越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

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書評 エドムンド・デスノエス『低開発の記憶』(1)

2011年09月03日 | 書評
「だめ男」の自虐的なユーモア 
エドムンド・デスノエス『低開発の記憶』(野谷文昭訳、白水社)
越川芳明

 キューバはつい二年前に、革命五十年周年を祝ったばかりだ。フィデル・カストロが最初に勝利宣言をおこなったサンティアゴの街には、大きな看板にチェ・ゲバラとカミロ・シエンフエゴスとカストロの三人の英雄の似顔絵が描かれ、革命五十周年の文字が踊っていた。

 必ずしも順風満帆だったわけではない。革命直後に米国の反カストロ派キューバ人によるヒロン海岸(ピッグズ湾)侵攻事件があり、それ以降五十年以上にわたる米国による経済制裁があり、九一年にはソ連からの経済的な援助が断ち切られ、しばらく極端なモノ不足に襲われた。

 だが、なにより世界を震撼させたのは、一九六二年の「キューバ・ミサイル危機」である。そうした時代背景が、この日付のない日記、このキューバ版『地下生活者の手記』ともいうべき本書(初版は一九六五年に刊行)の語りに反映している。

 
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