(写真)ユッカ芋の料理(友達のグアヒーロとロサ)
キューバ人は、辛いものが苦手?
越川芳明
キューバでいちばん驚いたのは、辛い食べ物が苦手な人が意外と多いということだ。
かつて私はメキシコをあちこち歩きまわり、トウガラシを使った辛いサルサソースに慣れ切っていたのかもしれない。「郷に入れば郷に従え」で、トウガラシ料理ばかり食べていたおかげで、一時期気管支をやられて、声が出なくなったこともある。
コミダ・クレオーリャと呼ばれるキューバの家庭料理は、コングリ(小豆の入った炊き込みご飯)に、フリホル豆のスープ、豚肉か鶏肉からなる素朴な料理だ。野菜はあまり食べない。せいぜいキャベツの千切りとかトマト、キューリぐらいだ。それでアビチュエラというインゲン豆を天ぷら料理に使ってみたら、キューバ人たちから、まるでトランプの中から鳩を出したかのように、驚かれたことがある。
ともかく、キューバ人は全体的に甘い味付けが好きなようだ。砂糖があらゆるキューバ料理や飲料水に入っている。エラドと呼ばれるアイスクリーム、バティドと呼ばれるフルーツの生ジュース、エスプレッソで飲むコーヒー(クリームは入れない)、ポタへと呼ばれる豆スープ、グアラポと呼ばれるサトウキビの搾り汁。持参したティーバックで緑茶を淹れてやると、彼らは必ず砂糖をたっぷり入れて飲む。
師匠の新しいパートナーが「辛いものを食べると血圧が急激にあがって」と、私に弁明するが、甘いものだって食べすぎは危険なのだが・・・。ハバナのベダド地区を歩くと、ジャラという映画館の前の公園に、コッペリアという有名なアイスクリーム店があり、いつもハバナッ子が長蛇の列をなしている。
日本の農畜産業振興機構が作成した興味深い統計がある。国別に、国民一人当たりの砂糖の年間摂取量(2015/16年)を調べたもので、それによると、キューバが世界一である。一人が七一キログラムの砂糖を消費している。一日に換算すると一九四グラム。コーヒーシュガー(四グラムに換算)にすると、一日に四八個分。これはカロリーで言うと、吉野家の牛丼大盛り(七五〇キロカロリー)一杯分にあたる。
ちなみに、日本人は一八キログラムと少ない。コーヒーシュガーで一日一二個(四九グラム、一八〇キロカロリー)。カロリーで言うと、女性用の茶碗にご飯一杯程度にすぎない。
というわけで、病気のことが気になる。とりわけ糖尿病だ。IDF(国際糖尿病連合)によれば、世界には、二〇一四年現在、成人(二〇歳~七九歳)の糖尿病患者が三億八千七百万人いるという。キューバの場合、成人の糖尿病患者は七〇万人である。これはキューバの全成人の八・四パーセントで、世界平均(八・三パーセント)をやや上回る程度。とはいえ、実際に街で見かける中年女性は、みなお腹がふっくらしていて、糖尿病患者予備軍のように思える。ちなみに、日本は七・六パーセントで、それほど多くない。
キューバに行けば、私はキューバ人と同じラム酒を飲み、同じ食事をとることにしている。だからではないだろうが、ここ数年は、健康診断のたびに糖尿病の数値が高い。
糖尿病の初期の頃には、症状が表に現われないことや、身近に医療施設や安価な薬がないこともあり、世界の患者の半数近くが治療を受けていない。
だが、キューバでは、未治療患者は二・三パーセントしかいない。日本は四パーセントだから、いかにキューバ人は医療の恩恵に浴しているか、この数字だけでも分かるかもしれない。ちなみに、キューバは社会主義国で、医療は無料である。
(参考)
統計 国民一人あたりの砂糖の年間摂取量
① キューバ・・・71kg
② ブラジル・・・65kg、
③ グアテマラ・・・63kg
④ オ—ストラリア・・・60kg
⑤ ベルギー・・・56kg
参考:日本・・・18kg
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