴールだったと言われたという。それくらい素晴らしいシュートだった。

写真:喜ぶ小谷に駆け寄る和泉と木戸

10分すぎに、専修は前の二人を交替させる。とにかくよく走る、いいチームなのだ。 20分すぎに、俊足の高橋諒(文4)がハーフウェイ手前からドリブルでぐいぐい敵陣に入り込み、鋭く低いクロスをだす。それを地面に顔をつけるような木戸皓貴(文2)のダイビングヘッド。さすがのGK福島君も防げなかった。小谷のシュートもよかったが、木戸のシュートはうまいという以上に迫力が感じられた。しかも、逆転のゴールだった。今年の印象に残る3つのベストゴールの候補に入れたい。

写真:ドリブル突破する高橋

あとで聞けば、鉄壁の守備を誇る専修が、今シーズン1点以上失点したのはこれが初めてだという。数々のシュートをぎりぎりで防いできたGK福島君から奪った2点は価値がある。 後半の最後に、明治は専修の猛反撃に遭うが、小谷に代えて岩田拓也(商3)を、足をつった高橋に代えて鈴木達也(商4)を投入し、彼らが獅子奮迅の活躍を見せて、専修に得点を許さず、ついに2−1の勝利を収めた。

サブの選手たちと応援席は、まるで優勝したような喜びよう。それはそうだ。アミノバイタルでは5戦全勝で優勝したが、リーグ戦ではここ7戦勝利なし(4敗3分)だったから。

試合後に、神川明彦総監督から、DFの鳥海晃司(商2)にお褒めの言葉があった。下級生ながら試合に出させてもらい、失敗を重ねチームに迷惑をかけ(スタッフに怒られ)ながら、こうして成長していくのだろう。試合を見学にいらっしゃったOBの原さんも、鳥海がよかった、とコメントをくださった。

きょうで、ようやく春リーグが終わった。きょうの勝利で順位は1つだけあがって、12チーム中の6位。けっして良くはないが、悲観するほどでもない。1位の国士舘が引き分けたので、勝点差は5に縮まった。

「この嵐のおかげで/もっと苦しいことを/ 考えずにいられるのだ」  

『リア王』第三幕第四場で、自分の娘たちや部下に手ひどい仕打ちを受けて、嵐のなかで、リア王が忠臣ケントに語る言葉だ。  

逆境の中でも、これは最悪の事態でない、この逆境のほうがまだマシ、と思うことで、人は望みを少しは持てるのかもしれない。  

5月は、引き分けや負けつづきで1つも勝てなかったが、内容は悪くなかった。だから、希望は捨てなかった。選手にも自信を失わずにポジティヴに考えようと言った。とはいえ、選手たちがどれだけ心からその言葉を聞いてくれたのか分からないが、いま、チームの調子は上り坂。ここでリーグが中断するのが惜しいくらい。  

秋には、5月の「嵐」を笑い飛ばしたい。


ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(15)

2015年06月17日 | サッカー部長日記

6月7日(日)

「海のことを考えるとき、老人はいつもラ・マルla marということばを思いうかべた。それは、愛情をこめて海を呼ぶときに、この地方の人々(キューバの小港コヒマルの漁師たち)が口にするスペイン語だった」*(1)

通常、スペイン語で「海」は、エル・マルel marという。海という名詞marの前に、日本語にはない冠詞をつける。冠詞には、女性名詞の前につけるla(女性形)と、男性名詞の前につけるel(男性形)があり、複数形にはそれぞれlas とlosをつける決まりになっている。

さきの文章『老人と海』によれば、キューバの西海岸地方では、漁師たちによってラ・マルla marと女性形の冠詞がついている。キューバの漁師たちは海を女性扱いしているという。だが、もともとスペインでは、海は男性形の名詞で、エル・マルel mar と呼ばれる。

著者ヘミングウェイの書いたことは、果たして本当なのか。

あるとき、ハバナ郊外の海岸で聞きまわったことがある。確かに、誰もが女性形の冠詞laをつける。

だからと言って、スペインのスペイン語が正しくて、キューバのスペイン語が正しくない、とは言えない。どちらも正しい。言語というものは、サッカーと同じように「生き物」。環境や文化によって影響を受けるということだ。

いよいよ、きょうはアミノバイタル杯の決勝。3位決定戦(流経大VS法政大)のあとの第2試合。そのあとに閉会式が控えているとあって、総理大臣杯(全国大会)出場を決めた大学の選手たちもスタンドで見守っている。

どうせ総理大臣杯(夏のインカレ)出場は決まっているのだから、優勝しようが優勝しまいが関係ない。そう考える人もいるだろうが、栗田監督は、「優勝しなければ、2位も7位(出場の最低ライン)も同じ」と檄をとばす。

選手も5月の無勝利で、勝つことに飢えている。勝利に貪欲になっている。

スターティングメンバーは、GK服部一輝(法3)、DFに、右から室屋成(政経3)、小出悠太(政経3)、小池佑平(経営4)、高橋諒(文4)、MFに柴戸海(政経2)、差波優人(商4)、瀬川祐輔(政経4)、道渕諒平(農3)、FWに和泉竜司(政経4)、藤本佳希(文4)。後半30分に、瀬川の代わりに、岩田拓也(商3)を投入。

試合は、互いに0-0で譲らず、延長戦にもつれ込む。前半に道渕に代えて早坂龍之介(法3)を、後半に小池に代えて工藤将太郎(商4)を投入するも、決着がつかず、PK戦に突入。

先攻は明治で、和泉、高橋、差波、早坂、藤本、と5名の選手が全員手堅くゴールを決める。一方、筑波大は1本目がGK服部に弾かれて失敗。明治5人目の藤本がゴールを決めたので、筑波の最後の選手が蹴らずに、明治の優勝が決まった。

それにしても、後半の後半から延長にかけて、筑波大の猛攻はすばらしかったが、それをぎりぎりで凌いだ小出やGK服部らのディフェンスもすごかった。 全員でつかんだ優勝だけに、少しは自信がついたかもしれない。

優勝することでチームが一体になれたことがいちばんよかった。マネージャーたちも、学連の仕事にでている部員たちも、日頃の苦労が報われたにちがいない。もちろん、応援席で声をからして応援してくれた部員たちも、である。

筑波の応援も最初から魂がこもっていた。明治のほうもそれに負けないくらいこもっていた。でも、サッカーの神様が、すこしだけ勝ちたい意欲のまさる明治に、味方をしてくれたのかもしれない。

アミノバイタル杯の5試合では、すべて無失点で切り抜けることができた。勝負事では調子が悪くても、内容が悪くても、負けない(引き分けに持ち込む)こと、あわよくば勝利をつかむことが大事。そんなことは誰でも知っている。問題は、選手たちがそれを試合中に実行できるかどうか、だ。

来週のリーグ戦最終節、専修大戦にそれが試される。


ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(14)

2015年06月11日 | サッカー部長日記

6月6日(土)  

きのうの夜から朝までずっと雨で、天候が気になったが、試合開始11:30がちかくになるにつれて、ときたま太陽も顔をだす。やや蒸し暑い。  

きょうは、決勝進出をかけて1部校の法政と争う。リーグ戦では、第2節に辛うじて2-1で勝っているが、いまの順位は法政のほうが上。チャレンジ精神で戦ってほしい。

栗田大輔監督からの指示は、いつものように的確そのもの。チームとしてやるべきことを徹底させるために、ホワイトボードに書き込まれたきょうのテーマ。「サイドの攻防二勝つ」「距離感」「守備のときの正しいポジショニング」「決定力」など。

さらに、小さな戦略(システム)ボードには、具体的にイメージし易いように、相手チームの選手の名前や背番号、簡単な特徴が記入してある。  

前半は、明大ペース。31分に室屋成(政経3)がゴール近くまで迫り、角度のないところからシュートを打とうとして、寄せてきた小谷光毅(政経4)にパス。小谷が難なく決めて先制点を奪う。  

後半は、法政も早めに選手を入れ替えて手を打ってくる。だが、試合は一進一退で、21分に和泉竜司(政経4)がヘッディングするもGKに弾かれて、惜しくもゴールならず。明治も30分前後に、選手の入れ替えをおこなう。DFの工藤将太郎(商4)に代わりにDFの小池裕平(経営4)が入り、MFの小谷光毅(政経4)に代わりにMFの岩武克弥(政経1)が初出場。それでも、最後の10分は、防戦一方。ボランチの差波優人(商4)も、いつになく前のほうでボールを追いかけ、またDF陣もシュートされそうになるとブロックに入り、なかなかゴールを割らせない。GK服部一輝(法3)のスーパーセーブも2本あり、ついに無失点で逃げ切った。  リーグ戦では、内容がよくても、勝負に勝てなかった。だが、きょうはそれほど調子がよくなくても、守備を徹底して勝利をもぎ取った。

チームとして、試合に負けない「しぶとさ/したたかさ/ずるさ」を覚えつつあるかもしれない。

きょうは、2つの特筆すべきことがあった。一つは、試合開始前に、応援組が肩を組み、胸のエンブレムに手をやりながら、体を右に左に揺らして 大きな声で校歌を歌い、選手を鼓舞していたこと。リーグ戦の国士舘との試合の前にも、しびれるような歌をうたっていた彼らだが、きょうはそれ以上に魂がこもっていた。

もう一つは、ハーフタイムの控え室でのこと。戻ってきた選手たちは、いつになく饒舌で、互いに活発に意見の交換をおこなっていた。いつもはおとなしい選手たちだが、きょうばかりはしばらく声がやまなかった。選手のあいだに、ようやく自主性が育ってきた証拠だろう。

監督やコーチにあれこれ言われる前に、学生たちがすすんで自分たちの意見を互いに述べあうことが大事だ。足らないところを補強してやるのが指導者の役目であり、学生たちは指導者が動かす将棋の駒ではない。これはピッチでも教室でも同じである。だから、きょうは、学生チームが一丸となる瞬間をかいま見た気がして、勝ったのはうれしいが、それ以上に、学生たちに一体感が出来てきたことがすばらしいと感じた。

準決勝の第2試合は、筑波大が格上の流経大(1部)を3-2で破った。筑波大は、下級生がよく走りまわり、流経大の守備陣を翻弄。終始試合をリード。2部校(今年、史上初めて2部に落ちた)とは思えない出来で、明日の決勝は、手強い相手になる。


ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(13)

2015年06月11日 | サッカー部長日記

6月3日(水)  

アミノバイタルカップの3回戦(準々決勝)があった。  

明治高校での出張講義が入っていたので、応援にいけなかった。  

ちょうど授業が終わる頃に、主務の西原天童君(政経4)と栗田大輔監督から携帯にメールが入った。2-0で東洋大を下し、ベスト4入りを果たした、といううれしい知らせ。  

和泉竜司(政経4)と木戸皓貴(文2)の二人のフォワードが点を決めてくれたらしい。またもや無失点ゲーム。守備が格段に安定してきたようだ。  

その他、法政大は平成国際大を2-0で下し、筑波大は神奈川大を5-3で破り、流経大は専修大を2-0で退けた。こんどの土曜日(6月6日)におこなわれる準決勝の対戦カードは、明治Vs法政、筑波大Vs流経大となった。


ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(12)

2015年06月11日 | サッカー部長日記

5月31日(日)

きょうは午後13時50分からの第2試合。相手は中大を破った朝鮮大。FW3人が迫力のある攻撃を見せ、そのうちの一人が中大戦で見せたボレーシュートは見事だった。  

明治は、システムをきのうの3-4-3 から4-3-3に変え、選手もDFに小池裕平(経営4)、工藤将太郎(商4)の代わりに、室屋成(政経3)と小出悠太(政経3)を入れ、FWには土居柊太(政経2)代えて瀬川祐輔(政経4)が今期初出場。FWががんがんくる相手に対して、足の速い瀬川の前からのディフェンスに期待がかかる。  

きょうの試合も、明治が試合をコントロール。前半、風上を利して、サイドよりにロングボールをいれると藤本佳希(文4)が裏にまわってよく走る。開始直後に右コーナーキックを得て、あっという間に先制ゴール。差波優人(商4)の蹴ったボールに、柴戸海(政経2)がニアでうまく反応した模様。  

それから、コンスタントに得点を積み重ねる。便秘みたいなこれまでの試合がウソのように、狙ったシュートは不思議とゴール内に吸い込まれていく。藤本佳希(文4)がDFを引き連れて、ドリブルしてゴールを決めれば、左からの放った差波のコーナーキックを鳥海晃司(商2)が相手DFと交錯しながら足で押し込む。前半は3-0で折り返す。後半も、差波からのボールを柴戸海(政経2)がヘッドしたボールを和泉が決める。足を蹴られて打撲した和泉に代わって後半29分に木戸皓貴(文2)が出る。直後にうまく裏に抜けでて、キーパーと一対一になり、手堅くゴールを決める。そして、極めつけは、瀬川祐輔(政経4)がこれもうまく裏に抜け出して、ほぼ正面からキーパーと一対一になり、初ゴールを決めたことだった。終了直前には、藤本に代わって出た副キャプテン小谷光毅(政経4)がペナルティエリアで倒されPKを得る。栗田監督が「小谷、お前打て」と言われ、小谷は立ち上がり、PKを打つも、キーパーに弾かれてしまったが、小谷をはじめ、交替した選手全員が得点シーンに絡み、監督の期待に応えた。  

後半、朝鮮大FW陣も果敢に裏に抜けでて攻撃しようとするが、ことごとく明治のオフサイド網にひっかかる。明治DF陣は大量リードで余裕もあり、危険なシーンはほとんどなかった。ただ前半一度だけ、1点を失うかもしれないシーンがあったが、高橋がボールを外に蹴り出して事なきを得た。結果は、6-0の快勝。守備が安定すれば、後でもったいないな、と感じるような変な負け方をすることはないだろう。小出悠太(政経3)や高橋諒(文4)や鳥海など、DF陣がこれまで以上にピッチで大きな声を出して、コミュニケーションを取っていたのが印象的だった。  

その他、2回戦でも波乱はあった。1部リーグ首位の国士舘大が東洋大(2部)にPK戦(1-3)で敗れ、同じく一部の早稲田は筑波大(2部)に1-2で逆転負け。  

また、桐蔭横浜大は、後半40分まで2-0で勝っていながら、そこから法政大に逆転され、2-3で敗れ去った。八城さん、悔しくて、きっと眠れない夜を過ごすことだろう。  

結局、1部校でベスト8に残ったのは、明治以外に、流経大、専修大、神奈川大、法政大の5校。残りは東洋大、筑波大(以上、2部校)、平成国際大(プレーオフ勝ち上がり)。  明治は東洋大とベスト4をかけて、中2日で、こんどの水曜日に戦う。その他は、流経大vs.専修大(これは面白い試合になりそう)、神奈川大vs.筑波大、法政大vs.平成国際大。これだけ波乱が起こっているのだから、どこにもチャンスはある。もちろん、明治にも。逆にいえば、簡単に足をすくわれることもある。


ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(11)

2015年06月11日 | サッカー部長日記

5月30日(土)  

これから2週間は、リーグ戦がいったん休止になり、アミノバイタルカップ(夏の総理大臣杯関東予選を兼ねる)のトーナメント戦になる。  

土、日と2日連続で、1、2回戦を戦い、翌週の水曜日に準々決勝、週末に準決勝と決勝という、とんでもない超過密日程である。  

29日(金)の午後に新幹線で三島へ向かい、三島駅からバスで裾野市の高原ホテルに移動。途中、裾野駅前の停留所で、サッカーボールを持ち、リュクを背負った小学生がこれからサッカースクールでの練習です、といった感じでバスに乗り込んできた。さすが静岡は、日本少年サッカーの発祥の地である。*註(1)  

選手もきょうのうちに、八幡山の合宿所からバスでホテルへ移動。夕食後に、ホテルの敷地内にある<気楽坊>という温泉場に行き、露天風呂や炭酸泉に入る。国士舘の選手たちがいて、信末君と名乗る1年生と少し会話をする。かれは福岡から清水桜が丘(旧清水商業)高校へいき、国士舘に進んだという。中学生のときに、群馬から国見(大分)に越境した高橋諒(文4)や大阪から青森に越境した室屋成(政経3)と同様、若いノマド(遊牧民)。1年生で今回の遠征メンバーに選ばれたのだから、きっと逸材に違いない。これを縁に、遠くから信末君の活躍を見守っていきたい。実は、明治も二人の1年生を帯同させている。右サイドバック岩武克弥(政経/大分西出身)とGKの長澤祐弥(政経/藤枝東出身)。かれらも明治で才能を大きく開花させてほしい。  

きょうは、30度を越える夏日。1回戦には関東の大学の32チームが参加し、8つの会場で2試合ずつおこなわれた。裾野市はサッカー場だらけ。  

ホテルから、メイン会場から離れたグラウンドHまで、栗田監督の車に平松トレーナーと便乗させていただく。まるで茶畑や里山を切り開いた感じで、手前に2面、奥に1面、それぞれ隣り合うようにサッカー場が作ってある。木の陰ならば、そよ風もあり快適。だが、ピッチやベンチは陽射しをモロに受ける。山梨でA級指導者ライセンスの研修を受けていたという三浦祐輔ヘッドコーチも、試合開始になんとか間に合う。  

初戦の相手は、城西大学(埼玉県リーグ1部)。予選(プレーオフ)から勝ち上がってきた。パンフレットによれば、「関東1部リーグという格上の相手に、今年こそはという強い気持ちで真っ向勝負を挑む」と、ある。負けてもともと、強い相手にいっぱい食わせてやる、といった気迫が十分。実は、こういう相手がいちばん怖いのだ。  

試合は終始明治がコントロール。シュートも23本打ったが(試合後のマッチコミショナーによる)、ことごとくバーやポスト、相手選手に当たり、まるで国士舘戦の再現である。しかも、後半30分には、キーパーと一対一のシーンを作られ、危うく先取点を奪われかけるが、相手のミスで事なきを得た。終了寸前に、ペナルティエリア内の左45度あたりから、キャプテン和泉竜司(政経4)が先制ゴールを決める。和泉は後半10分にもほぼ同じ位置からシュートを放ち、バーに当てていたので、2度目の正直。死にもの狂いにがんばった城西大の奮闘もあり、1-0と厳しい試合だった。だが、このチームで今季初の無失点ゲームは高く評価できる。

「トーナメント戦では、とにかく勝つことが大事」(栗田監督)。  

主務の西原天童(政経4)が、とたんに忙しくなる。宿の予約を再び入れなければならないからだ。けさは、全員ホテルをチェックアウトしていたのだった。  

夕食後に、ホテルのロビーでスタッフ(神川総監督、栗田監督、三浦コーチ)と酒を飲む。しばらくして、明治サッカー部のOB(栗田監督の1年後輩)で、現在、桐蔭横浜大で監督をしている八城修さんが合流。八城さんの率いる桐蔭大も拓殖大との一回戦をPK戦(5-4)の末に勝ち上がったために、舌は滑らか。  

トーナメント戦は、関東の1部も2部も、プレーオフ勝ち上がり組も出ており、1回戦から下克上の様相。関東1部の上位校が足をすくわれた。順天堂大は平成国際大(プレーオフ組)に0-1で敗れ、慶大は明学大(プレーオフ組)にPK戦(1-2)で敗れ、中大は朝鮮大(二部校)に1−2で敗れるという波乱があった。学生スポーツは、技術よりも気迫やメンタルが大事であることの証し。受け身にまわると、もろい。

(1)静岡は、日本の少年サッカーの発祥の地であるらしい。静岡市清水区の二つの神社、小芝八幡宮と魚町稲荷神社は「サッカー神社」と呼ばれている。とりわけ、後者は、境内に少年サッカー発祥の地の碑が建っている。<清水エスパルスのファンのHP>。また、魚町稲荷神社は、清水エスパルスにゆかりの神社で、チームは毎年、ここで「必勝祈願」(出陣式)をおこなう。<エスパルスのHP>


ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(10)

2015年06月04日 | サッカー部長日記

5月24日(日)

自宅から駅に向かう道すがら、庭にきれいな花を咲かせている家がある。特に、いまはバラの花のいちばんきれいな時期かもしれない。先日、見るとはなしにテレビの歌番組を見ていたら、演歌の歌手が「辛い涙は恵み雨、晴ればかりでは土が枯れる」みないな、いい歌を歌っていて、グッと来た。そのとおり、明治のサッカー部も、だいぶ恵みの雨をいただいたので、そろそろ勝利の花を咲かせたい。国士舘との勝点差はまだ4つだから。  

慌ただしく嵐のようにすぎさった一週間だった。  

日曜日(17日)には、海浜幕張のホテルオークラで、玉置俊君の結婚披露宴があった。玉置君は、5、6年前に明治学院大の大学院生のときに、2年間、わざわざ明治の授業を受けにきてくれたことがあった。いまは県立柏高校で英語を教えている。音楽が得意で、ブルースギターは、玄人はだし。学園祭でも男の先生たちなるオヤジバンドを率いて人気のようだ。週末は、硬式テニス部の顧問として生徒の試合を引率している。八面六臂の活躍ぶりは、一緒のテーブルにすわった他校の先生方の話から伝わってきた。  お母さんはネパール人で、長年、幕張でネパールカレー・レストラン「ジャイネパール」を経営している。十代の頃からずっと日本暮らしで日本語は堪能。敬虔な仏教徒で、日本人以上に日本人ぽい。私とは話がよく合う。

(写真:ネパールの踊りを踊る出席者たち)

 披露宴は、列席者が200人を超える盛大な会だった。いちばんの来賓は、駐在ネパール大使。お母さんの古里であるネパールの高地の村からも、親戚の人たちがやってきた。話によれば、彼らの家は地震で瓦礫(がれき)と化し、いまはテント暮らしとのこと。4千メートル級の山にある村だから、冬にならないうちに復興しなければならない。  

火曜日(19日)に、科研費の実地報告書を完成。ネットで書き込み、プリントアウトしたものを水曜日(20日)の授業後に知財事務室に持っていって承認を受ける。公的資金をうけるのは、申請のときも結果報告のときも大変である。いつも事務の方に助けてもらって、ようやく完成。ありがたし。  

直ちに『すばる』(集英社)の映画評に取りかかり、木曜日(21日)の午後に送る。北アフリカのアルジェリアの山岳地帯を舞台にした『涙するまで、生きる』という作品。アルジェリアと言えば、あのハリルホジッチがブラジル・ワールドカップで率いていた国だ。人里離れた貧しいアラブ人の村の小学校の庭で、子どもたちがボールを蹴っているシーンが出てくる。だが、ハリルホジッチは出てこない。1954年の独立戦争時代の話だから。原作はカミュの短篇「客」。右へ行くか、左に行くか、岐路に立たされた人間の実存的な決断がテーマ。金曜日(21日)には初校ゲラが出てきて、すぐに直しを入れて送る。6月上旬に発売予定。

 

さて、きょうの試合である。第10節、国士舘戦。多摩市陸上競技場。国士舘は、現在、勝点16で首位を走る。明大は6位ながら、勝点差はわずかに4。追いつくチャンス。首位いじめをしたいところだ。応援組も、きょうは気合いが入っている。声の響きがちがう。

 

明治はこれ以上はないと思える出来で、試合を終始コントロールした。特に前半はシュートの雨あらし。ボクシングで言えば、相手をKO寸前まで追いつめた。もし最初の1本が決まっていたら、KO勝ち(大量得点で勝利)していただろう。  

だが、土居柊太(政経2)や高橋諒(文4)らの放つシュートがポストに当たったりして、1点が遠い。逆に国士舘に、後半20分に先取点先に奪われて、そのまま逃げ切られてしまった。  試合内容は90点ぐらい。しかし、勝負には敗れてしまった。国士舘は内容が悪いながらも、しっかり勝点3を明治から奪っていった。秋のリーグでは、しっかりKO勝ちしなければならない。


ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(9)

2015年06月03日 | サッカー部長日記

5月18日(土)  

5月18日(土)  今週も、授業の合間に、いろいろなことがあった。  

火曜日(12日)の午後には、丹羽詩温(しおん)君(文3)が、和泉キャンパスにきてくれた。アジア史専攻に所属し、トルコ史が専門の江川ひかり先生のゼミに入っている。ふたつの講義の前に、明大の集中応援日になっている、きょうの早稲田戦の集客のために告知を受講生たちにおこなった。  

その夜に、駿河台キャンパスで、明大体育会の監督・部長会議があり、神川総監督と出席。折りわるく、季節外れの台風が関東地方に到来。家に帰る直前に大雨に襲われ、ずぶ濡れになった。  

金曜日(15日)には、講談社に書評を送る。依頼されたのは、高橋源一郎の新作『動物記』(河出書房新社)。イソップをはじめとする動物寓話に見られる「教訓」を笑い飛ばすアンチ寓話の傑作。25日(月)に発売される『週刊現代』に載る予定。  

さて、きょうは第9節、早稲田大戦。西が丘サッカー場11:50キックオフ。これまでのところトップグループは、国士舘(勝点16)、流経大(15)、順大 (14)の3校。第2グループは、勝点12で慶応、明治、法政の3校がつづき、勝点11で中大と駒沢がつづき、開幕直後は絶不調だった専大も勝点10で追い上げ体勢。  だから、きょうの試合は、首位に追いすがるいいチャンス。集中応援日とあって、会場入口には、明治大学のブースも出ている。 

 

きょうのテーマは、「献身的な90分」「強いメンタリティ」「サイドからのくずし」「本質の追求」と、盛りだくさん。  

メンバーは、ゴールキーパーに、服部一輝(法3)が抜擢される。DFとMFは前回と同様。FWは、和泉竜司(政経4)、藤本佳希(文4)、三苫元太(政経4)の4年生トリオ。システムは前回と同じ3-4-3。  

前半は、いつもより出足はよい。開始直後、高橋諒(文4)が左から切り込み、早く低いセンタリングを放つが、わずかにFWのヘッドと合わず。その後も20分頃まで、高橋や室屋成(政経3)の攻め上がりがあったり、藤本佳希(文4)がシュートを放ったり、いいリズムで戦いを進めている。こういうときに、点が入るといいのだが。しかし、20分すぎから、早大も攻撃に出て、40分までに4度のコーナーキックを与え、この時間帯、明治は守備を強いられる。が、集中を切らさず、得点を与えない。前半ロスタイムに、小出悠太(政経3)がイエローカードを切られる。これで通算3枚目。  

「攻めに行ったときに、正しいポジションをとってリスク管理するように」「高いボールがあがったとき、相手選手の横から当たると抜かれる。しっかりゴールを背にして当たれ」と、ハーフタイムでの指示。  後半は、開始直後、明治には、早稲田のGK後藤雅明君(国学院久我山出身、3年)に弾かれる惜しいヘッディングシュートがあったが、一進一退。だが、20分すぎに、カウンターをくらい、早稲田の10番山内寛史君(国学院久我山出身、3年)にゴールを決められる。その1分後にも、同じ映像をみているかのように、山内君にゴールを決められ、あっという間に2点差がつく。ただちに、岩田拓也(商3)、早坂龍之介(法3)、木戸皓貴(文2)を投入し、30分、36分と左からFKを得る。特に2度目のときは、差波のキックがゴール目指していいところに飛ぶが、またもやGK後藤君の必死のパンチングで、惜しくもゴールは決まらず。  

しかし、41分には、キャプテン和泉竜司(政経4)が木戸からのクロスをヘッドで合せてゴール。ようやく1点。1点差に詰め寄るも、時すでに遅し。  きょうは、皆、気持ちの入ったプレーで、足もよく動いていたと思うが、後半の真ん中あたりで、ぽっかり穴があいたように、取り返しのつかない連続失点を喫してしまった。  

攻撃も内容は悪くないが、最後のフィニッシュが決まらないもどかしさが募る。  

とはいえ、サッカーの神様には、見放されていなかった。上位校も星を伸ばすことができなかったからだ。1位の国士舘は専修大に3-0の完敗(専大のパスまわし、GK福島君からのロングフィードによる速攻がさえた)。2位の流経大は神大と引き分け、勝点1を積み上げただけ。3位の順大は駒大に敗れ、4位の慶大は中大と引き分け。というわけで、国士舘と流経大が勝点16で並ぶ。明治との差はまだ4つ。希望はある。  いまは順位や勝敗に一喜一憂する必要はない。大事なのは、「明治のサッカーを極めることだ」(栗田監督)。「明治のサッカーを極める」とは、「三原則」(走力、球ぎわ、切り替え)、堅守速攻、サイド攻撃など、だ。


ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(8)

2015年06月03日 | サッカー部長日記

5月9日(土)  

第8節、駒沢大学戦。西が丘サッカー場にて、午後13:50キックオフ。  

ふだんはサイドバックの高橋諒(文4)と室屋成(政経3)を前に出して、3-4-3の新システム。GKは前回につづき、長澤祐弥(政経1)。DFは、小出悠太(政経3)、小池佑平(4)、河面旺成(3)。MFには室屋成(政経3)、差波優人(商4)、柴戸海(政経2)、高橋諒(文4)。FWは、和泉竜司(政経4)、藤本佳希(文4)、木戸皓貴(文2)。  

きょうのテーマは、「三原則を実行して、セカンドボールを奪取」  

前半は、正面スタンドから見て左から右へ攻める明治のペース。木戸や柴戸がシュートを放つ。室屋や高橋が盛んに攻め上がる。25分には、右30メートルでFKを得る。差の波シュートはGKのパンチングで逃げられる。そこから3度のコーナーキックを立て続けに得るも、得点にはいたらない。30分を過ぎてからも、室屋や柴戸がシュートを打つが、GKに弾かれたり、浮いたりして決まらない。  

ハーフタイムでは、「ためすぎ」との指摘が栗田監督からあった。いいコース、いいチャンスになるまで「ためる」と、ディフェンスもし易い。相手が予想していないタイミングでシュートを打つなり、パスをだすべきだ、と。それと、残り45分を走りまくれ、と  

後半は、開始後に敵陣でFKを与え、駒沢の選手がすばやくリスタートして、明大陣営深くにロングボールを蹴り、受けた選手にそのまま持っていかれ、パスを通されて、ゴールを奪われる。あっけない失点。せっかくいいリズムで戦っていたのに、残念。  

すぐにベンチは、体調のすぐれない高橋の代わりに道渕諒平(農3)を、木戸の代わりに三苫元太(政経4)を投入し、反撃に出る。道渕が入ってから30分間に猛攻を繰り返し、5度のコーナーキックを得るも決まらない。40分には、差波に代えて、早坂龍之介(法3)を投入。藤本のシュートがはずれたり、柴戸のヘディングがバーに当たったり、運に見放された感もあった。が、早坂から右サイドの室屋へいいパスが出て、室屋がアーリークロスをあげ、三苫元太がまたも土壇場で同点ゴールをあげてくれた。後半43分だった。明治は攻撃の手をゆるめず、逆転勝ちを狙ったが、非情の笛が鳴る。  

辛くも勝点1を奪った。それにしても、三苫は頼りになる男である。