僕の「鬱」の歴史について書いてみよう。と思ったのは、今日午後から「鬱」が襲いかかってきたからだ。昼食後、ホットカーペットに寝転んでいたら、「何かをしなくてはいけない。でも、何をしたらいいか分からない」状態に陥った。こんな時は寝るに限る。夕食まで6時間くらい寝ただろうか。食後、マンガを読んでいたら、再び「鬱」の波が押し寄せてきた。
最初は約8年前。まだ、連ドラのプロデューサーをやっていた時の事。当時の上司が全く「ドラマの事を知らない営業畑の人物」で、僕は「業務命令」で、その時やっていた連ドラが終わったら、すぐ「後輩のプロデューサーが準備している連ドラ」に入る事になっていた。普通、プロデューサーはキャスティングから脚本作りまで、アタマから関わっていないと成り立たないのだが、上司の一言でそういう羽目になった。
実際、前の連ドラを終わって、次の連ドラに行ってみると、後輩のプロデューサーと監督でキャスト・スタッフのキャスティングも終わり、脚本も4話まで準備稿としてできていた。そして、臨んだ1~4話の準備稿を決定稿にする打ち合わせ。脚本家は大ベテラン、監督とは何度も仕事をしている。
その日、その打ち合わせに行く途中、完全に「鬱状態」になってしまった。打ち合わせが早く終わったので、TBSの近くのバイアグラとかを売っている店に勇気を出して入り、アメリカで売られている副作用が少ない「プロザック」という抗鬱剤の購入を申し込んだ。27000円で90粒だった様に記憶している。薬が送られてきて、飲んでみたが頭痛がする。
僕は決心した。自分でも「心に関する病のドラマ」をやっていた経験もあり、精神科に行こうと。妻とも相談。思い切って、本をたくさん書いている著名な精神科医の医院に電話。相手が普通に喋ってくれたので、少し安心し、初診は予約制との事で時間を決め、その医院に通い始めた。今から7年半くらい前の話。
そのドラマのメインキャスト(主役では無い)が役柄で揉めていて、その処理(脚本直し、主役を含めたキャストへの説明)を後輩プロデューサーとやっていたのだが、後輩プロデューサーの親が亡くなり、彼はその仕事を全部僕に「振り」逃げ出した。元々そういうキャラだから、そんなこともやりかねないな、と思っていたが、自分自身が心身共にかなりボロボロだったので、そんなことができる奴は「ある意味で凄い」と変に感心。
その後も、抗鬱剤を飲んでドラマの中打ち上げに参加、ハイになり、舞台で大演説し、降りる時、舞台周りの段差に足を引っ掛け、空を飛び、頭から店の観葉植物の植木鉢に突っ込み、メガネをぐにゃぐにゃにして、タクシーで強制送還されたり、飲み屋の階段から落ちて、新聞記者を下敷きにしたり、いろんな失敗をしている。最近は「処方」を変えてもらい、そんな無茶苦茶な事はしなくなったが、貧乏性なのか、仕事の無い休日、突然「鬱状態」になる。それをそのまま受け止めておけばいいのだが、「鬱」になった自分をダメ人間だと思ってしまう事から「悪のスパイラル」が始める。つまり、公私の切り替え、人生の遊びが下手なのだろう。
「鬱」は内科で言えば「心の風邪」である。「風邪の具合の悪い時、布団で寝付いても良心の呵責は無い」だろう。しかしながら、「鬱」の場合は厄介で、いちばんいいのは「体を動かす事」。体が疲れて、ものを考える余裕が無くなれば、自然に余計な事も考えなくなり、「鬱状態」から脱却できる。
3年余り前になる。会社の人間関係で悩み、1週間で3日、飲みに行っていた事がある。体重は99キロまで増え、最悪の状態だった。今は89キロ。
「鬱」にとって大切なのは、「安定した深くて良質な睡眠」。だから、精神科に行くと「抗鬱剤」と「精神安定剤」と「睡眠薬」が出るのだ。コアタイムである午後10時から午前3時の間の時間がなるべく多く入る様に睡眠を取る。それと、「少食」。つまり、腹八分目。今日は油断して、昼ご飯をお腹いっぱい食べたので、症状が出たのだろう。
会社や知り合いでも、どう考えても「鬱」或いは「鬱予備軍」と思われる人がいるが、そういう人に「精神科に通う事」を勧めても、絶対拒否される。その挙句、眠れないから、「不眠症」になり、いちばんよくない「深夜に酒を飲むという行為」に走ってしまう。酒を飲むと確かに眠れる事もあるが、「深く良質な睡眠」が取れない為、翌日に「心身ともの疲れ」を残してしまう。そうすると、その晩、また寝られなくなり、酒を飲み、やがて「肝臓を壊す」か「アルコール依存症」への道をたどる可能性が高くなる。
これだけ、「情報量」が多くて、「生き物としての人間が暮らしにくい社会」の中でストレスを感じていない人はほとんどいないだろう。いるとすれば、その人は「強いストレッサー(ストレスを周りに与える怪物)」か「よほど、のんびり(鈍感)した人」なのではないだろうか。
みんなで「精神科」に行けば怖くない。「鬱」の症状が軽いうちに通院する事をオススメする。






