越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

「世界政府(その1)」第七回目

2011年01月19日 | 翻訳
(訳注:ひきつづきエスチューリンの著書『ビルダーバーグ倶楽部』からの引用です)

第3章 どうして、そしてなぜビルダーバーグ倶楽部はコソヴォの戦争を作り上げたのか?

 こんどは、バルカン半島の番だ。

 マスター・プランは、カナダのトロント市から二十キロ離れた小さな豪華リゾート、キングシティで開かれたビルダーバーグ倶楽部の1996年の会合の最中に作られた。

 (中略)ビルダーバーグ倶楽部のメンバーによるコソヴォとバルカン半島での戦争には、具体的な目的があった。

 すなわち、ドラッグ、石油、鉱物資源、『世界(グローバル)政府』という大義の提示だ。
 
 旧ソ連の共産主義が崩壊してから、ユーゴスラビア連邦共和国が西側勢力圏に統合されることを拒むと、合衆国とドイツはユーゴスラビアの分離独立派を支持し始めた。

 オーストラリアの著名なジャーナリスト、ジョン・ピルガーは『ニュー・ステイツマン』誌に、こう書いている。

 「ミロシェヴィッチ[元ユーゴスラビア大統領]は、無責任な男だった。

 彼は銀行家でもあり、国際通貨基金や世界銀行や欧州連合の要求に沿って「経済改革」を実行しようとしていたので、西側の同盟者と見なされていた。

 不幸なことに、彼は主権を譲渡することを拒んだ。アメリカ帝国もそれぐらいは予想していた」
 
 中東やバルカン事情に詳しいジャーナリスト、ニール・クラークの書いた記事によれば、「そのとき、ユーゴスラビアの70万以上の会社が公有のままであり、その大半はいまだに所長と労働者との共同委員会によって運営されていて、私企業の資本は五パーセントにすぎなかった」

 サラ・フランダース[「国際行動センター」の共同議長]は、国際的な平和運動を行なう「労働者世界党」に所属している活動家でありジャーナリストだが、このように書いている。

 「国際通貨基金と世界銀行の貸与条件によれば、すべての公的企業の解体が必須だった。

 コーカサスとカスピ海の石油や天然ガスがそれにあたり、シベリアのダイアモンド鉱山も同様だった。

 そこで支配的な権益を獲得することは、コソヴォで始まったばかりの武闘闘争で勝利することを意味する。

 この土地を北大西洋条約機構が統治することで、合衆国の企業はそこの自然資源を所有する上で優位な位置に立つことになるだろう』
 
 当初、ビルダーバーグのメンバーは、セルビア人が匿(かくま)っている戦争犯罪人を追いかけ、新しい国際裁判所で裁判にかけることで、セルビア人の「怒りに火を」つけようとした。

 一方、セルビア人は誇り高く百戦錬磨で、最下級の容疑者を説得して自首させ、こうした挑発には乗らなかった。

 しかし、それだけでは十分でなかった。

 合衆国に牛耳られているハーグの国際裁判所は、セルビア人を激怒させ、戦争を誘発するために非合法的な誘拐という手に出た。
 
 これによって、同様に、なぜリチャード・ホルブルック(1999年から2001年まで米国の国連大使を勤め、ビルダーバーグと米外交問題評議会のメンバーで、六度ノーベル平和賞の候補に挙がった)が、コソヴォをめぐる最終協定にある条項をさし挟んだか、説明がつくだろう。

 コソヴォはボスニアとどんな関係があるのか? 

 何もない。

 だが、ホルブルックの考えは、ビルダーバーグ倶楽部によるバルカン半島への領土拡大を見据えて、ボスニアを実験場とすることだった。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「世界政府(その1)」第六回目 | トップ | 「世界政府(その1)」第八回目 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

翻訳」カテゴリの最新記事